推薦図書/その他/書籍類/あ~さ

Last-modified: 2021-02-26 (金) 10:42:58
  • アリュージョニスト以外のネタバレに注意
  • サイバーカラテを実践しよう (知ってる作品があったら、説明を追記しよう)
  • 最下部のコメントボックスで作品紹介を書き込むと、誰かが追加してくれるかもしれません
  • 多分図書じゃなくてもいいと思うよ
  • 参照と類似は呪力です。高めよう。
  • ほんの少しでも推薦図書に見えたのならそれが推薦図書です(邪視)。追加しましょう。五十音順に並んでいます。
  • 編集カラテ入門
    • 発勁用意! 次の2行をコピペして、自分の文章で書き換えます。ここは、Webブラウザ以外のアプリでやるのがオススメ。

      ** タイトル

      -説明1

  • NOKOTTA! 文章が出来たら、Webブラウザに戻り、画面の一番上の「編集」を押します。
  • GOOD! 編集ボックスが出てくるので、1で作った文章をコピペします。場所は、根性で探してください。
  • COMBO! 「プレビュー」を押して、うまくいってるか確認します。まだこの段階では、誰にも見られません。
  • EXCELLENT! 「ページの更新」を押せば、完成です!!

推薦図書/その他/書籍類

サイバーカラテ/意志決定関連

愛と怒りの行動経済学 エヤル・ヴィンター

  • 脳科学、ゲーム理論、行動経済学などの成果により、人間の行動における感情のポジティブな面を評価している本
  • あらゆる科学的説明は、絶対の「真実」などではない
  • そして、われわれの技術や認識能力には限界があり、すべてを観察することは出来ない
  • そのため、ゲーム理論も脳科学も、個人や集団の観察結果を理解しやすくする物語に過ぎないのだ
    →【呪文】
  • 感情は、時代遅れの遺物などではなく、合理的な面を補ってバランスを保つための高度な優れた道具である
  • 自己成就不信:差別意識は、先入観がお互いの行動で実現されることによって、負のスパイラルを巻き起こして増加していく
  • ストックホルム症候群:我々は権威ある人物に好感を抱きやすく、その好感はそれが不合理な環境になっても続いてしまう
    • 状況を変えられる機会が少なくなるほど、権威者に肯定的な感情を持ち、不当な扱いを受けても悪いのは自分だと思いやすくなる
      →四章でイアテムに従ったセージ?
  • 進化論上の合理性:個人の行動は(その行動が選択されたときの一般的状況と照らし合わせて)進化上の利点をもっと増やす行動がほかにない場合に、合理的となる
  • 感情の正確な定義なんて未だに分からないし、感情と身体感覚の境界もまた分からない
  • 身体感覚は、意識でほぼコントロール出来ないが、感情は一定の条件下でならコントロールできる(完全には出来ない)
  • 感情は自分と他人に対して確約(コミットメント)を作り出す能力を持つ
  • 怒りは、自分の欲求を達成させるための力となる
    →バイオカラテ?
  • お金を分けあったり奪いあったりするゲーム実験で判明した、自民族中心主義
  • パレスチナ人プレイヤーは、イスラエル人プレイヤーからもらえた額が予想額と差があったのは差別の表れだと解釈していたが、実際には行動基準の違いだった
  • パレスチナ文化では個人主義は恥ずべきものであるため、パレスチナ人は多く分け、同じように多い分け前を期待する
  • それに対してイスラエル社会では、危機の時の団結と助け合いは重視されるが、それと同じくらい平常時の利己主義や競争・功利主義も推奨されるのだ。
  • 集合的感情:人間は集団に帰属意識を持ちやすい
    →【言震】の原因のひとつ?

怒りのコントロール ジュディス・ピーコック

  • 薄い本で子供向けだが、怒りの様々な側面に触れている良書
  • 怒りの感情は、よいとか悪いとかいうものではなく、人間の自然な感情のひとつ
    • どうコントロールするかで、役に立つこともあれば、役に立たないこともある
  • 怒りは、身体と心が関係している
    • まず、身体が怒るための準備をして、頭がどんなふうに怒るのかを決める
    • 性別、年齢、家庭環境、自尊感情をもっているかどうか、また文化的な背景や人種などによっても、どんな怒り方をするかどのくらい怒りに影響されるかが違ってくる
    • 怒りを感じるためには、「人や物に脅かされている」と頭が感知しなければならない
  • 怒りとは、人間が出来事や状況をどう解釈するかということ
    • また「怒りは自分でしかコントロールできない」と知ることも大切
    • 怒りをコントロールするということは、怒りに自分がコントロールされない、ということ
  • 怒りは、おさえこんだ怒り、攻撃的な怒り、建設的な怒りの3つに分けらる
  • 習慣性の怒り:怒るのを楽しみ、怒る感覚が好きな人もいる
  • 計画的な怒り:相手をコントルールするために怒る人もいる
  • 怒りをコントロールする最も良い方法は、否定的な考えや、理屈に合わない考え方を変えてしまうこと
    • 前もって解決方法を探したり、他の方法を考えたり、時間を調整したり、怒りのきっかけとなる出来事を無視することを学ぶのも良い方法
    • どうしてそのことが怒りの原因になるのか、考えてみよう
  • 自分自身に否定的で破壊的な心の声には従うな、その代わりに自分を認める前向きな独り言をしよう
  • 怒りを鎮めるのは、まず怒りを認めること
    • 次に、気持ちを鎮めること
    • 勢いで行動しないこと
    • 健康的な生活を送り、ストレスを減らすことが良い
    • 冷静でいること、相手の話を良く聴くこと、相手の言葉を繰り返すことも有効
    • なにより、ケンカを買ってはいけない

意思決定トレーニング 印南一路

  • 優柔不断は性格の問題ではなく、状況把握と分析の問題
  • 優柔不断になりそうな問題をいきなり決断の問題とするのではなく、いちど意思決定という観点から考えてみるべき
  • 本当に決断を要する問題はそれほど多くはなく、方法さえ知れば、対処できる問題が大半
  • いったん決めたら、その後何をし、どういう行動をとるかの方がずっと重要
  • 消去法や足切り法は、絞り込みに有効だが見落としの危険がある
  • 複数の条件で選ぶ線形評価は、条件の重み付けなど工夫が必要で難しく、選択に限界がある

「器が小さい人」をやめる50の行動 脳科学が教えるベストな感情コントロール法 西多昌規

  • 「器量」という『邪視』的解釈からくる偏見や自己否定を、「脳のワーキングメモリ」の運用の問題なの効率改善出来るという、『杖』的解釈で解決する新書
  • 睡眠や栄養不足を解消する、大豆などに含まれるトリプトファンを摂取する、用事は優先順位をつけて一つずつ片付けるなど、ささいだが比較的実行しやすいノウハウが書かれている
  • 脳は長期間、過度の緊張状態に置かれると、オーバーワークで動きが鈍くなってしまいます
    • この状態を続けると、知らず知らずのうちに能力が低下し、キレやすくなったり、感情のコントロールができずに周囲にあたり散らしてしまうことも起こりやすくなるのです
  • 自分でも何をしでかすか分からない「衝動性」があって、誰がても怒っているのは「あからさま」であって、自分でも「コントロール不能」に陥っている。

AI自治体 公務員の仕事と行政サービスはこう変わる 井熊均 井上岳一 木通秀樹

  • 自治体業務へのAI導入の可能性と影響を論じている本
  • AIで何が出来るか考えることも大切だが、それ以上に求められているのは、AIを使ってどんな地域と仕事像を作るかといった、ビジョンと合意なのである

エコクリティシズムの波を超えて 塩田弘 松永京子

  • 文学批評ジャンル「エコクリティシズム」と「人新世」という地質年代概念を通して、人と環境と人間文明の関わりを描いた様々な作品を紹介したり、批評している本
  • ポストヒューマンと文学と人間を含んだ自然をつなぐ本と言ってもいいかもしれない
  • 一つ一つの章は短いが、そのカバーする範囲は広く、紹介されている作品も多彩である
  • 十九世紀において既にポストヒューマンを描いていたポーの『使い果たされた男』人工的な毒娘が出てくるホーソーンの『ラパチーニの娘』破滅の未来を描くバチガルピの作品にトウェインの影響を読み取る「ポスト加速時代に生きるハックとジム」のなどの再評価から、伴侶種やクィア家族が生き生きと生活する上田早夕里『オーシャンクロニクル』シリーズや被害と加害の関係を撹乱しているジュリエット・コーノの『暗愁』マリー・クレメンツの戯曲『燃えゆく未来の世界図』における”核(によって結びつく疑似)家族”など、カバーされている視座は多様でとても面白い。
  • タイトルの「波」とは、エコクリティシズムという文学研究における変化や新しい思想のメタファーのこと
    • この本はそうした「実態に合わないメタファーを変えること」と「そうした『波』の先、エコクリティシズムというジャンルを超えた未来」の二つを志向する本でもあるのだ

NVC人と人との関係にいのちを吹き込む法 新板 マーシャル・B・ローゼンバーグ

  • 相手に共感を示し、「心の底の欲求」を引き出して紛争を解決する、非暴力なコミュニケーション(Non Violence Communication)のすすめ
    ・アサーティブ・コミュニケーションと似ているが、言葉以外の行動や態度でも可能とするところが大きく違う
  • 例が多めなので、やり方はイメージしやすい
  • 基本思想が、マハトマ・ガンディーのアヒンサーであり、自我の消滅なのでトリシューラやアキラくんとは相容れないかもしれない
  • すべての暴力を解決する唯一の方法は、ひとりひとりが自分のストーリーを手放すことだ
    →呪文系の【静謐】
  • 妥協ではなく、紛争の当事者が互いに敬意を払って解決をはかること
  • 道徳を持ち出す、比較をする、責任を回避するなど思いやる気持ちを妨げるコミュニケーションはやめよう
  • 否定形でなく、何を望んでいるか肯定形で語ろう
  • 相手にお説教をするのでも、盲目的に服従するのでもない、新しい選択肢を作り出すために役立つ本のひとつ
    →サイバーカラテ、第一章のアキラくんなど
  • (どんなにささやかなものであっても)相手の言葉から自分への非難を感じると、人は相手の苦痛を聞き取ることが出来なくなってしまう
  • 人は自分が間違いを犯したと考えたとたん、相手の苦痛をじゅうぶんには理解できなくなる
  • 人の言動によって怒りが生まれることは絶対にない
  • 人を裁くとき、わたしたちは暴力に加担している
  • 「不注意な行動か、誠実な行動か」「貪欲な人か、高潔な人か」といった意識を少しでも持つなら、地球上の暴力に加担していることになる、と私は強く信じている
    →【変数レイシズム】?
  • 道徳的価値判断より、自分たちが何を必要としているのかに注意を向けることで、人生により貢献できる、と私は信じている
  • 怒りは、本当に必要としていることに気づくための、目覚まし時計として利用するべき

サイボーグとして生きる マイケル・コロスト

  • ある日突然聴力を失い、人工内耳を埋め込むことになった男の自伝
    • 人工内耳や難聴者の生活だけでなく、上手くいかない恋愛などありのままの中年男性の人生がつづられている
  • 機械と人が互いに侵襲し合いながら助け合っている、人と機械の複合体=「サイボーグ」の感覚やその存在に親しみが持てるようになる本でもある
  • 後に『猿と女とサイボーグ』の元となったダナ・ハラウェイの論文の分かりやすい解釈もある
    • ハラウェイにとっては、エデンの園の逸話がサイボーグ理解のキーポイントになっている
    • 彼女が言っているのは、人間は原初の完全性を持っていたわけではなく、現実をありのままに知覚したことなどないということだ
    • サイボーグは、己の肉体ゆえに、自分は現実世界をありのままに知覚していないのではないかという疑念を抱くようになり、永遠にそうした思いを拭い去ることができない
    • ちょうど、この本の著者が、人工内耳のソフトウェアをバージョンアップするたびに「更新」される聴覚にとまどい続けたように
    • そのような疑念を抱くということは、エデンの園の逸話という嘘に惑わされないということでもあるため、サイボーグは希望の人となる
    • サイボーグは、多様な視点から森羅万象を見ることにより、絶対無謬の真理を自称する排他的・独善的なイデオロギーに染まることなく生きていける
    • サイボーグは、たいていの人よりさらに堕落した存在だが、それは絶望ではなく希望をもたらす
    • なぜなら、エデンの園を探し求めることをやめてしまえば、独自の楽園、すなわち不完全ではあるが自分自身が満足できる世界を自由に構築することが可能になるからだ
    • 「機械は、我々の過程、我々が具体的なかたちをとる際のひとつの側面である。我々は、各種の機械に対して責任ある存在となることができる――機械たちは我々を支配するわけでも脅かすわけでもない」
    • 別の見方をすれば、サイボーグの世界は、人々が動物や機械と連帯関係を結ぶことを恐れず、永遠に不完全なアイデンティティや相矛盾する立場に臆することのない社会的並びに肉体的な現実に関わるものかもしれない」
    • 要するに、多様な視点を持ったほうが良いということだろう
      →『シナモリアキラ』=『サイバーカラテ道場』の価値と意義?
  • エデンの園に戻ろうとするのは、危険なことでもある
    • たとえば、政治家は、世界を知るための唯一の正しい方法を教えると大衆に向かって大言壮語することで、権力を獲得する
    • まるで、自分は神のような完全性を持っており、何が善で悪かがわかると言わんばかりだ
    • しかし、世界のありとあらゆるものを善と悪に分けようとすれば世界の複雑さと多様さが見えなくなるので、そうした善悪二分論的なものの考え方自体がとんでもない害悪を垂れ流す
    • ハラウェイ「単一の視点から生み出された幻影は、複眼視の場合や多頭のモンスターの見た世界に遠く及ばない」
      →片目のアルト王?

じぶんで考え、じぶんで話せる こどもを育てる哲学レッスン 河野哲也

  • 『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』を加筆修正したものであり、対話の試み「哲学カフェ」における理論と技術を記している本
  • こどもの対話と思考をうながすことによって、「対話の共同体」を築くための方法について、しっかり分かりやすく書かれている
  • 読解には、議論を円滑進行させる司会の一種・ファシリテイターについて知っていたほうが良いが、知らなくても分かりやすい本である
  • 対話はこどもだけでなく、まわりの大人たちもをも成長させる
  • フランスのジャン・ピエール=ポッツィほか制作・監督『ちいさな哲学者たち』や貧困地域での教育を描いた『パリ20区、僕たちのクラス』やリチャード・ラグラベネーズ『フリーダム・ライターズ』という映画が参考に
  • 現代社会では、共同体を所与のものとみなしたり、文化や価値を同じくする共同体が存在しているという前提に立って物事をすすめることは、出来ない
    • マジョリティの文化にそもそも学ぶべき価値があるかどうかさえ問題になってしまう
  • 現代社会でこどもが学ぶべきことは、文化的価値を共有していない人びとでもコミュニケーションをして、共生できる社会を協働して構築していく力です
    • それまで関係のなかった人と人の間に関係を築く力であり、共同体を最初から築き上げていく能力なのです
    • 民主主義社会に必要とされる、市民としての振る舞いを身に着け、政権を担う主権者として必要な権利と義務を理解してもらう教育が、必要
    • 社会参加という公共性を育てるのに第一に必要なことは、自己を表現することを学ぶことであると同時に、人の声を聞く態度を学ぶことなのです
  • 哲学対話で最も重視しなければならないのは、セイフティ(安心)
    • 対話の共同体のためには、対話以前に安心して発言し、気楽に質問や反論ができるできる環境が保証されていなければならない
  • 探求とは、定まった目的地を目指すことではなく、理にかなった議論によって導かれるままに、新しい場所に向かって冒険をすること
    • 対話とは、驚きから始まり、探求と思考によって進む会話のことです
    • 考えるとは、一見すると無関係に思われるふたつ以上のものに関係性をつけること、あるいは、関係性を見つけることに他なりません
  • マシュー・リップマン:思考力の三つの側面、批判的思考・創造的思考・ケア的思考
    • 批判は非難や否定ではなく、考えの審議や妥当性を根本から検討し直すこと
    • 創造的思考:新しいものを求める先進的な思考:分からなくなっていくことは、褒められること
    • ケア的思考:配慮・保護。思考の感情的な側面と関係している
      • ケアは、思考のあり方やその側面
      • 物事を丁寧に調べたり、物事同士の関係性を発見したり創造したり、他の行動の選択肢を思いついたり、問題を調べて解決法を見つけようとしたりするような、認知的な作用
      • ケアは価値づけ、なければ思考は価値を失う
      • 思考には、なにかに配慮する、世話をする企てが含まれており、とても重要な側面
      • 関心を持つから、ケア的であることが、より正確な知覚、より色彩豊かな描写を生み出し、創造的思考となる
  • 思考は、形式や構造の問題だけではない
    • 私たちの感情は、深く思考を形作り、方向づけ、それに枠組みやバランス感覚・視点を与えている
    • 感情は、単純な生理反応ではなく、価値判断に基づいたものであり、そこには既に思考がある
    • 電車の中で足を踏まれても、踏んだ相手が自分にどう対応するかによって、かえって同情したりするように
      →怒りの問題
  • コミュニティボール:毛糸を巻きつけてボール状にしたもの、みんなで自己紹介をしながら順番に作る共同作業の象徴
    • 発言権を象徴させることにも使われ、ぬいぐるみでも代用可
      →媒介としてのシナモリアキラ(サイバーカラテ?)
      電子化○

人生が輝く選択力 印南一路

  • 個人の意思決定だけでなく、会議や団体の意思決定の効率化にも触れている
  • 特に、予め起こりうる状況を想定して対応をチャート式で決めておく「自動選択機」がサイバーカラテっぽい手法
  • 意思決定に関する基本的な知識は、個人レベルは認知科学、脳科学、行動経済学、統計学、オペレーションリサーチに。集団・組織・社会レベルは、社会心理学、政治学、公共政策論に分散しているらしい。

数学的決断の技術 小島寛之

  • 確率を応用して意思決定する手法
  • 主観的に確率を割り振ってみたり、自分の決断の癖を知ることで、決定しやすくする
  • 四つの選択基準
  • マックスマックス基準:可能な中で最大の利益に注目する
  • 期待値基準:可能な利益の単純平均が最大のものを選ぶ
  • マックスミン基準:最低でもいくらの利益があるかにこだわる
  • 最大機会損失・最小化基準:「ああしておけばよかった」という後悔を最も小さくする

