ウィル・ナイツ編

Last-modified: 2021-06-08 (火) 10:42:11


400万年前 発端

 『エッグ』。卵、というあまりにも奇妙な名前のこのクヴェルの発端となるのは人類誕生よりも昔、400万年前ほどにさかのぼる。いまサンダイル各地に暮らしている人類が生まれるよりも遥かに昔、サンダイルに生きていた古代の種族。現在残されてるさまざまな遺跡やメガリスをいくら紐解いても判然としないままの彼らが残したエッグは、いったいどういう目的を持って残されていたのだろうか。

年代エッグの歴史ナイツ家歴史内容
400万年前エッグ誕生、大砂漠のメガリスに封印
先住種族の絶滅
南大陸で人類誕生
250万年前道具誕生
170万年前直立猿人登場
12万年前現生猿人登場



エッグの誕生と封印

 現在暮らしている人々の原型となる人類が誕生するより以前、サンダイルにはいまの文化や技術力とは比較にならないほどの高度な文明を持った古代の種族、先住種族が暮らしていたとされている。彼らは各地のメガリスやクヴェル類を作り出した張本人たちとされており、現在世界中に出回っているクヴェルはすべて先住種族が残したものとなっている。その構造だけ取ってみても現在の人類では到底推し量れる技術や素材ではなく、アニマや術に関しても現在よりも発展した体系が組まれ日常的に活用されていたと思われる。

 しかし、そこまで発展した先住種族もなんらかの理由で滅亡の道を辿ることとなってしまうが、高度かつ発展した文明から先住種族は自分たちの末路は解析できていた。そして、なにをどうしても滅亡が避けられないと悟った彼らは自分たちの知識や意識などをひとつのクヴェルに集積しておき、のちに生まれるであろう文明社会にて力ある者に拾ってもらい力を蓄え、その時ある文明のすべてまたは一部を乗っ取る形で再度の自分たちの復活をしようと目論んだのである。
 彼らはそのクヴェルにエッグという名をつけて現在では大砂漠のメガリスと呼ばれる南大陸の建物に半永久的にエッグを保存できる設備を作り上げ、保存するに至るのである。

 やがて400万年の月日が流れてエッグはついに発掘されることになる。先住種族からすれば発掘、つまりはエッグ発見はいつの時代でも問題は無かったと言えるが、ある程度の文明を必要としていたのもありエッグのある場所に辿り着くにはそれ相応の試練を与える機構を作り出していた。それは現在では大砂漠のメガリスとして、ディガーたちにとっては過酷な探索地として数えられている。

エッグ~手にした人間に憑依するクヴェル

 エッグはあくまでもクヴェルである。これは現在存在している他のクヴェル、すなわちファイアブランドや樹氷の腕輪などといった術を引き出すための装備品または装飾品に過ぎない。しかし、エッグはその他多くのクヴェルにはない特徴が備わっている。それこそが手に取った人間の意識を乗っ取り、エッグ、というよりもエッグに眠る先住種族の意識の思う通りに動かしてしまう性質である。
 この先住種族の意識というものは計り知れないが、いま現在繁栄しているサンダイルの文明を支配しようという明確な目的が備わっているのは事実である。ただしエッグ単体では動くことすらできない無力な物質に過ぎないため、エッグの意のままに操れる人間が別途に必要になってくるというわけである。

 この点の解決において先住種族の意識だけでなく、エッグが持たされたもうひとつの性質として人間の好奇心を引き寄せるといったものがある。これにより本来であれば怪しんで手に取ることがないような状況でも不思議と感応させられてしまいエッグに憑依されるということが多発してしまう。
 ただし、エッグには具体的に復活のために必要なエネルギーや方法は最初の時点では明確としておらず、サンダイルの現在の文明や歴史、そこに存在する人々などを調査する段階は必要であった。これは憑依した人間がもともと持っている知識を参照することで随時蓄積していき、そのうえで最適な方法で効率的に復活に必要なエネルギー(アニマ)を手に入れる方法をエッグ自体も模索しつつ成長していく。

