異形生物の考察

Last-modified: 2024-02-20 (火) 00:27:02

異形生物群の考察

 サンダイルの大地に生まれた生物のうち、「人間」「動植物」そしてもうひとつが「モンスター」。洞窟や荒野、樹海や谷底など人の目が届かない場所で太古の昔からひっそりと営みを続けてきたこれらの異形生物。彼らの生態と性質をより深く知ろうというのがこの項目である。

野生動物とモンスターの違い
 モンスターは世界中のありとあらゆる場所に生息しており、人間たちの住む場所からは離れた場所に独自のコロニーを作って生息している。荒野や洞窟、あるいは遺跡といった類が代表的だが、その生息地域については動植物とほとんど変わりはない。人間が少し野山に出て行けば野生動物に出くわすのと同様にして、文明圏を離れれば不意にモンスターと遭遇するのは珍しいことではない。むしろモンスターの方から人間の住処を襲撃したという事例も少なくはない。
 しかし、自然界に住む野生動物とモンスターは明らかに異質というのが人間社会における共通認識だ。彼らだけの持つ特徴のひとつ、「アニマを食べる」という術的特殊能力がなによりもモンスターの異質さを際立たせている。

外見や性質
 モンスターは往々にして巨大であり、かつ異形である。人間や野生動物を標準とするならば大型の種が多く、体色についても蛍光色を始めとした奇抜かつ特徴的な色彩や模様を持っていることが多い。性質はきわめて狂暴で獰猛、小型のモンスターでも非常に好戦的で持っている爪や牙、あるいは術的な能力を発揮して襲い掛かってくる。
 これはモンスターの種類や年齢を問わずすべてが同じ性質を持っており、人間と遭遇した場合は野生動物よりも危険な状態に陥ると言える。

モンスターの起源
 起源についてはっきりとは分かっていないが、元をたどれば動物とひとつだったという説がある。長い年月を経て一部の動物がモンスターへと変化した説、あるいは今現在いきている野生動物がアニマを失いたくないがためにモンスターへと進化・変化したという説と、その発祥についての考察は挙げればキリがない。
 ただ、モンスターや野生動物の研究はサンダイルではまだ途上であり、術やアニマの研究と比べれば人間たちは一歩にも満たない地点に居る。現在の野生動物でももしかしたら術を普段から使用できる種がいるかもしれないし、モンスターのなかにはアニマを消費せず自在に術を扱える種がいるのかもしれない。いまは存在せずとも今後出現するという可能性も高い。モンスターはまだそのすべてが謎に包まれていると言っても過言ではなく、新たな大陸が発見されればさらなる種、未知の性質のモンスターが見つかる可能性がある。

 こうしたモンスターはサンダイルの人間たちにとってはもちろん脅威だが、野生動物のなかにも人間に襲い掛かる動物は存在する。人々はその生物がモンスターだろうが動物だろうが「危険か否か」がまず最初の判断基準としている。

モンスターとアニマ

術の使用動物が扱えないほどの強力な術を使うのがモンスターの特徴のひとつだ。その威力は人間の持ち得る術の数倍の力を発揮することもあり、ベテランの術士やディガーでもあっさり術に屠られ殺されてしまうこともある。
モンスターにとっての術は獲物を倒すために洗練されているだけでなく、外敵への防衛手段としても幅広く使われている。
もっとも、同じ種族でも術の強弱や術そのものを使えないモンスターもおり、術の才能というべき差異は見受けられる。
アニマを喰うモンスターはもちろん生命体である。動物と同様に肉や野菜、あるいは土や岩などを食べるものもいるが食餌に関しては人間や動物と変わりはない。
ただし、モンスターだけが食するものとして「アニマ」がある。世界中の者が持っているアニマを食べてしまえるということで、モンスターは他のどんな生物のなかにおいても危険極まりない存在となったのだ。


生きるためのアニマ補充

全活動でアニマを消費する生物
 モンスターにとってはアニマというものは人間や動物の呼吸に近く常に必須とされるエネルギーである。というのも、モンスターは生き続けている限り自分の持っているアニマを消費し続けねばならないという生体構造をしているためである。もちろんアニマを失えば昏睡状態になるのは人間や動物と変わりはないし、昏睡とならずとも満足に捕食活動ができない状態になるのは明白である。
 そのため、モンスターはまず体内のアニマが少なくなる前に他生物からアニマを補充するということを繰り返さねばならないのだ。

 人間は術使用の際に自然物などに宿るアニマに意識を集中させコントロールすることで発現している。しかし、モンスターが術を使用する際にはまったく違うプロセスを取っており、端的に言うと自分の体内アニマを消費して術効果を発現しているのだ。
 前述のようにモンスターは自身のアニマを消費し続けて生命活動を維持しているが、術ですらも自身のアニマを使用するというのは多大なるリスクを冒しているとも言える。しかし、これは爪や牙といった腕力に頼るよりも術を使った方がより確実に獲物を捕食できるという効率の表れであると言える。

アニマを得るために食べ続ける
 生命活動と術使用とで失われ続ける体内のアニマをモンスターはほとんど常に、寝る間ですら補充せねばならない。そのために他者からアニマを奪うということになる。野生動物も人間に襲い掛かる例はあるが、これは自分たちの生活圏に人間たちが侵入してしまったり不意な遭遇に驚いたあまりに、ということがその大半であろう。
 ただしモンスターの場合はそうではなく、見境なく人間やその他の生物に襲い掛かってくる。それは文字通りの意味で死ぬ気であり、モンスターにとってアニマが補充できない状態はまさに死を意味するからこそ狂ったようにアニマを求め続けているのだ。

 これは空腹とはまったく別の感覚であり、モンスターはたとえ腹が満たされている状態でも他の生物に襲い掛かる。モンスターにとっては食料もアニマもどちらも欠けてはならない要素であり、肉食モンスターは獲物の肉から、草食モンスターは草木からなどアニマを得るためには昼も夜もなく貪欲に食し続けねばならないのだ。
 ちなみに古戦場や戦場跡地に大量にモンスターが集まることがあるが、これは戦死者から離脱したアニマを求めて僅かでも取り入れようと徘徊しているのだ。結果論ではあるが、人同士の争いはモンスターを生み出してしまう引き金ということになる。

 アニマは自然に還る、という言葉がある。死者のアニマが自然界に還っていくことがひいては安らかな死とサンダイルの人々には広く信じられている。しかし、アニマをモンスターに喰われた場合はどうなのか。それは自然に還ることもできず、自己の存在を示す証さえも失うということに他ならない。

 モンスターに屠られて死ぬということはサンダイルの人々にとっては単純な死亡ではない。存在や魂、死を超えた死である。



自然生物としてのモンスター

 モンスターは異形生物ではあるが、その生態は野生動物のそれと変わらない。強い者が生きて弱い者は消えていく弱肉強食の世界である。モンスターであってもこうした自然の摂理に則った流れに逆らうことはできない。限られた寿命のなかで子孫を残し自分が生き残っていくために全力を尽くしている。
 こうしたモンスターたちを野生動物と同じように種別化すると、容易にその分類が把握できるはずだ。