選択の科学 シーナ・アイエンガー

  • NHKで「コロンビア白熱教室」として放送されたもの
  • 選択は「今日の自分を明日なりたい自分に変える唯一の手段」
  • 実験と検証を繰り返すことで直感が養われ、本当に重要な判断に集中し、より満足がいく選択が下せるようになる
  • 死を選択とみなすことが苦痛に感じる人もいるが、その考え方に慰めを感じ、死が人生の選択の延長上に有ると捉える人達もいる
    →全体的に、反・シナモリアキラ
  • 選択とは、自分自身や自分の置かれた環境を、自分の力で変える能力のこと
  • 人間は、本能的に選択の自由を求める
  • 選択するためには、まず「自分の力で変えられる」という認識を持たなければならない
  • 選択は自ら切り拓くものであり、不可能だと思える状況も、選択を作ることによって克服できる
    →アキラくん
  • 誰しも自分の人生を自分でコントロールしたがるが、その解釈は、その人が影響を受けた物語と信念によって変わる
    →ヴァージリアとアズーリア
  • 個人主義イデオロギーは選択を「機会」という観点から捉え、個人には世界を変える力があるとする
  • シンデレラなどでは、ヒーローやヒロインは、心からの望みを叶えるために努力しなければならない
  • 誰が選択を行い、その選択がどのように行われるかに焦点があるため「いつまでも幸せに暮らしました」という結果に至る具体的な詳細は省略される
    →コルセスカとルウテト
  • 「装置なしでは生きることが出来ず、生きても会話や思考できる望みが一切ない」障害児の死の選択
  • 「情報あり、選択権なし」が(比較的に)一番親がラク
  • 医師(権威者?)が、望ましい選択肢をはっきりと示すことで、困難な決定に伴う負担を軽減できる可能性がある
    →サイバーカラテ
  • 目は見えないが「視覚言語」を使うことで、自分の経験を上手く語ることが出来ているという著者
    →見えざる義肢エル・ア・フィリス
  • 選択をしないで済む方法はないが、必ずしもつらい思いをする必要はない
  • 選択の全貌を明らかにすることは出来ないが、だからこそ選択には力が、神秘が、そして並外れた美しさが備わっているのだ

〈選択〉の神話 ケント・グリーンフィールド

  • 法学者が書いた選択についての本
  • 「私たちの選択は、さまざまな要因によって制限されているから気をつけましょう」というのは他の本と同じだが、法学者として知的共感の重要性を強調しているのが大きな違いであり特徴
  • また、アメリカ文化の中核的な考え方である「選択の自由、それに基づく自己責任」に疑問を突きつけている
  • 何らかの法規定と、政府によるその実施なくして、〈選択的自己決定〉という概念に中身はない
    • 自己責任が選択そのものだけを表すと考えるのなら、それは実際には「責任」とは何の関係もなく、したがってまったく自己責任などではない
  • 〈選択的自己責任〉という考え方は、選択と決定の連鎖の最下流、つまり最後に決定を下した人物だけに全ての責任を押し付けてしまう、という点でも問題である
  • 中立を志向する「リバタリアン・パターナリズム」をさらに押し進め、悪影響にさらされている選択に介入や禁止を行い、人々が意思決定能力を行使できる領域を保護すべきだ
    • 法や社会的政策は、よりよい選択を奨励し、そうした選択をするための能力を育むためのツールと見なすことが出来る
    • 国民は、適切な判断を下すために政府の援助を望んでいる場合もあり、自己責任をとることが必然的に小さな政府の擁護を意味するわけではない
    • 自己責任を遂行する方法は、法の力を借りて正しい方向に後押し(ナッジ)してもらったうえであっても構わないのではないか?
      →道具(ツール)としての【サイバーカラテ】?
  • 私たちの行動の多くは他者にもコストを負わせる
    • リバタリアン的観点は、みてみぬふりをする際の心理的苦痛などのコストをたまたま居合わせた通行人に負わせてしまう
      →シナモリアキラと片腕のホームレス、そしてカイン
    • したがって他者の自立や選択の尊重は(実際に誰もが自分の選択の代価を確実に支払えるようにするために)裁判や罰金という形で事後に、もしくは保険という形で事前に立法者や規制者が介入しなければならないということを意味する
    • また、自分自身で選択する権利を信奉していると同時に、自分が時に選択をまちがえることがあると自覚している場合も十分にありうる
    • さまざまな状況のもとでつねに適切な選択をできるようにする唯一の方法は、投票者としてより普遍的なレベルの選択をして、個々の状況のなかでの選択を禁じること(セイレーンの横を通る前にマストに身体を縛りつける等)
  • 市場は抵抗不可能な深い影響力を持ち、選択を一定の狭い範囲に制限してしまう
    • 市場では、先立つものがなければ選択の余地はないに等しい
    • 市場は、市場自体を制約する手段を提供してくれない
    • 市場には、経済力がない人が、自身の置かれた状況を改善する仕組みがそなわっているわけではない
    • 人々がまっとうな選択を享受するためには、市場はコントロールされなければならないのだ
      →【シナモリアキラ】(サイバーカラテ道場)の脆弱性?
  • 知的共感(empathy)とは「他人の立場に身を置いて考えること」
    • 知的共感は哀れみや同情ではなく、弁論の中に埋もれている状況(ストーリー)の個別的な側面に、献身的に耳を傾けること
  • 法の正確性・明晰性は、専門家でない人びとが考えているより遥かに低い
    • その本性として、法は、法の意思決定者と状況との「対話」を要請する(法のあいまいさによって、意思決定者は、状況の機微と特殊性を考慮するように強いられる)
      →アズーリアの【呪文】?
  • 本来、共同責任をとるべき人々が、他者に責任を押し付ける手段として自己責任のレトリックを用いているケースが、あまりに多すぎる
    • 最終責任者の選択ばかりを問題にすることは、慈愛や慈善の心をもつことなく、安穏としていられるような風潮を生む
    • そしてそれは、関心や責任を他者と共有しようとする感覚の欠如を助長している
  • グループの同調圧力とグループ思考(先入観を強調し、対立する考え方を閉め出す)に注意
  • 人間であるとは、恨み、同情、混乱、愛情を感じながら行動することだと言える
  • 私達を取り巻く文化は、選択にも影響を及ぼすが、私達はそれに気づかない。魚が水に気づかぬように。

想定外 なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか? ジョン・ケイ

  • 世界は複雑であり、目的と手段もうまく分けることが出来ないため、「回り道」のやり方のほうが適していることが多い、と勧める本
    • 裏付けとなるデータが恣意的なので説得力はあまりないが、目標を厳密に狭めず現実からのフィードバックを活かして目標を再設定していくやり方には、一理ありそうだ
  • 最善の解決策が前もって存在するという考えには、大きな誤解があると言ってもよいだろ
    • われわれの抱く目的の大部分は定義があいまいであり、多面的で、取り組みが進むにつれて変化する
    • さらに、われわれの意思決定力は、相手の反応やそれをどう読むかに左右されてしまう
    • そして、人間に、複雑怪奇な世界を全て知る能力はない
    • 世の中は、当然のことながら一定の変化をせず、最善とされた意思決定がそのまま良い結果につながるとは限らないのだ
  • 問題を解決する能力は、高い次元の目的について、さまざまな角度から何度も考えて見るところにある
    • 回り道的な考えとは、代案を提示することではなく、別の見方や考え方を示すことなのだ
  • 環境が常に一定で、目的は単純明快、その背後に隠れた課題もないような場合であったら、直接的なやり方でやった方が良い
    • そういう場合に限れば、いつ目標を達成できるかも決められるはず

なぜ「怒る」のをやめられないのか 「怒り恐怖症」と受動的攻撃 片田珠美

  • 怒りを表に出すことを我慢し抑圧する「怒り恐怖症」とその結果として、怒りを歪んだ形で表現してしまう「受動的攻撃」について書かれている本
  • 自分自身の怒りをしっかり受け止めることと、怒りを適切に表現し伝達することの必要性が説かれている
  • 表現方法についてはあまり詳しくないので「アンガーマネジメント」などの専門書をあたるべきなのだろう
  • ひそかにサボるなど、まわりくどい嫌がらせに心当たりがあったら、読んでみると良いかもしれない

なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか シェルドン・ソロモン ジェフ・グリーンバーグ トム・ピジンスキー

  • 死の恐怖が人間の思考や選択に及ぼす影響を、社会心理学の実験で立証している本
  • 死の恐怖への自分の反応に気づくことで、選択の際にみずから決断することが出来る
  • 人生には意味があり自分は重要で永続する存在なのだという(じつは心もとない)考えを維持するために、私たちは私たち自身の真実を信じなければならない
  • 私たちの生き方全体、信じているものすべて、追い求めているものすべてが、別の世界観によって妥当性を疑われかねないのだ
    →ソルダの二次創作嫌い?その他の迫害?
  • 文化的な現実認識が死の恐怖を抑えているからには、自分の信念に反する信念の妥当性を認めれば、自分の信念が押さえつけている恐怖そのものが解き放たれる
  • 現実認識が異なる人びとを見下し人間扱いしなかったり、文化的に同化させ手なづけるのも、死の恐怖に対する心理的防衛の一つ
    →槍神教の異獣認定や布教、天使化による取り込み
  • 死を超越する5つの超越モード:生物社会的超越・神学的超越・創造的超越・自然的超越・経験的超越
    →万物と同化する自然的超越はトライデント、他は「聖婚」時のヴィジョンや「更新」っぽい
  • 二つのアプローチ「にっち」(二元論)とさっち(世界はあいまい論)
  • 「にっち」には、象徴的な不死をもたらす処方箋と心理的安定感があるが、「我々」対「彼ら」という部族気質を育み、憎悪や対立をあおる
  • 「さっち」は、意義や価値は人間が作り出したものであると認めることを意味する
  • 人はそれぞれ、自分の断片的な経験を出会うアイデアや、「真実」と結びつけて、自分が生きている現実を構築し、その世界を最大限に利用できるような人になるのだ
    →【紀元槍】をハッキングして、偏見を書き換えるアズーリア
  • 「さっち」は、もっと思いやりのある世界観を生むかもしれないが、死の不安を和らげる効果はあまりない
  • どうにかして、心理的安定感と寛容さを両立する世界観を作り出す必要がある

悩み方のレッスン 「助けて」と言えないあなたへ ジュリアン・ショート

  • 行動を通して、自分の感情を制御しようと訴える本
    →サイバーカラテ?
  • 文章は要点を抜き出しづらいが、その視点は重要かも
  • 人間関係をコントロールすることこそ、自分の感情をコントロールする最上の、そして確実な方法
    • 自分の感情をコントロールするには、よく考えて、ほかの人びとからポジティブな反応を引き出すような行動をすること
    • 他人に「価値がある人」と思われるように振る舞えば、その周囲の反応の影響を受ける自分の感情も制御できる
    • 感情を否定したり抑圧してはならないが、感情の表現のしかたは良く工夫する必要がある
  • あなたが得た愛や強さを「自分を観察する自分」が算定したものーーそれがあなたの自尊心です
    • 外側から見てるように思える「人の目」も、その正体はこの内なる自分かも
  • 自尊心とはアイスクリームサンデーのようなもの
    • 「愛」と「自尊心」二つのアイスの大きさが等しくなくてはならず、そうしてバランスが取れてないと上手くいかない
    • 愛されても自分らしさを保てなければ心が満たされないし、誰にも愛されなければ世界を動かす力を得ても何の意味もないし喜びも得られない
  • 強さとは、自分らしさを攻撃的にならずに主張する能力
  • 私たちの感情が求めるものは、二種類だけ
    • 1 人とつながりを持ちたい
    • 2 自分だけの空間(テリトリー)を持ちたい
  • 人から愛され自分を愛するのに、完璧な人間である必要はありません
    • 自分がこうなりたい、人からこう見られたいと思っている人物がするような行動を取る
    • 自分で自分を好きと思っている人らしく振る舞う
    • 迷ったときには愛を与える
    • いつも相手が「自分を好ましく思っている」と信じているかのように対応すること

ファスト&スロー ダニエル・カールマン

  • 多くの実験によって、人間の認知の偏りや思い込みの傾向を検証している本
    • 人間の意思決定を、直感の「速い思考」(システム1)と理性的な「遅い思考」(システム2)という、(実際には存在しない)脳の中の2つのキャラの対立に例えて説明している
    • システム2はすぐに疲れてしまうなど、人間の認知の傾向を知っておけば、判断の誤りを少なくすることが出来るかもしれない
    • 内容はわりと専門的だが、具体的な例もあるし、章末に短いまとめがあるのでそこだけ読んでも良くて、分かりやすい
  • 「システム1が~をした」という表現は、「~が自動的に起きた」という意味であり、「システム2を呼び出して~をした」という表現は「興奮度が高まり、瞳孔が開き、注意力が集中して~が行われた」という意味である
    • 私たちの考える自分自身とは、判断を下し、選択を行うシステム2のことである
    • それはしばしば、システム1が形成した考えや感覚をそのまま承認したり、いくらか修正を加えただけでゴーサインを出したりする
    • とはいえシステム2は、多くのバカげた考えや不適切な衝動があからさまに外に出てしまうことを防ぐ役割も果たしており、注意をしっかり注げば、さまざまな活動は上手くいくようになる
  • 私たちが犯す誤りの大半はシステム1に端を発するが、私たちが行う正しいことの大半も、同じシステム1のおかげである
    • 難しい質問の答えを探すときには、ただちに似たような質問の答を探し、容易に思い浮かんだ方の答でもって本来の質問の答に置き換える
    • このように手っ取り早い近道から出てきた答は、とにかく入手しやすく、短時間で簡単に求められるという絶大な利点がある
    • ヒューリスティックな答は、決してでたらめではなく大体においておおむね正しいが、しかし時には、決定的に間違っている
      →類推、呪術的な思考
  • 建設的に批判するスキルには、適切な語彙が欠かせない
    • 意思決定者にとっては、自分自身の内なる疑念を想像するよりは、いまそこでうわさ話をしている人やすぐに批判しそうな人の声を想像するほうがたやすい
    • 自分を批判する人々が正しい知識を身につけ、かつ公正であると信じられるなら、
    • そして、自分の下す決定が、結果だけで判断されるのではなく、決断に至る過程も含めて判断されると信じられるなら、意思決定者はよりよい選択をするようになるだろう
      電子化○

欲望について ウィリアム・B・アーヴァイン

  • 欲望について研究した本
  • 望ましくない欲望を消し去る「特効薬」は無い
  • 私達にはBIS(生物学的インセンティブ・システム)があり、それは人類の繁栄のために、欲望を使って私達を動かしている
  • 「足るを知らざるより大いなる禍はない」
  • しかし、欲望が無ければ人は何も決断出来ない
  • 仏教:達磨大師の教え、平安が無いというなら、その不安な心を取り出せるか?取り出せないなら、それが平安だ

若者はなぜ「決めつける」のかー壊れゆく社会を生き抜く思考 長山靖生

  • 「決断のサイクル」が短い時代を批判し、振り返る新書
    • 内容自体は平凡だが、その視点だけは忘れてはならないものだろう
  • 「やって後悔するほうがマシ」は本当か
    • ジリ貧を打開するために一が八かの勝負に出るものは、たいてい負けるのである
    • ましてや、現状把握や見通しが悪ければ、確実に負ける
    • 決めてしまえば、その結末を引き受けねばならない
    • 行き場のないところへ追い詰められて、仕方なく選んだら、今度は「自分で決めたんでしょ」と自己責任を強いられる苦悩
    • 引き返すと負けだと思うのか?だが、どっちつかずの不安定やジリ貧感に耐えられないナイーヴな人間が、決定的な敗北や屈辱に耐えられるのだろうか?
    • それに、正解のない選択肢からは、どうやったって正解を選び出すことは出来ない
  • 短絡的な決断は、達成ではなく挫折だ
    • そうした決断に至った原因には、当人にはどうしようもないケースもある
    • だが、そんな決断が不完全で、これからも考え続けて修正すべきものだという自覚は持たねばならない
    • 一度決めてしまったら、あとは施工を停止して、無理や理不尽を推し進めるのに加担することは、自分を追い詰める行為だ
  • そもそも自己責任論は、九十年代には、投資の失敗や放漫財政によるバカげた浪費を繰り返した、政府諸機関や大企業、銀行などの組織に向けられていた
    • それがゼロ年代以降になると、自己責任論は、若者に「自己決定」を迫り、それに対する「自己責任」を迫るという文脈で使われるようになっていった
    • そもそも「責任」を遂行するために必要なのは、決定という行為ではなく、真に実行するための決定権とそれに伴う諸権限なのに、それが無視されている
    • その一方で若者は、自分が能力がない(あるかもしれないが未知数なので「ある」とは誰も認めてくれれない状態にいる)ことを認めたがらず「できる」と思いたがる
      • だから、自己責任を問われると、それを担いうるとどこかで考えてしまい、自分を追い詰めていくことになる
  • 様々な弱者のタイプ
    • 否認系弱者:自分が「弱者」であることを認めたがらず、架空の万能感に固執して、自分の現状を自覚することが出来ない
      • 昔からいる中二病の卒業が遅れたもの
      • 普通は、自分の限界と探す必要がない本当の自分を受け入れて治る
      • ダメな部分を認めたからと言って、それはその分がダメなだけで、あなたという人間がダメなわけではない
    • 「他責系」「自責系」弱者:「すべて他人のせい」と「すべて自分が悪い」本質的には似通っている
      • どちらも過去の失敗や挫折に固執し、「どうしてこうなったのか」という責任にこだわる
      • そして、「どうすればいいか」を考えたがらず、無意識に、行動しないでいるための口実を探す傾向が強い
      • 自責性も、権利としての弱者性に依存してしまいがち
      • ただし、責任逃れは社会の指導者層にも多いので、いちがいに弱者は責められない
  • われわれが生きている社会の困難は、決められないままでは乗り越えられず、決めつけての猪突猛進でも行き詰まるおそれが大きい
    • 確固たるもののない時代を生きるには、決めつつ疑い、改めた後も迷い、そして、おずおずとでも進むということを繰り返していくほかない

私が絶望しない理由 河合薫

  • 九人の有名人にインタビューして「絶望を乗り越えられた理由」を探ろうとしている本
  • 全員に共通して行われたアンケートと「感情のライフライン」という人生幸福度グラフが、対象者にとっての「人生の受け入れ方」を分かりやすく視覚化しているのが大きな特徴

あ行

愛されたい!なら日本史に聞こう 白駒妃登美

  • 戦国から幕末にかけての偉人に学ぶ愛され方
  • 戦国から幕末にかけての偉人に学ぶ愛され方
  • トリシューラ向け
  • 信頼され、愛される条件は「相手の自己重要感を満たすこと」
  • 著者の名前に反して、意外とキラキラはしてなかった。