 エッグは憑依する対象を選ぶということはしない。興味を持ち、手に取った人間のすべてに対して憑依は実行するが、クヴェルという基本性質は変わらないのでアニマがあまりにも低い人間の場合はアニマが暴走し命を失う(または魔獣化する)という事例は起きる。さらに一度憑依した人間から別の人間に乗り換える際はそれまでの人間を殺してしまうという性質もある。
 一度犯した失敗は二度と繰り返さず、成功した事項といえども同じ手段は二度と使わないなどまるで機械的な機構を持つエッグだが、実際は憑依した人間の性格や行動パターンが色濃く反映され続けている。たとえばディガーに憑依した場合はクヴェルをひたすら掻き集めることでエネルギー(アニマ)を確保しようとするなど、エッグ自体の行動も憑依先の人間の持つ習慣を強化したうえでエッグの必要とする情報やエネルギーを手に入れようとするのだ。
 そこにはいくら長い歳月がかかっても確実に先住種族を復活させようとする強い執念が垣間見える。


エッグの憑依した推移
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ナイツ家~代々優秀なディガーを輩出した優れたアニマを持つ家系

 代々有名なディガーやヴィジランツを多く輩出し続けたナイツ家は優れたアニマを持つ名血の一族である。単純に優れたアニマというだけであれば術士のほうが向いているが、ナイツ家の持つアニマは主に隠れたクヴェルを探り当てる能力に秀でているために遺跡探索、クヴェル探索を生業とするディガーが多いというわけである。その他、ディガーを護衛するヴィジランツも同様に素養が高い。サンダイルの世界では生まれながらの冒険者一族という趣である。

 大砂漠のメガリスでエッグをはじめに発見したのがナイツ家のひとり、ヘンリー・ナイツであった。歴史においてクヴェルが発見されなかったこの南大陸でメガリスを見つけたというだけでもヘンリーの功績は高いと言えるが、さらにそのメガリスで未知なるクヴェルを発見した彼はまさに「タイクーン」という優秀なディガーが持つことを許された称号を得るに相応しいといえただろう。
 タイクーンという称号はディガーとして成功したものに付与される名声のようなものであるが、ディガーの世界は称号ひとつで各地から賞賛されるほど甘くはない。しかしヘンリー・ナイツの前の世代ではエディ・ナイツ、チャーリー・ナイツという二名がタイクーンの称号を得ており、一代限りでしかないタイクーンの称号ではあるもののナイツ家の多くの獲得歴はディガー界では有名である。

 ナイツ家の特徴としては得てして全員が楽観的でポジティブな性格であるということ。そして非常に活動的で行動意欲が強く、なんでもやってみてから考えるという性格の者が多い。リッチ・ナイツなどはその点で考えると劣等感に苛まれていたという部分では異端でもあったが、彼も家を出てからは自由気ままに探索をするなどナイツ家の楽観主義は垣間見える。この積極性や好奇心旺盛な部分は時に行き過ぎてしまうことも多いのだが、それも含めて彼らナイツ家の一族がディガーとして大成してきた証拠とも言えるかもしれない。
 また、ウィル・ナイツやリッチ・ナイツは「誰かのために動く」という真摯な行動基準があり最期の時までそれを死守するが、ジニー・ナイツだけは(年齢ゆえであろうが)自分自身の楽しみや興味に従って行動することが多い。しかしそれでもエッグとの対峙では本能的な恐怖を克服し使命を燃やして凛と立ち上がった彼女の姿には、連綿と受け継がれてきたナイツ家の血筋を確信するものがある。


エッグと戦ったナイツ家の家系図
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1224~1239 エッグとナイツ家の邂逅

 大砂漠のメガリスに封印されていた人類史以前のクヴェル、『エッグ』がついにサンダイルの世界に降臨する。その当事者であったヘンリー・ナイツを皮切りにナイツ家の一族はエッグと因縁に満ちた関係を紡ぎ合うことになる。表舞台の歴史においてはギュスターヴ13世による百年戦争が勃発しメルシュマン、ロードレスランド、グラン・タイユの三国を主体に東大陸は混迷期となっていたが、その裏でも危機と英雄が存在していたのである。

