推薦図書/性・性愛・聖婚関連/その他/あ行

Last-modified: 2024-03-03 (日) 09:12:42
  • アリュージョニスト以外のネタバレに注意
  • サイバーカラテを実践しよう (知ってる作品があったら、説明を追記しよう)
  • 最下部のコメントボックスで作品紹介を書き込むと、誰かが追加してくれるかもしれません
  • 多分図書じゃなくてもいいと思うよ
  • 参照と類似は呪力です。高めよう。
  • ほんの少しでも推薦図書に見えたのならそれが推薦図書です(邪視)。追加しましょう。五十音順に並んでいます。
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性・性愛・聖婚関連/その他

〈悪女〉と〈良女〉の身体表象 編著:笠間千浪

  • 雑誌や芸術が、どのように女性とその身体を描いていたかを分析した研究を集めたもの
  • 良・悪という二項対立でしか語られてこなかった女性表現を、さまざまな分野から検証している
  • そうした表現の中には、女性自身によって作られたり演じられたものもあり、
    • 二項対立の境界を超越した、女性の〈身体〉表現となっていて面白いし美しい
  • 戦後米日の街娼への呼称「ベビサン」と「パンパン」
    • どちらも男性性の主張や回復のための「巫女=媒体(メディア)」であった
    • 米国側の「ベビサン」は、占領期という植民地的状況における「ちゃんぽん関係」を示す具体例だった
    • 占領者と現地女性の間の買売春といったきわめて構造的な支配関係は、あたかも「自由恋愛」であるかのように描かれた
    • しかしながら、勝者側の男であったとしても、男性性は常に脅かされている
    • 支配側の主体性の確立には、基本的に他者(従属側)の承認が必要であるという逆説
      • 「使命者あるいは宣教師的立場」も、「原住民側」のへつらいやお世辞によって操作される可能性を常に残している
      • 植民地状況における宗主国側の男性性も「原住民の女」の「承認」によって支えられているため、そこには男性性が脆弱なものになりうる契機が常に存在するのである
    • 自らの男性性のヘゲモニーを維持するのは容易ではないのだ
  • 狼少女の系譜:赤ずきんの身体の両義性
    • 父権社会が女性に対して抱く、ニつの矛盾するイメージの反映
    • 子どもらしい純真さと、悪に引かれ狼を誘惑する〈堕落した女〉
    • さらに、フェミニズムを経て再構築された狼少女のイメージも加わった
    • 男性の欲望を映す鏡である〈悪女〉化の否定
    • そして、女性が性的欲望を抱くことはすなわち男性化することだ、という論理の否定
    • 少女の野獣への変身
      • 動物的な(つまり人間がもつ)肉体的欲望に対する嫌悪や恐れを超えて、男性中心社会によって規定された欲望の法則から解き放たれた場で生じうる、
      • 内なる他者としての新たなつながり方の可能性
    • 環境問題で狼のイメージが好転
      • 周縁に追いやられてきた「自然」本来の姿をとどめた存在として、肯定的な意味で女性との親近性が注目されるように
    • 芸術家・鴻池朋子の作品
      • 少女と狼は互いの存在を消し去ることなく、違いを保ちながらひとつに融合している
      • そこには非会社と加害者という構図も、二者択一の結末もない
      • 眠れる狼は少女が感じ取る森の体の一部であり、狼と一体化することで、少女もまた自然界が紡ぐ物語の一部となる
    • 赤ずきんは、男性のなかの獣性の比喩である狼と共謀することで、父権社会の秩序を成り立たせているさまざまな二項対立の枠組みにその内側から逆襲を仕掛ける
      →賢者イヴァ=ダストとエスフェイル(こちらは片方に主導権がある乗っ取りタイプだが)
      電子化◯

〈悪女〉の文化誌 編著:鈴木紀子・林久美子・野村幸一郎

  • 平安日本から西欧まで、〈悪女〉についての研究をまとめている本
  • 比較的読みやすく、女武者やロレンスの書いた「月の女神」としての「魔女」など、歴史や芸術に登場する多様な女性像を楽しめる
  • 「悪女とは誰であったか」を問うことは、同時に、その共同体で共有された規範性、〈女らしさ〉という物語とは、どのようなものであったのかと問うことと、ほとんど同じである
  • コンセプトの先駆者の本として、田中貴子『〈悪女〉論』、日本における「邪悪な女性像」の研究としては朝倉喬司『毒婦の誕生』がある
    電子化×

悪について誰もが知るべき10の事実 ジュリア・ショウ

推薦図書/その他/書籍類/あ~さ参照

あなたに伝えたいこと 性的虐待・性被害からの回復のために シンシア・L・メイザー K・E・デバイ

  • 性被害に被害者とその周囲の人々が立ち向かうための方法を、丁寧に語っている本
  • 少し厚いが、ケースごとに分かりやすく解説しているし、被害者からの応援メッセージも載っている
  • セックスの考え方について見直し、「あるべきセックス」について考える章やマスターベーションについて触れている箇所があるのも良い
  • 性被害をうけたひとへ言うべきこと ◯「あなたを信じているよ」「あなたのせいじゃないよ」「あなたはひとりじゃないよ」
  • ×「信じられない」「もう忘れなよ」「かわいそうに」「あなたの気持ちはわかるよ」「誤解してるんじゃないの」
  • 性被害を受けた友だちの話を信じられなかったとしても構わない
  • そう思うのも当然
  • でも、友だちに「信じられない」とは言わないで
  • オープンな気持ちで話を聴き、あなたなりに、できるだけ友だちを支えてあげましょう
    電子化×