青の歴史 ミシェル・パストゥロー

  • 異界と死者の象徴として忌まれ無視されてきた青が、世界中で最も好かれる色となるまでの歴史
  • イェツィラー

悪について誰もが知るべき10の事実 ジュリア・ショウ

  • 悪について、刑事事件の専門家である心理学者が、特に訴えたいテーマをまとめた本
  • 感情のバランスをとるため可愛いと感じたものを傷つけたくなる「キュートアグレッション」など、さまざまな側面からの研究の成果があるし、読みやすくて面白い
  • 筆者自身がバイセクシャルであることもあり、性的指向や不気味な印象を受けやすい人間のタイプなどについても、まとめられている
  • 悪も有益な行動も、同じ人間の性質から生まれる
  • 私の手を借りて、悪に共感できるようになってほしい
    • レッテルを貼ること、心理学でいう「他者化」するのは、共感と理解の妨げになるだけ
    • あなたが悪と考える集団とあなた自身との類似点を深く掘り下げ、それを批判的に眺めながら理解を試みる手助けをしたい
  • ひとつだけお願いがある
    • どうか、人やおこないや出来事を「邪悪」と呼ぶのは止めてほしい
    • それでは、その裏に潜むものの重要な意味を無視することになってしまう
    • それより、考えにくいことを考え、話しにくいことを話し、説明しにくいことを説明して欲しい
    • なぜなら、そうすることでのみ、防ぐのは無理だと他の人たちが考えてきたことを防ぐことができるようになるのだから
    • さあ、悪について考え直そう
  • 性犯罪者と小児性愛者は、同義ではない
  • 小児性犯罪の犯行には環境要因が関わるが、子どもに性的魅力を感じるかどうかは生まれつきで、その欲望を矯正することはおそらくできない(ソース不明瞭)
  • セックスドールなどが与える影響についての研究は、まだ不完全
    • これまでの研究から、児童ポルノ鑑賞が子どもに対する接触犯罪の危険因子であることだけは、確認されている
    • 適切な治療のために、この問題に対する調査を早急に行う必要がある
    • 私たちが焦点を合わせるべきは現実の被害の減少であり、単なる刑罰ではない
  • 私たちが、子供に性的関心を持つ人たちへの対応を話し合うこのプロセスでしてはならないのは、恐怖に駆られることだ
    • 小児・思春期性愛者たちは、人間社会につねに存在し、その数は私たちの想像より多く、身近な存在であったりする
    • それを認めれば、きっと被害を減らす取り組みを続けていけるだろうーそれは加害者になる大人を確実に少なくする取り組みでもあるのだから
    • 大勢の人が小児・思春期性愛者の行動は邪悪だと言ったとしても、彼(女)らはモンスターではない。彼(女)らは人間だ。
    • 容認できない性的傾向を持って生まれてきたが、それを自分で選んだわけではない
    • これと逆のことを示唆する考え方、性悪、治療はもう終わりにしよう
  • 性的嗜好が普通ではないというレッテルを貼るときには、慎重さが必要になる
    • 普通ではないと思われるファンタジーを抱く人たちは、そうでない人たちよりも性的に満足している可能性がある
    • 現在のところ、性的指向を変えられる薬は存在しない

悪魔の文化史 ジョルジュ・ミノワ

  • 悪魔の歴史
  • キリスト教的な神の対立者から、民衆の道化師、ロマン派にとっての「反逆の英雄」まで幅広い悪魔像をカバーしている
  • エロい告白して、自分から魔女として裁かれようとした老婆の話なども載っている
  • ルベール・ミュッシャンブレ『悪魔の歴史12~20世紀』も悪魔イメージの変遷には詳しい
    →アキラくんも「異界の悪魔」扱いされているらしいので、参考図書にどうぞ。

『あしたのジョー』と梶原一騎の奇跡 斎藤貴男

  • 『夕やけを見ていた男 評伝 梶原一騎』に加筆修正したもの
  • 最も有名な漫画原作者の一人であり、子どものような純粋さと暴力性を併せ持っていた男、梶原一騎
  • これは、不器用ながらも人の心に残った、彼の生きざまの物語
  • 彼の作品は、現実の格闘技界と重なって栄光をもたらし、そして破滅させた
  • そう、彼自身さえも

あの人と和解する――仲直りの心理学 井上孝代

  • 対立や矛盾から超越して、新しい解決を創造的に探し出す和解法、〈トランセンド(Transcend)法〉=(超越法)による争いの解決を説いている新書
  • ピースボートらしき船での異文化摩擦や、伝統文化における例、身近な場面での具体的使用例も記載されていて、読みやすく分かりやすい
  • トランセンド法とは、第三者が両者の考え・言い分を十分に聞き対話することによって、対立する二者の目標・ゴールを乗り越えたところに、新たな解決法を見出そうというもの
    • 重要なのは、対立する両者が自分の価値観にこだわらず、互いに共有できる新しい価値観を発見するということ
    • その解決は、人間の豊かな想像力によって様々な方法が考えられるものであり、単なる両者の妥協ではない
  • もめごとには、実はあなた自身のこころの奥底にある葛藤が無意識のうちに形を変えて表面化している、というケースも多い
    • つまり、和解する相手は他者ではなく、自分自身であったという気づきも、和解の重要な視点である
  • コンフリクト:二つ以上のゴール(目標)が、両立、共存しない状況
    • 紛争が定訳だが、日常の人間関係における争いや、個人のなかにある感情の矛盾や対立も含むさまざまなレベルで生じているもの
    • 人間社会につきものの現象であり、それ自体に善悪はなく、関係を見直したり新しい自分を発見する一つのきっかけである
  • 和解法の理念や実例については、弁護士広田尚久さんの本などもオススメ
  • 話し合いは、相手を分かると言うより、人と自分を分けて、違いを明らかにするために重要
    • わかるは「分ける」=わかるということは「違いを分けて、明らかにするということ」
    • 自分を分かるということは、自分を分けるということ。
      • 自分というのは結構複雑な存在で、そんな自分を一つ一つ分けて検証していくと、認めたくなかった自分や、隠しておきたかった自分がひょいと顔を出していくものです。
      • 過去現在強気弱気、どの自分もみんな違う
    • 話し合って「違いに気づく」ことを、恐れてはいけない
    • 自分と考え方や感情のあり方が違っても、「人はそれぞれみんな固有の存在なのだ」と相手を尊重し、受け入れていくこと。
      • それが共感するということなのだ

アフターマン ドゥーガル・ディクソン

  • 人類(と大半の大型哺乳類が)滅亡した後、その文明に駆逐されずに生き残った生物達が、さらに進化し、絶滅で空いた生態的地位を埋めて新たな生態系を構築する姿を描いた本
  • 現在の我々から見ると奇怪な生物の姿を見ることが出来て、楽しい
  • 様々な形で進化し環境に適応したポストヒューマンたちを描いた『マンアフターマン』もあるが、日本語版は絶版

危ない精神分析 矢幡洋

  • 1980年代後半から90年代に流行した「記憶回復療法」の害悪について説いている本
  • ジュディス・L・ハーマンたちカウンセラーが、患者に思い出させた「抑圧された記憶」は、ニセモノであり、彼女たちが作り上げた「物語」=【呪文】だった
  • トラウマの記憶を追い求めた「記憶回復療法」に、大きな問題があったのだ
  • いかなる記憶にも再構成のプロセスが存在しており、また記憶は「他者による暗示や誘導」をすごく受けやすい
  • そもそも精神分析だけでなく、現代社会自体に、問題を機械の故障に見立てるような「直線的因果論・原因強迫」が染み込んでいるのだ
  • しかし、機械的な修理モデルを適用するためには、対象が閉鎖的な系であり、メカニズムを配線図のようなフローで表現できる、故障の位置を限定できる、修理する比較的確実な手段が存在するという条件が必要
  • それに、我々は日常そうした「原因究明型」の問題解決法ではなく「軌道修正ーフィードバック連鎖型解決法」を使っており、原因を探すより、とっさにやり方を変えて成功する方が多い
  • 日本社会が精神分析を受け入れたのは、精神分析の持つ「相手が何者なのかを決めつける」という権威性を欲したからではないだろうか?

アフリカ音楽学の挑戦 伝統と変容の音楽民族誌 塚田健一

  • 多様なものがあるアフリカ音楽を、これまた様々な面から分析した本
  • 儀式の音楽、宮廷音楽、軍楽、そして西洋音楽に無断利用されてる著作権問題もピックアップされていて、内容は充実している
  • 歌詞や楽譜も載っている
  • また、全く対象的な二つの方法論による二つの民族誌が併置されている本でもあるようだ

アフリカ潜在力シリーズ 総編集・太田至

  • アフリカのさまざまな民族の生活を研究している本
  • 多くの民族や問題に触れているため、一つ一つの記述は少ないが、カバーしている範囲は広い。
  • 『1 紛争をおさめる文化』:対面する相手との相互行為のなかで、相手の語りや行為に呼応しつつ関係を構築する文化の存在
  • 他者の操作が不可能であるとして、他者とその場で相互の行為を接続しつつ、ある種の秩序を創出する他者と共在する姿勢
  • ×他者を先取する姿勢は、区切るもの
  • 後者の姿勢は、他民族にレッテルを貼るため、個々人の具体性が捨象されてしまう
  • 『4 争わないための生業実践』:環境や多民族の共生能力が描かれている
  • 関係論的なプロセス、日常の営みそのもね共生的関係を創造的に維持していく
  • 結果的平等を志向する文化である「平準化」:食べ物ない隣人に仕事頼み食べ物あげるなどだが、うまくいかないことも

あなたを見つけるこころの世界地図 ルイス・ファン・スヴァーイ&ジーン・クレアー

  • 感情や概念という地形が描かれている、人生を旅するための空想の地図帳
  • 人生に迷ったときや気晴らしにオススメ
  • 探しているものは、全部うちにあるかも(オズの魔法使い)
  • 完璧な楽園では、人間は満足できない
  • 罪と苦しみに満ち、獣も崇高な理想も存在し、無限に広がる飛散で壮大なすべてを。そこにいたほうが、死んだように平凡な平地にいるより果てしなく希望があり、助けも望めるだろう
  • 私たちは崇高な理想を「幸福」を求めているつもりでいる。しかし、ひとたびたどりついてみると、ぜったいに満足出来ない
  • ロバート・ルイス・スティーブンソン「希望を抱いて旅することは、目的地に着くことにまさる。そして真の成功とは、目的に向かって努力すること」
  • 求めているのは奮闘であり、懸命な努力という刺激だ。たえず、驚き挑むことが必要なのだ
    →【杖】の方向性?
  • 蘭を探していると、ひな菊を見落としてしまう。
  • 「未来」や「新しいこと」「大事なこと」「価値のあること」ばかりに焦点を当てるのに慣れすぎて、ありきたりで自然なことに気づかない。

アンネの日記 アンネ・フランク

  • ホロコースト(ショア)
  • 日記を親友と仮定することで、日々の記述をやりやすくする試み
    →振る舞いの中にだけ存在する少女
  • 最新の版である増補改訂版が、オススメ
    • 父親の編集によっていったん削除された「性の目覚め」や同居者への悪口なども含まれている

「生き方」の値段 エドアルド・ポーター

  • 「生命」「幸福」「無料」「文化」「信仰」「未来」など様々なものの値段を調べた本
  • 単に事例をまとめただけではなく、値段の水面下に隠れている価値や、値段の歴史の記述もある
  • ただ、あくまで軽いまとめに過ぎないので、たぶんあまり生き方の参考にはならないだろう
  • それでも、値づけの失敗や住宅バブルについても触れている点は、評価されるべきだと思う

生き延びるための世界文学 都甲幸治

  • 和訳の有無に関わらず、著者が好きな本を紹介している本
  • 異なる言語を使う書き手の発した言葉でも、それが真実を捉えているとき、僕たちはそこに自分を見る
  • 文学の言葉とは、暗闇の中で差し出された手のようなもの
  • 人生がうまくいかない人々、ただ眠るためだけに親父のタイプライターを叩く自伝的作品、母語ではない言葉でしか作品を書けない作家、美の権力構造、復讐の連鎖、人種差別、黄泉返った妻の帰還、とアリュージョニストに通じる題材の作品が、多く紹介されている
  • 合い間に挟まる筆者の人生回顧エッセイはともかく、ジュノ・ディアスの短編「モンストロ」は軽妙な語り口で結構面白い、

生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 岡田尊司

  • サイバーカラテユーザー向けの本
  • 回避性愛着障害についても、軽く触れている
  • エピソード中心で具体的なハウツーは無いが、読んで気が休まるかも
  • サイバーカラテを愛用しそうな歴史上の偉人が、色々出てくる

いじめの正体 現場から提起する真のいじめ対策 和田慎市

  • 高校の教頭経験者が書いた、いじめの実態といじめに対する政策の誤り、そして実際にいじめに対処した経験をまとめた本
  • いじめをコレステロールのように捉える筆者のたとえには賛否両論がありそうだが、いじめの曖昧さやいじめを根絶しようとする方針が生み出す軋轢の指摘など、有用な部分が多い本である
  • 「自分が嫌ならいじめ」という捉え方だと、被害妄想でもいじめになってしまう
  • 加害者を罰することも必要だが、加害者の保護者との間にいじめに対する認識の齟齬がある場合、トラブルになってしまう
    →【邪視】
  • 教師も全能ではない
  • 子供の自殺=いじめとは限らない。貧困や複合的理由、そもそも遺族が理由を探られたくない場合も多い
  • 第三者や分かりやすい結論を求めるメディアの認識と異なり、現実のいじめは、被害者が加害者を兼ねていたり誤解やすれちがいと凶悪犯罪が一緒に語られていたりと曖昧で複雑
    →いじめは、ラクルラール推奨の【使い魔】呪術

イスラームは特殊か 西アジアの宗教と政治の系譜 柴田大輔 中町信孝

  • 「イスラームは異質な他者であり、政教一致の特殊な社会」だとする西欧由来の捉え方を批判し、それとは異なる眼差しのあり方を追求している本
  • その試みはまだまだ途上だが、イスラーム支配下で他の宗教がどのような社会を築いていたのか・イスラームに受け継がれた西アジアの政教関係の伝統、そして「宗教」概念の見直しなどの着眼点は、重要だろう
  • ただ、肝心の政教一致については「古代ユダヤも祭政一致だった。分離していた部分や時代もあったようだし、エジプトの歴史だと扱いはまちまち」ぐらいしか情報はないのが残念

いつか別れる。でもそれは今日ではない F

  • Twitterで有名になった人(@No_001_Bxtxh)の持論がつづられた恋愛系エッセイ
  • 高校最後の授業、現国の先生の言葉「私の授業も私のこともすべて忘れてくれて結構なのですが」
    • 「死にたくなったら、とりあえず寝なさい。眠れなければ散歩して、夜明けを見に行きなさい」
  • 先輩の台詞「死にそうなほど退屈したら、カメラを持って、街を歩け」
    • 外の世界に対する感度を、意識的にでもいいから自力で引き上げて完成を守るべきだと教えてくれた
    • 自分の周りに起こる全部をできるだけ逃したくないと五感をフル稼働させることなんて、確かにカメラを持って歩くときくらいしかない
      →外部からエネルギーをもらう方法論

「いつでも転職できる」を武器にする 松本利明

  • 著者が、ホリエモンやキングコングの西野亮廣を尊敬している以外は、わりと使えそうな転職ノウハウ本
  • 過去・現在・未来の三点で、自分が対象企業に提供できる価値の根拠を語るストーリーを作るやり方は、就職サポート組織が実際に用いているものと同じなのでそれなりに信用できると思う
    →『呪文』?
  • ただ、転職用としては、関係者のコネの重要性の記述やスキルや人生目標の深掘りサポートがあるリチャード・ボウルズの『あなたのパラシュートは何色?』など、他にもっと良い情報源がありそう
    電子化○ kindleunlimitedで0円

居場所がほしい 不登校生だったボクの今 浅見直輝

  • 自分が不登校から復帰した経験や、不登校になった友人に電話して助けることが出来た経験から、不登校生やその親を助ける活動をするようになった男性の手記
  • 各国の若者が集まる「One Young World」で「困難やつらさは世界中にあるけれど、それが人と人を繋げてもいくし、勇気や元気にも、そして次の一歩になっていく!」と実感した
    • 「つらさ」の中身や、それが生じる背景は違うけれど、「つらさ」は誰もがもっている世界共通の感情なのです
      →共感
  • 頭ごなしに説教したり学校へ行くことだけを話題にすると、不登校生の心を閉ざしてしまう
    • 心を開くのは、生徒自身が興味を持っている分野に一緒になって興味をいだいて話しかけたとき
  • 子どもは「伝えたい」親は「わかってあげたい」と思っているけど、コミュニケーションが上手くいかなくて、親子で一緒に落ち込んでしまうことも多い

居場所の社会学 生きづらさを超えて 阿部真大

  • 居場所作り3つのアプローチ
  • 1 周囲とのコンフリクトの解決で居場所作り:自分を出すが、しっかり相手の話を聞いて落とし所も見つける
  • 2 孤独感を感じない働き方をする:バイク便などの1人で出来る仕事で、なるべく他人と関わらない
  • 3 複数の命綱:家族・友人など複数のつながりで、居場所を作る
  • 過剰適応はよくない。無理をしても、いつか反動が来る
  • 誰かと一緒にいるからといって、居場所があるわけではない
  • 自分だけですることがあるなど「理由がある一人」は、負の属性を帯びない

移民棄民遺民 安田峰俊

  • 『境界の民 難民、遺民、抵抗者、国と国の境界線に立つ人々』を加筆修正のうえ、文庫化したノンフィクション
  • 普通の女子高生にしか見えなかったり過剰に日本に同化しようとするあまり「在日特権」に反対する「ネット右翼」となったベトナム難民、日本人が喜ぶように「愚かで遅れた」姿を日本メディアに演出されていないナマの中国人、服装を否定されて日本での就職をあきらめざるを得なかった若者など「かわいそう」だけでない彼女たちの実態をしっかりと取材している
  • 日本国内で生まれ育ったマイノリティたちは、一般の日本人から常に「あなたは何者か」「なぜここにいるのか」を常に問われ続ける人生を運命づけられている
  • テレビのドキュメンタリー番組やノンフィクション書籍では、しばしばマジョリティ(多数派)の視点からマイノリティ(少数派)を切り取っていく
    • そこでは、対象がいかに「特殊」で「大変」で「弱く」て「かわいそう」かを強調する手法が取られがちだ
    • 人が傷つくことを過剰に恐れれば報道は成り立たないが、読者や視聴者のステレオタイプな認識を再確認する(無難に制作する)ためだけに、答えの分かりきった質問を投げかけて当事者を傷つける行為は、はたして許されるのか
  • 日本でウイグルを支援した組織のメンバーは、大きく三つの「派」に分類できる
    • 「情念派」は、金と人脈と政治活動歴はあるが、右翼的で反知性主義者であり、ウイグル問題を日本のために利用しようとした
    • 「知識派」は、豊富な知識を持っていたが、変わり者で世知に長けないところがあり、さらに知識を誇るだけに「無知」を憎み、「自分の考えだけを正しいと思っている」「高飛車でわがまま」とみられがちだった 
  • そしてウイグル支援の新たな勢力として登場した「ネット派」は善人であったが、結果的に支援組織の独裁と私物化を助長してしまった
    • 彼らは元一般人のために語学力や人文系リテラシーを持っておらず、また人間関係やコネもなかったため、「助けるべきウイグル人」が身近にいた一人だけに絞られてしまったのだ
    • そのウイグル人は、守るべき「絶対的弱者」を体現する現人神として扱われ、その言動は、異論を差し挟めない神聖不可侵の権威を持つようになったのである
    • たとえ全体的な方向性が明らかに間違っていると感じても、個人の価値判断を棚上げして目の前の仕事に全力で取り組む
    • 一方、その仕事がもたらす社会的な影響に対して、当事者としての責任を負う意識はほとんど持たない
    • 「ネット派」の姿はさながら、日本で社会問題化している「ブラック企業」で働く社員たちによく似ていた
    • ある意味で、実に日本人らしく健気で誠実な(ただし「無責任な」)思考と行動様式を持つ人々だったのだ
  • 現代は、従来は「境界」の場所に置かれていた人々による、ルールの書き換え要求が強まる時代になった
    • そんな世界で、私たちが幸福な未来を生きるためには、身近な境界の民たちの存在を認識することが必要だ、と言っておきたい
    • 「親日」と「かわいそう」の視点だけで彼らを分かったような気にならず、彼らが本当に大事にしているものは何かをちゃんと理解することが、今後は従来以上に必要とされてくるはずだからだ
    • なぜなら、国家への尊重と自民族中心主義を混同してしまう危ない考え――すなわち「傲慢」な要素を持つナショナリズムの広がりを防ぐ処方箋は、日本国家の「エラー部分」に住んでいる人たちの存在をしっかりと知ることでこそ生まれてくるからだ
    • 琉球人やアイヌの例を挙げるまでもなく、現代の世界の「動揺」と同じ構図を持つ問題は、日本のなかにも数多く隠れている
    • 私たちが境界の民の存在を知ることは、そんな現在の日本で生きていくからこそ重要なのだ

