このページには、15話「ドッグ・ツース・パール」における重要な会話を載せています。
ごく一部を除く、9割程度のストーリーに関わる会話を載せているため、ほとんどネタバレしているとお考えください。
折りたたみ内のメインキャラのセリフは、文字色をそれぞれのイメージカラーにしています。
「ワタル」、「スミカ」、「ヤマト」、「アヤネ」、「クオン」です。
それ以外のキャラの色もメインキャラに準じて決めています。
詳細は折りたたみ内最初に記載しています。
冒頭回想・ワタル編
※ 「タクヤのセリフ」
♪オフ
──イカルガ戦士学校・倉庫。ワタルとタクヤが掃除をしている──
唸れ! 強靭な雑巾さばき! ホコリに負けず、蜘蛛の巣に負けず!
実技教官の汗が染みついた床に若かりし頃の美しさを蘇らせるんだ!
「うおおおおおおおおおお! 床下に潜むネズミに届け! 熱く若く美しい掃除魂!」
「……ワタルくんは。どうして僕を庇ったの?
僕が競技会でミスをしたのは事実だ。
僕を庇わなければ、こんな罰を受けずに済んだのに。」
「うーん……。何でって言われてもなー……。」
「理由もないのに助けたの? 自分も巻き込まれるって、
分からなかったわけじゃないだろう!?」
「大切な人だからこそ、一緒に悩みたいもんじゃないかな。」
「一緒に悩むって……?」
「さて、掃除の続きやりますか!
埃と誇りに群がるゴキブリとクモの白熱した戦いに
我々人間が終止符を打たねばなるまい!
うおおおおおおおお!
人類の文明の結晶体である乾燥雑巾と濡れ雑巾の
華麗なコンビネーションを喰らえええええ!」
──正直、理解はできなかった。
いや、今の、人類の手で終止符をー
……という真面目なのかふざけているのか分からない台詞は
いつも通りではあった。
あまりに当たり前のように言われたからだろうか。
僕はそれ以上、この話を続けられなかった。
頭が追いつかなかったんだと思う。
そんなことを言われたことがなかったから。
プロクト城・謁見の間
※ 「大臣のセリフ」、「王様のセリフ」
♪王様と大臣(曲名:城04/配布元:魔王魂)
「新たな大型魔物……?」
「エフライント神殿です。そこに大型魔物が出現したのですよ。
今度こそ、大型魔物の出現理由──新たな魔王の手がかりをつかんでくださいね。」
「新たな、魔王?」
「知ってほしいのだと思っていましたよ?
あなたが夜な夜な城の書物庫に忍び込んで何やら調べているようでしたからねえ。
怪しんでくれと言っているようなもの。」
「急いだ方がよろしいでしょうか。
エフライント神殿に行ってまいります。」
♪フェードアウト
「……同じ目だ。」
「陛下?」
「確かに、魔物を倒す力を持つのは汝だ。
だが、助力を得ることは禁じられていない。
生命の重みを知らぬ者に、生命を護ることなどできぬ。
政治も、戦も、本質は同じ。」
──謁見の間手前の階段──
♪プロクト城(曲名:city today/素材集:Dignified Fantasy Music Vol.1)
「魔王を倒したはずなのに、別の魔王がいるってこと……?
ワタル? 考え事?」
「ちちちちちち違うし!
決して話が退屈だからうたた寝してたとか
口開かずに欠伸をする術を駆使してたとかそういうんじゃねえし!」
「典型的自爆法ね。」
エフライント神殿
♪エフライント神殿 (曲名:Forgotten Promises /素材集:菊田裕樹 BGM素材集-The Calm-)
♪フェードアウト
「ほーほほっほほっほほー
ほーほほっほほっほほー
ほーほほっほほほほほほっほっほー」
「「ほ」という発音を無駄遣いするな。」
「テンション上げろよ! 士気が下がってしまうだろ!」
「お前がうるさいだけだよ。」
──カチッという音がする──
「皆。何か今、鳴っちゃいけない音がしなかったか?」
「冗談言わないでよ。ここ神殿でしょ? 物騒な仕掛けがあるわけないじゃない。」
「そうですよね。
床にスイッチがあって踏むと爆発するなんて、そのような仕掛けはありませんよね。」
「具体的すぎる現実逃避をしないでください。」
──突然、爆発が起きる。バラバラになる5人──
──場面転換。神殿のどこかに、ヤマトとスミカがいる──
「もう! 爆発するなんて聞いてないよ!」
「床の色やステンドグラスを見ると、ここは西側だな。
東に進めば中央に戻れるはずだ。ワタル達と合流しないと。」
──スミカ、少しの間沈黙──
「……ヤマトはさ、魔王のこと、どう思ってる?」
「魔王は一人じゃないことについて?」
「ううん。魔王の正体のこと。」
♪ヤマト(曲名:Hamlet/配布元:Presence of Music)
「魔王なんかになったんだ。
それなりの理由があったんじゃないか?