アフリカ女性の民族誌 伝統と近代化のはざまで 編著:和田正平

  • アフリカの女性について、さまざまな視点・地域文化からの研究をまとめた本(1996年)
  • フェミニズム的な傾向は強いが、家父長制(父系氏族制と長男相続制)を、過酷な環境への適応のため必要だったと肯定する論もあれば、
    • イスラム原理主義や地方女性の保守性が、女性の人権についての改革や変化に抵抗している現実を記述している箇所もあり、
    • 更には、ハーレム社会における、誰もが母として扱われる文化を「社会学的母」と観る観点など、
    • 単に、教条的で単純なイデオロギーを唱えるだけの書物というわけでもない
  • ア関連では、女性に関わる呪術的な文化や信仰などが目立つ
    • 女性に関わる信仰では、富の源泉である川などの「水の空間」を支配し、女性として語られる「水の精霊」や、
    • 無限の豊穣性というプラスの意味と、月経に結びついたマイナスのものという二面性が指摘されるかと思えば、
    • 人間の血を好むがゆえに、月経を禁忌としない女神の話も見られる
  • 他にも「交換」され「買われる」という建前に反し、人生を謳歌する女性たちや、
    • 互いの名前を交換しあって家族意識を高める複婚家族の寮妻たち、
    • 王が、五十余名の男子を王子格の人物・ンジに任命するバムン王権社会など、
      • 専制や交換の暴力に対抗可能な、多様な文化が紹介されており、大変興味深い
        →名前関係の呪術
  • 抜粋
  • キプシギスでは、「女の知恵」は男女の上下的対立よりも、むしろ異質性の強調として用いられる表現
    • 「男の知恵」は、飢餓の最中でも社会的な信義を優先させるが、「女の知恵」は規範を出し抜いて自己中心的に生きようとする
    • それは、男性という存在様式の埒外にあって、どうしても及びがたい知性と石を女性に認める側面を持つ
    • しかも、「「男の知恵」は、女性を意識して極度に理想化された男性イデオロギーに過ぎない
    • 二人の賢い老人が、互いに全力で騙しあうことを通じて無二の真友となったという寓話も、
    • 「人生とは詰まるところ似た者どうしによる互酬の闘争ゲームであり、真の友情は、与え合い、かつ奪い合わなければ生きて行けないという、
    • 人間の生存条件を直視してたじろがず、生涯を闊達に生き抜いた好敵手どうしの間でこそ築き得るものだ」と解釈されている
    • また、「女の知恵」は家内的であることを裏切り、むしろ「公的/家内的」という二項対立自体を相対化する要素を内包している
    • パブリックな領域から切り離されたプライベートな領域が誕生するのは、貨幣というなんでも計れる一般的基準が誕生する近代以降であり、
    • 「女の知恵」が内包する「私的」な領域とは、近代的な「私生活の領域」ではない
    • いわばそれは、社会規範からの逸脱として、公的な領域に対峙する「悪」の領域である
    • しかも、この「悪」は必ずしも家内的な領域と矛盾せず、むしろ遷移的融合している
    • 氏族の始祖として語られる女性の逸話も多く、たとえば自らの命を犠牲にした奸計をもって息子の婚資を獲得した老婆のエピソードは、
    • 氏族の起源伝承として、扱われているのだ
      →善悪二元論では捉えきれない世界観、対立するとは限らない男女の関係性
    • 村の外にあるヤブ(危険)と関わり、集団猟を率いて妖術師から人びとを守るけれど、当人も恐れられている男性「ヤブの主」
    • 「水の精霊」から漁撈の許可をもらう「水の主」
    • そして、「水の主」やその関係者たちの夢を通して詔命され、地上と水底を往復してコミュニケーションの仲介者となる女性「水の娘」
      →霊媒
    • 女性性に結びつく「水の領域」と男性性の「ヤブの領域」は、緊密に結ばれるなら家庭において男女の調和ある発展が見込まれる
      →『聖婚』?
  • アシャンティにおける二つの原理の構造的な関係
    • 「モジャ(血液、女性原理)」「ントロ(性液、男性原理)」
    • 「モジャが支配的な統合の原理になっているのに対して、「ントロ」は道義的な統合の原理を成している
    • 構造的に劣位にあるものが、道義的・儀礼的には優位にあることによって、政治的な領域では聖なる力があると認められているという
      →アにおいてたびたび演じられる逆転?
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ありすぎる性欲、なさすぎる性欲 ウィリー・パジーニ

  • セックスカウンセラーの著者が、色々な人の性欲や性問題への対処を綴った本
  • 色々な性や性欲について、気楽に読むのに向いており、サディズムやマゾヒズムについても記載がある
  • 心理学者ダスティ・ミラー:女性は昔から、相手に対して反撃すべきではないとされている
  • そのために、心の傷を負った女性たちは、自分自身に対して攻撃的な行為に走ることになる
  • ロバート・ストーラーの記事:異常な欲望は、以前に体験した苦しみを乗り越えるために生まれたもの
  • サドマゾ愛好者の多くは、幼児期に肉体的にも精神的にも苦しい、ひどい病気に苦しんだ経験をもっています
  • そんな耐えがたい状況から逃れるために、苦痛の中に性的な刺激を感じるような極端な能力を身につけたのです
  • それで彼らは生きる悦びを感じるのです
    →かつてのメートリアン?