癒やしと和解への旅 犯罪被害者と死刑囚の家族たち 坂上香

  • 「ジャーニー・オブ・ホープ」――殺人事件の被害者遺族と死刑囚の家族が、ともに旅をし、語り合い、みずからの体験を共有する旅について書かれたノンフィクション
  • 正確には「癒やしと和解の難しさ」としたほうが良いくらい、関係者の心の痛みに重点が置かれた内容となっている
  • ただ、性的虐待を含むひどい虐待やわかり合えない対立のことも書かれているので、人によっては読むのがきつい内容かもしれない
  • 「ジャーニー」の中にも、怒りに燃える被害者に唐突にゆるしの呼びかけをしたり、許したと語る人もそのために十年以上時間かかってたりと事情は単純ではない
  • 「犯罪を犯す人は、人生のある時点では皆被害者だった」
    • 言い換えると、被害者に対する社会的なサポートが行き届き、被害者が回復しやすい状況を整えることこそが、犯罪の防止につながるのだと思う
    • ただ印象論を語るだけではなく、具体的な調査が行われるべきだし、情報も(人権を十分に考慮した上で)積極的に公開されるべきだ
  • 死刑や犯罪の背後には、人種差別、貧困、それらからの薬物やアルコール依存による現実からの逃避の問題もあり、深刻
    • 笑いながら殺人の事を語る死刑囚ジョンも、実は、胎児性アルコール症候群(Fetal Alchol Syndrome,FAS)という先天性のアルコール障害を抱えていた
  • 死刑は、嫌なことや辛さをいっぺんに吹き飛ばすことが出来るような、魔法の杖ではない
    • 死刑は、被害者の問題を何も解決できない
    • 遺族の多くは死刑の執行を見届けることで、事件に幕を下ろすことが出来ると信じている
    • でも、執行が終わったからといって、悲しみや苦悩が消え去るわけではない
    • いままで「犯人が死刑にされること」にしがみついて生きてきた人々は、急に生きる目的を失ってしまう
    • そして今度は、「もっと苦しめる方法があったはずだ」と一種の幻想を抱くことになり、その幻想にしがみついて生きるしかなくなるのだ
  • 被害者が感情をぶつけることの出来る場や機会は、この社会に十分にあるといえるだろうか?
    • 「死刑はなくせない」と社会が主張するとき、私たちは被害者が癒やされるための支援を放棄し、被害者にかたくなに心を閉ざして生きることを、無意識に強要しているに過ぎないのではないだろうか
    • 被害者遺族は、ありのままの感情を否定せず、みずから感情をそのまま受け止め、そしてそれをまわりに受け止められて、はじめて先へ進むことが出来るようになるのだと思う
    • 社会は、被害者の声を固定観念的な「被害者」という枠に押し込めて見るべきではない
    • その(時間敵変化や環境の影響も含めた)多様さや幅を、そのまま、まず受け入れる努力こそが必要とされているのではないだろうか?
  • 「ジャーニー」を開催したMVFR(和解のための殺人被害者遺族の会」
    • 死刑囚の家族も被害者遺族と捉えており、被害者遺族と死刑囚の家族という、一般的な考え方では相容れない者同士が出会う場を提供した
    • 「被害者の権利」にも反対:社会を単純に、被害者と加害者、すなわち良いものと悪いものという二極構造におとしいれてしまう危険があるから
    • ただ、そのメンバーの許しに対するスタンスもさまざま
  • カリフォルニア州サンディエゴのドノバン刑務所・NGOアミティ(友愛)の試み:心理療法で「被害者」であったことを受け入れ、それによってはじめて「加害者」としての自分と向き合えるようになっていく
  • 死刑をテーマにしたソシオドラマ(社会劇):サイコドラマ(心理劇)の一種。みずから参加する劇を通じて、人種的偏見などを解決しようとする集団心理療法
  • 感情のおもむくままに行動するとすれば、正義なんて成立しない
    • もし僕の行った殺人が倫理に欠けていると言うなら、そういう僕を殺し返すことは、僕の犯した過ちと変わらないのではないだろうか?
  • 長い時間をかけて問題と向き合う中、死者の声やお告げを効いて、恨むのをやめたという人々も
    →イマジナリーフレンド的な現象?
    電子化×

隠喩としての病い エイズとその隠喩 スーザン・ソンタグ

  • 神話と隠喩は、人を殺す
  • 病気の患者に押し付けられるメタファー(イメージ/スティグマ)と、その逆に、メタファーとして病気を用いることへの批判
  • 癌や結核についても触れており、この本のおかげで病気の扱いが改善されたらしい

右傾化に魅せられた人々 山本賢蔵

  • 2002年「ルペンショック」の頃のフランスの移民問題を取材したノンフィクション
  • 悪いところも含めて、移民と「国民」側の両方をしっかり描いているのが、特に良い
    • 独立国のように郊外の団地に閉じこもる移民たちの姿も、「向こう側」から見ると同じ事実でも全く違って見える
    • グローバリズムによる変化と「異国」での暮らし、「差別が禁じられている」はずなのに現実に感じられる差別への苛立ち、そして就職できず不安定な生活への不安・・・
    • 真逆のはずの国民戦線側と移民側の両者が、双子のように良く似ている点があることが見えてくるのだ
  • フランスの過去は、日本の未来、いや現在の姿なのかもしれない…

〈裏〉日本音楽史 異形の近代 齋藤桂

  • 近代日本の音楽史にまつわる奇妙な考えや出来事をまとめた本
    • それは街の裏通りのように、街を知るためには触れることが不可欠なものである
  • 人が論理では割り切れないものを抱えているように、音楽は非合理なものを引き寄せる力を持っている
  • 不謹慎だから地震の原因とまで言われた流行歌、機械が弾いてもピアノのタッチは変わらないという「ピアニスト不要論」、トゥラン運動・ムー大陸や大東亜共栄圏、外部のまなざしに翻弄された手毬唄(わりと歴史浅い)など、けっこうアと関係ある話題が多い
  • 姥捨ての話である『楢山節考』だが、その作者の深沢七郎は、指摘されるまでそれを残酷だと考えたことはなかった
    • ミステリー・金田一耕助シリーズのように、閉じた共同体を外部から見る視線があって初めて、そこに残酷さが生じたのだ

江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 原田実

  • 「創られた伝統」という【呪文】の正体を解説し、類似例を挙げている本

エスニックジョーク 自己を嗤い、他者を笑う クリスティ・デイビス

  • 世界で語り継がれてきたエスニックジョークを、様々な角度から分析した本
  • 自尊の裏返しである自嘲、アイデンティティ確立の手段、コミュニケーションの潤滑油、心の成熟度を測るものさしなども、多様な側面を伝えている
  • エスニックジョークは、民族集団の多様性を垣間見るチャンスを提供してくれると同時に、集団に付与されたステレオタイプなイメージでその集団や個人を判断することの危険性も教える
    • ステレオタイプ的に決めつけるエスニックジョークをたくさん耳にしたりすると、人はそのような見方に対してかえって懐疑的になることがあるもので、そこからステレオタイプを再考するきっかけが生まれる
  • エスニックジョークは、社会のなかで起きていることを測り、記録し、かつ世に知らしめる「社会の温度計(social thermometer)である
    • 人間の行動を規制・形成する「社会の温度調節器」的な力は、エスニックジョークにはない=温度計を砕いても高い気温は下がらない

エリクソンの人生 アイデンティティの探求者 L、J、フリードマン

  • 自らに「自分の息子」=エリク・ソンという姓を命名し、自分自身の父となった精神分析家の伝記
  • 『アイエンティティ』の概念を提唱した学者自身、父親が不明で自分のアイデンティティに悩む存在であった
  • 研究書であり、小説のように読んで面白い本ではないが、彼について詳しく知りたいなら必読
  • 存在が隠された彼のダウン症の息子、ニール・エリクソンと代表作『子ども期と社会』への関わりも少し書いてあるので、昔のダウン症児童の扱われ方の資料として使えなくもないだろう
    →クレイ

横幹〈知の統合〉シリーズ 横幹〈知の統合〉シリーズ編集委員会・編

  • 通常の学問のくくりを超えた、いわゆる学際的な活動によって、人間・社会の課題を解決しようというシリーズ
  • 専門的な部分もあるが、ページ数が少なめで読みやすい
  • 科学技術を寄せ集めても、課題の本質的な解決には至らない
  • 多様な諸問題の根底にあるものを見据えるための科学、細分化された知を統合する新しい知、すなわち「統合知」が必要
  • それとともに「知を利用するための知」の確立と整備も併せて志向することが重要
    →サイバーカラテ?デルゴの書架のインターフェイスであるミラ?
  • 『カワイイ文化とテクノロジーの隠れた関係』:カワイイのこれまでと日本独自の価値としての可能性、工学的な観測方法の模索、女児向けアーケードゲームの「なりたい自分になれる」VRな特性など
    • 「カワイイ」は「かわいそう、不憫」といったネガティブな意味とポジティブな意味の両方を持つ
    • その核となるのは、興福寺阿修羅像のような「仏に敵対する相手の心に寄り添い、その悲しみを共有する美学」ではないか?
    • 同じく興福寺四天王像に踏みつけられている邪鬼たちも「カワイイ」し、彼らへの共感を語るブログも多い
    • 醜さや悪――いわば「異質性」や「対抗性」をも愛しさの中に包み込もうとする感覚は、日本というローカリティの基層を貫く感覚と言ってよいだろう
    • 「カワイイ」という価値は、むしろ、未熟さや稚拙さをいとおしみ、醜さや敵対性をも包摂しようとする心構えの中にあるのであり、クールジャパンとは対極にあるもの
    • 「カワイイ」とは、それ自体で自律的に存在するのではない
    • 「カワイイ」が「クール」だとするなら、それはマクルーハンが語るような「クール」であり、人々がそこに主体的に関わり、コミットし、自己を投企することで、初めて生成する価値である
    • 出口弘「日常性の再構築のメディアとしての日本型コンテンツ」
      • 神々の物語に代わる物語を、我々自身が作り出すようにならなければ、「正義」や「悪」の物語からは自由になれない
      • 「正義」という判別の軸の中で、物語の包摂と過剰包摂あるいは排除が定まる世界では、「カワイイ」もまた相対性を失い、明確な権威の輪郭をまとわざるを得ない
      • だが、「日常系」は、トップダウン型で善悪二元論の「大きな正義」から、人々を自由にする
      • 名言「かわいいは正義(『苺ましまろ』)は、唯一の正義の概念をこなごなに粉砕し、それぞれの「カワイイ」が、それぞれの正義をもたらすのだと宣言したことになる
      • 「カワイイ」には、包摂も過剰包摂もなく、それぞれの「カワイイ」があるに過ぎないからである
      • 正義とは、その程度の概念にすぎないのだという相対化が、日常性のコンテクストの中で行われたのだ
      • 「日常系」は、それぞれの多様な日常・多様な価値を肯定し、その併存を可能とする
      • われわれの社会が根源的に変わり、人びとが自らの力で自らの物語を描き、既存の運命のフラグをへし折ることができるようになるためには、いま日本がたどりつつある日常性の物語の、地球規模での爆発が必要とされるのだ

お芝居から生まれた子どもシェルター 編集代表:坪井節子 編:東京弁護士会

  • 東京弁護士会が設立した特定非営利活動法人「カリヨン子どもセンター」と、子どもたちの権利侵害の現実と、それに対する支援の必要性を訴えるために上演された劇シリーズ『もがれた翼』の話
    • 劇を通して、子どもたちと大人たちが対等な立場で活動してきた
      電子化×

男おひとりさま道 上野千鶴子

  • 男性が一人で幸せに生き、一人幸せにで死ぬための本
  • 男性は老後について準備しない傾向にあるが、配偶者や友人との死別など「おひとりさま」には、誰もがなりうるのだ
  • ほぼサラリーマンの定年退職の話だが、データに基づいたしっかりした分析は、どんな人でも一定の参考にはなるだろう
  • 男性は男同士ではつるまない、ひとりひとり背を向けあって会話も少ない傾向がある
  • そんな男性が集団に溶け込むのは、女性ばかりの集団の中にひとりで参入するとき
    • ハーレム状況で、自分ひとりが「お山の大将」か「ペット」になれたら、関係は安定するようにみえる
      →アキラくん?
      • そんなふうにならないための指針・選択縁づきあい「男の七戒」もある

〈面白さ〉の研究 世界観エンタメはなぜブームを生むのか 都留泰作

  • メアリー・ダグラス『汚穢論』(おわいろん)に依拠しているらしい本
  • 肝心の「世界観エンタメ」の定義があやふやだが、独特の視座が少し面白い
  • 作品をお金に換えられるものにするには、「送り手」の「私」を「(作品)世界」を媒介にして、他者の内的経験に接続していくこと
  • ホラー感覚とは、汚いもの・恐ろしいものを遠ざけている「境界」を感じる感覚
  • 人間は、無価値なもの、汚いもの、危険なものを「外部」へとシャットアウトし、自分たちの安心出来る領域「内側」を守ろうとする。
    • そういう認識が、人間が正気で世界と向き合うための基礎
    • その内外の区別は、文化人類学の重要なテーマでもある
      →共同体の境界、アキラくんのペット?異邦人(ゼノグラシア)の価値?

か行

科学はなぜ誤解されるのか 垂水雄二

  • 科学的な情報がなぜ上手く伝わらないのか、というその仕組みの解明と、その例としての進化論・利己的遺伝子・ミーム説の本
  • 科学情報の伝達の話より、後半の進化論などの話の方が詳しくて面白い。
  • 集団に流されやすかったり、思い込みに縛られる人間の特性も、古代の狩猟時代では有効な機能だった。
  • 社会ダーヴィニズムは、誤解と我田引水によるもの
  • 人々は、進化論を自分たちの時代を肯定する説としてしか受け取らなかった。
  • ダーヴィンの進化論では、生き残る物が優れているとは限らない。進化は進歩ではないし、直線的な序列ではない。
  • ミームの媒体(ヴィークル)は、個人ではなくメディアではないだろうか?

書くことについて スティーヴン・キング

  • ホラーの名手が書いた、小説の書き方心得の本
  • ほぼ自伝であり、小説を書くための心構えばかりだが、技法の話もしっかりあるし参考文献も載っている(技法はほぼ英文のものだが)
  • そして話に出てくる小説が読みたくなる本でもある
  • ものを書くときにもっとも頼りになる"理想の読者"
    • それは実在の伴侶の場合もあれば、思い出に残る死者の場合もある
    • "理想の読者"はつねにあなたのそばに寄り添ってくれるし、はあなたが自分の殻から抜け出す手伝いをし、あなたが読者の目で書きかけの原稿を見る機会を与えてくれる
    • 独りよがりを避けるための、これはおそらく最良の方法だろう
    • あなたは自分で全てを取り仕切り、そこにはいない観客に向けて演技を披露することになる
      →イマジナリーフレンド?
      電子化×

カサンドラ症候群 身近な人がアスペルガーだったら 岡田尊司

  • 「カサンドラ症候群」を、その概念の限界まで含めて、くわしくそして分かりやすく解説している新書
  • 著者の得意分野である愛着スタイルやパーソナリティ障害との関連性も含め、アスペルガー側の問題だけでなく、「患者」側の問題やその対処法をも指摘している
  • ただ、相手との関係改善を志向しているので、既に自分の感情でいっぱいいっぱいなカサンドラ「患者」(当事者)には、すぐには受け入れがたい本かもしれない
  • カサンドラ症候群の問題を通して、相手を幸福にすることで自分も幸福になる技術を学び、身につけてほしいと願う
  • カサンドラ症候群という概念の限界は、その要因を夫の共感性の乏しさという特性にのみ求めたことである
    • だが、現実の問題はそれほど単純ではない
    • 職場のストレスや経済優先の価値観、親や実家との関係もかかわっている
    • そして何よりも、お互いが余裕をなくし、「お前が悪い」「あなたのせいだ」と言い合う状況が、カサンドラを生んでいるとも言える
    • 夫がアスペルガーなので、妻がカサンドラになったっという認識だけでは、本当の理解にも、愛情や共感を取り戻すことにもあまり役立たない
    • 必要なのは、相手の問題を糾弾することではなく、理解し、許し合うことに思える
  • ただ、残念ながら、二人の人間がかかわる問題である以上、一人の努力ではいかんともしがたい場合もある
    • あなたが十分に努力したのであれば、ピリオドを打つことも重要な選択肢だ
    • その場合も、あなたが相手の問題だけでなく自分の問題にもしっかり向き合っていれば、必ずこの苦しい体験が生かされるときが来るだろう
      電子化○

語り・物語・精神療法 北山修 黒木俊秀

  • ナラティヴ=「語り」と「物語」について、心理療法の側面から研究している本
  • 専門書だが、部分的には易しいところもあるし、それほど読みにくくもないと思う。
  • 辞書的で、どこでも誰にでも通用する不変で普遍の意味で流通する「固い言葉」より、その場でしか通用しないような意味を持っている「柔らかい言葉」の方が大事な場合もある
    →アズーリアの呪文
  • 治療者が「物語に無自覚に組み込まれ、具体的にその物語を生ききるという過程を通して、私たちが本物の物語のなかで出会う可能性が生まれるのかもしれない
  • ブルーナーのフォークサイコロジー:人間は文化を通して心的な能力を実現し、心理世界を構成している
  • 病んでいる人たちに、いつも同じ「はまってしまう物語」を繰り返させるのではダメ
  • いつも新しい方向へ、少なくとも多少は「次の一手」を選択する余地があるような方向性へ物語が展開していくような運動を大事にする
  • あるいは、必要なのは「物語の力」や形式ではなく、語りあうことや「語りの場」なのかもしれない

