ウィル・ナイツ編キャラ

Last-modified: 2021-06-15 (火) 14:52:58


ウィリアム・ナイツ(通称ウィル)

 1220年、歴代に数多くの凄腕ディガーを輩出してきたナイツ家の一員として生まれる。ナイツ家のその優れたアニマは主にクヴェル探知能力に秀でたものであり、父ヘンリーと母キャサリンの長男として生まれたウィルも当然ながらこの能力を受け継いで幸せな日々と共に成長する。1223年、ヘンリーがゼルゲン三兄弟と共に大砂漠のメガリスを探して家を出るのをキャサリンと共に見送るが数年後に帰還したヘンリーはエッグというクヴェルを所持しており、これが原因でアレクセイ・ゼルゲンによって両親が殺害されるという悲劇を7歳という幼い年齢で体験することになる。この後、ウィルは80年近くもエッグを追い求めて人生を踏破することになるのだ。

 1235年、15歳というサンダイルでは成人として認められる年齢になったウィルは育ての親であり叔母でもあるニーナの元を旅立ち、ヴェスティアでディガーとして立身。ナイツ家のアニマを所持するウィルのディガー能力は人並み以上であり、術の力もすでに相当な腕を持っていた。また、ウィルの天性ともいえる人懐っこさや素直な性格、人を惹きつける魅力も功を奏し、ヴェスティアではナルセスやコーデリア、タイラーといった仲間を苦も無く見つけることに成功している。
 ヴェスティアから向かったハンの廃墟での探索は、ウィルのディガーとしてのデビュー戦でいえば最高の結果で幕を閉じた。そんな折、アレクセイ・ゼルゲンという名前を聞き知ったウィルは両親の死の真相を確かめるべく接触を試みようと苦心し、その末にエッグというクヴェルを知ることになる。犠牲を払いながらもアレクセイを追い掛けて石切り場にて決戦となるが、その時の戦いでニーナを失ってしまうウィル。アレクセイは谷底に消え、エッグもまた行方不明になってしまうのだった。

 ヴァイスラント方面に探索したウィルは氷河のメガリスを発見し、そのことを評価されディガーとしては最高位の称号であるタイクーンを手に入れる。しかし、ウィルの目的はあくまでもエッグであり、シルマールなどのツテを頼りながらエッグの情報収集に時間を費やした。その際にかねてより相思相愛の相手でもありグラン・タイユで知り合った女性、ラベールと結婚しワイドに移住。その地を拠点としてエッグの追跡も続行し、海賊船に潜入してエッグを海の底に沈めることに成功する。ウィルは今度こそ安堵を得て、ワイドでの隠居生活で心身の保養に努めるのであった。

 1277年、57歳となったウィルは久しぶりに再会した一人息子のリッチからエッグらしきクヴェルの存在を聞き知り驚愕する。それと共に、ナイツ家とエッグとの因縁を感じずにはいられなかった。壮年に入っていたウィルだが再びエッグの追及に身をやつしていくもその行方は見当もつかず、さらにリッチが行方不明となり不吉な予感通り、息子は妻ディアナと一人娘のジニーを残して帰らぬ人となってしまった。
 ジニーが14歳となった1305年。ウィルは65歳ではあったが、まだまだ血気盛んにエッグを探し求めて飛び回っていた。ギュスターヴ陣営のひとりであるヴァンアーブルという術士がウィルを訪ねて来たのがこの頃であり、シルマールの弟子でもあるという彼からエッグの所在を聞いたウィルは居ても立っても居られずに孫ジニーと共に北大陸へ渡航。85歳という老境に入っていたウィルだが年齢を感じさせない活気と戦いぶりを見せ、ジニーや仲間たちと共に北大陸の奥地にある星のメガリスにてエッグをついに追い詰める。そして死闘の末これを撃破し、長きにわたったナイツ家とエッグの因縁を自らの手で断ち切ることに成功するのであった。

 ウィルはその後も数十年は現役として闊達に生き続け、ディガーとしてまたエッグというおとぎ話のようなクヴェルを知る数少ない人物の生き字引的存在になって1321年、101歳という年齢になり家族に囲まれた中で大往生を遂げる。

