5章
バーサ失踪
■日本語版 5章 p.94
「(略)バーサはたぶん地図を見まちがえて、アルバニアでなくオーストラリアに行ったのだろう(略)」
■UK版 p.58
‘(略)she probably misread the map and ended up in Australia instead of Albania(略)’
■試訳
「(略)どうせバーサのことだから、地図を見まちがえてアルバニアじゃなくアルゼンチンにでも行ったんだろうよ」
■備考
- パーシーのセリフ中にある失踪したバーサについてのバグマンのセリフ。
幾らバーサが困った人でもアルバニアと間違えて南半球のオーストラリアに行くとは考えにくいので、
これはバグマンの「冗談」と考えられる。
- 原文でアルバニアとオーストラリアを並べているのは、
1.英語だとスペルが似ている(AustraliaとAlbania・Aで始まり、iaで終わる)
2.イントネーションが同じで韻を踏んでいる(両方共に後半の母音発音がエイイア)
と言った共通点があり、一種の駄洒落になっているから。
しかしカタカナにすると二つの国の名前はあまり共通点が無い為に邦訳読者の中にはこれを冗談と気づかず、
バーサは本当にそんなに馬鹿なのかと考え、そんな人が魔法省で働いている事を訝しく思った人達が居た様だ。 - 別に「アルゼンチン」で無くても良いが、日本語でも駄洒落と分かる様に工夫してくれれば、
この様な誤解は避けられたはず。
6章
クシャクシャ、グシャグシャ
■日本語版 6章 p.100
ハリーの足下のクシャクシャになった毛布からグシャグシャ頭の大きな体が二つ現われた。
■UK版 p.62
At the foot of Harry's mattress he saw two large, disheveled shapes emerging from tangles of blankets.
■試訳
ハリーのマットレスの足側で、乱れた毛布から大きなくしゃくしゃのパジャマ姿がふたつ現われるのが見えた。
■備考
- 6章冒頭、ワールドカップに行く為に子供達が朝早く起こされるシーン。
- クシャクシャ、グシャグシャ…。しかもグシャグシャ頭って、頭が潰れてるみたい。
双子の髪が酷く乱れてるって事何ですよね…。
次いでに出来れば「足もと」にして欲しかったなあ。 - 訳者は擬音語が好き過ぎるんだよな。
ああ言うのはたまに挟むから面白いのだろう。
頻繁にやられるとテンポも悪いし。 - At the foot of Harry's mattress=ハリー(起き上がってる)のマットレスの足を向けていた方
disheveled=髪や服が乱れた
7章
ゴム引き
■日本語版 7章 p.116
二人ともマグルの格好をしてはいたが、素人丸出しだった。時計を持った方はツイード背広に太腿までのゴム引きを履いていたし
■UK版 p.70
Both were dressed as Muggles, though very inexpertly: The man with the watch wore a tweed suit with thigh-length galoshes;
■試訳
ふたりともマグルの服装だったが、ひどくまずい着こなしだ。時計を持っている方は、ツイードのスーツに太ももまで届くゴム長靴を履いている。
■備考
- ポートキーでキャンプ場に着いたシーン。
- 素人って…原文でもプロフェッショナルでは無い感じの言葉が使われているんでしょうか?
- ゴム引きの何を履いていたのでしょうか?
「履く」と言うと靴の事ですよね?ズポンなら「穿く」ですよね。
どう言う格好だったのか、イマイチイメージが結べない。 - ゴム引きは長靴の古い言い方だと思う。
- 「ゴム長靴」って訳せば良いのに。
地の文にはスラングとか略した言葉を使わないで欲しい。 - inexpertly=素人っぽく、不器用に、下手に
galosh=ゴム(防水布)製のオーバーシューズ、ゴム長靴
イギリス代表
■日本語版 7章 p.121
「(略)自分がクィディッチのイギリス代表選手だったし(略)」
■UK版 p.73
‘(略)He played Quidditch for England himself, you know.(略)’
■備考
- アーサーのセリフ。
- 単なるミスだろうか?ちゃんとイングランド代表てなってるとこもあるし。
ペンパル
■日本語版 7章 p.131
「(略)ビルはブラジルの学校にペンパルがいたな……(略)」
■UK版 p.78
‘(略)Bill had a penfriend at a school in Brazil ...(略)’
■試訳
ビルはブラジルの学校に文通仲間がいたな……
■備考
- ペンパルを訳さずそのまま片仮名で書いてて何これ?ってなった。
- 「ペンパル」と書かれても何の事か分からないから「文通仲間」にして置くべきだった。
ニョキニョキ
■日本語版 7章 p.144
行商人がそこいら中にニョキニョキと「姿現わし」した。
■UK版 p.85
Salesmen were Apparating every few feet,
■備考
- ニョキニョキって可笑しくありませんか?
