ep2_spn

Last-modified: 2026-05-09 (土) 05:04:07

ep2

BGM



焼けるようなアスファルトの匂いが、ビルの屋上に立ち込めている。下界の道路では、折れた消火栓から無意味に水が噴き出していたが、街を行く人々は重い足取りのまま、それに目を向けようともしない。狂った時計の歯車が止まったような、ひどく壊れた、終わりの見えない夏の日。

ディーン・ウィンチェスターの気分は最悪だった。シルバーに光るコルト・ガバメントの銃把は、汗で滑りそうになるほど熱を帯びている。彼はそれを空へ、いや、天を支配するあの傲慢な光の球へと向けた。

「暑すぎだろ、クソが」

引き金を引く。銃声は階下を走り抜ける車の喧騒にかき消される。

「ムカつくんだよ、夏ってやつは。……ムカつく星だ」

太陽に向かって連射する。空薬莢が乾いた音を立てて足元に転がり、重なっていく。ふと、黄金の円盤の真ん中に黒い穴が空いたように見えたが、おそらくは陽炎が見せた幻覚だろう。

その時、空気を引き裂くような咆哮が聞こえてきた。ジェット機が墜落するような、しかしそれよりも遥かに重く、巨大な何かが移動する音。見上げると、穴の空いた太陽がぐらりと揺れ、凄まじい音を立ててこちらへ落ちてくる。

ディーンは目を細め、心地よい満足感と共に口の端を吊り上げた。

「……俺の腕も、まんざら悪くねぇな」

視界が、すべてを消し去るような純白の閃光に飲み込まれていった。


『臨時ニュースをお伝えします。本日午後未明、何らかの原因で市街地中心部に太陽が落下しました。幸い、けが人は出ていない模様です。なお、警察当局は回収された太陽の表面に、無数の弾痕のような穴が空いていることを疑問視しており、現在詳しく調査を進めています』

街から、あの呪わしい熱が引いていった。
暗くなった空には、ただ一つ、涼しげな月が浮いている。風は肌を撫でるように爽やかで、世界は「完璧にクールな夜(The Beautiful Cool Night)」へと姿を変えた。

廃墟のようなビルの最上階。ディーンはお気に入りのロックのレコードをプレイヤーに載せ、上機嫌でステップを踏んでいた。

「イェイ! 最高だぜ!」
「……兄さん、何やってるんだよ」

暗闇の向こうから、呆れ果てた様子のサミーが姿を現した。

「月を見ろよ、サミー! 最高だ! 夏は最高だ、踊り明かそうぜ。朝までな」
「その『朝』が、もう二度と来るかどうかわからないんだよ……」

サムの苦笑は夜の柔らかな明かりに照らされ、涼しい風の中に溶けていった。太陽を失った世界で、二人の兄弟は永遠に続くかのような涼やかな夜の中にいた。

ep3