ダークラウンが言っていただろう。
魔物のエネルギーは負の感情だって。
魔王なんかになるような人間には大きな負の感情が集まるはず。
恨みを買うような生き方だったんじゃないか?」
「そう、なのかな。」
「……うん。そうだね。」
「プロクトに来たばっかりの時もさ、アタシ不安でいっぱいで。
誰かの魔法空間の中なんじゃないかとか、
色々考えて、ぐるぐるしちゃってて。」
「それは俺も考えた。
だけど、魔法で作った空間に取り込む場合、
創造主と面識のない人間には違和感を持たれやすい。
ある程度の魔法を使える人間には気づかれるだろう。」
「そうだよね。
だからアタシも、プロクトって本当にあるんだなって思った。
誰かの魔法なら、クオンくんとか、気づくと思って。」
「とりあえず、ワタル達を探そう。
ワタルのことだから、また罠にかかって騒いでいる姿が見える。」
「さすがお母さん。」
「誰がお母さんだ。生まれ持った性別があるんだぞ。
アイデンティティが崩壊しそうだ。」
──ヤマトとスミカ、皆と合流するために歩きはじめる。
スミカの背後で、ヤマトに身体の異変が起きる。──
♪フェードアウト
──画面暗転、場面転換。
罠を避けながら歩くクオン。立ち止まって頭の中で情報を整理する。──
──クオン、少しの間考える。──
──クオンの背後で爆発音。
トラップに嵌まったらしいワタルが現れる。──
「いやああああああああん!
また爆発トラップ踏んじまったああああ!
誰か助けてええええええええええ!」
──ワタル、クオンに気づく──
「おお、クオン!
よかった、無事だったんだな! いやー、これで安心!
オレ一人でいると、また爆発トラップにかかりそうだし!」
「一回目のトラップにかかった時、魔法の系統や癖を把握してねえのかよ。
その癖を逆探知すれば、トラップの在り処くらい予測できるだろうが。」
「そんな高等技術をオレが習得できると思っているのか!?
このあふれ出る脳筋オーラが目に入らぬか!」
──ワタル、クオンの目の前でクオンが避けたトラップを踏む──
「馬鹿──」
──クオン、咄嗟にワタルを突き飛ばす。直後に爆発が起きる。──
「クオン!」
「大して喰らってねえよ。
後から心配するくらいなら、最初っから馬鹿みたいな行動を自粛しろ。」
──ワタル、しばし沈黙──
「……やっぱりさ、クオンってすごいよな。
他人のことを護るだけの力があって、こうやって、簡単に誰かを助けられて。
オレみたいに、じいちゃ──魔王を封印するのに、
アザリーの力を借りたのとは違いすぎて。
それに加えて高身長のイケメンだし、
クールビューティーで学校きってのモテ男だし、
女だったらアタクシ恋に落ちてるわウフフー──」
──クオン、突然ワタルにつかみかかる──
♪真実(曲名:Recurrence/配布元:Presence of Music)
「それって当て付け? 馬鹿にしてんの?」
「当て付けって何だよ、別にそんなつもりじゃ……」
♪ボリュームUP
「それじゃあ、人の神経を逆なでする言葉を
無意識に言えちゃうわけ?
自覚あるよりタチ悪いな。」
「何でいっつもそういう言い方するんだよ!
本当は違うくせに、そうやって誤解されるような言葉を選んで!」
「あんたに何が分かるんだよ。
家族がいて、友達がいて、どんなに馬鹿でも許してもらえる環境下。
脳内花畑の分際で。」
「分かんねえよ、だから聞いてるんだろ!
自分には家族がいないのに、オレにはいるからムカつくってことか──」
──ワタル、ハッとして言葉を切る──
「何でてめえが知ってんだよ。
……ああ、盗み聞きか?
誰にでも優しい理想のヒーローの皮かぶって、
その裏ではご立派な趣味をお持ちなんだな。
余計にムカつく。」
「てめえの方だろうが! できるくせにやらねえのは!