アンティゴネーの主張 問い直される親族関係 ジューディス・バトラー

  • ソフォクレスの戯曲に登場するアンティゴネーに注目して、既存の家族イメージを不変のものとすることに異議を唱える芸術論
  • 精神分析はオイディプスを基準にするが、それがアンティゴネーであったなら、全く違うものになってたのではないだろうか?
  • ラカンとヘーゲルのアンティゴネー論への批判、さらには、レヴィ=ストロースでさえ家族システム成立の前提としていたように思われる「近親相姦タブー」の位置づけについての問い直しを行っている
  • ただ、既存の家族像に縛られない新しい家族像成立のための条件や、国家に合法化を求めないタイプのフェミニズム像については、今ひとつ確立できていない印象がある
    • それでも、これからの多様な家族の在り方を否定しないためには、既存の家族像やその成立条件を問いなおすこの本のような試みは、必要であり不可欠であろう
  • 専門用語が出るし一文が長めでわかりにくいため、最低でもラカン心理学の基礎知識ぐらいは、読解に必要だと思う
    • 他にも、構造主義・レヴィ・ストロース・ラカンあたりの基本的な知識はあった方がいい
  • おまけに、既存のアンティゴネー論を批判しているためにそれらへの言及も多く、ちょっと著者自身の論旨が読み取りにくい
  • ただし、著者の主張がまさに「アンティゴネーは、権力者の言葉を流用・簒奪して自身の主張として役立てている」ということなので、この読み取りにくい形式はおそらく意図的なのだろう
    →『呪文』
  • 前日譚に当たる『コローノスのオイディプス』についても重要な扱いをされているが、別にそうした引用元を読まなくても内容の読解自体は可能である
  • なお、著者の『アンティゴネー』解釈は、戯曲発表の順番という基本的な事実認識が定説と異なっており、その箇所は、自説のためにそれらをねじ曲げてしまった「断章取義」となっているおそれがある
    →四章・断章編
  • アンティゴネーは、父に呪いの言葉をかけられた
    • 「お前は死んだ男(=父)以外誰も愛せない」
    • だが、彼女はこの呪いに敬意を払うと同時に、それに従ってはいない
    • なぜなら彼女は(彼女の長兄でもある)父への愛を他の兄への愛にずらしていったから
    • アンティゴネーは母親イオカステー(彼女の祖母でもある)とその息子(父・オイディプス)の近親相姦から生まれたので、彼女にとって父は兄でもある
    • 結局のところ彼女にとって、兄と父とはすでに交換可能なものだった
    • 彼女の埋葬行為は、この交換可能性をふたたび制定し、さらに念入りに作り上げるものである
      →『呪文』、交換可能性
    • アンティゴネーは、発話行為が宿命的罪となるようなものとなる
    • だがこの宿命は、彼女の生を超え、それ自身の可能性に満ちた宿命としての(その倒錯的で前例のない未来の新しい社会形態としての)理解可能性の言説のなかに入っていくのである
      →人間性の拡張を行う『呪文』?
      電子化×

いくつもの日本 編:赤坂憲雄 中村生雄 原田信男 三浦佑之

井田真木子著作撰集 里山社

  • 『プロレス少女伝説』など、対象に真摯に向き合って書かれたノンフィクション集
  • ゾーイ・アキラが好きな人などに、オススメ
  • 「私は女だし、私の体は、女の体なんだよ。自然な女の体だよ」
  • 「いつも、自分の身体も心も、大切にして生きたもん。男に生まれてたらよかったのにってのはよぅ、だから、ゲスな考えってんだ」(神取しのぶ)

1冊で知るポルノ デビー・ネイサン

  • 短めで分かりやすいボルノとその批判の歴史、そしてさまざまな面から見たその実態
  • 本書の目的は読者に情報を与え、現代のメディアや文化の中で「成人向け娯楽」の世界にどう向き合うかを、読者自身で判断してもらうことにある
  • ポルノを利用する人たち、特に、セックスについて急速に知識を吸収している若者には、ポルノは演技であり実生活ではないと理解することが求められている
  • けれども事実と虚構を分けて考えられるくらい世の中のことに通じていれば、ポルノは恐ろしくもないし危険でもない
  • ポルノが長期的に有害であるという「確証」が研究や調査から得られたこともない
  • 疑問がつきまとうためにいつまでもなくならず、発展し続ける、おそらくそれがポルノの本性なのだろう
  • テレディルドニクス:遠隔地どうしで擬似セックス出来る機械
  • ポルノ研究家のジョセフ・スレイドによれば、ポルノの定義の一部はテクノロジーと身体のコントロールであり、二つはいろいろな意味で分けられない
  • ポルノは、イカロスの翼のような魅力的で同時に恐ろしい「快楽のテクノロジー」なのだ
  • (ネット含む)テクノロジーの使い方を(利益第一の大企業が決めるのではなく)人々が決める社会を作るために、市民が一役買うよりも刺激的なことがあるだろうか。
    →サイバーカラテ?
  • 女性向けの露骨なセックス描写でも、ロマンスやエロティカと呼ばれる女性向けは規制されていない
  • ポルノ制限を廃止したデンマーク、西ドイツ、スウェーデンは、逆に性犯罪が減少した
  • 「バトラー判決」をもとにポルノが規制されたカナダでは、ゲイやレズビアン向けのもの、そしてポルノ批判派のアンドレア・ドウォーキンの本まで没収され、後者は現在でも発売禁止である
  • ポルノは矛盾だらけだが、女性運動もまた矛盾に満ちている
    →【変数レイシズム】?
  • ポルノのイメージの受けとめ方は、男女とも一人ひとり異なることが明らかになってきた
    →『アリス・イン・カレイドスピア』ラストの【邪視】破り?
  • ポルノは、自分の体やセックスにコンプレックスを持ちながら成長した大人たちにとって、実際に役に立つことがある
  • またポルノは、性的興奮を感じてもパートナーがいない人びとに、代わりのものを提供できる
  • ポルノはファンタジーであり、実生活とのつながりはほとんどないが、満足やよろこびを得る人もいる
  • 男性にとって、女性がモノである以前に、ペニスがモノであり、ポルノはそうした女性とセックスを客観視するという傾向を助長する
  • 女性ポルノ映画監督トリスタン・タオルミーノ:ポルノに女性の快楽が欠落していることは不愉快としか言いようがない。
    • ポルノを作ることはひとつの政治行動だと思う。
    • それは、女性運動のさまざまな活動と同じように正当で価値ある行動だ
  • アメリカでは「アマチュア」という、ただ自分の性行為を映像化するのが好きな素人が撮るポルノが、急増している
  • ハンガリーなど貧困国では、貧困のためポルノ出演希望者がたくさんおり、貧困ムードもポルノに利用されている
  • ポルノには教材としての可能性がある
  • ポルノを見たことで、精神が不安定になるという意見も
  • セックスは金になると言われているが、実際に売れるのは実はセックスではなく恐怖だ。これを買わなければ美人になれない、美男子になれない、幸せになれないという恐れである
    →ミヒトネッセ?
  • ほんとうに脱ポルノ化を望むのなら、セックスへの興味と性的イメージは人間の条件の一部だということを受け入れ、あるいはいっそ賛美しなければならないだろう
  • さらに、民主主義と市民権という魅惑的な概念を受け入れなければならないだろう
  • 貧困や抑圧や無知のために誰かほかの人の性的欲望を演じる必要など存在せず、だれもが自分の性的欲望を表現する権利を持つ、そういう世界よりも興奮させるものがこの世にあるだろうか
  • 型にはまったパターンに従うのではなく、自分自身を地域社会の一員であり複雑な個人であると理解することで、若者が自分を知る助けになる性教育より刺激的なものがあるだろうか