モンスターその1


モンスターその2


モンスターその3

サンダイルにおける動植物
 サンダイルにはモンスターとは別に動物も多数生息している。トラやゴリラ、ウシなどという一般的な動物もストーリー中には登場しないまでも実際に存在しているらしい。ただしそのなかでも「ギンガー」だけはサガフロンテイア2独自の動物と言えるだろう。
 ギンガーはサンダイルでは馬と呼ばれている動物だ。リスに似た尻尾と耳を持ち、体色も黄色と黒というはっきりとした色合いを持つ大型の哺乳類である。腕は退化したかのように小さいが、両脚はその腕の数倍あるほど巨大であり鋭いカギ爪が備わっている。顔つきは小動物のように可愛らしいが地上を長時間高速で走り回ることのできる性質があり、人々の移動手段であるほか軍用としても飼育されている。
 通常の馬と違って体毛も多く、巨大な尻尾や耳といった部位があるので乗りこなすのは難しいと言える。

 他にもラウプホルツでは白くて長い耳のついた生き物のぬいぐるみが売られている。モンスターがモデルではないとすればこれもサンダイルにいる動物の一種と考えられなくもない。


各大陸におけるモンスター

 サンダイルの世界にいるモンスターは大別すると二種類が存在する。
 人間や野生動物と同様にして自然流れに沿う形で生活し、肉や野菜といった食事をしながらアニマも捕食するタイプのモンスター群と、生き物ではないアンデッドに属する死の象徴を帯びたモンスター群だ。系統別にこれらのモンスターをひとつずつ解説していく。


各地域のモンスター特色

自然生物群

 森や草原など、人間や野生動物とほとんど変わらない地域に生息しているモンスター。その生態もモンスターであるという以外はほぼ動物と変わりはなく、子を成して乳を与え育ち、やがてつがいとなって新たな命を宿すというサイクルもまったく人間や動物と違いはない。容姿こそはそれぞれが異様な時もあるが、おおまかな枠では種類と系統が容易に分類できるのも自然生物群に属するモンスターの特徴といえる。

哺乳類系モンスター

 脊椎動物と同じ骨格や体組織を持っている哺乳類に近いモンスター。ただしそれは分類上であり、筋力や知能の類は野生動物の比ではない。特に筋力に優れている個体は多く、大型の哺乳類系モンスターは本能的に戦闘能力における体組織が秀でているため野生動物と混同するのは危険である。
 外見は野生動物に近いものもいるが、生物として肉体の均衡が崩れているものや様々な動物が混ざり合ったようなものまで幅広いが、すべてにおいて言えるのは爪や牙、角といった部位が防衛のためというよりもいかに獲物を効率よく傷つけて絶命させるかに特化されているということ。見境なく襲い掛かる習性が強い狂暴な種が多い。

捕食法肉食や草食、雑食など多種が存在するのは野生動物と同じ。哺乳類系モンスター同士では弱肉強食が常であり、普段から強いものがより強いものに屠られるという生態系で成り立っている。
繁殖法複数のオスがメスをめぐって熾烈な争いを繰り広げる。野生動物でも同じ習性の種はいるが争いの規模はその比ではなく、付近にいる他の生物がとばっちりで大怪我または死亡するなどの大激闘に発展することが多い。当然、モンスターである以上は人間を恐れる性質は無いので近くに人間が寄れば神経の高ぶったオスたちの格好の餌食にされてしまうことも。
生息地サンダイル各地、寒冷地や乾燥気候も含めて比較的どこでも生息している。特別どこかの地域に集中するということもなく、流動的に生息地を変えるものなどもいる。樹海やロードレスランドはやや種類が豊富。


哺乳類系モンスターの特徴的な生態
 野生動物においては冬季に生命活動を低下させ冬眠という形でエネルギーの消費抑制と生命力の保持に努める種がいるが、モンスターは寝ている間でもアニマを消費してしまうので冬眠という概念は持たない。基本的には群れや家族という団体では生活せず一匹の状態で単独で生活しており、住まいも獲物を求めて転々と変化させていく。
 ただし小型の哺乳類系モンスターの場合は集団で狩りをするほうが効率が良い場合はチームを作る場合があり、それぞれに役割を決めて獲物を追い詰める、または攻撃するなどと統率の取れた連携プレイを見せることも。
 代表的な哺乳類系モンスターは以下の通りである。

森の番人実際に正式名称は持たず、発見報告も少ない珍しいモンスターである。外見は猿もしくはオランウータンを連想させるがそのサイズは人間の数倍。樹海での発見がそのほとんどであり、時折樹海の深部から恐ろしい咆哮が聞こえたらそれはこの森の番人の発したものだと考えられている。
ホーンバファロー外見は牛に似ているが、筋肉の量だけでなく身体の全長よりも長い前面に突き出た三本の角が特徴的な哺乳類系モンスター。角は太さも鋭さも人間の持つ剣や槍とは比較にならず、大型生物でさえ一突きされると場合によっては即死してしまうほどである。
砂親父特徴的な名前を持つ巨大なモンスター。全身の皮膚が岩石のように硬く、特に顔面および背中から四肢にかけて装甲のような外皮が覆っておりさながら重戦車である。名前の由来は硬質化した皮膚が剥がれ落ちる様が砂に似ているというところからきている。
ガルム赤い体毛と皮膚を持つオオカミのようなモンスター。野生動物のオオカミと違うのは顔の上下左右に角のように見えるタテガミが逆立って生えていることであり、牙も通常のオオカミよりも数倍ほど多いうえに大きい。またこのモンスターは闘争本能が高まるとアニマの影響で尻尾が燃えるという特徴があり、炎に関係するモンスターに分類されている。

飛行タイプの哺乳類系モンスター
 陸上に生息するモンスターのみが哺乳類系モンスターではなく、空を飛ぶことに長けた翼を持つ種類のモンスターもいる。といっても長距離を飛行できるほどの能力はないが、音もなく高空から颯爽と襲い掛かる様は猛禽類と同じ捕食方法といえる。

グリフォン身体は獅子、頭は鳥という合成魔獣のような外見のモンスター。翼は背中ではなく頭部のクチバシの付け根から伸びているという風変わりな姿でもあるが、獅子の胴体由来の鋭いカギ爪と鳥にしては異様なまでに鋭く長いクチバシの両方を武器として襲い掛かる。巨体ではあるが筋肉が発達しているため飛翔能力も高く、言うまでもなく強敵に分類されるモンスター。
エンプーサ妖魔に似たコウモリに類するモンスター。腕部にはコウモリの翼のような形状の被膜が張っておりこれを利用して飛行ができる。ただし長距離や長時間の飛行はできずあくまでも補助的な飛行および滑空のみであり、通常は腕部を使って地上を歩行する。

虫系モンスター

 節足動物に類する昆虫類のような外見や特徴を持っているモンスター。総じて脊椎は持っておらず、頭部、胸部、腹部とに部位が分かれている。このモンスター系統では輪形生物、腹足類の軟体動物も属しており、外見だけで言うならば昆虫に近いものも多数存在する。ただしサイズは人間と同等もしくはそれ以上であり、野生の昆虫類の大半が人間を恐れているのと比較するとアニマを求める本能がゆえに好戦的かつ狂暴である。
 平均寿命に関しては昆虫類と同様に短めであり、寒冷地では動作が鈍るなどするために近寄らないものが多い。