ニョキニョキ現れるのは普通植物系ですよね…
8章
黒板
■日本語版 8章 p.149(※原文は改行無し)
ちょうどハリーの目の位置に、巨大な黒板があった。
見えない巨人の手が書いたり消したりしているかのように、金文字が黒板の上をサッと走ってはサッと消えた。
それがピッチの右端から左端までの幅で点滅する広告塔だとわかった。
■UK版 p.88(※原文は改行無し)
almost at Harry's eye level, was a gigantic blackboard.
Gold writing kept dashing across it as though an invisible giant's hand was scrawling upon it and then wiping it off again;
watching it, Harry saw that it was flashing advertisements across the pitch.
■備考
- 【黒板】
原文も確かにblackboardだけど、日本語で黒板って書くと学校にある黒板を連想する。
「巨大な黒い掲示板」では? - 【広告塔】
原文の感じだと、横長の電光掲示板みたいなもの。
そこに透明な巨人の手で書かれてる様に光った字が現れては消える。
「広告塔」というと縦長の「塔」みたいな建造物を思い浮かべる。
- it was flashing advertisements across the pitchのitは厳密に言えば掲示板でも塔(?)でも無く、
金色の文字(Gold writing)ではないかと思い「それは競技場を横切る光の広告文だとわかった」とか訳しても
良いかもしれないと思ったのですがどうでしょう?
- 邦訳ではその広告文がページの下部の変な囲みの中に入っているのでとてもイメージしにくいですが、
原書ではイタリック体で普通に書かれているので夜空を横切る光の文字列がすっと浮かんできて楽しいですよね。
口めくりルシウス編
■日本語版 8章 p.158
マルフォイ氏の口元がニヤリとめくれ上がったのはなぜなのか、ハリーにははっきりわかっていた。
■UK版 p.92
Harry knew exactly what was making Mr Malfoy's lip curl.
■試訳
マルフォイ氏が不快そうに口元をゆがめた理由を、ハリーはよく知っていた。
■備考
- クィディッチ・ワールドカップの客席にて、ルシウスがハーマイオニーに嫌な顔をしてみせるシーン。
- このlip curlは睨み返したハーマイオニーへの冷笑では無く、嫌そうに口元を歪めたのでは無いかと思う。
スルスルと
■日本語版 8章 p.160
百人のヴィーラがスルスルとピッチに現れた
■UK版 p.
But a hundred veela were now gliding out onto the field,
■備考
- 地面から生えるんですか…
赤むけ その1
■日本語版 8章 p.173
「ディミトロフがモランを赤むけにしました――わざとぶつかるように飛びました――(省略)」
■UK版 p.126
Dimitrov skins Moran - deliberately flying to collide there - (省略)
■試訳
「ディミトロフはモランに接触しかけた、ぶつかろうとしてわざといったものです。これはもうひとつペナルティをとらねばなりません」
■備考
- 赤剥け=皮膚などが擦りむけて赤くなっていること。また、その部分。
- skinにはサッカー等で敵のディフェンスを擦り抜ける意味も有るので、ここでは「接触しかけた」だと思われる。
それをskin→皮を剥ぐ→「赤むけ」と誤訳した?
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- 口が捲れ上がるは普通の人ならおかしいと思うはず -- 2020-12-06 (日) 11:36:33
- 普通じゃない人でもおかしいと思うはずw最大限好意的に解釈すると母国語以外の言語も習得していると適切な用語の取捨選択が難しく違和感をおぼえることもできなくなりがちなんだろう、ってことなんだろうけど、そのために校閲者ってのがいるんだよな。そこに金をケチってしまった静山社がアカンのだ。 -- 2020-12-07 (月) 09:19:56
- ペンパルは「ペンフレンド」という言葉があるのでは。今ではもう死語臭いけど、まあ当時なら通じるでしょ -- 2021-12-28 (火) 00:18:26
- 30代だがペンパルは聞いたことないぞ -- 2022-01-13 (木) 04:56:48
- 当時でも死語だと思う -- 2022-06-03 (金) 13:30:19
- クラムの肌色「sallow-skinned」が色黒と訳されていたけど、これって合ってる? -- 2022-03-10 (木) 08:51:11
- 検索したら土色の[青ざめた・黄ばんだ]皮膚が出てきたぞ -- 2023-10-03 (火) 15:50:10
- バーサってめっちゃアホだと思ってた。冗談だったんだあれ。 -- 2022-10-30 (日) 02:54:24
- そうだよ -- 2023-10-05 (木) 18:55:22
- ゴム引きは布などの表面を、ゴムで防水加工することらしい -- 2024-02-16 (金) 17:51:01