年代エッグの歴史ナイツ家歴史内容
1224ニコラ、エッグ入手大砂漠のメガリス発見ヘンリー・ナイツ、大砂漠のメガリスをゼルゲン三兄弟と共に発見。
ヘンリー、エッグ入手ヘンリーがエッグ発見ニコラの所持していたエッグをヘンリーが入手する。
アレクセイ、エッグ入手ヘンリー夫妻死亡アレクセイ、エッグ憑依により豹変。ヘンリー・ナイツと妻キャサリンを殺害し失踪。
後にニーナ・ナイツが事態を知るがウィル・ナイツを連れて撤退。
エッグ、アレクセイ所持ウィルがコクラン家にウィル、両親の殺害現場からニーナに救出されコクラン家へ。
1228アレクセイ一味、ニーナを撃退ニーナがエッグを攻撃するが失敗ニーナ、エッグの危険性を知り攻撃するが失敗する。
1235『ウィルの旅立ち』ウィル、ヴェスティアにてハンの遺跡探索。
1236『大砂漠のメガリス』ウィル、大砂漠のメガリス探索。
1238エッグ、ウィルと出会う『潜入!アレクセイ一味』ウィル、アレクセイとの接触を試みる。
1239ウィルとの対決に敗れ谷底へ『対決!アレクセイ』ウィル、アレクセイと対決。勝利する。エッグは谷底へ。
デレク、エッグ入手



ヘンリー・ナイツによるエッグ発見と入手

 ディガーとして立身後、各地の遺跡や土地をめぐり一流として認められていたヘンリー・ナイツはそれまで謎とされてきた大砂漠のメガリスの真偽を確かめるべく仲間を募っていた。過去においてクヴェルやメガリスは一度も発見されておらずディガーたちからは実りのない土地として興味を持たれていなかった南大陸だが、最近になって大砂漠の奥地にメガリスらしき影を見たという噂がのぼっていたのである。
 しかし眉唾の噂に危険を賭して同行しようとしてくれる仲間はおらず、ヘンリーの計画は断念せざるを得ないかと思われた矢先に現れたのがゼルゲン三兄弟である。彼らの名前はヘンリーも知るところであり、ディガーとしてそこそこの腕前はあるものの素行や品行が悪く、頼りにできると言い切れる兄弟ではなかった。しかし、単独で挑むよりは心許なくても四人での探索が安全だと考え至ったヘンリーはゼルゲン三兄弟と共に大砂漠のメガリスを探す冒険に出る。

 一行は準備を整えフォーゲラングを出発しメガリスを求めて砂漠を進むが、過酷な環境とモンスターの多さを前に前進は困難を極めた。もはやこれまでかと思った時に不意に一行の前に大砂漠のメガリスがぽっかりと口を開けた姿で現れるのである。急く心を抑えながら内部に進むが他のメガリスでは無数に発生していることもあるモンスター類はまったく姿が見えず、最深部にあるものは朽ち果てた棺のようなものと無数に壁に這い回る蔦のような回路であった。
 ヘンリーは持ち前のアニマ感知と閃きでこれらが大掛かりなアニマ集積装置のようなものだと探り当てる。周囲のアニマを吸収し中央に置かれている棺に送り込むという機構だ。であれば、いま立ち会っている自分たちのアニマすら干渉されつつあると危険を察したヘンリーの声で撤退が図られた。

 フォーゲラングまで帰還した四人だがあまりにも危険なクヴェルを解放してしまったと悩むヘンリーの表情は暗かった。一方でゼルゲン三兄弟はあくまでもエッグを自分たちの獲物として入手すると言って折れようとしない。口論の末、ヘンリーとゼルゲン三兄弟はこの地で離反してしまうが、その後ゼルゲン三兄弟は改めて大砂漠のメガリスに出立。興味を持って棺を開けてしまったゼルゲン三兄弟のうち次男ニコラがエッグを手にしてしまう。
 その瞬間、エッグは力を解放。四人のうちもっともアニマが乏しかったゼルゲン兄弟の三男ピーターはこれだけで消し飛んでしまい、次男ニコラも左手を失う。かろうじてニコラを最初の憑依先に選定したエッグはアレクセイを率いる形でフォーゲラングまで一時帰還する。

 しかし、ニコラのアニマはそこまでだった。フォーゲラングに到着後ニコラはすぐさまアニマの暴走により自我を失い、エッグの影響もあり危険なまでの力を手に無差別殺傷事件を起こしてしまう。一般人では即死するほどの術的エネルギーを四方に発射しまくった挙句にニコラ本人も自我を失いさまよう姿はまさにモンスターそのものだった。
 駆け付けたヘンリーはアニマを阻害する鉄の棒を用いてうまくニコラからエッグを叩き落とさせるが直後、ニコラはアニマをすべて失って絶命。地面に落ちたエッグを拾ったヘンリーは研究という目的でナイツ家に帰還するが、この時すでにヘンリーはエッグに憑依されていたのである。