捕食方法肉食がその大半。野生動物や人間もその餌食であり、積極的に捕食活動を行うさまは昆虫類が自分より格下の獲物を捕らえる時とほぼ一致している。ちなみに昆虫類では一部罠を利用して獲物を捕獲するものがいるが、虫系モンスターにおいてはアニマの確保が優先であるためか自ら行動して狩りをするものが多い。
繁殖法平均寿命が低いため短い期間で大量の卵を産む。アリ型のモンスターの場合は実際のアリがそうであるように女王となる存在がいるとされるが、大陸に一匹だけしか居ないという説がある。
生息地亜熱帯気候の地域に多いが、乾燥に強い種は砂漠や荒野でも生息している。一方でヴァイスラントなど寒冷地ではほとんど見かけられない。北大陸に多いのはメガリスの影響があるせいでもある。


虫系モンスターの特徴的な生態
 それぞれが巨体を持つためか、翅を持つ種のなかには海を横断するほど長距離を力強く飛び続けるものもいる。水中生活に適応したものや草木に擬態するもの、美しい音色でメスを誘い出すものなど、性質は昆虫類とほとんど変わらない。代表的な虫系モンスターは以下である。

ハウスキーパーカタツムリに似た外見を持つが、殻はタテではなくヨコになっており引きずって移動する。サイズも巨大であり、カラの上に大人が三人は座れるほど。この殻は防御用というよりも体組織のひとつであり、特に硬質というわけではない。名前の由来としてはこの殻を家と見立てて移動しながら生活する様子を表している。
ランドクラーケンクモの姿をしたモンスターだがやはり大きさは巨大。また頭は複眼ではなく単眼だが胴体部分に複数の目があるなど形状もクモのそれとは違ってより不気味である。脚部に節はなく、軟性のある動作をする。昆虫のクモとは異なり巣を作って獲物を捕獲するなどの習性は見られない。
アント類アリに似たモンスターで、翅があるものや無いもの、土を切り分けたりなにかを運んだりするものなど様々な種類が見られるモンスター。それぞれは人間と同じくらいの大きさだが集団生活をしていることが多く、非常に統率の取れた機敏な動きで獲物を狩る。
タイガービートルカブトムシもしくはクワガタムシに似たモンスターで、硬度の高い鎧のような甲殻に覆われている。サイズも巨体かつ筋骨隆々。頭部についているハサミは様々な用途に使われており、時には自身の数倍の大きさの獲物も難なく持ち上げてしまう例も。

アリたち
 北大陸の奥地には虫系モンスターが多く徘徊しているメガリスが存在している。この北大陸はいまだ人の手が入ったばかりの未開の地であるが、それでも虫に類するモンスターの比率は高く、狂暴性も他の地域の虫系モンスターよりも強い。
 理由としてはメガリスの影響をモロに食らったのがこの虫系モンスターであり、数少ない報告例によれば通常の昆虫類もメガリスの影響を受けて虫系モンスターに変異してしまう事例も確認されている。
 メガリス深部では周囲を埋め尽くすほど大量の虫の卵が安置される部屋や人の数倍以上のサイズらしい巨大幼虫の繭がある空間も存在する。繭のなかで眠る幼虫はまだ成長段階であり、これ以上の大きさになってやがては孵化を迎えることだろう。
 もともとが昆虫類は人類誕生の古来から独自の進化を遂げ続けてきた生物であるためか、モンスターとなってもその特異性は顕著であるようだ。

植物系モンスター

 サンダイルの世界では草木が自発的に動き回ること自体はさして珍しい光景ではない。一部の植物に限定されるが、太陽光や水が枯渇すると移動可能な機能を持つ身体の部位でごく短い距離を移動して必要なエネルギーを蓄えようとするのだ。
 しかし、モンスターともなるとその移動機能は格段でありほとんど動物と変わらない距離を自由に歩き回れるものも多く存在する。さらに必要な養分を入手するという目的はアニマを持つ者を狩るという捕食活動に変換されており、どれもが狂暴で攻撃性が高いものばかりである。
 ただ他の動物との違いというと、感情(何かに怯んで慎重になるなどの精神活動全般を含む)を一切持っていないという点だ。また体組織に筋肉というものも存在しないが、なんらかの神経を用いて獲物を掴んだり攻撃したりするということは可能であるらしい。生態的に葉らしき部位を持つものが多いが、これは腕もしくは脚として利用されているのが大半。なかには毒素を持っているものもいる。

捕食法生物の体液からアニマを吸収するというのが一般的。ただし水と光とそこから得られるアニマだけでも活動は可能である(やや動きは鈍る)。なかには食虫植物のように生物の肉を直接屠る種もいる。
繁殖法種子、あるいは胞子から植物として成長を開始し、ある程度の大きさを得た時点でモンスターとして動き回る。ひとつの植物系モンスターが複数の種子をつくることができ、苗床はアニマの豊富な場所が選ばれる。
生息地世界各地に生息している。驚いたことに水の少ない地域でも活発な活動をしており、しっかりと乾燥にも適応している。ただし寒冷地には生態が合わないためか見かけられない。森林地帯や樹海など、元来から植物が豊富な地域には特に数が多い。


植物系モンスターの特徴的な生態
 樹や草、種などの容姿をしているのが最大の特徴といえる。一説では数十年からそれ以上という長い期間を使って大移動をする大樹の形のモンスターもいるとされ、いまだその全貌は明らかになっていない。巨体を持つ植物系モンスターは他の生物を捕獲してアニマを得るというより、地に根を張るなどして周囲のアニマをゆっくりと取り込んでいくという性質のものもいる。そうした性質がある植物系モンスターはアニマの捕食意識が比較的穏やかであり、場合によっては好戦的でない種がいるのも特徴だ。
 ラウプホルツ近郊においては周囲の環境に合わせて紅葉する種もいるという。

悪魔草と種子草型と種子型のモンスター。種子、草ともにどす黒い紫色をしており、目玉のように見える模様がある。種子はまだ小粒だが草は人間の子供の背丈くらいはあり、三方向に牙の生えた口のような葉を伸ばしている。種子は短時間であれば浮遊することもでき、種子の状態で捕食活動も行う。
グラスダンサー一見すると可愛らしい小人のように見えるモンスターだが、幼生のうちに特定の木の実に寄生し内側を食い破りながら成長するという寄生種タイプのモンスター。あくまで木の実をアニマの主食としているためかさほど好戦的ではないものもいるが、モンスターであることに変わりはない。
マンドレイク草およびそこから伸びる根で徘徊するモンスター。音波による術を得意としており、これは葉の一部が特殊な網膜となっていて振動させることで高周波を発生させるという仕組み。樹海など草木の多い場所では周囲の植物に擬態することもある。
ポーレン鮮明な赤色の傘を持ったキノコのモンスター。菌糸を束ねて腕や脚として利用しており、その先端は指というよりも触手のように無数の軟体筋が蠢いている。傘のすぐ真下にひだに隠れるように単眼が備わっており、これで獲物を確認して襲い掛かる。
ランドアーチン一輪の花をまるで逆さまにしたかのような不思議な姿をしているモンスター。頭と思われる部位はトゲ状の突起が無数に生えており、一箇所だけ赤い目が覗いている。攻撃の際にはこのトゲ頭で相手に頭突きをするなど意外とパワータイプの技を持つ。素早い移動を可能としているのは下半身の花びらの裏にある無数の触手運動による。