カルトのかしこい脱け方・はまり方 青山あゆみ

  • いくつものカルトを体験した著者が書いた、カルト経験の活かし方の本であり、カルト経験者がカルトから離脱しやすくなる方法も書かれている
  • 本人以外がカルト離脱を勧める場合は、日本脱カルト協会『カルトからの脱会と回復のための手引き〈改訂版〉』など他の本をあたる方が良いだろう
  • だれもがカルトにはまる可能性があるから、それをどう創造的に通り抜けるかに目を向けたほうが良い
    • カルト現象は、人類社会全体にとっても、大きな通過儀礼になり得る
  • 近代合理主義や資本主義経済やナショナリズムなど、主流文化のなかにも本質的には巨大なカルトにすぎない”信仰”もたくさんあり、その実害を見落としてはならない
    • もともと大小さまざまなカルトやカルチャーが共存して、多様な世界を作り出しているのが人間社会
    • 本来は、主流文化もカルトもそういう対立を切磋琢磨のエネルギーにして、社会全体の向上に役立てるのが健康な姿
  • トランスパーソナル心理学の「前と超の混同」を避けよう
    • 「無心」と呼ばれる判断停止・思考停止は取扱い注意
    • 合理的な思考と、思考という心のレベルより深い魂のレベルの経験とを組み合わせることが、本当の意味の「超我」に達する道
  • 「精神世界のモノ化」批判:”霊的物欲”はダメ
    • 特別な能力や境地をガツガツと追い求めたり、自分にないものを手に入れれば物事が解決すると考え方が変わらない教えは偽物
    • 何かで自分を埋め合わせようとする、そのパターンが問題
    • 自然な欲求は適度に満たすことが必要
  • 心や体の習慣を含めて、自分と世界のありさまをじっくり見直す練習をすれば、当たり前だと思っていた現実が、神秘と奇跡に満ちた世界であることが分かってくる
  • ”時間の微分”:今ここに集中することで体感する「永遠の現在」
    • (呼吸に意識を向けるなどして)意識が少しもブレることなく現瞬間に定まった時、それは宇宙の全時間に通じる窓になります。
    • シャーマニズムにおける世界を止める=観音菩薩の「観」
    • ウィリアム・ブレイク「無垢の予兆」ひと粒の砂に世界を 一輪の野の花に天国を見る てのひらに無限を ひとときのなかに永遠をつかむ
      →氷血呪?
  • どの瞬間も、宇宙開闢以来はじめての瞬間
    • あなたも、ただ一人だけのユニークな人間だから、新しく試してみないと何が無駄だと言えるはずがない
  • 自然界とのつながりを失えば、歪んでしまう
    • 自然とのつながりを持たないカルトはダメだし、脱カルトにも自然を体感することは大いに役立つ
      →ティリビナ人と第八世界槍の復活?
  • 末世だからと急ぐ必要はない
    • 変化が必要な時代であればあるほど、さまざまな形で変化のタネがまかれ、それぞれに芽を出しているに違いない
    • あなたが出会ったカルトだけが唯一の道だなどという可能性は、限りなくゼロに近い
  • この世界は幻ではない。
    • 魂の深いレベルでは、すべてのものは一つの意識だが、それは現世がどうでもいいという意味ではなく、社会の改革や改善を放棄する理由にはならない
    • 宗教体験の真価は、それが日々の生活にどう生きてくるか、一般社会にどう役立つのか、とりわけ人類全体の向上にどんな実質的貢献が出来るのか
      →トライデント批判?
  • 社会としっくりこないことを恐れるな、今は違いを生かして認め合う時代
  • カルト解毒法:心から生きがいを感じられる生き方をすること、宗教的な教義や実践について見聞を広げること、これからは悟りが当たり前の時代になると認識すること、自然なものでカルトを代替する物を用意する

「かわいい」工学 編著:大倉典子

  • 「かわいい」を工学的に追求している本
  • 薄くて読みやすい
  • 「かわいい」の文化的背景や、「かわいい」人工物の系統的計測・評価方法を模索する実験の結果に加え、脳波で動く猫耳やつけ尻尾などの拡張身体や「かわいいことを前提としたロボット」の研究事例のコラムもある

監視カメラと閉鎖する共同体 朝田佳尚

  • 副題「敵対性と排除の社会学」の通り、監視カメラを設置した共同体についての研究をまとめた本
    →第五階層も、監視カメラが設置されていた(サイバーカラテ新生に使用。まだあるかは不明)
  • ギデンズやベック『〈私〉だけの神――平和と暴力のはざまにある宗教』、K・ポパー『開かれた社会とその敵』などを下敷きにしながら、共同体について語っている
  • 社会の監視化は必ずしも中立的なものではない
  • 監視社会論は、情報監視が進むことを予防という論点と結びつける
    →フィルタリング、アーキテクチャ権力
  • 監視カメラは、乱入者を防止し、対立が起きることを事前に制御、意識以前の水準で中立的に対立が防止されている
    →フィルターバブルとも共振
  • 監視カメラ普及の経緯と、学問的なその位置付け
    • 設置に関わったはずの人々も、その設置動機を自分でも理解していない?複数の立場の人が関わっているはずなのに
    • 外部から用意されたシナリオを、地域の文脈や不安語りが支えている
  • プリチャードによる研究:ザンデの毒卜占(鶏占い)と監視カメラの類似
    • 毒を食べさせた鶏を観察して、妖術師を発見したり人生を予測する占い
    • 意図の正当化。質問に対する常識的な理解を権威付け、事実に仕立てあげる
    • 占いを仕切っている者の意図に観察結果が当てはめられることもあれば、卜占で人々の状況の定義に抜本的な変化がもたらされることも?
    • 監視カメラを正当化する共同体において、大半の住民は監視カメラの「効力」を信じていない
    • それでも、監視カメラを信じるわずかな者と戦略的な支持者、さらに特殊な技術がもたらす他者表象が組合わさると、そうした少数者が持つ状況の定義が現実化していまう
  • 監視カメラに魅力があるとすれば、共同体が構成した閉じた現実を自動的に維持することに、最も効果的な役割を果たし得るからだろう

機械より人間らしくなれるか? ブライアン・クリスチャン

  • 「チューリングテスト」で、サクラ役の人間に与えられる「最も人間らしい人間」を讃える賞を狙った人の本
  • 「人間らしさ」を、私たちは何によって判断するのだろうか?
  • 内容はあまり濃くはないが「機械が人間らしくなるなら、人間と機械は『人間らしさ』を競い合う『良いライバル』になれば良い」という筆者の思想がユニーク
  • 簡単な応答しかしないのに、名カウンセラーとして認定された機械の話なども出てくる
  • 後半は、難しい情報圧縮の話も出てきてくるが、読み飛ばしてもあんまり問題無い

帰化植物の自然史 侵略と攪乱の生態学 森田竜義

  • セイタカアワダチソウなど、本来の生態系の外部から持ち込まれる「帰化植物」について研究した本
  • 侵入と絶滅を繰り返しながら移動していく「放浪種」(セイヨウタンポポなど)もあり、その生態はさまざまで面白い
    →ティリビナ人?

奇想の陳列部屋

  • 世界劇場、中世の王侯貴族の個人書斎。溢れんばかりのカラー写真と挿絵で紹介する。
  • 天然・人工、古代の神秘・最新の科学、生と死、あらゆるものを混濁させ調和を目指したその結晶を、世界劇場と呼び愛でた。
  • 特盛り感が、アリュージョニストに類似してる。たぶん。

希望学 東大社研 玄田有史・宇野重視:編

  • 希望とは何か、希望について考えることでどのような視点が得られるか、など希望についての学問を確立しようとする試みの本(全四巻)
  • 理念や概念の話だけでなく、町おこしなど具体的な手段や経済の面からも、希望にアプローチしようとしている
  • 法学者来栖三郎の議論、便宜的手段・フィクションとしての「意思の自由」などにも少し触れている
  • 希望は、単に個人の内面の問題にとどまることなく、広く社会とつらなる問題として考える意義を持っている
  • また、これは希望の意義や価値を認めつつ、その限界や危険を同時に指摘しているシリーズでもある
  • 希望は逆説をつねに孕んでいる、単純な理解を拒絶する「怪物」である
    • 希望は「まだない」からこそ、逆に求めるべき存在として、たしかに「存在」している
  • 幸福は維持したいものであるのに対し、希望は変革を求めるものである
  • 希望とは、具体的な「何か」を「行動」によって「実現」しようとする「願望」である
    • そしてそれらは、個人を超えて社会の状況によって定義される
  • 希望の定義は困難だが、実現性や外部性(内部性)で類型化は可能
  • 共同体にかかわる複数の個人によって共有された希望とは、社会の望ましい変革の方向としての、一つの物語である

脚本家が教える読書感想文教室 篠原明夫

  • 苦手な人向けの、読書感想文の書き方
  • 著者が、読書感想文の書き方を教える教室を開いているだけあって、ノウハウが分かりやすい
  • 原稿用紙を短めの行に分けて書く「フレームワーク」のメソッドを用いて、わかりやすく読書感想文の構造を分解しているのが特徴
    • 本を選んだ理由、あらすじ、良いと思ったところとその理由、本を読んだことをどうこれからに活かすかなどを、順序どおりに組み合わせるだけで、読書感想文が書ける
      →『杖』による『呪文』の零落?
  • 読書感想文を書くのはなんのためか?というところ(動画を面白くするためなど、自分のやりたいことと結びつける)から、本の選び方、大人にしてほしい対応や言葉の言い換えリストまで、サポートが行き届いているのが良い
  • 感想文の枚数や、本の種類に合わせた見本も豊富である
    電子化○

キャラ化する/される子どもたち 土井隆義

  • トリシューラ、あるいは無数のキャラに分裂した【シナモリ・アキラ】向けの本
  • 現代は、一貫したアイデンティティから、その場に合わせて変える「キャラ」の使い分けに
  • 社会が価値観を押し付ける圧力が弱くなり、その場の人間関係による承認に依存するように
  • 「不気味な自分」失敗した自分に向き合おう
  • 異質なモノを排除するために作られた「境界」の内部でも、自然と「不気味な存在」は産まれ出る
    →『シナモリ・アキラ』の一人、【鵺】の種族【無貌の民】
  • 「自分らしさ」は、想像の臨界を越えて変化していくもののはず

求人詐欺 今野晴貴

  • ブラック企業対策プロジェクトの共同代表が書いた本
  • 内容と実態が異なっている詐欺な求人票は、ほとんど取り締まられていない
  • 国が、求人票の項目をより緻密なものにすれば、それだけで求人詐欺は防げるはず
  • まず、話が違う契約書には絶対に合意しないこと
  • 無理矢理サインさせられても諦めず専門家に
  • 働く側には「時給計算の習慣」を身に付けて、労働条件を常にシビアに考えるクセが必要
  • 求人ページプリントアウト、やりとりメモなど常に記録をとることを心がけよう。録音がベスト
  • 自分と誰かのやりとりだけなら、録音は完全な合法
  • たとえ辞めた後でも、最低2年は給与詐欺分を請求出来る

境界性パーソナリティ障害 サバイバルガイド アレクサンダー・L・チャップマン キム・L・グラッツ

  • いわゆる「メンヘラ」の人と、その身近にいる人のための本
  • そして、サバイバル、文字通り「生き延びる」ための本である
  • 自殺したくなった時の対処法や、リラックス法もあるので「メンヘラ」以外の人にも役立つ

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書 ばるぼら

  • 地獄インターネット含めたインターネット入門
  • ネットネタの一部の理解の手助けに

「共感報道」の時代 涙か変える新しいジャーナリズムの可能性 谷俊宏

  • 傾聴を通じて取材相手と感情を分かち合い、相互理解を目指す報道「共感報道」について紹介している本
  • 一般人からすれば、むしろ今までそういうスタンスを考えもしなかったことの方が驚きではあるが、それはそれとして、取材の実態を赤裸々に書いた内容はわりと面白い
  • 共感する力の見つけ方・三種類
    • 傾聴:自分の関心をすべて相手に向け、話に耳を澄ます
    • 共感:わが身を相手の立場に置き換え、頭と心で相手を受け入れる
    • フィードバック:自分が感じたこと、考えたことを適切に伝えるとともに、当事者になったつもりで自分のできることを可能な範囲で実行する
      • 混乱する取材相手が見落としている視点、知らない知識、入手しそこなった情報などを温かい言葉を添えて、伝えるだけでも良い
      • 取材相手の法的権利を守ってくれる弁護士グループを紹介したり、問題解決に一緒に取り組んでくれる市民団体に口利きをしたりすることでも良い
  • 実行のステップ
    • 取材対象に同情する
    • 相手の境遇を尊重し、相手の立場を我が身と置き換える
    • 相手を否定せず、良い悪いの評価を下さず、相手の話に耳を澄ます
    • 「一人称」で語り、自分を開示
    • よりそいながらも、理解できない感情や話があるときは相手に伝え、深い理解につなげていく
      • このとき、感情の渦に頭まで巻き込まれないこと。冷静に
    • 取材の成果を報道し、相手にフィードバックする
    • その結果返礼を受け、ねぎらわれる
  • ただし、共感報道には、感情を遮る客観報道との切り替えが柔軟に出来ないと、ミスしたりストレスをためたりする危険がある
    • 心に大きな悩みや正確にひどい歪みがある場合、知らず識らずのうちにそれらの悩みを取材相手に反映したり、性格の歪みからくる自己防衛の態度を過剰に見せたりすることがあるからだ
    • しかし、心に問題や性格の歪みを全く持たない人間はまずいない
    • 自分を知り、特徴的な思考と情動のパターンを前もって理解しておくことが必要
      電子化×

狂気の歴史 ミシェル・フーコー

  • 狂気や狂人が「どう扱われてきたか」その変遷を書いた本
  • 前提知識が必要で、これだけ読んでも何について語っているのか良く分からない
  • 狂気は、人間の魂の最高の力をわかつ十二の二元性の一つになっている
    →マレブランケ?
  • 人間の条件のしるしは、非理性である
  • それは、人間が閉じ込められている悲惨さ、真と善への接近をさまたげる弱弱しさを認めないこと、そして、自分の狂気がどんな性質であるか知らないこと
  • 中世の慈善にとって狂人が神聖だったのは、彼らが「悲惨(ミゼール)=貧困」が持っている正体不明の力を共有していたから
    →矮躯(ミゼット)のガドール?
  • 昔は、別世界からやってきたから、狂人はもてなされたが、今後は閉じ込められるだろう
  • 狂人はこの世界から来ているのであり、貧乏人、あわれな人、放浪者の仲間なのだから
    →【異言者】(グロソラリア)になったアキラくん?

グローバル時代の人的資源論 渡辺聰子/アンソニー・ギデンズ/今田高俊

  • 社会の変化にまつわるモチベーションの変化と、組織がそれへどう対応するかについての本
  • 少しだが「ゆらぎ」についての重要な記述がある
  • 21世紀の組織に要求されるのは、自力で自分の構造を変える自己組織性である
    • 組織が、管理型のそれから支援型のそれへと変化し成員および組織のエンパワーメントをはかることが可能となるためには、状況に応じて自在に変化できる体質を備えていなければならない
    • 極端なことを言えば、外圧でなく自己変化出来る企業だけが生き残る
    • 自己の内に変化の兆しを読み取り、これを契機に新しい構造や秩序を立ち上げて初めて自己組織的であると呼ぶにふさわしい
    • 自己組織システムの特徴は、管理がメインではなく「ゆらぎ」を許容し、これらのシナジーによって新たな革新や秩序を組織内に構造化することにある
      →ゆらぎの神話?
  • 変化するからこそ生きている実感が得られるのである
  • 人が生きている、組織が存続するとは、自らに対する差異を生み出しつつ生成変化(スクラップ・アンド・ビルド)を遂げることである
    • 自己に対して差異を生じることは、既存の自己を問い直し自己を分裂させる(非自己化する)ことである
    • 外圧的変化ではなく、自ら別の存在に生成変化することに対しては、人も組織もそれほど否定的にはならない
    • というのも生成変化によって、人や組織は自己確認(アイデンティティ)がおこなえるからである
      →【紀人】の内的闘争?
  • 自己適応による変化、つまり「自己組織化」のリアリティは「ゆらぎ」と「自己言及」にある
    • そして、自己組織化パラダイムとは、これら二つを軸として現実認識の転換をはかろうとする試みである
    • 自己組織化のもう一つの特徴である「ゆらぎ」とは、単純化して言えば、意図せざる結果が組織に入り込む余地のようなものである
      • 右へならえしか出来ない繊毛しかないゾウリムシが方向転換出来るのは、ゾウリムシの細胞内電位にゆらぎが含まれ、インパルスが発生するおかげである
    • ゆらぎはシステムの外からの影響によってではなく、それ自体の構造に起因して発生している
    • 単にゆらぎを強調するだけでは、世の中をランダムなものに委ねる無政府主義に陥ってしまいかねない
    • ゆらぎを新たな秩序へと変換する仕組みが必要であり、それを担うのがゆらぎを自己強化する触媒作用、つまり自己言及作用である
      →再帰性?
    • これはある人物が引き起こした組織のゆらぎがきっかけとなって他者とのシナジー(協同現象)が呼び起こされ、さらに第三者もこれに巻き込まれて、次々とそのゆらぎ行為が組織(社会)に増幅していくことをあらわす
    • 例:最初はごく少数の若者の「変則行動」に過ぎなかったヒッピー文化の「長髪ジーンズ」も、今では新たなライフスタイルとして日本に完全に定着している
      →リールエルバのシナモリアキラ?
  • 組織のリーダーにとって最も重要なことは、組織内の本当に支援すべきゆらぎは何か(これを見抜く基準は一概にあらわせないが)それがシナジー(協同現象)につながるか否かを見極めることである
    • 組織をつぶさに観察することにより、ある動きが組織全体に広がっていくか否かが見えてくるので、このような機を見逃さず、方向性を与えるのがリーダーの役割である
  • リーダーに求められるのは、「秩序パラメータ」すなわち秩序を形成するうえでの道の定数としてのビジョンとなることである
    • 個の営みを優先する組織では、組織の方向性やシステムは二の次になる
    • しかし、メンバーが自由に振る舞うと言っても、自己の行為がビジョンからどの程度乖離しているのかあるいは接近しているのかを測定する基準=「秩序パラメータ」は必要となる
    • つまり、ビジョンを共通言語とし、互いの差異を議論し、新たな付加価値を見出す営みが重要である
      →【絶対言語】?
  • ゆらぎ型組織の条件
    • 脱管理のゆらぎ型組織の例:「システムは最後」「アンチ犠牲精神」のモットーを掲げた神戸製鋼のラグビーチーム
    • 創造的な「個」の営みを優先させる
    • ゆらぎを秩序の源泉とみなす
      • マクロ視点では、ゆらぎは全体の構造やシステムからは邪魔なもの切り捨てるべきものとなるが、ミクロ視点から見ると、ゆらぎのなかにはランダムなもの以外にも系統的な歪み(バイアス)を持ったものも存在する
      • ゆらぎがランダムなものであるか、系統的なバイアスを有するものであるかを見極めるためには、ゆらぎの意味を自己言及的に考えることが必要である
      • 組織を読み解く際、新しいゆらぎがそれまでの組織文化とどのように異なり、どのように位置づけられるのか、それによって組織における「意味」がどのように変わるのか、といった検討作業が不可欠なのだ
      • 創造的逸脱はブーメラン効果をもっており、組織に回帰してその中に取り込まれるのである
    • 不均衡及び混沌を排除しない=カオス理論における「カオスの縁」に身を置く
    • トップダウンの管理を強化しない
      • × リーダーが意図的に組織をゆらぎやカオスへ振り向ける
      • ◯ リーダーには、ある程度のゆらぎを生み出すようにメンバーの自由度を拡張したり、あるいは逆に組織を引き締めたり調整をすることが求められる
  • ニーチェの生の哲学をルーツとする人と組織のエンパワ-メント
    • ニーチェにとっての力は他者に対する支配欲のことではなく、「生きる力」
    • 人を支配するという既成の価値評価に囚われることは、存在の生成という視点を欠落させることであり、新しい価値創造をもたらす力への意志の性質を見誤ることである
    • 人間が本来持っている無限の可能性を引き出して、環境変化に右往左往することなく、内から爆発する内破の力で絶えず生成変化すること、これが力への意志
    • 選手を枠にはめるのではなく、それぞれの個性を認めながら、それらを編集してまとめあげることで、チームのエンパワーメントをはかる
    • 最初からシステム化することで、全体の容量を決めない

ゲットーを捏造する アメリカにおける都市危機の表象 ロビン・D・G・ケリー

  • なんでも儀式や「黒人独自の文化」や「代償行為」にしてしまう、人類学を批判している本
  • ヒップホップなどの文化や遊びの「純粋に楽しみである側面」や「低賃金労働に代わる選択肢」としての面を強調している
    • 純粋な黒人の文化・ハーレムの文化とみなされているものも、実際には映画などの影響である場合も
  • 典型的なハーレムの犯罪者予備軍としてイメージされるようなタイプ以外にも、働いているヒトたちはハーレムにはたくさんいる
  • 人類学は、おおかたの都市社会科学と大差なく、「外部」世界に対して「黒人性」をマーキングし、黒人文化を定義するのに主要な役割を果たしてきた
    • この人類学は、別のやり方で私をニガーと呼んでいるに過ぎないんだ」オスマン・サリヴァンはそう見抜いた
  • ダズンズやこれに類する言葉遊びの目的は、誤解されやすいようだが素朴なものだ
    • つまり、笑いを取るためである
    • 「君のママ」がことばの応酬の全体構造において重要でないわけでも、家父長制がディスコースとして再生産される邪帝と無縁なわけでもない
    • 君のママは、この文脈において、生きている、文字お降りの、いや、比喩的な、存在ですらない、ということは理解しておく必要がある
    • 君のママは、総称的な指示語、ダズンズを始めるぞというサインを出すときのコード、会話が転じることを意味している
    • また、変わりやすい無名の像、共有された想像上のもの、かたち、大きさ、色や環境によって幾通りにも構築され、再構築されうるものである
      →言理の妖精、語りて曰く?シナモリアキラ?