 一方、フォーゲラングでの殺傷事件は主犯としてアレクセイ・ゼルゲンが拘留されるが、直後にアレクセイは脱走してしまったため真犯人やその真相は謎のままになってしまう。もともとこのフォーゲラングはディガーを始めとした冒険者の数も多くはなく、南大陸でも辺境に位置する地域ということもありこの事件は外部に漏出することもなくうやむやのうちに忘れ去られてしまった。

ヘンリーとキャサリンの殺害

 フォーゲラングでの殺傷事件後、エッグを拾ったヘンリーはその実態を研究調査するという目的で自宅へと急いでいた。一方でアレクセイもフォーゲラングの事件で拘留されていたものから脱走。アレクセイはその時点ではエッグに憑依はされていなかったが、エッグのことを非常に価値のある歴史的な発見に等しいクヴェルだと考えていた。第一発見者である自分こそがその所有の権利があるとし、ヘンリーの行先を察知するとナイツ家に足を向ける。

 エッグを手にしたヘンリーは自宅に到着する。出迎えた妻キャサリンは夫の無事を喜ぶが、その時すでにヘンリーの持つ雰囲気の変化に気が付いていた。違和感を感じたままに夫の持ち物を見てエッグを発見するキャサリンは、それには触れずに様子を見るにとどめた。
 しかし3年後、ヘンリーはついにエッグの干渉によりアニマを暴走させ発狂してしまう。ずっと違和感を持ち続けていたキャサリンは慌てることなくエッグがすべての原因だと察し、ちょうどヘンリーを追い掛けてナイツ家宅の周辺で徘徊していたアレクセイにエッグ奪取の依頼をする。アレクセイは渡りに船とばかりにキャサリンの依頼を受けるのであった。
 キャサリンにはある計画があった。エッグの持つ力は計り知れないが、いまの状態のヘンリーから無理に奪い取るのは危険が伴うかもしれない。とにかくヘンリーからエッグを切り離すことだけを考え、急所を外した攻撃を加えて行動不能にさせたうえでエッグだけを奪おうという計画だった。


 一方でヘンリーの妹であるニーナもまた、キャサリンの報せを受けてナイツ家宅に駆け付けていた。しかしニーナが到着したと同時に凄まじい悲鳴が屋敷から立ち上り、怒涛のようなアニマの奔流をその場の全員が感じ取ることになる。慌てたニーナがキャサリンとヘンリーの姿を求めて探し回ると待ち受けていたのは血だるまとなって絶命したヘンリー夫妻の姿と、不気味なクヴェルを手にし鬼のような形相で笑むアレクセイの姿だった。
 ナイツ家の一員としてニーナもまたアニマの感知能力は非常に高かったが、その能力で見なくともいまのアレクセイと彼の持つクヴェルは自分の手には負えないほどの邪悪な力を秘めていると察するのは容易かった。無残なヘンリー夫妻の亡骸を見下ろして微動だにしないアレクセイを尻目に、ニーナはヘンリー夫妻の一人息子でまだ幼いウィリアム・ナイツを抱えてナイツ家から逃走をはかる。エッグに憑依されたアレクセイは追い掛けてくることはなかった。

 アレクセイの身体を手に入れたエッグはニーナとウィルが逃走していくのは察していたが、深追いはせずアレクセイの知識と身体を使ってしばらくの間沈黙を守る。もちろんそれはサンダイルというこの世界のことを知るための時間であり、いま栄えている文明の規模やレベルを推し量るエッグにとっては教育実習の時期となった。
 そしてウィルことウィリアム・ナイツは幼過ぎて両親を失ったことも分からないままニーナに引き取られて育てられることになる。

アレクセイ一味とニーナの決闘

 エッグを手にしたアレクセイはそれまでも品行方正とは決して言えた素行ではなかったが、ますますその品の悪さに磨きがかかったようになりほとんど強奪に近いやり方でクヴェルを奪い取るようになる。まさに野盗さながらのこの動向はエッグによる「復活のエネルギーを手に入れたい」という願望がアレクセイの現在の性格とディガーという職業をもととして行動に反映された結果なだけである。
 そのやり口は一部の日陰者たちからは賛同され、アレクセイを筆頭とした一大勢力として膨らんでいくことになる。アレクセイ一味は強奪まがいのやり方もするが、ディガーらしく遺跡や秘境に冒険することもあるというならず者とはくくれない一団となった。
 このアレクセイ一味から目を離さずにいたのがニーナである。ウィルを引き取り育てながらもアレクセイの持つエッグを諸悪の根源と認めて狙い続けていた。