水棲系モンスター

 両生類または爬虫類のような容姿を持った、主に水辺に生息しているモンスター。とはいえ常にアニマを補充せねばならないモンスターとしての行動範囲は一地域という狭いままでは生きていけないようで、完全に水から離れて生活している種がそのほとんどである。なかには乾燥地域や森林地域など幅広い場所でも生態が確認されており、いまだ謎が多いモンスターとも言える。
 ただしこうした水棲系モンスターも淡水型と海水型という明確な違いだけは備わっているようで、淡水もしくは海水でしか生きられないものがきっちりと区分けされている。こちらも時折、水質の順応に成功した種を見かけることがある。

捕食法両生類と爬虫類で様々な形状の種がいるために捕食法はそれぞれで異なるが、自分の身体の部位のいずれかを使って捕らえるという点では他のモンスターと変わらない。水棲系モンスターの唯一の特徴は水辺で獲物を捕獲した際は水中に引きずり込むという性質であり、獲物は爪や牙で死ぬより先に窒息死するということが多い。
繁殖法ほとんどが卵からの孵化である。ただし水棲系モンスターの親は虫系モンスターのように安定した土壌では出産しないことが多いためか、幼生のうちに他の野生動物などに食べられて死んでしまう種も多い。脱皮を繰り返して成長し、より巨大かつ狂暴な性質を帯びていく。
生息地そのほとんどは海、川、湖や沼といった水場となるが、それ以外の地域でも多く生息している。実際に海洋にもモンスターは生息していると思われるがサンダイルの現状では研究調査され切ってはいない。


水棲系モンスターの特徴的な生態
 水棲系モンスターで特に危険な種としてアンカーヘッドというものがいる。これは一見すると小型の魚のようで、人間の膝より下くらいの大きさしかないが捕食方法が特殊であり、獲物に食いつくと肉を食い散らかしながら体内に侵入するという性質がある。アンカーヘッドという名前の由来でもあるその外見も矢じりのように絡みついて獲物を逃さないような構造をしている。
 そのため獲物とされた生物は体内への侵入を許してしまうと内部から一気に食い尽くされてしまい、一瞬で絶命してしまう。もしも途中で摘出するとした場合でも素早く切断するなどして分離させねば即死は免れない。

アーマーン頭部はワニのような形状で鋭い牙が無数に生えた口がひと際存在感を放つ。一方で下半身は魚のようにヒレがあり、ワニのような手足は見当たらない。水中はもちろん土中にも生息でき、土を掻き分けて移動することも可能。
スレイヤー「殺すもの」という仇名をつけられたモンスター。全身が鎧のような甲殻に包まれており、身体よりも巨大なハサミの形の両腕を持つ。動きも素早く、人間程度ならあっさりと真っ二つにできるほどの腕力も合わせ持っているため、出会いがしらに何も分からないうちに殺されてしまうという例もある。
アンカーヘッド他のモンスターと比べると非常に小型なので油断しやすいが、前述のように矢じりの形の胴体のまま突撃してきて獲物を食い散らかす極めて危険で狂暴な種。海に多く生息するため、船員たちの犠牲者が後を絶たない。
魚人名前の通り、まるで魚が二足歩行したかのような外見の水棲系モンスター。脚にあたる部分はヒレがついており、人間ほど機敏には歩けないがそれは陸上での話。水中では素早い動きで泳ぎ回ってあっという間に獲物を捕食してしまう。
ドローレムかろうじてイカの形と見えなくもない水棲系モンスター。頭の上に帽子のように伸びた体組織があり、内部が透けて見える。ここには成分不明の液体が充満しており、外見と相まって不気味なモンスターである。
ダートホッパー鮮やかな緑とオレンジ色の目を持つカエルのモンスター。大きさは人間の大人と同程度である。カエルのように跳躍力を武器に襲い掛かり、長い舌を使って攻撃または捕食を行う。ただし捕食よりもどちらかというと舌は殴打などの武器に使われているようで、威力が高いことから舌顎筋が非常に強力なことが分かる。

海
 海洋のモンスターはストーリー中ではそこまで多く登場しない。しかし、海という場所は他の動物にも言えるが無限の可能性が秘められている。魚類のようなモンスターはもちろん、タコのような無数の脚を持つ軟体モンスター、海藻や珊瑚などに似た形状のモンスター、あるいはクジラほどの大きさを誇る超巨大なモンスターも生息しているかもしれない。
 海洋はモンスターなど生物が進化する地域として巨大化になりやすい性質があるようで、総じて陸上のモンスターよりも巨体を持つ種が多いのが特徴と言える。特にもともとが決まった形を持たないスライムなどは人間の船よりも巨大なものも確認されている。それ以外にも超巨大な大型海洋生物については生命の木の島近海などで幾つもの目撃例がある。
 サンダイルの世界においての航海は嵐や遭難よりもこうした海洋モンスターとの遭遇こそが最大の危険とされており、海で生活する男たちはまさに死と隣り合わせの稼業といえるだろう。
 人々の間にのぼる噂でも海洋での巨大なモンスターの話から嵐や大風を引き起こすモンスター、島よりも巨大なモンスターなどと幅広い目撃例が飛び交っている。実際にそれらすべてがモンスターという確証はないまでも、海という場所が謎の生命で満ち溢れているのは言うまでもないだろう。

鳥類系モンスター

 外見は鳥と非常に似ている翼を持ったモンスター。同じ翼を持つモンスターでもグリフォンなどの一部は哺乳類系モンスターに分類されるが、より高空域を長距離かつ長時間飛行できる種は鳥類系と分類される。山岳地帯がその主な生息地だが森や洞窟、遺跡など室内空間にも出現し、自由に空を飛翔して獲物を捕らえることを得意としている。なかには空を飛ばない個体も存在する。
 鳥類系モンスターは実は全体数が非常に少ないという特徴があり、理由としては飛行能力を得た代わりにエネルギー消費がそれだけ多大化してしまい、結果として他のモンスターの倍以上のアニマを必要としてしまうという生体構造に起因する。飛行により獲物の捕獲が他のモンスターより容易になったかというとそういうわけでもないようで、人間や野生動物の防衛手段の前に狩り失敗もままあることのようである。そのため、代を重ねるごとに翼は退化し地上での生活を主とするようになった種や実際に哺乳類系モンスターとなってしまった鳥類系モンスターも幾つか存在する。