交渉の民族誌 モンゴル遊牧民のモノをめぐる情報戦 堀田あゆみ

  • 参与観察によって、モンゴルのモノに対する文化を研究した文化人類学系の本
  • 本書の関心は、日常にあるモノを媒介にして人と人がどのように関わっているのかを明らかにすることである
  • 「モノの情報性」:物質性を持ったモノの使用価値や交換価値ではなく、モノに付随した情報に価値を見出す視点
  • 交渉によるモノの世帯間移動
  • 財やサービスが等価交換されることを自明とする交換社会では、何らかの対価を支払ってモノを入手した所有者にこそ、その使用価値を享受する権利があると考えられる
    • しかし、交渉によって物事を動かすモンゴル遊牧社会では、財やサービスの価値に人格的な要素(人間関係、気分、情け、好き嫌いなど)が堂々と割り込んでくる
  • 交渉は双方にとってゲーム性を帯びた一種の楽しみでもある
  • 小長谷「遊牧民の社会ではかつて、わざわざ移動というコストをかけて出向いて、他者から奪うことによって自分たちのものを豊富にする、という経済が成り立っていた」
    • 「このような「略奪経済」が成り立つ社会とは、奪うことを肯定し、かつ奪われることをも肯定する社会である」
    • こうした考え方を前提とするモンゴル社会では、必要なモノ・欲しいモノは、自力でモノがある所から取るものであり、そのためには、どこにあるのか・交渉相手は誰かという情報の収集が必要となる
      →『草の民』?『地上』?
  • 交渉には、モノを手元に来させるという手段のほかにも、状況に応じて人間関係を操作するという重要な働きがある
    • モノを得るための交渉は各自が独自に行えば良いのであって、この交渉を可能にするための条件である情報を与えることにこそ価値がある
    • 本来情報も各自で収集するものではあるが、そのような情報がモノを見せることによって分配されることで、当事者間の関係性に変化をもたらすことができるのである
  • モンゴル遊牧民の社会では、モノの情報が交換財として扱われている=フローとしてのモノ
    • モノの情報は、広大な土地に分散する人的・物的資源をより広範に柔軟に取り込むための、交換財となりうる
    • 自発的な情報の提供が将来の交渉権の分配とみなされることによって、民は季節ごとに新たな人間関係を構築することができる
    • その結果、分配された情報をもとに交渉が行われ、そのモノが世帯を超えて移動する状況が生まれているのだ

CODE コードから見たコンピュータのからくり チャールズ・ペゾルド

  • 手旗信号あたりから初めてコンピュータそのものを解説
  • 伝詞回路?再帰とコンピュータなんの関係?という感だったのが読んでるうちに解消した!言語の遅れと再帰性で伝詩回路作れそう!

心を開くドラマセラピー 尾上明代

  • 演劇(ロールプレイ)によって、心の問題を解消する治療法の本
  • 劇を演じる役者はみな「患者」であり、演じられるのは、その中の一人の心の世界である
  • 劇によっては、感情が擬人化されて「道徳劇」のようになることも
    →四章・断章編っぽい

心の中のブラインド・スポット 善良な人々に潜む非意識のバイアス M・R・バナージ+A・G・グリーンワルド

  • 人間の心に潜む差別の盲点やバイアスについての研究を集めている本
  • さまざまなテストによって、マインドバク=誤りを犯すもとになる、染みついた思考の習慣を明らかにしている
  • タイプ分けしたがる人間――ホモ・カテゴリカス
    • この本独自の新しい理論:ステレオタイプは、複数のカテゴリー(分類)を組み合わせて個々人を認識する「タグ」のような役割を果たしている(要約)
    • 「ステレオタイプ化は初対面の人たちを異なった個々人としてすばやく認識する助けを提供する効果をもつ」
    • たとえばあなたが、黒人ムスリムのレズビアンである六十代フランス人大学教授と出会った場合、彼女を「黒人」「ムスリム」「レズビアン」「六十代」「フランス人」「大学教授」の六つのカテゴリーで、カテゴリー自体の内容を変えることなくそれらの組み合わせで認識するのだ
  • マインド・バクを完全に根絶することへの楽観はできないけれども、それと同じくらい、マインド・バクを負かす方法を発展させる研究の成果についても、悲観的になることはない
    • オーディションで幕を張って外見での判断を防ぐこと(ブラインド・メソッド)が出来たように、心に潜むバイアス・マシーンを出し抜く方法を模索し試行し続けることは出来るのだから

「個人主義」大国イラン 岩崎葉子

  • イランは、人が組織に依存しない「個人主義」の国
  • だが、それは同時に、人々に結束や連携が皆無なために、工事もお役所の手続きも全く進まないという甘くない社会でもあったのだ
  • そして、そんなイランは、「組織に縛られない」ことは、柔軟で粘り強いコミュニケーション能力を培うことも教えてくれるのである
  • イランでは、人は多くの副業を持って「多角化」し、気軽におしゃべりしあって知り合いを増やさなければ、生きていくのが難しいのだ

「個性」はこの世界に本当に必要なものなのか 東京大学教養学部×博報堂ブランドデザイン

  • 様々な分野の専門家が、色々な視座から捉えた「個性」の本
  • 個性は、時と場合によって、必要で無い場合もある。大事なのは、バランス
  • 個性は、自分で把握出来ないし、意識的に育むことも出来ない。
  • 個性とは、運命であり、呪いでもある。思考や行動に抵抗出来ない方向付けをするもの。
  • 個性を活かす=評価される個性を確保するには、コストがかかり、工夫が要る。
  • 個性は固有のものではなく、なにかに対する解決の仕方であり、対応の仕方そのもの。スタイルの違い。
  • 個性とは、さまざまなアイディアを借りるなかに、育まれるもの
  • 個性を消すことは、難しい

子どもの感情コントロールと心理臨床 大河原美以

  • 感情を押し殺す=間違った感情コントロールの害についての本
  • 日本では、感情を抑制し切り離す(解離させる)ことが推奨されるが、それは後に重大な問題を引き起こす可能性がある
  • まず、子どものうちに「不快感情(悲しみ・不安・恐怖・怒りなど)を安全に抱える力」を身に付けられない場合、その子ども自身の感情制御が困難になってしまう。
  • そして、その子どもが親になったとき、それは「自分の子どもの不快感情を受け止められない」という更なる問題の連鎖を生みだしてしまう可能性があるのだ。
  • それを防ぐためには、フランシン・シャピロ博士が開発したEMDRセラピー(眼球運動による脱感作と再処理法)ブレインジムが有効。
  • だが、何より親子の関係が形作ってしまう(問題増幅システム)の解消と、親自身が、子どもの「不快感情は受け止めるが、禁止すべきことはしっかり禁止して許さない」対応をすることが重要である。

古都のデザイン 借景と坪庭 文/伊藤ていじ 写真/葛西宗誠

  • 日本の庭における概念「借景」とは、景色を借りるものではない
  • 景色を「生け捕る」ものなのである
  • 借りる場合には借りるものは生のないものでも構わないが、生け捕る場合には、生け捕られた後もそのものは必ず生きていなければならない
    →『サイバーカラテ』に通じるところがある気がする

コミュ障 動物性を失った人類 正高信男

  • 「コミュ障」の理由とその問題の解決法について、分析している新書
  • 「コミュ障」(この本では空気を読めない「KY]や、思い込みが激しかったり一方的にまくしたてる人)の原因は、動物的な情動回路(皮質下回路)が機能していないためである
  • STAP細胞を発見したと思いこんでしまった小保方氏も「コミュ障」であったと思われる
  • コミュ障は、「人間的な資質」ではなく「動物的な資質」に問題があるから発生しているのである
    • コミュ障の人は、怒り顔への感受性が乏しく、自分が不快に思われていることが分からないのだ
  • そしてもともと人間は、無意識のうちに注目や承認を求めて行動する生き物だ
  • 結果として、「コミュ障」の人は、不快に思われてもそれを「ウケた!」と判断し、さらなるリアクションを求めて過激な行動を連発してしまうのだ
  • ひきこもるというのは、生活スタイルの一つの選択肢
    • 必ずしも不適応とは言い切れない
    • 高等動物というのは、社会的な緊張を代価にしてでも豊富な資源を望む群れ生活か、資源も乏しく危険度も高いが、安心できるなわばり生活かのいずれかを選ぶ宿命におかれているのだ
    • ひきこもる人は、後者を選んだということにすぎない
    • 例:場所によって生活スタイルを大きく変化させるアユ
  • 引きこもりの感情安定法:仏教の声明が、リラックスするので(カルトなど行き過ぎは注意だが)心の動きを自律的にコントロールするのに有効だと思われる
  • なわばりの分散化
    • 弱い動物でも、先になわばり(ホームグラウンド)を確保すれば、後から来た動物に対して優位に振る舞える
    • ひきこもれるスペースあるいはひきこもれる人にとっての安全基地を、複数設定するように工夫すべし
      • 例:フリー・スペース
    • 周囲の焦りは禁物。批判せず話に耳を傾けること
  • ミーティングの重要性
    • コミュ障の可能性が高そうな人には、周囲がそれなりの心配りに務めることが不可欠
    • コミュ障の人に、しぐさや表情に頼ってこちらの意志を伝えようとするのは、誤解を生むもと
    • 明晰にことばで、意図を表現することが肝要となる
    • ただし、メッセージが意図通りに伝わるとは限らないことを、念頭に置くことが必要だろう
    • 約束ごとのような内容を交わすにあたって、一対一の安易な立ち話のような会話は謹んだほうが賢明
    • できれば三人以上が集まった場で、ていねいにやり取りし、合意したことは最後に念を押すことを心がける
    • 集団生活の下では労と時間を惜しまず、ミーティングの機会は積極的に設けるのが好ましい
    • ミーティングであるなら開くごとに、そこで話題となったことを記録にとどめ、機会があれば確認できるようにしておく
  • コミュ障の人自身が意思疎通の齟齬をなくそうとするなら、当人が「書く」技術を高めること
    • 当意即妙でやり取りしようとすると、ついつい「はみ出す」
    • だから心のなかで紙に書いて、それを読む術を培えばいい
    • 手軽にできるのは、誰にでも意味が一意的かつ明瞭に把握できる「良い」文章に繰り返し接したり複写して、それを自分のものとしてしまうこと
      電子化○

コミュニティを問いなおす 広井良典

  • 産業構造や社会の変化のなどから、現代におけるコミュニティの必要性を語っている本
  • コミュニティ:重層社会における中間的な集団こそが本質的な意味になるのではないだろうか
  • コミュニティは、原初から(母親に代表される)「内部」的な関係性と(媒介者の原型としての父親に代表される)「外部」との関係性の両方をもっている
    • コミュニティという存在は、その成立の起源から本来的に「外部」に対して「開いた」性格のものであると言えるのではないだろうか?
    • コミュニティの中心となってきた場所も、実は「外部との接点」だったと言えるのかもしれない
    • すなわち宗教施設=(彼岸または異世界・コミュニティの成員としての死者の世界)との接点、学校=(新しい知識)商店街や市場=(他の共同体)福祉医療関連施設=(病や障害という非日常性)という具合に
  • 今後のコミュニティの定常化と成熟化に必要な三つ
    • 1 ごく日常的なレベルでの、挨拶などを含む「見知らぬ者」どうしのコミュニケーションや行動様式
    • 2 各地域でのNPO、社会的起業その他の「新しいコミュニティ」づくりに向けた多様な活動
    • 3 普遍的な価値原理の構築(「果てのある全体」である地球コミュニティの一員としての有限性や既存の「普遍」思想をさらに包含するような「メタ普遍思想」・積極多様性志向な思想などがその候補)

こんな夜更けにバナナかよ 渡辺一史

  • 難病・筋ジストロフィーのために介護されないと生きていけない身体でありながらも、自分らしく生きた一人の患者の物語
  • ワガママに、そして自分らしく生きて、多くの人に影響を与えた鹿野靖明という男の話
  • 差別を越えた、介護する者とされる者の付き合いの話でもある

さ行

再起動する批評 佐々木敦+東浩紀

  • 批評教室の実態レポート的な本
  • 批評は無意味だが不毛では無い。
  • 生きることが無意味だが不毛ではないように
  • 本当に、根本的に考えるなら「役に立つ/立たない」という論点から入るのではなく「役に立たなくても存在している」ということを起点にしないと「役に立つ」という可能性も結局は出てこない
  • コミュニティがあれば、人はひとまず安心出来る
  • それがぶっ壊れてしまったせいで、心の拠り所をなくして、価値や有用性を証明せずにはいられなくなってしまった
  • 三浦哲哉さんの「ナポリタンの理念とサスペンス」が、全力でナポリタンの価値を説いていて面白かった

最高の雑談術 乱談のセレンディピティ 外山滋比古

  • 仲間と一緒に語らい合って新しい発想を得る「乱談」をすすめる本
  • 「乱談」とは「乱読」を発展させた手法であり、異なる分野を専門とする人々と好き放題話し合って、自分にない新しい発想を得るというもの
    →サイバーカラテ的?
  • 放言に近いエッセイだが、日本人は「話し合って得る知恵」より「本を一人で読んで得る知識」を重視しすぎるとする、その視点だけは意義があるかもしれない
  • 雑談が実際に活用されていた例としては、岩谷良恵『おしゃべり・雑談の政治哲学 近代化が禁じた女たちの話し合いと<講>』などを参照のこと。

在日 日韓朝の間に生きる 愛媛新聞社

  • さまざまな在日コリアンへの取材を元にしたノンフィクション
  • 国籍の選択、通名を名乗るかどうかの逡巡など、三つの国の狭間で揺れ動く人々のエピソードから、日本の差別に悩み苦しみながらも、力強く生きる在日コリアンたちの生き様が見えてくる
  • 在日コリアンと触れ合う差別をなくす教育や、在日コリアンの方が多数派だったため差別がなかった(表面化してなかった)町のエピソードもある

逆立ちしたフランケンシュタイン 科学仕掛けの神秘主義 新戸雅章

  • 擬似科学と科学者の歴史、そしてマッドサイエンティストについての本
  • 擬似科学?オカルト?そんなもんは、一時のあだ花。
  • 検証に耐えるホンモノの科学技術の方が、ずっと役に立って面白いぜ!な感じ
  • オカルトな擬似科学(ニセ科学)の正体は、失った神秘性を科学の理論で補強した魔法である
  • 科学が分化し、かつての全能性・哲学的側面を失ってしまったことへの郷愁が、擬似科学の繁栄をもたらしたのかもしれない。
  • 歴史を深く掘り起こすことによって初めて、科学と神秘の関係を問うことが可能になる
  • ヴィトゲンシュタイン「世界がいかにあるかが神秘なのではない。世界があるという、その事実が神秘なのである」(『論理哲学論考』よりの引用)

サピエンス全史 ユヴァル・ノア・ハラリ

  • 歴史を振り返るエッセイ
  • ホモ・サピエンスが繁栄したのは、多数の見知らぬ者どうしが協力し、柔軟に物事に対処する能力をサピエンスだけが身につけたからであり、その協力を可能にしたのが想像力である
  • 架空の物事について語る神話や伝説・宗教は、大勢の人が共有する「共同主観的」な想像の世界であり、そうした虚構を作り変えればすぐに行動パターンや社会構造も変えられるので、遺伝子や進化以上に変化を加速できる
  • これまで考案されたもののうちで、貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度なのだ
    • 反アメリカの国々でもドルを受け入れるように、貨幣は人類の寛容性の極みでもある
      →アキラくんは寛容?グレンデルヒは?
  • 西洋が覇権を握ったのは、「探検と征服」の精神構造と、それをささえる価値観や神話・社会政治体制を持っていたのが、西洋だけだったため
    →『上』の槍神教?
  • 歴史が歩をすすめるにつれて、人類の境遇が必然的に改善されるという証拠はまったくない
  • 歴史を知るのは、現在の私たちの情況が自然でも必然でもないことを理解し、私たちの前には想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するため
  • 宗教とは、超人間的な秩序の信奉に基づく人間の規範と価値観の制度であり、それは、社会秩序とヒエラルキーに超人間的な正当性を与える
  • 人間の気まぐれや合意で変えられない超人間的な秩序だからこそ、強い拘束力を持つのである
    • そうした特質を宗教が持つためには、どこでもいつでも正しい普遍的な超人間的秩序を信奉し、この信念をすべての人に広めることをあくまで求めなければならない
    • 言い換えれば、普遍的であるとともに宣教を行うことも求められる
      電子化○

差別と向き合うマンガたち 吉村和真 田中聡 表智之

  • 部落問題研究所の機関紙『人権と部落問題』の連載コラムをまとめたもの
  • マンガと差別の関係を探求しており、そうした問題について考えるのに役立つ本
  • マンガを読む能力というのは生来のものでなく後天的なものであり、「マンガを読むこと」で身につけてしまう価値観や感性、マンガの文法が存在する
  • 私たちが注視すべきは、マンガと偏見の不可避な関係であり、批判すべきは、その偏見が不当な差別や抑圧に繋がるメカニズムである
    • そのためには、その偏見を支える歴史的背景や構造、あるいはその変遷を、、丹念に検証することが求められる
  • 差別に対する怒りや悲しみが物語の形を採るにあたり、差別を再生産してきた表現方法が用いられねばならぬというパラドックス
  • マンガを含む「表現」とは、認識と感情と行動が分かち難い形で結びついた複雑なものであり、またそうした複雑さがあるからこそ、論じる意義があると考えられているのではないか?