インドネシアのムスリムファッション なぜイスラームの女性たちのヴェールはカラフルになったのか 野中葉

推薦図書/その他/書籍類/あ行を参照のこと

「AVが教科書」のせいで女性は悩んでいる。"エロメン"一徹さんに聞く、男女のセックスがすれ違う理由

選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子 河合香織

  • 日本初の「ロングフルライフ訴訟」(=産まれたことによって負った損害の補償を求める裁判)についてのノンフィクション
  • 周辺事情も含めて問題を深く掘り下げることによって、出生前診断と障害児中絶についての議論を日の当たる場所に引き出そうとしている
  • 妊婦としてそして母親として、最後まで揺れ続ける提訴者の心情が克明に描かれており、
    • 一見、不合理で矛盾して見える彼女の気持ちの実態が、良く伝わってくる
  • 類例の取材、相手方の弁護士の言葉、そしてダウン症の当事者まで周辺事情をよく取材しているのが素晴らしい
    • 丹念な取材が、タテマエとホンネが矛盾する日本の中絶の現実や、当事者にならないと分からない選択の重みを浮き彫りにしている
  • ただ、著者が訴訟者と近い経験を持ち彼女に共感できる分、どうしても訴訟の相手方に悪意的な解釈をしてしまいがちなところがあるのが、惜しいところである
  • それでも、基本的には対立意見も含め、事件周辺のさまざまな心情を中立的にまとめているのもまた確か
    • 子供好きであり、41歳での高齢出産で障害が心配でも、出来るだけ産みたかった提訴者
    • タテマエ上は障害児の中絶(堕胎)は犯罪なのに、実際には理由をごまかしてたびたび行われ、実質的に中絶のための検査も行われているという、矛盾した日本の産科の実態
    • いくら中絶に反対したくても患者が望めばやらざるを得ず、ときには、障害児が苦しみながら死んでいくところをケアも出来ずに見ているしかない、病院側の苦痛
    • 障害児の中絶が、今生きている障害者の生を否定することだ、と感じる障害者たち
    • 結果として障害児を産んだけれど決して迷わなかったわけではない母、養子に出されて幸福を得た障害児と彼女を愛する新しい家族たち、優生保護法下で強制的に不妊手術を受けた人々の苦悩…
  • すべての心情が、その立場からは当然のものであり、そのすべてが誰もが関係者になり得る可能性を持つ、深い共感が可能な感情なのである…
    • 筆者が理解できていない医者にしても、「みんなに愛される立派な医者」という自己イメージを守ろうと狼狽しつつ、自分なりに責任を果たそうと四苦八苦している姿が、取材を通して見えてくる気がする
      • それに彼の裏には、障害児中絶公認への道筋を作りたくない医師会の圧力や、夫を切り離してでも問題を解決したい妻などの存在が見え隠れするのだ
  • そしてもしかすると、この訴訟は、感情表現が人によって異なることへの無理解を大きな原因としていたのかもしれない
    • この訴訟の訴訟者は、子どもが亡くなったときに、医者が「謝ってくれなかったこと」を最大の問題としている
    • だが、もしその時、医者が(訴訟者が望むとおりに)子供の死に対しての深い罪悪感を感じていたとしたら?
    • 自分が「加害者」だというのに、口だけ謝罪して謝意を示したところで、それは一種の「責任逃れ」に思えたりしないものだろうか?
    • また、人間を生かし子どもが産まれることを援助すべき、つまりは障害児中絶を絶対反対するべき立場にある医師が、その場の感情に任せて、その立場に反した発言をしても良いものなのだろうか?
    • なにより、感情表現というのは、訴訟者が求めるような「謝罪」ワンパターンだけなのだろうか?
    • 悲しいからこそしゃべれない、責任を感じるからこそ無表情になってしまう、そういった人、そういった状況も、少なくはないのではないだろうか?
    • あるいは訴訟者にとって「当たり前の感情表現」は、実際にはすれ違うことしか出来ない、自己中心的な要求だったのかもしれない
    • 結局、悲劇にあって、自己中心的にならない者なんて、誰もいないのかもしれないけれど…
  • その訴訟は、苦しみ続けて亡くなった子どもへの謝罪を求めるためのものであった
    • 訴訟の提訴者は、誤診によって、ダウン症の子どもを中絶することが出来なかった
    • 産んだあとには愛着も湧いたし、子どもに出会えたこと自体には感謝している
    • だが、子どもはダウン症独特の病気(必ずなるとは限らない)で長い間苦しみ、亡くなってしまった…
    • 提訴者は苦悩した
      • 彼を苦しめたのは、ダウン症に気づけず彼を中絶出来なかった提訴者ではないのか?
      • それに、苦痛に満ちた子どもの生を作り出したのは、出生前診断であれほど自信ありげに誤診をした医者のせいではないのか?
    • 医者に、子どもに対して謝罪して欲しい、あの苦しみに対して共感し、悲しみを示して欲しい
    • ただそれだけの提訴者の思いは、世間に大きな反響を巻き起こしていった…
  • ダウン症でありながらも日本で初めて大学を卒業した岩元綾さんは、訴訟について語った
    • 「赤ちゃんがかわいそう。そして一番かわいそうなのは、赤ちゃんを亡くしたお母さんです」
    • それを聞いた訴訟者は涙をためながら言った「どうして私のことをかわいそうって言ったのでしょう……」
  • 国連の女子差別撤廃委員会(CEDAW)は、深刻な胎児の障害を理由とする中絶を合法化するよう勧告を出した
    • 障害があっても子どもを産まなければならないことを強制されるのは、女性の自己決定権を阻害するというのだ
    • だが、女性の権利運動の成果として中絶が合法化された欧米諸国とは違い、日本では歴史的に中絶と優生が抱き合わせの状態から始まったため、胎児条項を議論するときに優生思想との関係を避けては通れない
  • どの程度の病気や障害なら中絶して良いのか、その線引きは国や社会によって異なる
    • 現場運用で中絶が決められている日本では、重くない障害に対しても中絶が拡大するリスクがある
  • 無力な私には、答えはまだ出せない
  • しかし、わかることもある
    • 知恵を振り絞って意見を出し合い、どんな意見もタブーにせずに光が当たるところで議論していくことでしか私たちは生き残ることができない
    • 文化という知恵、その武器を持ち、対話を積み重ねることが私たちを救うことになるのではないか
  • これから我々の社会は、命の選別に直面せざるを得ないことも多いだろう
    • 出生前診断や遺伝子検査の技術は、驚くほどのスピードで進んでいる
    • しかし、その速さに追いつく議論はなされていない
  • 議論すること自体が、障害者差別になるからという人もいよう
  • だが、タブーにして包み隠していることもまた、差別になるのではないだろうか
  • 暗闇に閉じ込めることなく、光の当たる場所に議論をおいておきたいと思って本書を執筆した
    電子化◯