捕食法野生動物の猛禽類よりも優れた視覚を持ち、遥か高空や高台などから何百メートルも離れた場所の獲物すらも確認して風のように素早く飛翔してかっさらうという狩りを好む。翼を持つものは主に肉食が多いが、退化し地上で生活するようになったものは草食であることが多いようだ。
繁殖法鳥類と同じく、巣作りをして卵を産む。幼生は親が保護するものが多いが、産むだけで放置するという種もいる。孵化した雛は即座に飛行が可能となり、教育を受けずとも捕食活動を開始することができる。巣は他の生物が絶対に近づけない超高所などに作られる。
生息地全体数が少ないためにサンダイル全体でもそこまで多くの地域では見かけられない。山岳のほか、木々の多い森林地域などには生息が多いようだ。また他のモンスターはあまり生息していないヴァイスラントなど寒冷地でも見かけることがある。


鳥類系モンスターの特徴的な生態
 長時間の飛行が可能というのは他にはドラゴンしか同特徴のモンスターは存在しないため、アニマ確保の苦労が時にはあるとはいえ他に競合相手がいないという意味では狩りだけでなく防衛、生活に幅広く活用できる特徴といえる。なかには短距離であれば音速を超えて飛行できるものもおり、単体でも大陸をいくつも横断できるなど移動力に秀でている。

ペッグ翼が退化したタイプの鳥類系モンスター。外見は巨大なアヒルかヒヨコを思わせる愛嬌のある姿をしており、奇抜なピンク色などのものが多い。なかには飛行のできるペッグも存在するがそれは全体の半分にも満たず、大半は地上を生息地として草類からアニマを得て生きている。

原生生物モンスター

 原生生物というのはいわゆるアメーバやプランクトンなどの単細胞および一部の多細胞生物であり、それらと類似した姿のモンスター。といってもサイズはそうした菌類の比ではなく、人間の数倍の大きさの原生生物モンスターが通常である。
 外見は一定化した形を持たず、目や鼻、口といった器官も一見した限りでは見つけることができない。軟体生物というよりは粘性の強い液状であり、手足などは存在しない代わりに壁面や天井面にぺったりと張り付くことを可能としている。ごく小さな虫しか通り抜けられないほどの隙間をあっさりと通り抜けたり、人間が意識しないようなレンガの隙間や木目の間などに潜んで獲物を付け狙う。
 とはいえ思考回路や感情、痛覚、さらには脳髄すら存在するのか疑問であり、生体構造含めて一切が謎に包まれたままのモンスターである。熱に弱い、打撃系の攻撃は受け流してしまうなどの特徴こそはあるが、切り離して分離した部位がやがて死滅する理由やプロセス、また生殖活動をしないが大元となる原生生物モンスターはどのようにして発生したのかなども不明である。

捕食法獲物に不意に襲い掛かり(多くは天井や隙間など、獲物にとって死角になっている場所から)、絡みついてから肉を溶かすようにして食事とする。探知する器官については謎であり、眼球的な器官が見当たらないので視覚以外の聴覚や嗅覚、熱探知などの説がある。
繁殖法原生生物モンスターがある程度大きくなると段階を経て分裂し増殖する。大きさについては分裂元となった原生生物モンスターと大差ない。陸上のものと海洋(水場)のものとでは大きさが異なり、陸上の種は比較的小ぶりである。
生息地乾燥地を嫌い、湿気のある洞窟や樹海のような場所に多く見られる。もともとが正体不明に近いモンスターなので発生する原因も分かっておらず、少し前にはまったく見られなかった地域に不意に大発生するということもままある。


原生生物モンスターの特徴的な生態
 他のモンスターには見られない原生生物モンスターだけの特徴として「他のモンスターの攻撃方法を真似る」というものがある。何かしらの攻撃手段を取る時にほんの一瞬だけ別のモンスターに自分の身体を変化させるというのが原生生物モンスターならではといえる。
 これは彼らが捕食した生物の記憶や特徴を断片的ながらも継承できるためであり、いわゆるコピーとして自分の狩りの補助に役立てるという生態によるものである。なかでも虫系モンスターのハウスキーパーはよく利用されているコピー元であり、原生生物モンスターにとっての主食であるのではという考察がされている。

スライム単細胞・多細胞のどちらの特徴も持っている不可解極まりない原生生物モンスター。中心部と思われる部分にオレンジ色に発光するコア的なものがあるが、他はすべて粘性の高い液体で構成されておりまるで水たまりのように地面や天井にへばりついたり川のように流れて移動したりする。

ドラゴン

 ドラゴンとして分類されているモンスターは他のどのモンスターとも似ていない様々な特徴があるため、本項では特別に解説していく。
 サンダイルの人々でもドラゴンとされるモンスターを見たことがある者はごく僅かであり、いずれも一部の手練れディガーによる報告しかない。それ以外の目撃者はあるいはドラゴンを見た瞬間にその爪やブレスで絶命してしまっているのかもしれない。他のどのモンスターとも類似していない異形爬虫類のような外見と空を覆うほどの翼、鋭い爪や尻尾といずれの身体の部位も人間や野生動物、他のモンスターにとってすらも脅威だ。

 大型の有翼爬虫類というだけでもじゅうぶんにモンスターたらしめる存在感を放つドラゴンだが、実際にはどのような生態があるのかは他のモンスター以上に何も分かっていない。そもそもアニマを必要とするのか、それとも別のエネルギーを得ているのかの一切が謎である。
 それはサンプルとなるドラゴンの捕獲を誰も考え付いたことがないほど狂暴かつ危険な存在であるからであり、幼生ですらもモンスターとの戦闘に慣れたディガーや冒険者でも歯が立たないほどに戦闘能力に極めて秀でた種であるためだ。
 あくまで他を屠るという意味ではあらゆる生物のトップに君臨している生物、それがドラゴンである。

生態の推測および現存しているドラゴン種

 僅かでもドラゴンについて調査されつつある部分から言えば、まずあくまでも「生物」であるということ。したがって寿命というものが存在し、一定の年数を経た個体は老衰し死に至ると思われる。爬虫類の特性が強いのか卵生であり、親は卵を産むというのが一般的な見解だが、全体の個体数の少なさから考えれば他の卵生モンスターのように産みっぱなしではなく、親は卵が孵化するまで常に保護し他の生物を寄せ付けないと思われている。
 食事に関しては体形や生体から見れば肉食であるのが濃厚だが、ディガーたちを含めて食事をしているドラゴンを見かけたものがいまだかつて存在していない。さらに言えば人里に現れて人間や家畜、穀物などに襲い掛かったドラゴンというのも歴史のなかでは皆無であり、人々はドラゴンという存在には恐怖というよりも畏怖、畏敬を抱いているというのがサンダイルの実情である。
 時には天空の遥か彼方にドラゴンのような影と翼を持つ巨大な生物を見たという人々の噂もあり、恐ろしさに震えるというよりもその美しさについてが詩人たちの間でも語り継がれている。

 現在報告されているドラゴンは幾つかが存在するが、伝承のなかで語られる個体より遥かに狂暴で術的な特殊能力も含めれば多彩な攻撃技を持つということ。ヴァイスラントや古戦場、ラウプホルツ近郊にあるとされるグールの塔など限定された場所、地域に僅かな個体が生息している。メガリスとの関連も深いと思われ、メガリスにあるアニマを得て巨大化もしくは変異化したドラゴンもいるという説がある。他のモンスター同様にメガリスによる影響を受けやすいのはドラゴンも変わりはないということだろうか。