 ロードレスランド中部には黒曜のメガリスがある。クヴェル発掘の最盛期でもあった当時、この黒曜のメガリスはシュヴァルツメドヘン(夜の街)ともほど近く交通の便が良い場所にあった遺跡だったため多くの冒険者やディガーが集っていた。アレクセイ一味もこのあたりを拠点として活動しており、動向を探っていたニーナもそれは察していた。
 アレクセイの狙いを知るためにニーナは仲間のひとりをアレクセイ一味に加入させスパイとして利用しようとするが、いつまで経ってもスパイからの情報が来なかった。不審を感じたニーナは自らがアレクセイ一味に潜入し調査しようとするが、たちまち見破られて捕まってしまう。そして、先に潜り込ませていたスパイを目の前で殺されてしまうのである。
 多勢に無勢で窮地に立たされたニーナだったが、からくも逃走に成功する。それはニーナの持つ強力な術の力のお陰もあったが、アレクセイの内心にニーナに対する好意が備わっていたためでもある。いくらエッグと言えども人間の感情までは操作できないということであった。

 生き延びるのは成功したニーナだったが、計画は失敗でしかなかった。しかしこれ以上のエッグの深追いは危険であり、自分では対処のできない事態を引き起こす可能性もある。いまの段階ではエッグに対抗する決定打にも欠けるとしてウィルを育てることこそが先決であり自分の役目として普通の生活に戻ることになる。
 しかしアレクセイへの反撃は諦めたわけではなく、夫ポール・コクランと共に究極と呼べる術の研究と開発を進め、1236年に完成させ体得するまでに至っている。

ウィルとアレクセイの対決

 大砂漠のメガリスを経てエッグという謎のクヴェルを知ったウィルはその所在を追い求めてアレクセイに辿り着く。シュヴァルツメドヘン(夜の街)で調査し仲間であるコーデリアをアレクセイ一味の元にスパイとして送り込むが失敗、コーデリアは殺されてしまう。失意に落ちる間もなくアレクセイが動き出したという情報が飛び込み、コーデリアが最期に残した情報を手掛かりとしてウィルたち一行は石切り場へと向かうことになる。
 アレクセイは単独となり石切り場奥でウィルを待ち受けていた。クヴェルを追い求めて野盗まがいの行動を繰り返した姿はそこにはなく、不自然な笑みを湛えるアレクセイは手の中のエッグを振りかざした。すると轟音と共に二体のドラゴンが飛翔しウィルたち一行を敵とみなして襲い掛かってきた。アレクセイはモンスター避けの性質を持ったクヴェルを利用し、そのモンスター制御力を逆手に取りドラゴンなどモンスターを使役するクヴェルに変えてしまったのである。

 とても常人の成し得る技とは思えない所業のうえにドラゴンという通常では人前に姿を現さないモンスターと対峙したウィルたちは苦戦を強いられてしまう。まともにやりあっても勝てないと悟りそれぞれが膝をつくなか、突然現れたのがニーナであった。
 アレクセイを打倒するためにポールと共に長年研究してきた術がついに発揮される。それは命を犠牲にした大技であり、打ち放った術の威力でドラゴンは駆逐されるがニーナは死の瀬戸際に追いやられてしまった。駆け寄ったウィルの叫びもむなしく息を引き取るニーナ。怒りを込めて睨んだ先には切り札のドラゴンを失ってうろたえるアレクセイの姿。エッグを所持するとはいえ、ドラゴンを使役することで勝利を確信していたアレクセイにはもはや力はなく、ウィルたち一行の手により倒されたあとは谷底に落下していくのであった。

 アレクセイの姿が谷底に消えたのち、ウィルは失態を犯してしまう。エッグの所在を調べないまますぐに石切り場から立ち去ってしまったのである。案の定、そっと現れたのはアレクセイ一味のひとり、デレク。デレクはエッグをアレクセイが持っているのを知っており、いつか手に入れようと狙い続けていたのだ。アレクセイが谷底に落ちていくのを見ていたデレクはその落下地点に駆け寄り、谷底に落ちていたエッグを手にしてしまう。エッグはデレクへの憑依を果たし、次なる計画を練ると共にナイツ家のアニマに大きな興味を寄せていくのである。