遠隔診断のため息子の裸の写真を送信→変態パパ扱いでGoogleアカBANに

  • チャイルドマレスター(小児性犯罪者)を規制するためにシステムが、暴走してしまっているディストピアなネットニュース記事
  • 現代の性規制と、企業に情報を管理されている
  • クレジットカード会社なども性への過剰な規制を強めつつある昨今では、日本でも対岸の火事とはとても呼べない案件である
  • ちなみに、ポルノ検出にはAIが使われている
    GIZMODE記事

応援の人類学 編著:丹羽典生

→チアリーダーたちが能動的にジェンダー役割から逸脱したり、それを変化させていった例が紹介されている
リンク

欧州の「同調圧力と性」について日本人は何も知らない 谷本真由美

お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門 北村紗衣

  • フェミニスト批評家によるWEBでの連載をまとめた本
  • 題名はマザーグースの一節の改変
    • 筆者は「女性は別にナイスなものでは出来ていないし、ナイスになる必要はない」という意図を込めて、題名を名付けたという
    • だが、岡本太郎以来、日本で「爆発」にはむしろ良い意味しか無いので、(女子は甘ったるいだけでなく実はもっと素晴らしいのだというように)むしろ、筆者の意図とは真逆の意味になってしまっている
  • この本は、様々な映画や文学作品について、フェミニスト、そして腐女子の観点から語っている
  • 時事ネタにも触れており、「女だけの街」の章では、文学作品や実在するコミュニティの例を豊富に挙げているし、「ディストピアSF」では、未訳なうえに一度絶版になっている女性作家の作品もの名前も出している
  • 文章は読みやすく、気楽に読めるし、多くの作品についての概略を知ることができる
    • 舞台の演出をそのまま映画に持ち込んだ、華やかなバズ・ラーマン映画の魅力など、比較的マイナーな作品に触れることができるのも良い
  • ただ、その批評はフェミニスト観点を打ち出すために他の視点を切り捨てているところもあり、そこが惜しい
  • 例えば筆者が絶賛する映画『ファイト・クラブ』の感動的なラストシーンにしても、実はサブリミナル画像が仕込まれていて、単純なロマンチックエンドにはなっていない
  • また、筆者は女性の性欲を肯定し、女は「愛とセックス」で男を必要とすると語っている
    • そこまでは良い
    • だが、彼女が嫌悪するディストピアSFでの女性嫌悪にしても、それは(苦境時に自分をサポートしてくれるパートナーを求める)男性側の「愛とセックス」への期待の裏返しなのではないだろうか?
    • まあ、結局それが押し付けがましいエゴでキモく、女性の性欲を受け入れられないうえに異性を道具化しがちなことまでは、否定できない
    • しかし、どうせならそこまで掘り下げてから、男女の共生を考えて欲しかったところはある
  • なにより、「キモくて金のないおっさん」は、社会に助けられず生存すら危ういことが問題視されているのに、それに対して悲劇的な結末を迎えるチェーホフなどの古典に学べと諭したところでなんになるのか…
  • 総じて、女性側の苦悩や不幸についての説得力がある弁護をしているが、ほとんどそこだけで終わっている感があるのが、ちょっと残念な批評集である
    電子化◯