ヘルウインガー赤い翼を持つ有翼爬虫類だが、報告例にあるのは幼生のものだけである。それでも人間の大人の数人分のサイズはあり、また苦も無く飛行も出来ていたということで鳥類系モンスター同様に孵化後すぐ飛行可能になる可能性もある。
ブレス攻撃こそ確認されてないが、高所からの突進やなんらかの身体の部位を使っての振動波を発生させられるようだ。
ポーラドレイク氷点下の環境でも耐え得る身体の小型ドラゴン。大きさは人間と同程度しかないがより飛翔能力に長けており、信じられないほどの高所から一気に飛び降りての突進を得意とする。小型のモンスター特有の性質であるのか群れを作る場合もある。
特徴的な攻撃として氷のブレス攻撃があり、これはヴァイスラントなどの寒冷地気候により体質が変化し得た技と思われる。体内で作られた冷気を相手に一気に吹きかけるという攻撃は術とは違った強力な威力を持つ。
フィンドスレイヴ幼虫を思わせる下半身と蛇のような上半身、さらに背中に二対の被膜翼という不気味な外見のモンスター。目は退化しているがなんらかの器官で獲物の位置は把握できるらしい。唇が異様なまでに大きく、これは攻撃にも利用される。爪や牙などの部位による攻撃よりも術に秀でた性質があるらしい。
ドラゴンと分類するには難しいモンスターだが、爬虫類を思わせる部分が身体の比率的に多い。今後の研究が望まれるモンスターである。
メガリスドラゴン身の丈数メートルの巨体を持つ赤みを帯びたドラゴン。翼はあるがあまりの巨体なためか飛翔能力はそこまでは持たないようだが、爪の長さだけでも人間ひとり分はあるかと思うほどの巨大さで立ち塞がる。繰り出す攻撃のどれもが致命的であり、この姿を見て生きて帰れたディガーは数少ない。
実際のドラゴンとして伝えられているものとは外見に相違があるが、メガリスの影響で外見及び体内が変異してしまった可能性も大いにある。


化石群とドラゴンの骨

 いまだ未開地が広がる北大陸では日夜ディガーや開拓者たちにより新たな地域が切り広げられているが、自然がそのままの形で残っている奥地ではメガリスを始め多数の自然洞窟が存在している。サンダイルの歴史でもいまだ人跡未踏の地であるこうした洞窟の一部には遥か太古、あるいは人類誕生よりもさらに古代に生きていたと思われる巨大な生物の化石群が眠るところがある。

 まるで人の歴史から、そして世界からも隔離されてしまったかのようなこうした化石のなかには野生動物とは言い難い巨大な爬虫類も多く散見されている。これがドラゴンなのか、それともまったく別の生物であるのかは不明である。
 周囲には通常のモンスターも多く非常に危険な地であるためかディガー以外の人間が訪れることは死を意味するが、だからこそいまだ研究に至っていない多くの化石が眠ったままになっている。それぞれの化石の正確な年代や実際にどんな生物だったかの再現はこれからの考古学者に任せるほかないだろう。

 ディガーたちからの報告によれば生物の化石は爬虫類の特徴は多く見受けられるも、現在報告されている他のモンスターやドラゴンと比較してもあまりにも巨大であるということ、そして角や翼、手足の形状が現在のドラゴンと違いがあるという。特に翼に関しては現在存在しているとされるドラゴンとは大きな違いがあり、腕が変化(腕そのものは持たない)して翼という形状になったらしい爬虫類の化石が主体である。ドラゴンであれば手足とは別に独立して翼が生えているのが現在確認されているものでは一般的であり、骨格の違いもいくつか見つかっている。

洞窟 北大陸に点在する化石が眠る洞窟にあるのはドラゴンと思わしき生物の骨だけではない。幾つかの節足動物、巻貝などを始めとした貝類、魚類らしきものなど、海から遠く離れているはずの北大陸の奥地であるにも関わらずこうした海洋生物らしき生物の骨が多数見つかっている。さらに言うとこれらはすべてが超巨大であり、どれもが人間が一抱えするほどのサイズからなかには数十メートルにのぼる化石も確認されている。
 これらが実際に海洋生物であったのか、そしてモンスターであったのかどうかはいまだ謎であり解明が待たれるが、人類誕生よりも前にこうした巨大生物がサンダイルのみならず世界各地にて当然のように生きていたという時代があったというのは想像もできない。
 今後、北大陸奥地はさらなる開拓を待ち受けるであろうが、どのような化石が見つかるのか、そしてまだ現存している古代の生物がいるのかは期待していきたい。


非生物群

 自然生物群のモンスターとは対照的にアニマの作用などで発生した非生物とされるものたち。本来の生態系とはまったくかけ離れた存在であり、この世に存在していること自体が謎でしかない。それぞれが「産まれて成長する」という概念は持たず、自然発生的に現れてサンダイル各地を闊歩し獲物に襲い掛かり人々の脅威となっている。こうした生態であるためにあえてモンスターという分類にされているが、根本的に人間の考えも及ばない存在あるいは物体であるため研究には時が掛かる生物である。

発生の仕組み
 おおよそ現在で判明していることをまとめれば、発生条件についてはアニマが大きく関わっているということ。通常、アニマというものは人間や野生動物、あるいは自然生物群のモンスターも所有しているものだが、それらの死によって自然に回帰するというのが一般的な見解でありサンダイルでは信じられているプロセスだ。
 しかし、一人の死亡ではたいしたアニマも離反しないとしても、事故や自然災害で一度に多くの人間が死亡するなどして大量のアニマが肉体を離れた場合はどうなるか。特に戦争での死者は立て続けになることがほとんどであり、サンダイルの歴史では他者を他者が攻め滅ぼすという時代があまりにも長かった。
 こうした大量死が多いと肉体から離反したアニマは大混雑の末に行き場を失ってしまい、自然に回帰するということができずにそのまま大気中に留まってしまう。アニマは回帰できない場合は空中を自在に浮遊する一種の霊のようなものになってしまい、他の生物の死体に入り込むことが可能になる。特に生への念が強いものや恨みや憎悪を抱いて死んだようなもののアニマはこうした漂流アニマになりやすいとされるがここはいまだ解明されてはいない。

 死体に入り込んだアニマはそれだけで死者として蘇ることになりアンデッド系モンスターとして分類される。さらにこうした漂流アニマが多数集うと依り代となる死体がなくとも巨大集合体として意思を持って動き出す。遺跡や霊廟、墓地や廃墟といった人の手が離れた場所やそもそもが死者と関わり合いが深かった場所ではこうした集合体が発生しやすいとされ、霊体モンスターや未知モンスターが発生する温床となっている。
 漂流アニマは地上だけでなく海洋にも漂っており、これらはモンスター以外の生物に殺されたり海難事故などで死亡した船員たちのアニマが主体と思われる。こうしたアニマも寄り集まって霊的集合体となりモンスターと化していくのは同じである。

非生物モンスターの生態
 他のモンスター、たとえば植物系モンスターや原生生物モンスターも感情や痛覚などの感覚は持たないとされているが、こうした非生物モンスターはそれらに輪をかけて感覚を失している。というよりも、人間における五感という一切を持たないと思われており他生物の知覚に関してもアニマの有無だけで判断している節がある。単純にアニマが入った器、つまり物質に近い存在ということだ。