しあわせに働ける社会へ 竹信三恵子

  • レオがトリシューラを尊敬する理由は、この本の理念に近い気がする。
  • 就職難は、若者のせいではない
  • 震災や不況でも、しあわせに働くことをあきらめる理由にはならない
  • 就職難に、社会の変革と、個人の「働く」意識を育成することの両面からアプローチ

「しがらみ」を科学する 高校生からの社会心理学入門 山岸俊男

  • 「共感性がない」と言われ、社会に出るのが不安な学生のために書かれた新書
    • 直感的に人の気持ちや空気を読むのが苦手なら、筋道立てて社会を理解すればいいということです
  • 取り付け騒ぎ、ピグマリオン効果、孔雀の羽が派手になる理由、いじめ阻止の思考実験、トイレットペーパー騒動など分かりやすい例で、社会の「しがらみ」=「空気」について説明している
  • 「心でっかち」=一人ひとりの心に原因があると考える直感的な理解のせいで、私たちは見当違いのやり方で社会問題の解決をはかるようになってしまう
    • その極端な代表が、竹槍で戦車に立ち向かうような精神主義
    • それは、目立たないかたちで私たちの常識の中に入り込んで、私たちが現実を見る目を微妙に曇らせてしまう
  • 社会は、わたしたちが作り出している「しがらみ」(インセンティブ構造)である
  • 私たちが「しがらみ」によって、誰も望んでいない行動を取るのは、社会の中で私たち自身が、自分の自由を縛り付けているからです
  • そうした縛りから多少なりとも自由になることが出来れば、日本の社会にもっと活気が出てくるはず
    • そのためには、社会による縛りあるいは「しがらみ」や「空気」による縛りが、なぜ生まれてくるのかを理解しておかないといけない
  • 世間がダメなら、社会で生きよう
    • 西欧では、「しがらみ」の世間の上に「契約」に基づいた社会を作ることで、個人の自由を確保してきた
  • 筆者の本には、ほかにも大人向けの『日本の「安心」はなぜ消えたのか』『安心社会から信頼社会へ』などもある
    電子化×

色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年をどう読むか 河出書房新社編集部

  • 色んな人が、好き勝手に『多崎』を論じた本であり、もしかしたら『多崎』自体より面白いかも
  • 多崎つくるの個性は「器」としての個性であり、それは中継地点としての「駅」でもあった
  • 人の心と心は、痛みともろさによって繋がり、調和は異なるもの同士にしか成立しないという
  • やれやれ系のクールさは少し昔の中流には憧れられたが、アピールと格差の時代である現在には適応できないスタイル
  • 『多崎つくる』は、そんな世代が現代に適応するための本なのかも
  • 「五本の指」に象徴される仲間関係は、外側やメンバーの何かの犠牲の上に成り立っている
  • それは、不可避的なものである

仕事の小さな幸福 木村俊介

  • さまざまな人に対して「業務を続ける」ということについてのインタヴュー集
  • いろんな人たちの「仕事、まぁ、やっていてよかったかもな」という小さな喜びや嬉しさの話
  • インタビュー対象者には小説家も多く、それぞれの仕事観の差異を楽しめる
    →グレンデルヒな【邪視】に疲れたときのために

仕事の話 日本のスペシャリスト32人が語る「やり直し、繰り返し」 木村俊介

  • 漫画家安野モヨコや脚本家木皿泉から、建築で食べていくしかなくなった造船技術者や運動具店長まで、様々な人に「仕事に関するあれこれ」を聞いたインタビュー集
  • インタビュアーの座右の銘:詩は本当は経験なのだ。あらゆることを経験し、いったん忘れ、それが帰るのを忍耐強く待ち、追憶が血肉となり自分と区別できなくなって初めて書ける(要約)リルテ『マルテの手記』
  • ホスピス勤務看護師・田村恵子:ホスピスは、死に場所から「生き抜き、生き切る場所」としてて捉えられるようになってほしい
    • 生き抜くというプロセスの中にそれぞれの方の死がある
      • 生きた結果にあるのが「死」であり、死があるからこそ今が輝くというのも真実
    • わからないことを放っておくと、解決することも。不意に答えが見つかる
    • 善意の塊は、暴力になることも
  • 渋滞学者・西成活裕:既に大勢の人が色々なことをやってきた分野で、若い人が結果を出そうとするなら、どうしても「まるでちがう分野にいってそこで輸入してきたものをくっつける」というやり方が必要なんです
    • 一回、ひとつの分野で究めて他の分野に取り組んでみると、外でも似た傾向のある行き詰まることの経験を活かして、効率よく経験を進められる
      →ゼノグラシア?

「自分のために生きていける」ということ 寂しくて退屈な人たちへ 斎藤学

  • サイバーカラテが欲しい人向け
  • 依存症の根源は、赤ちゃんが母親のおっぱいを求める「耐えがたい寂しさ」
  • また、それが変化した「退屈」である
  • 自他共に尊重し、価値あるものと考える心が必要
  • 権力や支配を競い合う「パワーゲーム」から降りないと、依存症は治らない
  • 依存症治療には、自分の無力を認めるアルコホーリクス・アノニマスの「12のステップ」が有効

自閉スペクトラム症  岡田尊司

  • 2020年最新の発達障害研究の発見と成果をまとめた本
  • 発達障害は単に遺伝要因ではなく、環境なども含めた多発的な要因によるものだとしている
  • まだ仮説の段階に過ぎない話や代替医療的な話が多いので、参考までに目を通すぐらいのスタンスで読むのがオススメ
    • ただ、子どもの動作や視点=興味関心を共有することによって子どもと世界を共有した、カウフマン夫妻の独自方法による治療例は、あるいは他の「はぐれ者」の問題にも通用するかもしれない
      電子化○

資本主義が嫌いな人のための経済学 ジョセフ・ヒース

  • 哲学者が、経済についての間違った考えを指摘している本
  • 経済学の知識が無いと細かいところは理解できないが、それなりに読みやすい
  • 左派の理想はなぜ実現しないのか、右派の信念は本当に正しいのか、左右両方に言及している
  • リバタリアニズムの弱点:進化は最適化ではなく、邪魔物となったクジャクの尾のような「底辺への競争」さえ引きおこす
  • 価格操作による社会的公正という誘惑:コーヒー豆のフェアトレード(慈善的価格づけ)は、豆の供給過剰というムダを肯定してしまった

資本主義がわかる本棚 水野和夫

  • 資本主義とグローバリゼーションの限界を主張する著者が、その二つを根源から理解するための本を紹介している本
    ー著者と同じ視座に立つかはともかく、資本主義について理解を深めたいなら読んでも損はないと思われる
  • 著者と同じ視座に立つかはともかく、資本主義について理解を深めたいなら読んでも損はないと思われる

社会運動と若者 日常と出来事を往還する政治 富永京子

  • 「若者の社会運動」と呼ばれている一種の社会現象の実態を分析している本(2017年発行)
  • 学術書なので、わりと読みにくいが同質性を見出す視点は面白い
  • なぜ本書において「若者」とされる人々は、多様で異質であるにもかかわらず、ともに集まって活動することが出来たのか
  • 現代社会において「若者」はすでに年齢・世代を示す変数ではない
  • 「再カテゴリー化」:しかし、それぞれに異なる経験を持つ運動の担い手は「若者」として自分たちを定義することもあれば、他者からそう呼ばれることもある
    • 「若者」として自分や他者をくくることで初めて、彼らはさまざまな勉強会に参加したり、既存のものとは異なる運動の手法を考えたり、おしゃれではない異聞の運動を模索することが出来るのだ
    • 場合によって異なる意味を付与される「若者」というカテゴリーは、その場その場で運動の戦略や自身の行動指針を根拠付けるための、いわば「動機の語彙」として人々の社会運動に作用しているのではないか
      →「再カテゴリー化」は集団としてのアイデンティティを形作る【呪文】?【黒血呪】?
  • 社会運動とは集合的な利益を求めるための運動だが、人々は個人化・流動化の中で、自分だけでなく他人にも共通するような集合的な利益の存在を想定することが難しくなる
    • だからこそ、運動に参加する人々は自分の携わる運動が集合的な利益を獲得するものであることを説明する必要に迫られる
  • 運動に従事する人々が「若者」に限らずあるカテゴリーを援用しながら運動を行うということは、個人化された人々が、集合的な利益を獲得するものであることを説明するという営みでもある
  • すでに出自や属性にもとづく同一性や同質性が自明でない社会において「自分だけでなく、他人も同じ立場にある」「自分だけでなく、他人も同じ利益を求めている」という説明なくしては、社会運動は成立しない
  • 自分たち、あるいは自分たち以外の他者をカテゴライズし、個人の背後に存在する集団を想定することは、現代の社会運動に不可欠なプロセスであるだろう

社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト

  • 様々な領域や問題において、左右の思想が与えるメリットを比較した本

宗教の見方 人はなぜ信じるのか 宇都宮輝夫

  • 宗教の定義や、愛国心政治思想などの非宗教と宗教の境界についてしっかり検討している、宗教学の入門書
  • 既存の宗教定義の学説への批判や、宗教を信じることで人が何を得ているのかを説くことを通して、いちがいに時代遅れとして捨てされない宗教の価値を多様な方面から示している

従軍歌謡慰問団 馬場マコト

  • 各章を歌手や作曲家など「人と歌」の組み合わせでまとめ、戦前から敗戦直後までの日本の歌が作られていった経緯をざっくりまとめたノンフィクション
  • 長い期間や多くの人を扱っているためその一つ一つの記述は薄いが、終戦後に武器を奪いに来たインドネシア義勇軍を現地の歌でなだめた藤山一郎など、さまざまな事象をカバーしている

植物は〈知性〉をもっている ステファノ・マンクーゾ

  • 知性とは、問題解決能力として植物のすごさを説明する本
  • 短くてさっと読める

植物はなぜ動かないのか 稲垣栄洋

  • 分かりやすくて面白い植物学の本
  • 弱くて強い植物の生存戦略は、ほんとうの生存競争について教えてくれるかも?
  • オンリーワンのニッチに適応し、ローカルなナンバーワンとならなければ、生き延びられないのだ
  • 雑草は踏まれたら立ち上がらない。その代わりに◯◯する
  • よりくわしい『雑草はなぜそこに生えているのか』もオススメ

宗教で読み解くファンタジーの秘密 中村圭志

  • 様々なファンタジーを著者なりに分析し、ファンタジーに現れた「宗教の多面性」やおける悪や死の扱い方などを論じている本(二巻組みの実質上下巻)
  • もちろん著者の意見が多分に含まれる(しかも、たぶん『ハリポタ』に関しては作者の意図の解釈を間違っている)
  • しかし、『ハリポタ』の「両義性」や差別問題における「境界のあいまいさ」を通して「ロン」の価値を評価するなど、そこには見るべきところがある
  • (差別問題では)境界線なるものが曖昧であるがゆえに、かえってその曖昧さを隠蔽して、はっきりとした線引きをしようというロジックが出てくる
  • 禅の悟りという、日常性を超える体験の「土台(下部構造)」をなしているのは、泥臭い規律や訓練の世界
    =宗教の理念の世界は、身体性や共同体性、そして権威や権力などの政治性によって支えられている
  • 個人や社会の信念というものは、人間関係の虚々実々のやりとりの中で形成され、維持されるもの

呪歌と説話 花部英雄

  • 日本における呪歌や歌人や動物の民話、果ては『注文の多い料理店』と伝承の比較など、様々な日本古来のオカルトを扱っている本
  • 百人一首の「しのぶれど色に出にけり~」を恋愛成就に使ったり「~まつとし聞かば今帰り来む」でネコ探しなど、身近な和歌の【呪文】の例も多い
  • 歌は物語を引き出す仕掛けの役割も持っていた
  • 呪術は、「精霊を自由に使役し、支配する力は人間の側にあるとする確信がその本質をなし、その確信に基づく種々の超技術」
    →【使い魔】と【邪視】の要素を含んだ【呪文】?
  • 呪術は本来プロ専門で素人にはマネできなかった
  • 歌によって威力ある霊魂を天子の体内にふりこめる「たまふり」?西村亨:歌の霊験譚
    • 地方君主の娘=采女は、地方の神に仕える巫女で、その国霊(くにたま)を天皇に振り込める役割を担う
  • 歌は時代や人によって解釈や教授の仕方が変わっていく
  • 憑き物、オオサキ、オオサキドウカ、寄生虫的?
    • 蚕や稲を持ってく、田植えの前準備

「承認欲求」の呪縛 太田肇

  • 囚われていてもそれに気づかなかったり、気づいても認めようとしないこともある承認欲求の「呪縛」という心に潜む「モンスター」の正体を明らかにし、制御するための本
  • 承認欲求は複数の要素から成り、しかも有形無形のさまざまな報酬とつながっているから、最強
    • 他人から認められたい、自分が価値のある存在だと認めたいという欲求
    • 承認はそれ自体が欲求として人を動機づけるばかりではなく、認められるとほかの欲求が満たされたり有形無形のさまざまな報酬が得られたりと、恩恵は多岐にわたるが副作用もまた大きい
  • ここまで「認められなければならない」というプレッシャーを与える社会は、やはりおかしい
    • 承認は本来、その人の個性や努力、業績などをほめたり讃えたりするものであり、認められるためにやらなければならない、というのは本末転倒なのだ
    • いまこそ承認欲求を健全な方向へ転換し、人も組織も、社会も活力を取り戻すべきだろう
  • 「認められたい」が「認められねば」に変わると危ない
  • 承認欲求の呪縛=(認知された期待-自己効力感)×問題の重要性=プレッシャーの大きさ
    • 認知された期待と自己効力感のギャップが大きくなってもと危ない
  • 承認欲求の呪縛を解くカギ
    • 期待の重荷:大きくなりすぎる期待をコントロールして、自分のキャパシティに見合った水準まで下げよう
    • 経営者が、労働者にプレッシャーがかからないように工夫すべし:「過去の貢献に感謝したいだけだ。将来の貢献を期待して表彰したわけではない。また『この賞が欲しいから頑張る』というのなら、それは君の自由だけどね」
    • 「全か無か」の極端な考え方は、獲得した評価や信頼を一気に失い自尊心が傷ついたりすることを恐れるから、承認欲求の呪縛に苦しむ
      • 崖から転落しないように、「階段」や「スロープ」にあたるものが必要
      • 具体的な事実評価で、できれば評価基準を社内に公表することが必要
      • ほめると同時に賃金が引き上げられると、その金額分だけ評価されたことに成り、金額以上の心理的負担を感じなくて済む
      • 希望降格制度:再度昇格も可能であり、敗者復活の容易な人事制度。これに切り替えていかないといけない
    • 自己効力感のアップ:小さな成功体験を積み重ねて、期待に応えられる自信をつけること
    • 周囲と競合しない、ひとりひとりの目標やキャリアが競合しないダイバーシティ:さまざまな視座が混在している組織風土を作るべし
      • 同質性が低くて、空気を読まないメンバーいると、同質性の呪縛によるスポーツ大会のような連続失敗を避けられる
      • 個人の場合、他人と同一次元で勝負しないこと
      • 競合しないライバルが少ない職場を選んで就職・転職
    • 意識的に認めたりほめたりするフィードバックが必要
      • 能力や努力を褒めるのではなく、具体的な根拠を示しながら潜在能力をほめること
      • 潜在能力に自信があれば、成果が上がらないのは努力の自信か量に問題があるからだと受け止められる
      • 第三者の評価を伝える、なにが称賛に値するかをできるだけ文章にして具体的に示す。
      • カードやアプリを使って伝える仕組みがある会社も
        →『サイバーカラテ道場』の「GOOD!」などの評価?
      • 過去の自分と比較して進歩の度合いを客観的に理解できる指標を示す
    • フォロワーからリーダーへの承認も必要
    • 問題の重要性を下げる:「ほかにも大事なものがある」「逃げ場がある」と思えばプレッシャーは小さくなる
      • 眼の前の目標よりはるか先に目標を置くことで、現在の目標を相対化する
    • 自分の弱みも包み隠さず見せる自己開示
    • リーダーが、楽しさを追求して承認欲求の呪縛を回避する
    • もう一つの世界:もう一つの帰属先を持つ
      • SNS依存症は、リアル世界充実かせめて複数のSNSを使い分けるように
      • 官僚や大企業の役員も、能力の汎用性があって専門的な知識・技術・経験を用いて高度な問題を解決できる能力が備わっているプロになり、所属組織の枠を超えた専門家社会で評価されるようになれば、呪縛から解放される

人生を変えるアニメ [14歳の世渡り術] 河出書房新社

  • アニメ関係者もそうでない人も、さまざまな人がさまざまなアニメについて語るアニメ案内本
  • 美村里江(ミムラ):『ヒックとドラゴン』
    • 気落ちした時は、なんでもいいので一流品に触れてみるのがオススメだ
    • 例えば、本物の技術で空を飛ぶドラゴンに乗り、俯瞰から自分を眺めてみてはどうだろう

人狼伝説―変身と人食いの迷信について セイバイン ベアリング=グールド

スケープゴーティング 編・釘原直樹

  • 2005年のJR福知山線事故をきっかけとして、「スケープゴート」について研究した本
  • 学術書だが、比較的読みやすい
  • 感染症や「自粛」についても取り扱っており、その問題意識の射程は十分に現在にも通用する
  • スケープゴーティングには、状況をコントロールするためと自分の認めたくない影を投影するという二つの説があり、どちらもそれぞれ対応するケースが存在する
    電子化○

図説「見立」と「やつし」 人間文化研究機構 国文学研究資料館

  • あるものを別のもので表現する「見立」と、昔の権威あるものを現代風に卑近にして表す「やつし」についての論をまとめた本
  • 浮世絵から絵本、庭園や歌舞伎までその範囲は幅広い
  • 文章はやや読みにくく、大きい本であるが、絵を見るだけでも結構楽しめる
    →射影聖遺物(アトリビュート)