オタサーの姫 ジャンヤー宇部 監修:サークルクラッシュ同好会

  • バズワードである「オタサーの姫」その「現象」を研究した本
  • 著者の力不足のため内容はほぼエピソード集でしかなく、ネトゲやソシャゲ、ニコ生などを取材できなかったこと、調査機関の大半が「オタサーの姫」という言葉が生まれる前だったなど、不足な点も多い
  • しかし「姫」側の理由だけでなく、「姫」を作り出してしまう男性たちの願望や責任までしっかり追求してある良書である
  • ハードなセクハラが行われていた例もあり、男性側の責任がはっきり分かる内容だったりもする
  • 男性多数の居場所に潜り込んでいく女の子について「オタサーの姫」だとか軽口を叩く方は楽かもしれない
    • だが、そのコミュニティが、ただ女性であるというだけで排除されてしまう場所なのだとしたら、それが本当に良いことなのか疑うべき
  • 元サークラで、炎上したブロガー鶉(うずら)まどかは、恋のバフェット?
    • 投資家ウォーレン・バフェットのように、成功した上で説く「恋愛社会主義」
    • 彼女が語っているるのは、みんなで良くしていこう支え合っていこうという、干渉的で、全体の幸福を考える功利主義
    • わたしがしてきたことは、そんなにおかしいでしょうか
    • だって、好かれたいと思って好かれるように行動するのはアタリマエでしょ
    • すすんでモテようともしない男のコたちが、受け身のままで「テンプレな」女の子ばっかりを好きになって、そのことへの反省もなく手のひら返しの女叩きをするのって、すっごく腑に落ちない
    • やっぱり、相互理解が出来てないから、恋愛がうまく行かないんだと思うんです
    • 両方に敵愾心があって、お互いを同じ人間として対等に見ていない
    • 若い男の子は、異性とのコミュニケーションに積極的ではない
    • だから、高校生くらいから課外活動などで普段は違うコミュニティの男女が出会う機会を作るべき
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男が見えてくる自分探しの100冊 中村彰 中村正

  • 「男」についてのブックガイド
  • 97年刊行の古い本だが「男らしさ」の弊害から老年期の性、イクメンの本音や男が受け身のセックスまでカバー範囲は幅広い。
  • ハゲ、男にとっての出産、美男のすすめや性的不能者裁判など、レアな題材を扱った本も多い。
  • これから男がどう生きていくか考えるには、読んでおいて損はないと思う。
    →イアテムやミヒトネッセ、グレンデルヒに勧めたいブックリスト。「男らしさ」から「自分らしさ」へ移るヒント集。

男はなぜ悪女にひかれるのか 悪女学入門 堀江珠喜

  • 古今東西の「悪女」についての情報を集め、面白く解説している新書
  • 著者自身も「悪女」呼ばわりされたこともあるだけに、その分析は詳しく分かりやすい
    • さまざまな悪女たちを称賛したり批評しており、
    • 自分たちを免責する男性たちを、批判しているだけでなく、
      • 時代とともに、女性にとっても魅力的な存在として解釈されるようになった「悪女」イメージの変遷も追っている
  • 「悪女」と一口に言ってもその実態は様々
    • 顔はブスでも、教養でモテまくる女優(高級売春婦)のファム・ファタルも多いし、
    • 男性たちと同じく野望を追っているだけなのに悪評を立てられていたり、権力闘争で利用された女性たちが、噂話を面白くするために「悪女」のレッテルを貼られているだけのこともある
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男はなぜ暴力をふるうのか 進化からみたレイプ・殺人・戦争 マイケル・P・ギグリエリ