 食事に関してはエネルギーとしての食事は一切不要であり、空腹なども感じない。疲労や苦痛も持っておらず生体的な活動の限界を超えて動き回ることが可能。ただしアニマの補充は他のモンスター同様に必須であり、アニマを得るためだけに他生物を餌食にしている。このアニマのための捕獲は同種でもある自然生物群モンスター相手にも行うことが通例であり、獲物とされたモンスターも応戦するために群の違うモンスター同士で争うという光景も時折見かけることがある。非生物モンスターの動力は漂流アニマであり、このアニマはモンスターを含めた他の生物とは似ても似つかないアニマであるために相容れることはない。
 非生物モンスターの死というものは存在しない。肉体である器が破壊されると中に入っていたアニマは霧散し一時的には活動停止状態となるが、散らばったアニマは時間をかけて再び統合されてやがて意思や形を得る。それらは暗澹な場所に流れ流れて澱みを作り、再び別の非生物モンスターとして蘇るのだ。

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 ラウプホルツ近郊には死者の塔、またの名をグールの塔などと呼ばれている遺跡風の建物がある。建設者や時代は不明とされているが、ここには多くの死者に類したアンデッド系モンスターが確認されている。さらに言えばこれらのアンデッドは他の地域で見られる同種とは異なり、アニマではなく食事目的として他生物に襲い掛かったり肉体機能が残っていたりという特徴が見られている。中には会話能力を持っているものすら報告されている。
 どうやらこの死者の塔に住まうアンデッドたちは漂流アニマが死者の残骸に取り憑いたという一般的な発生方法とは異なり、生きた人間がそのままアンデッドへと変化しモンスター化してしまったものたちらしい。そのためにまだ人間らしい部分が残っており、アニマも本人のものが残り続けているが肉体は朽ち果てて腐り始めているという特殊なケースとなっている。
 時間が経てば人間としての記憶や機能は失われてやがては他のアンデッド系モンスターと同様になると思われるが、本来のアニマは永遠に死した肉体に留まり続けて二度と自然に回帰することはない。


非生物モンスターと人間たちの意識
 非生物モンスターは珍しい存在ではないが、サンダイルの人々からは自然生物群モンスターとは異なった観点で扱われ、感じ取られている。なかでもグールを始めとしたアンデッド系モンスターに関しては宗教的な観点を持つ人間は多く、これらのアンデッドは人間の霊がアニマ以上に関わっているという説がある。外見が人間のような姿をしているからというのも理由としてあるが、「悪いアニマ」というアニマの種類を当てはめて考える人が多いようだ。
 この悪いアニマはなにかというと、自然界に回帰できなかった漂流アニマのことを指している。行き場を失って骸骨や死体など生物の残骸に取り憑いた悪いアニマがやがて残骸を動かし、あたかも死者が蘇ったかのような状態にさせると一般的にも考えられているのだ。洞窟や地下道など空気の流れが著しく悪い場所では同様にして大気が澱み、アニマの循環も悪いと考えられる。単純にこうした視野の効かない暗がりという場所は光からの視界がその主な認識方法である人間にとっては太古の昔から恐怖が付いて回っていた。
 こうした土台もあってアンデッド系モンスターは「悪いアニマの具現化した姿」として他のモンスター以上に畏怖を込めて恐れられているのだ。

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 亡くなった故人を想う。そんな気持ちすらも行き過ぎてしまうと執着や因縁となり負の感情にすり替わっていく。生者の抱いたこうした負の感情がやがて悪いアニマを呼び込んでしまうと信じられているサンダイルでは死者を思い続けるという行為すらも時にはタブーとされているのだ。


アンデッド系モンスター

 アンデッド系モンスターと呼ばれるものは大別すると二種類に分けられる。

屍肉モンスター
 すでに生命活動を終えた肉体に他の場所で行き場を失ったアニマ、いわゆる漂流アニマが入り込んでまるで操り人形のように動作しているに過ぎないモンスター。肉体と思える部分は器でしかなく、したがって痛覚を始めとしたすべての感覚が無であり感情や意識、思考も概念的に持たない。本当にただ動いているだけのアニマを持つ物質のような存在である。
 まだかろうじて機能できる肉体の一部もしくは全部が残っているためか漂流アニマが比較的弱いものでも取り憑くことが可能であり、動作も人間などの生物同様とはいかなくとも残っている筋肉を多少でも利用できる。他の肉体機能は死骸の状態に左右され(腕を失っている死骸に取り憑いていれば腕部位は使えない等)、実際の人間や生物とはかけ離れた挙動を取るが全身は常に腐敗を続けている。
 やがて朽ち果ててアニマともども消滅を余儀なくされるが、それまではたとえ部位のどこかが損壊したり破壊されていてもアニマの力で動作そのものは可能となるので獲物を狩るには不自由しない。

骸骨モンスター
 漂流アニマが強力である場合、肉がなくなった骸骨状態の死骸にすら取り憑いてモンスターと化すことができる。関節や一部の骨が損壊していてもアニマの強さで補完することができ、アニマによる結合力が非常に強いために問題なく骸骨の状態で高い運動能力を発揮する。なかには空を飛ぶ飛行系の骸骨生物も確認されている。
 それぞれの骨格も鈍重であり、本来ならば軽量なはずの骨部は鈍器や刃物よりも硬くあるいは鋭く武器化している。肉体の制限も逸脱しているものが多数であり実際の生物とは思えないような異常増殖した骨や骸骨形状のものも多数いる。

アニマ集合体系モンスター

 死骸に憑依することはなく、漂流アニマが一箇所に集まった形態のモンスター。洞窟や墓地など澱みの深い場所では特に発生率が高く、人間以外の生物やモンスターも含めた複数の漂流アニマが凝り固まっているためか総じて強力で外見も不可解な姿が多い。アニマそのものが実体を持つだけあってアニマの力は極めて強大である。
 こうしたアニマ集合体は獲物の肉体を屠るという行為は一切せず主に精神的なアニマが捕食の対象となる。ゴーストと呼ばれる集合体モンスターは獲物のアニマに直接関与して傷をつけるという攻撃ができる唯一のモンスターであり、ディガーたち冒険者からも恐れられている。

未知の物体

 アンデッド系、アニマ集合体系のいずれにも属さないものは未知の物体として分類されている。これらは元が人間などの生物ではなく物質、物体などにアニマが宿ったものであり、生物的な姿こそはしていても体内組織などの一切は人の及ばぬ構造をしている。
 たとえばガーゴイルは元来は人間が遺跡類に作り出した石像の名前だが、これにアニマが取り憑いて動き出したモンスターとなる。石像であるために石のアニマを色濃く受け継いでおり、繰り出しくる術や技もほとんどが石や岩石に類したものばかりだ。他にも活火山のような外見のヴォルカノイドは体内に実際に火山を持っており、ここからの熱を利用して噴火めいた攻撃や地面に作用する地震のような技を使うなどする。
 クヴェルやメガリスなど現在の人間が解明していない未知の力や物質に直接アニマが取り憑くというのは偶然でしかなく発生する確率こそ低いモンスターたちだが、それだけにアニマの力や術力などすべてにおいて他のモンスターより強い種が多い。