ワイドへの移住
 1254年、ウィル33歳。タイクーンという称号を得てディガーとしてはまさにこれからと思われた矢先にウィルは引退のようにしてワイドという都から離れた場所に移住してしまう。先年にラベールと結婚し身重となった彼女の身を案じての移住というのがその主たる理由であり、他人に寄り添う優しい性格のウィルならではな一面が垣間見える行動だったと言えるだろう。

 しかし、実際の理由はそれだけではなかった。ウィルが氷河のメガリスを発見した功績は確かに大きかったが、そうやって一躍有名となったウィルのもとには実に様々な人からの依頼や相談が持ちかけられるようになっていた。なかには政治がらみのドロついた話も多く、およそ15年前の意気揚々としていたディガー新米の頃と比べてウィルの心境も大きく変わっていた。
 なにより、ウィルはディガーを引退しても問題ないほどに資産もあり、ラベールの子供が生まれればナイツ家の世継ぎも安心、さらにはこの時はエッグも海底に沈められたまま音沙汰がなく、ウィルにとっての心配事はほとんど解消されていた。またワイドが位置するのは東大陸と南大陸の中間地域なため争いごとから掛け離れており、静かな日々を過ごすには適したと言える。

エッグ所有者、オルフェとの戦い
 ウィルの父ヘンリーから始まったエッグとウィルの戦い。最初にエッグを持ち敵対してきたアレクセイが谷底へ消え、エッグもまた行方をくらましてからかれこれ17年間。タイクーンの称号を得たりディガーとして数々の成功をおさめながらもウィルはエッグという因縁のクヴェルを片時も忘れたことはなかった。そしてついにその情報らしきものを耳にしてさっそく東大陸へと渡るウィル。
 エッグを持っていると思わしきはオルフェという海賊だった。アレクセイの死後、デレクというアレクセイの手下が手に入れたエッグは長らく潜伏期間を経てオルフェに行き着いていたのである。オルフェと接触したウィルは確かなエッグのアニマを感じ、一気に決闘に持ち込むことに。そして敗れたオルフェと共にエッグは海底に沈み、ウィルもまた嵐の海に投げ出されてしまうのである。

 荒れた海で揉まれ砕かれながらもウィルの心境は穏やかであった。エッグを追い掛ける旅では多くの人が犠牲になった。ヘンリーとキャサリンという両親の死亡を発端としてウィルの育ての親であるニーナはアレクセイに憑依したエッグの使役するドラゴンとの戦いで死を賭した術を使って息絶えていたし、ウィルとは気心の知れた仲間であり戦友でもあったコーデリアもエッグに巻き込まれたという形で帰らぬ人になっていた。
 エッグに関わった者は死ぬ、または危険に冒される。それはエッグが正体不明かつ人にとって危険でしかない何らかの術を使うからであるが、エッグを阻止しようとして旅を続けて来たウィルからすればその犠牲はあまりにも大きく、重く感じた。しかし、海に沈んだエッグが二度と明るい場所に出て来なければその苦悩も解消される。安らかな気持ちでウィルは波間のなかで目を閉じていた。

 しかし、ウィルは助けられた。シュヴァルツメドヘンで偶然にも共闘したギュスターヴ13世の船に救助されたのである。時の皇帝とも言い換えられるギュスターヴとウィルの邂逅は二度目であった。ギュスターヴは部下に命じてウィルを助け、回復と療養のためのすべてを請け負った。ウィルとギュスターヴは歴史でたとえるなら表舞台と裏舞台の英雄同士であるが、この数少ない邂逅には二人とも不思議な運命を感じていたに違いない。
 ギュスターヴのお陰で心身ともに回復したウィルはエッグの心配もなくなり、まさに安堵に包まれたままラベールとの結婚を経てワイドの隠居生活を開始したのである。しかし、この20年後に息子リッチからエッグの噂と復活を聞いてしまうとは、この時のウィルには予想できないことであった。