ステレオタイプの科学 クロード・スティル

  • 「社会の刷り込み」は、成果にどう影響し、わたしたちには何ができるのか
  • ステレオタイプ:人をある種のカテゴリーで見る固定観念、鋳型のこと
  • この本の中心的なテーゼは、ステレオタイプと人間のパフォーマンスの関係を紐解いた「ステレオタイプ脅威」
    • それは、間主観性(主観は単独の自我だけではなく、他者の認識ももとに成り立つものだという考え方)という人間の認識から生まれる
    • 先入観による差別だけでなく、「自分が差別主義者だと見られるかもしれない」という恐れが行動に及ぼす影響にも触れているのが、独特な点である
  • 序文と解説が丁寧でわかりやすい
  • 学びの機会として捉えることが、ステレオタイプ脅威を克服する最も有効な方法
    • 他者との違いに怯えたり感情的に反応するべきではない
  • 集団間の格差を縮小したり、異なる人々が快適に協働できるようにするためには、アイデンティティに由来する苦境に陥ることはない、という安心感を与えることが必要
    • それが出来ないと、人間が本来持つ自己防衛的な側面が、その人の能力を乗っ取ってしまう(恐怖と警戒によって能力が低下してしまう)
    • 人間の自己防衛的な側面は、(差別主義者をふくむ)「ネガティブなステレオタイプを当てはめられる見通し」だけで喚起され、実際のタスクに費やすべき能力を奪い取ってしまうのだ
  • ステレオタイプ脅威は、知らず識らずのうちに対象の能力を低下させている
  • 黒人が知性を試されるとき、女性が数学や科学のテストを受けるとき、そしてマジョリティの白人男性が、運動能力を測られたりマイノリティばかりの教室で反差別の学問を学ぶときでさえ、それは大きな影響を及ぼしている
    • そのプレッシャーは、容易な難易度であれば努力するバネにもなる
    • だがそれは結局、過剰な頑張りをもたらしてしまい、人を潰してしまうのだ
  • 集団びいきの原因は、自尊心
    • 人は、自分にポジティブな評価を与えるために、自分が属する集団をポジティブに評価する
    • 同時に、他人が、自分の集団に所属しないこと以外何も知らなくても、差別する可能性がある
    • それは、自分の所属する集団が、ささいな共通点をベースにしているのに過ぎない場合でさえ、変わらない
  • 同じような人間だけで固まることは、一見心地よく感じられる
    • だがそれはちょっとしたバランスの崩れによって暴走しやすく、自分とは異なる人々を攻撃することで結束を確認し、本来多様な社会を分断し機能させなくなる危険をはらんでいる
  • 学生を適切にサポートすると、彼らの帰属意識と達成感を大幅に高めることが出来る
    • 彼らが、フラストレーションの原因を説明すると同時に、ポジティブな関与と成功を期待するナラティブを構築できるようにしよう
    • 多様なバックグラウンドの学生同士の雑談を促すだけで、マイノリティ学生の居心地の悪さと成績を改善できる
    • マイノリティの学生に、自分が一番大事にしている価値観を肯定させると、長期にわたり成績が上向く
    • 高い知的水準を適用して課題を評価したうえで、あなたにはそれを満たす可能性があるといってあげればいい
  • 人種に対する恥の意識が過去のものとなった「ポスト人種時代」が来てほしい
  • オバマ大統領は、人種をはじめとする自分のアイデンティティを強調し、それをオープンに受け入れ理解し、自意識に取り入れた
    • また、複数のアイデンティティを明言することで、それを人と自分をつなぐ橋にしている
    • オバマの場合、アイデンティティは複雑で多様な社会が直面する課題に関する知恵の源泉であり、究極的には彼をこうした社会を指導するのに最も適した人物にした
    • それは、アイデンティティ強調を警戒する社会では直感に反する行動に見えるが、他のどんなことより、非黒人のアメリカ人がオバマを大統領として快く受け入れることにつながったのだ
  • 誰もが、しばしばたくさんのアイデンティティを持っている
    • そして、(重要な数多くの違いにも関わらず)あるアイデンティティを持つことで経験することの多くは、別のアイデンティティを持つ経験と似ている
    • 自分の持つ複数のアイデンティティを理解することは、他人のアイデンティティ経験を理解する助けとなるのだ
  • クリティカルマス:自分と同じアイデンティティを持つ人の数が多いほど、ステレオタイプ脅威は緩和される
  • アイデンティティとは、その人を全面的に支配するものでも定義するものでもない
    • アイデンティティとは流動的で、一定の環境に置かれたときにわたしたちの心理や行動に影響を与える
    • アイデンティティとは、さほど恐ろしいものでも心配すべきものでもない
    • むしろ、アイデンティティを探求することから恩恵を得られるかもしれない
  • 自己肯定化理論:人間は、自分を善良で的確つまり「道徳的で適応力がある」とみなす傾向がある
    • その自己認識が、何らかの出来事や他人の評価、あるいは自分自身の失敗によって脅かされると、いいイメージを取り戻そうと必死になる
    • その試みが失敗したりできない場合、自分の行動や出来事を正当化したり解釈を変えたりして、道徳的で適応力があるというイメージを取り戻そうとする
      電子化○

スピヴァク みずからを語る ガヤトリ・スピヴァク

  • 『サバルタンは語ることができるか』などの著者のインタビュー集
  • 「語ることが出来ないもの」とされる「サバルタン」概念の理解に役立つ本
  • インタビュアー:サバルタンの位置に同一化することは人を引きつけるのに、サバルタンの声を聞き理解しようという深い試みは、さほど人を引き付けない
    • さまざまな「周縁化」された文化出身の大学人や知識人は、エリートなのに、簡単に同一化する
    • それは共感を求める叫び?意図的に犠牲者の位置を取ることであり、あるいは犠牲者の腹話術師になろうとすることでは?
    • 武器を持つものは、武器を持っていると認めようとしない
    • サバルタンはサバルタン性を主張しない
    • サバルタンは、移動するための道にアクセスできないのは当たり前だと考えるか、サバルタン性からすぐにでも抜け出したがってるかのどちらか
  • 試みるべきはサバルタン性を聞き理解するにとどまらず、サバルタンの常態のただなかに身を置いて、そこに介入し、自分の声を聞いてもらえるようにする権利を獲得すること
  • サバルタン性は、情緒の問題ではなく、政治的・または社会的な位置を記述するもの
    • 問題は、サバルタンが公的な領域に入れないため、抵抗が抵抗として認識されないこと
    • 例:川床を掘る工事に消極的な先住民:怠け者扱いされたが、川の胸元にメスを入れることに対する古くからの文化的、エコロジー的な抵抗だった。だが、誰もそれを認識しなかった=サバルタンは語れなかった
    • サバルタン性は、なにも持てない人びと、社会における移動手段を全然持っていない人びとという次元で理解されなければならない
  • こんにち、人びとが自分を「ディアスポラ」だと主張するのは、居心地の良さを求めずにはいられないからだと思います
  • 根付くという考えはすべて防御の一部であり、作り事でない現実はない
  • 多くの家を見つけ、空気に根をおろすのが私のやり方
    • たくさんの家を本拠地にすることは、想像力が育つ一つの方法
    • 想像力が文学を読む者になにかをなすとすれば、それは、その人の想像力を鍛え、他の人々の世界に入らせるのだと思います
    • 本、詩、過去とはそういうもの
    • その観点からすると、家という概念は無限に拡張が可能です
      →敵味方識別のラベリングを無視して、『地上』と『地下』を自由に行き来出来るティリビナ人の特性?

スペルズ 世界のおまじない事典 ジュディカ・イルス

  • 700以上のおまじないが載っている事典
  • 恋愛や復縁、問題解決や守護から呪い返しを返す方法まで、その種類は多くカバーする範囲は幅広い

世界軍歌全集 辻田真佐憲

  • 「ラ・マルセイエーズ」をはじめとして、国民国家のナショナリズム中心に世界の軍歌や軍歌に近い歌を時代ごとにまとめた本
  • 日本の歌は載っていないがコラムで特集されているし、満州国の国家や英国ファシスト党の党歌など珍しいものもある
  • 日本の軍歌についてはCDが付属している『別冊宝島 軍歌と日本人』などが資料として適していると思う

世界しあわせ紀行 エリック・ワイナー

  • 子どもの頃「幸せの国」を探すため旅に出ようとした筆者が、大人になってから、本気でその夢を叶えてみたノンフィクション
  • 「幸せの国」を自称するブータンから「この国に幸せを探しに来た」と言うと、空港の係員に正気を疑われるイギリスまで、様々国を巡っている
  • 基本的にまったり旅行記だが「幸福は人生の最終目的か?」という筆者の問いなど、シリアスな部分もある
  • さまざまな条件が挙げられた「幸せな国」になる方法より「不幸な国」にならない方法の方が、分かりやすくて味わいがあったかも?
    →トリシューラの暫定的な目標である「国づくり」に関係ありそう

世界”笑いのツボ”探し ピーター・マグロウ ジョエル・ワーナー

  • 大学教授とジャーナリストのコンビが、世界中を巡って「笑いの謎」を解き明かそうとするノンフィクション
  • 「ユーモア」という【呪文】の光と闇、そして限界とパワーの話
  • ロサンゼルスのコメエィアン、タンザニアの笑い病、マホメットの風刺画、ピエロチームと行くアマゾン慰問、パレスチナのユーモア、そして日本の異文化
  • 旅を終えた大学教授は、自分自身でコメディの舞台に立ち、その経験を活かそうとするが・・・?

絶望書店 頭木弘樹

  • 世にも珍しい「夢のあきらめ方」をまとめたアンソロジー
  • 小説からノンフィクション、歌、果ては藤子・F・不二雄のマンガまで、様々な種類の「夢を諦めた」話が載っている
  • 自分の気持ちに近い本が、もっと簡単に見つかってもいいのにと思ったものです
  • 夢がかなわなかった人には、誰もマイクを向けません
    • でも、私が聴きたいのは、そういう人の気持ちでした
    • どこにでもいるのに、誰も耳をかそうとしない、そういう気持ち。当人も心の奥底にしまっている気持ち
    • あきらめることを深く嘆く物語もあります
    • でも、嘆いているときには、嘆いている物語のほうが、心にしみて、なぜか救いになるものです
  • 大切なのは(略)可能性があってもあるところで断念して、心の平安を手にすることではないだろうか?
  • 言葉って純粋に他人に向けたものじゃなくて、自分に向かっていくものでもあるんだな
    • 話せなくなったとき、他人に向けた言葉はどうにかあきらめがついても、自分への言葉は絶対にあきらめがつかなかったんだよ
    • じゃあ、何が欲しかったの?
    • 俺だけの言葉
    • 作られるものじゃなくて、思い出すもの、発見されるものなんだよ
    • 俺がある言葉を心から欲しがっていたときのことを思い出したり、そんな切実さが湧いてくる瞬間を発見して、それを自分の言葉にするわけなんだ
    • だから俺の言葉は、語源が忘れられることがない
    • 国破れて山河あり
    • 俺というシステムがだめになってみて、自分の中に自然があることがわかったんだ(クォン・ヨソン『アジの味』)
      電子化×

絶望に効くブックカフェ 河合香織

  • エッセイ風の本の紹介
  • 選択したくない者、孤独、死にたいなど様々な願望に対して、新旧二冊の本で紹介している
  • 紹介される本の種類は、絵本やコミックエッセイから古典まで幅広い
  • 間違いなく、絶望に効く何よりの特効薬は本である
  • 私たちの苦悩が無くなることはないだろうが、本当の意味でひとりになることもない。
  • なぜなら、古代から受け継がれていた本の中には、必ず同じ絶望を持った人が居るからだ
  • 類書として頭木弘樹・編の『絶望読書』や絶望話などを集めた『絶望名人カフカの人生論』『絶望図書館』もあり、安易な明るい話や希望が語られるのが苦手になったときに向いている。

セルフ・ネグレクトの人への支援 編集代表:岸恵美子 編集:小宮山恵美 滝沢香 吉岡幸子

  • ゴミ屋敷や動物の多頭飼いなど、健康に悪影響があるような状態の人を支援する方法をまとめた本
  • セルフ・ネグレクト=自己放任・自分自身による世話の放棄・放任
    • いまだ統一された定義はないが「高齢者が、通常一人の人として生活において当然行うべき行為を行わない、あるいは行う能力がないことから、自己の心身の安全や健康が脅かされる状態に陥ること」
  • 対象者の自己決断を助けるという基本を尊重しつつも、生命や健康を守るために介入することを推奨しているところが特徴
  • 専門書だが、介入基準チェックリストやフローチャート、具体的な事例も載っており、一般人でも十分参考にできる内容である
  • 日本人は、遠慮や気兼ねなどから支援を求めることをしない国民性
  • 好きでそのような状態になっている場合は、個人の責任なので放っておくべきだと考える人もいるかも知れない
    • しかし、本当に、個人の責任、個人の問題なのだろうか?
    • 我が国においては、行政の窓口はほとんどが申請主義であり、その複雑さのあまり、サービスにアクセスできない高齢者がいる
    • そのような高齢者をセルフ・ネグレクトとして放置してしまうことは、見方を変えれば行政のネグレクトと言えるかもしれない
  • ゴールは「その人らしい生活」であり、自己決定を尊重し、自己決定を含めて支援していくことこそ、セルフ・ネグレクトの人への支援として重要であると考えている
    • 専門職は介入するに当たり、「本人の安全や健康」「個人の意志」のどちらも尊重し投なければならないため、支援に迷い、多大な時間を要する
      電子化×

ゼロからの脚本術 泊 貴洋

  • 10人の映画監督・脚本家のプロット術をインタビューした本
  • そもそもプロットを作らない人もいるし、そのノウハウは十人十色で、純粋に読み物として楽しめる
  • 具体的なハウツーはあまりないし、容易に真似できない部分も多そうだが、読めば、よりストーリー作りが気楽にできるようになるかも知れない
  • みんな、体験やそれまで視聴したフィクションからそれぞれのやり方でアイディアを作っていて、その違いも面白い
    電子化×

賤民と差別の起源 イチからエタへ 筒井功

  • エタとイチは本来、同語であり、エタ差別とはイチ(呪的能力者)差別に他ならないという部落差別の起源の仮説についての本
  • 「イチ」とは神と人をつなぐシャーマンのことであり、あの「座頭市」の「市」もこれに由来する
  • シャーマンは、神と人の仲介に成功して雨乞いなどの効果があった場合は崇敬を受けたが、失敗すれば厳しい罰が待っており殺されることすらある、スポーツ選手や政治家のような両義的な存在であった
  • それに加えて、合理的思考が社会に根付き、雨や病気が神やシャーマンに左右されないことに人々が気づき出すと、シャーマン=イチの零落が始まった
    • その地位の低下は、失敗した場合の怒りというより蔑視の感情に近づいていく、しかし一方でなお呪的能力への期待は、そう急に無くならない
    • それが、祭礼の時だけ重要な役割を果たすが蔑視される「エタ」差別となったのである
  • ちなみに、この「イチ」はマーケットの「市」とは関係がないようだ

叢書セミオポトスシリーズ

  • 学際的な団体「日本記号学会」がさまざまな分野を取り上げるシリーズ
  • 『食(メシ)の記号論』
    • 広大な「食」の全てをまとめることは出来ていないが、いろいろな話から食の多面性が見えてくるのが面白い
    • 目玉焼きの食べ方をテーマとしたマンガから見えてくる「ひとり飯の作法」や、手作り賛美が逆に全国で均一な食品屋調味料が手に入る時代に依存している事実、さらにはスズメバチの一種である「ヘボ」追いに見られる創造性の話まであったりする
    • 最後の章は、食とは関係なく、映画『キングコング』の多様な解釈可能性やモニュメントの意義、知覚論が収録されている
      • アートによる出来事の記述が、「思考することの場」として吟味できる可能性
        電子化×

忖度社会ニッポン 片田珠美

  • 重要な部分は他の本の引用だが、分かりやすく、そして現実的な対処法が書かれている新書
  • 鴻上尚史『空気と世間』阿部謹也『「世間」への旅 西洋中世から日本社会へ』などの引用がまとめられている
  • 世間の五原則
    • 1 贈与・互酬の原則:地位に対する贈り物
    • 2 長幼の序
    • 3 共通の時間意識:初めて会う人でも再会した人と話すように対応
    • 4 差別的で排他的
    • 5 神秘性
  • 「世間」が中途半端に壊れているから、かえって「空気」の支配が強まっている
    • 現在の日本では、終身雇用前提の社縁や地域社会の地縁など、すべての共同体幻想が崩れつつある
    • こうした状況で、不安と孤独感にさいなまれた多くの日本人が、より大きな繭に包まれたいと願うのは当然だ
    • その結果、「共同体の匂い」を感じたいという願望が強くなり、「空気」を読むことが求められるようになったのだろう
  • 忖度は、日本社会から決してなくならない
    • 忖度とは、相手の指示がなくてもその意向を推し量り、先回りして満たそうとすることであり、通常は配慮とか気配りとして認識される
    • こういうことがどこにでもあって問題視されることがないのは、日本社会において「察する」ことが伝統的に重視されてきたことがある
      • 歴史学者・会田雄次『日本人の意識構造』:「察する」ことは、「思いやり」という思考動作によって可能になる
      • 「思いやり」とは、相手の立場になって考えて見るということにすぎない
      • それは、こちらの立場を白紙状態におくことで可能になるはずである
      • 「無念無想」=「水面を澄ますことで、相手の心を鏡のようにこちらの心に映すこと」が日本社会の理想のコミュニケーションとみなされてきた
    • 日本社会では、「言わなくても分かる」以心伝心、裏返せば腹のさぐりあいによってコミュニケーションをとってきた
      • そうした「言葉の否定」こそが、「空気の支配」を許す一因となってきたのだ
  • 忖度がはらむ弊害に気づかねばならない
    • 必要なのは、観察と分析:なぜあなたは忖度するのか
      • 最終的には、「忖度することは、自分が生きていくうえで必要不可欠なのか」と、醒めた目で自問することをお勧めする
  • 忖度をやめても、人間関係がギクシャクするとは限らない
    • これまであいまいなままになっていたことについて質問し、明確にすることによって、人間関係がむしろ円滑になる場合も少なくない
  • 傲慢人間の意向を忖度するイネイブラー(enabler) の三段階(許容・忖度・称賛)に注意:暗黙の許容が、加害であることを意識しておこう
    • イネイブラーが、傲慢人間をのさばらせ、衰退惹起サイクルを進行させてしまう
    • 傲慢人間は、向こうの自滅を待つのが賢いやり方
  • 空気に支配されやすいのは、言葉の否定があるから
    • 自分の身を守るためにも、「言葉にしなくても分かる」という思い込みを捨てることが必要
    • 何を要求しているのか察しが付いても、しらばっくれるのが一番だ
    • 根拠があいまいな噂も、ソレが事実だという根拠は?私にそういうことを話すのは、どうしてなんですか?と問いただすこと
      • 周囲を仲たがいさせて「空気」をかき乱し、自分の影響力を高めたいだけかも
    • 「空気が読めない」ことを逆手に取ったほうが生きやすいのではないか?(空気に支配されることもないし)
      →『創ア』のシナモリアキラ?
  • 「空気」をある程度読むことは、組織の中で生き延びるために必要だろう
  • だが、その「空気」をなんとなくおかしいと感じるセンサーの感度が低下しないように、そしておかしいと感じたら、あえて忖度せず、時には水を差す勇気を持ちたいものである
    電子化○

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える ダニエル・ドレズナー

  • 国際政治学の諸理論が、発生したゾンビにどう対応するのかを真面目に、そして面白おかしく書いた本
  • その半分以上が、ゾンビ参考文献と様々なゾンビの例で出来ている
  • ネオコンが、攻撃による恐怖でゾンビを萎縮させようとしたり、ゾンビに対する思想の違いで対立が生じたりする
  • ゾンビ以外の存在への対応を考えることにも、繋がりそうなシミュレートである
  • 訳はやや下手でルー大柴っぽいので、それが嫌な人は原書を読んだほうが良いだろう

コメント

コメントで作品紹介を書き込むと、誰かが追加してくれるかもしれません