特異モンスター

 これまでに解説したモンスターはすべてが人間とはさほど関りが薄いか皆無のものばかりだが、この特異モンスターに分類されるふたつの種に関しては人間そのものがモンスターに変化したという顕著な例である。生まれながらにモンスターであったわけでもなく、あるいは漂流アニマが作用しての結果でもないこれらのモンスターはいずれも他のモンスターを凌駕し圧倒する力を持っている。

人間のモンスター化

 実際に歴史を紐解くと人間のアニマは何らかの作用が加わると暴走状態に陥るということは発見・研究されており、アニマが制御できなくなった場合に人間は異形生物に変化してしまうということが分かっている。こうして生み出されてしまった生物を便宜上としてモンスターと呼称するのは、彼らがもはや人間に戻ることができず理性も知性も失いただアニマを求めてさまようだけの、まさにモンスターとしての生態活動しかできなくなってしまうからだ。
 したがって、他の分類されているモンスターのいずれかに属するというわけでもなく個体としての生態もまだ研究が進んでいない。

 実際にどのような手順で人間がモンスターと化すかというと、アニマが暴走した元凶に由来する。たとえばクヴェルのエネルギーを受け止めきれずにアニマが暴走した人間の場合はそのクヴェルが持つ属性が反映される。つまりは炎のクヴェルであれば炎のモンスターへ、水のクヴェルならば水のモンスターという具合に一定の法則は見られている。
 他にも記憶や当人の癖、思考回路が多少は投影されるようで、アニマが暴走した本人が特に好きだった、あるいは印象に残っていた生物や動物に近い姿になるものが多く報告されている。
 また、アニマが暴走するという条件もある程度は判明しており、クヴェルに負の感情を込めた場合でも本人の心が平常であれば暴走せずに押し留まることが多いようだ。ただしその場合でも制御失敗によるクヴェルの爆発等、何かしらの災害が引き起こされてしまう。
 いずれにしても負の感情とクヴェルは決して近づけてはいけない要素同士であるのだ。



アニマ暴走の流れ

 怒り、憎しみ、悔しさや恨み、あるいは欲や執着といった負の感情を持って人間がクヴェルを扱うと作用し合ったアニマにはその影響が残り、クヴェルに伝わった負の感情はそのままの形で使用者に跳ね返る。クヴェルそのものがいまだ未知の物質であるためでもあるが、受け取ったアニマを想像以上の力に肥大化させてしまう性質があるためだ。そして言えば、負の感情は他の感情よりも総じて強力で破壊的なイメージを合わせ持っている。

 その時にクヴェルから放たれる負の力は人間が受け止めきれる許容範囲を超えてしまい、肉体は耐え切れず砕け散って崩壊していく。人間のもともとのアニマはあっさりと食われてしまい肉体は変異を始める。あるいは四肢がねじ曲がったり、翼のような部位が出現したりとまったく別の生物に変容してしまうのだ。これがいわゆる「アニマの暴走」という状態である。



 アニマが暴走しモンスターと化したものがどうなるかは誰も知らない。元の人物の自我や理性のすべては失われてしまい、暴走した肉体と精神がアニマを求めて、あるいは何か別の目的に準じて動き回るだけの野獣である。妨害するものはなんであろうと攻撃し、排除する。それがたとえ人間だった時に家族だった者でも同様である。もはや「人ではないもの」になってしまっているのだ。
 非生物モンスターのように感情の類も無いと思われているが、いくつかの報告例からすれば「恐怖心」と「憎悪」だけは凝り固まって残っているらしい。これらは人間だった時に抱いた負の感情が特に色濃く残った結果と言える。
 また、クヴェルの作用以外にもメガリスそのものが人間を変容させることもある。メガリスの深部に眠るのはいまだ解明されていない未知なるエネルギーである。アニマなのかあるいは別のものかこうした不可思議なエネルギーは時に人間のアニマを一瞬で食い尽くしてしまう。もしもメガリスやアニマの力が強い遺跡類で見知らぬモンスターを見かけたら、それはもともと人間や動物だったものの成れの果てかもしれない。

エーデルリッター

 エッグという未知のクヴェルが存在する。これは別項で触れることとするが、エッグの干渉により作り変えられてしまった人間のうちのひとりで偽ギュスターヴ(本名は不明)という者がいる。彼はエッグからもたらされる力でアニマが変異してはいるが、人間であった頃は軍人として生活していたためか部下を率いて敵対者と対峙するという行動を取った。
 しかし、偽ギュスターヴそのものが理性と人間としての姿を持つアニマ暴走者というべき存在であるため人間の部下というものは役不足、とはいえ人間社会に関与するのであれば人間の姿の味方は必要でもある。この際に偽ギュスターヴという名のエッグが作ったのがエーデルリッターという直属のモンスター型の人間配下たちだ。

 エーデルリッター(将魔)はもともとが人間である。彼らはアニマを強く生まれ持っていたが、偽ギュスターヴによる試練を突破したまさにエリート中のエリートである。彼らは自分の意思でモンスターに変身でき、さらに人間の姿に戻ることも可能とする。このサンダイルという世界ではいかに高名で強力な術士でも頭髪色の変更をはじめとした自身の姿に関与するということは出来ないので変身能力というだけでも特異過ぎる能力である。どのような形態の時でも理性を失わずにいられるということも含めて、人間の領域を遥かに超えたまさに神がかった存在であるといえる。

 エーデルリッターとなった人間たちはそれぞれがクヴェルを所持している。ここにわざと負の感情を与えてアニマを暴走させ、その暴走力こそをも制御して自分たちの力として扱えるようにしてしまったのだ。通常で考えれば理性を失いただの魔獣と化しているはずのアニマ暴走でも暴走をさせずに平常のままで居ながら偽ギュスターヴの配下として付き従う、これはサンダイルの人々からすれば信じられない光景であり、実態を知ってもなお理解のできない関係性といえるだろう。

 当然ながらエーデルリッターとして命を捧げた者たちは人間の姿こそは保っていても決して人間社会に戻ることはできない。それはエーデルリッター自身がアニマを集めてエッグに捧げるという循環のひとつに組み込まれてしまっているからだ。もしもエーデルリッターが死亡した場合、彼らは最後のアニマまですべてをエッグに注ぎ込んでからやがて最後の変貌を遂げ、世界のなかに果てるだろう。


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 偽ギュスターヴはエーデルリッターたちを作る際、これと思う人間を集めてから石切り場跡地にあるメガリスで試練を与えた。ほとんど誘拐に近く連れて来られた彼らは強制的にメガリスという一般人では触れることもない場所と接してしまったのだが、この時点で彼らのアニマには変異が出ていたと思われる。
 メガリスからの影響でアニマが暴走するのと同様にして何人もの人間が自我を失い、発狂あるいは魔獣化するなどしていった。そうしたなかでも自意識を保ったままメガリスの干渉を跳ね付けた者こそがエーデルリッターになる資格を得て、暴走こそをも支配できるアニマを持つ人間だとエッグに認められたというわけだ。