  • 原題は『The Dark Side of Man』
  • 類人猿の専門家が男性の暴力性について追求した、希少なテーマの書
    • ポリコレ神話だけで物事を考えることを否定し、科学的な見地や人に近い種の生態から、男の暴力性の根源に迫っている
  • ただ、この本が朝日新聞社から出版されたのが、2002年(原著は1999年刊行)と科学系の書籍としてはかなり古いため、
    • 最新の学説から見ると間違っているおそれも大きい
  • また、引用される出典がしっかり表記されておらず、学術的資料としての価値自体も低い
  • いちいち引用されるエピソードも無用に長く、化石関連の話などはあまり本題に関係がないので、読み飛ばしても構わないほどだ
  • とはいえ、人間の本能をしっかり見つめ、その中や文明に希望(言うならばThe Light Side)を見出そうとする筆者のスタンスは万古不易なものであるし、
    • 暴力性研究の参考にするだけなら、十分に使える本であると思われる
    • 家父長制といった、文化(ミーム)だけが全てとする傾向があるポリコレ神話と違って、筆者は文化(ミーム)だけでなく、その土台である生物としての人間の本能をも、しっかりと見つめているのだから
  • それに、筆者自身がタンザニアでAKを突きつけられた件など一部の話だけは、ノンフィクション短編としてそれなりに面白い
  • 筆者が見出した表題の答えを一言で言うと「女を獲得するため」
    • 別の言い方をすると「それが男(ヒトのオス)の繁殖戦略だから」である
      • 女性は同時に何人もの男性の子供を産むことは出来ないが、男性は女性に産ませることが出来る
      • あらゆる手段を用いて繁殖して、自分の遺伝子を拡散するのが、男性にとって最適な繁殖戦略であり、
      • そうした手段を選ばなかった者の遺伝子が、淘汰を越えて残ってきたのだ
      • 道徳得な是非はともかく、遺伝子を残せるものだけがその性質を受け継がせてきたとも言える
      • そのため、女性を強制的に獲得出来るレイプ・戦争・暴力が、あらゆる民族の男性の性質として定着してしまったのである
        →『地上』の価値観、槍神教の教え、ハグレスの性質
  • 最終的に筆者は、「地球規模の協力関係」を成り立たせることこそが、男の暴力に勝利する唯一の方法である、と強く主張している
    • 「オウム返し戦略(しっぺ返し戦略)」=同害報復による抑止力としての暴力の必要性と、それ以外の暴力的な逸脱の防止
      • そして、自立、公正、人間の尊さといった道徳教育=道徳心による個々人の個性の変革と、愛郷心を進歩させた「地球規模の協調的な共同体」だけが、暴力を抑止し平和を作れるのだ
  • 彼は、人類の本能に変革の希望を見出す
    • 彼はその中に、(道理をわきまえた利己主義のために)協調する本能と、協調という文化(=ミーム)を利用する本能があると信じているのだ
    • 「正しい進路を取るのは不可能に見えるだろうか。かつては空を飛ぶことも不可能と思われていたものだ」
  • ただ、抑止力を肯定する筆者の意見には、過剰な報復をも許容してしまう危うい面もあり、解説では訳者もそれを危惧している
    • 全面核戦争や核の冬がいまだに恐れられる現在において、その点にはいくら注意しても過剰ということはないであろう
  • 抜粋・要約
  • 男女の優先事項の食い違いから、男女が同じ言語を話せないという、
    • 誰もが知っていて、いたるところで見られることも出てくる
    • デボラ・タネン『わかりあえない理由ーー男と女が傷つけあわないための口のきき方10章』
    • 女は確認を求め、親近感を強めるために言語を使う
    • 男が言語を使うのは、自立を守り、状況をうまく処理するため
    • 言葉を使う目的が男女間で食い違っているので、男女それぞれが込めてはいても口には出されないメッセージは、口にされるものよりはるかに多いし、
    • 同じ会話をしても、言われたことについてまったく別の印象や意見を抱いていることが多い
  • 自分の属する社会的性(ジェンダー)を模倣しようとする強い本能が、人間にはある
    • 男と女は生まれながらに生物学的性(セックス)も社会的性(ジェンダー)も違うように出来ているし、
    • あらゆる形態の繁殖競争で他の同性に勝てるように適応して、適切で競争力のある性別役割分担を文化から学ぶよう、本能ができてもいる
    • 単性的な役割分担を作ろうとしたイスラエルのキブツにしても、その試みは失敗してしまった
  • レイプは権力と支配が目的でセックスが動機でないとする神話(スーザン・ブラウンミラー『レイプ・踏みにじられた意思』など昨今の定説)は間違い
    • 逆にその神話を盲信したせいで、レイプ被害がより増えたのではないか
    • ほとんどのレイプ犯は、女が反撃するとレイプを諦める
    • レイプが憎しみや征服欲による行為なら、ひたすら暴力を振るったり殺せばよかったはず
    • そうでなかったことからも、レイプの本質がセックスであることが分かる
  • 感情は、自分の利益のある方角を指し示してくれる絶対に欠かせない生物学的羅針盤である
    • 怒りは原始的な感情の一つで、自分の何かーー財産、恋人、自尊心などーーを誰かが奪おうとすることへの圧倒的で抑えきれない反応である
  • 人類であるということは程度の問題ーー本能への依存と文化への依存の間にある線を越えているかという問題ーーである
  • 文化そのものも進化する
    • 文化はアイデアや手段を次々と生み出すことによって(遺伝子の突然変異だけから適応を生み出す)自然淘汰の緩やかな変化を超える
    • アイデアはウィルスよりも速く広まる
      →ミーム
  • 分裂したり一つになったりする社会生活は、自分たちの種が敵に対して防御するために大きな群れを必要とし、
    • 同時にまた大きな群れを養うには足りないまばらな食料に頼らざるをえないという問題に対する、唯一の解決法である
      →争いや断絶・対立の原因の一つ?
  • 戦争を行う個々人が他の男たちと戦うことによって結束し、力を合わせる気にならなければ、戦争などありえない
  • すべての殺人は、殺人者の心のなかで十分に「正当化」されていなければならない
    • そうでないと、殺人者の正気は失われる
    • 例:ベトナム戦争
  • 暴力の起源が自然にあるからといって、それを正当と認めたり許容することはできない
    • 真に重要な問いは、われわれは、自分が抱えている暴力を能動的に減らせるほど賢いか、ということだ
    • タンザニアでの著者は、アサルトライフルでワイロを脅してきた歩哨に対し、同情したり仕事ぶりを褒めたり、励ましたりして、機嫌よく門を開けてもらった
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男の子を性被害から守る本 J.サツーロ+R.ラッセル+P.ブラッドウェイ

  • アメリカのマサチューセッツ州の専門家とかつての加害者たちが、性被害を見過ごされがちな男の子たちのために書いた本
    • 性的加害の罪で逮捕された男性たちが、過去を振り返り、己の経験を他者のために用いようとしている
  • 文字が多すぎ、子供がひとりで読むには向いていない
  • しかし、親のための手引としては、指示が具体的で優れている
  • 被害者に対してのフォローや、自衛のための基本的な性知識もしっかり網羅されており、
    • プライベートゾーンを触ってきたのが女性や親しい関係の相手だとしても、嫌な感じがするのはおかしいことではないし、
    • たとえすぐに「やめて」と言わなくても、触られたときに気持ちよく感じたとしても、あなたがその人のことを好きでも、あなたが悪いわけではない、としっかり書いてあるのが良い
  • また、実用的な護身術だけでなく、精神的に心身を守るための知識や心構えが記されており、
    • 「性的な虐待を受けると一生傷を負う」「虐待体験を話させると心の傷を悪化させる」といった有害な神話から男の子とその親たちを解放し、他者からの助けを求められるようになることをうながしてもいる
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「男らしさ」の快楽 宮台真司 辻泉 岡井祟之