武道会の時だって礼を言われたのはあんたの方だ。
あいつを救ったのだってあんたの一声だろうが!」
──アヤネが口論中の二人の元へ現れる──
「だ、だめ、です……!」
──アヤネが口論を止めるべく、声をかける。ワタル、慌ててアヤネに取り繕う──
「……ごめんな! 何か怖がらせちゃって。
オレがまた爆発トラップ踏んじまってさ!
クオンが庇ってくれて助かったけど、
気をつけやがれこの野郎、みたいなー。」
──アヤネ、ワタルには返答せずクオンに声をかける。──
「クオンさん。」
「あとの二人は。」
「スミカちゃんとヤマトさんには、私もお会いできていません。
えっと、今のお話って──」
──クオン、アヤネの話を最後まで聞かずに歩きはじめる。アヤネ、心配そうにその後ろ姿を見守る。──
♪フェードアウト
──5人、無事に合流──
♪エフライント神殿 (曲名:Forgotten Promises /素材集:菊田裕樹 BGM素材集-The Calm-)
「無事に合流できたし、大型魔物目指してレッツゴーだね!」
ボス戦後
「また消えちゃった……?」
「パジャーユ火窟の時と同じですね。」
「とりあえずさ、また手がかり掴めずじまいってことでしょ?
今度はどんな嫌味がとんでくるか。」
「せめて魔王の居場所が分かれば、
できることもあるのですが……。」
「最初の魔王の時、プロクト軍は魔王城を特定できたわけだから、
見つけられる可能性はゼロではないと思うが。」
「プロクトの方々が何か情報を掴んでくださっていると信じて戻りましょうか。」
「怒られるって分かってる場所に戻るのって嫌だよねー……。」
プロクト城・謁見の間
※ 「大臣のセリフ」
──謁見の間手前の階段──
「うめき声!?」
──謁見の間。大勢の兵士が倒れている。──
♪暗い衝撃(曲名:シーン別音楽C/配布元:にーおんのBGM素材)
&image(15-14.jpg,555,416)
「な、何これ……!?」
「大丈夫ですか!? 声、聞こえますか!?」
「回復系統の魔法で治療できないんですか?」
──アヤネ、兵士に回復魔法をかける──
「は、はい!」
と、とつぜん、いっせいに、くるしく、なって……。
「先日の方と同じ……。」
大臣の声
説明していただきましょうか?
「これが誰の仕業なのかを。」
「それよりも、皆さんの手当てをした方が──」
「医療室も兵士のたまり場ですよ。
対処療法しかできず、有効打は見つからないまま。」
──大臣、一端言葉を切り、意味深な発言をする。──
「……まあ、犯人の見当はついていますよ?」
「魔王、でしょうか?」
「いいえ。
魔物に有効な「魔法」が使えない我々を、
魔王軍が脅威に感じているとは考えにくい。
では、逆に考えるのです。
プロクトに逆らいたいと思っているのは、
作戦を乱す行動をとったのは誰なのか。」
──大臣、クオンの前に立つ──
「心当たり、あるでしょう?」
──クオン、沈黙──
「ちょっと待ってください!
こんなことをする意味なんて、私達にだってありません!」
「我々に見つけられない有効打……。
魔法によってもたらされたとすれば合点がいきます。」
──ワタル、大臣に詰め寄る。クオン、ハッとしてワタルを見る──
──クオン、何事か思案。──
──ワタル、皆に声をかける──
「ありったけの回復魔法だ! 全員治療して回るぞ!」
♪フェードアウト
──ワタル達、クオンを見る。クオン、ワタルに向き合う。──
──クオン、ワタルに背を向けて歩き出す。すれ違い際、スミカに何かを囁いて託す──
「また嘘つくのかよ! そうやって逃げるのかよ!?」
「てめえといると倒せるものも倒せねえんだ、カス!
仲良しごっこのために来たんじゃねんだよ!」
──クオン、振り返って大臣の方を見る。──
「そんな、どうしてクオンさんが──」
「動ける兵はいるか!」
──兵士に指示。それに従い、兵士がクオンを取り囲む。──
「つれていけ!」
──クオン、抵抗もせずに自ら連行される。ワタル、憤って大臣に詰め寄る。──
「こんなのおかしいだろ!
テキトーなこじつけの理由で捕まらないといけないなんて!」
「なら否定すればよかったでしょう。
彼は一言も否定の言葉を発しませんでした。
理由なんてどうでもいいのです。
あの青二才の痛い男なりに何かを護ろうとしているのか知りませんが。
「疑いを否定しなかった」客観的事実はそれだけです。
そして、それはたいてい「後ろめたいから黙っている」のですよ。」
──スミカ、何か思案している──