  • 「男らしさ」の肯定的な側面を見直そう、という危うい挑戦をしている本
  • 「男らしさ」を全て捨て脱ぎ捨ててしまうのではなく、むしろ徹底的にそれに内在しながら、よりよいものへと徐々にずらしていくこと、その方が責任ある態度とは言えないだろうか
  • それがあくまで「ふるまい」である以上、(「男らしさ」は)「男性」だけが行うべきものではもちろんなく、誰がおこなっても良いものである
  • 超越性・ここではないどこかへは、男性と絶対に結びつく志向ではないが、近代では男性と結び付けられてきた
    • だが、軍事が敗戦で駄目になり、そうした超越を追求する趣味は、鉄道という形で残るようになった
    • 超越性も「ここではないどこか」という未来、外国からの輸入で発展してきた時代には適切な「ふるまい」を仕込む文化であった
  • 「自分らしく生きるためにやる」という自己準拠性も、「自分らしさ」とは何かという問いに「自分らしさ」と答えるしか無いトートロジーにハマってしまう
    • むしろ「男らしく」+「群れよ」集団関係性を養いつつ、内側からホモソーシャリティを基盤に、内側から「男らしさ」をズラせ
    • 「男らしさ」を「男らしく」脱ぎ去るだけでは「再帰性の泥沼」へハマってしまう
  • あらゆる空間を「舞台」として客を集め、もてなして繋ぎ止めるホスト
    • ホストたちの「男らしさ」は他者志向型であり、相手と場面に合わせて変わる
    • いわば、洋服のようにコーディネイトしているといえる
      →六王とクレイ?シナモリアキラ?

〈男らしさ〉の神話 変貌する「ハードボイルド」 小野俊太郎

  • ハードボイルド探偵小説とスパイ小説の2つのジャンルを通して、「男らしさ」の変化を研究した本
    • 様々な「男らしい男」を描いた作品、そしてそれがアンチ・ヒーロー小説やレズビアン探偵小説、敵味方がはっきりした男らしい戦いを喪失した二重スパイものなど様々な作品が分析されている
  • 現代ではタバコやアルコール、ギャンブルや銃器といった「男らしい」行為は「男」のものではなくなった
    • だが簡単にその効力は消えない
    • 「男らしさ」という価値観は、私たちの生活や思考法にぴったりとはりついている
    • 別の見方をすると、「男らしさ」という社会的な記号において、さまざまな価値観が争っていて、文脈しだいで姿を色々変えて生き延びてきた
      →【呪文】?
  • 「男らしさ」は統一基準を持てず、ほころびながらたえず織りなされていくもの
    • 今後とも、「男らしさ」は、神話として君臨しながらも、誰にでも引用可能な技術として利用されていくだろう
    • 同時にそれに伴う責任も分散するのである
    • そして、今までの「男らしさは男のものだ」とする観念そのものは、しだいに退いて行くことになる
    • 「男らしさの神話」は、後戻りできないような変化が進んでいる
    • その先行きは不明だが、少なくとも私立探偵やスパイを無条件に男らしいと考えるのは不可能となった
  • 本名を確定できないハメット『血の収穫』のオプ、母の名しか持たない孤児院出身探偵・アンドリュー・ヴァクスの探偵バーク
  • ハードボイルドお決まりの道具立て、涙を隠す雨、過去を忘れるためのアルコールという一種の感情制御
    →苦痛に耐える「男らしさ」を演出するジャンル「ハードボイルド小説」の後継にして、その価値を零落させるものとしてのシナモリアキラ(『サイバーカラテ道場』)

男らしさの歴史 A・コルバン/J-J・クルティーヌ/G・ヴィガレロ:監修

  • 西欧の歴史文化を中心に、「男らしさ」どう捉えられ、どのように教えられてきたのかを大量にまとめた本
  • 全三巻であり、百科事典のように分厚い
  • 一冊だけ読むなら『Ⅲ男らしさの危機?』がオススメ
  • 男らしさの神話は「全能への欲求」と「男性が知る不能という現実」との解消できない矛盾を、ひたすらに解消しようとするものである

女はポルノを読む 女性の性欲とフェミニズム 守 如子

  • ポルノグラフィの具体的な分析を通じて、新たなフェミニズム・ポルノグラフィ論への道を拓いている博士論文、その書籍化
  • 「性差別的な性意識を再生産している」というポルノグラフィ批判理論の妥当性を考えるために、ポルノグラフィの現状を明らかにしようとしており、
    • 女性向けポルノの成立史から男女のポルノの比較、アンケートを用いた女性ポルノ読者の分析などを行っている
  • 漫画雑誌の画像資料など、多くのポルノグラフィを分析したデータがあるのが良い
  • 「あくまで実践 獣フェミニスト集団(FROG)」の紹介もあり、ポストカードで、ポルノグラフィによってエロティックなものに美化された女性のマスターベーションの意味を変えようとする試みについて触れられている
  • また、その分析は「女性がどのようにポルノを受容しているのか」という点にも及んでいる
    • それによれば、恐怖を感じないことが女性読者がポルノを楽しむための必須条件であり、
      • その条件を満たすためには、読者や彼女が共感する作中人物が、自らの主体性の維持を認識出来ることが、必要なのだという
  • 主体性を維持する方法は主に三つ
    • ポルノグラフィの制作現場に対する信頼感の醸成によって、表現された性行為が、演技あるいはフィクションであることを保証すること
    • (女性を含む)「受け」の内面を語るモノローグや工夫された物語による性行為の暴力性・支配性の緩和
    • そして、読者が、物語の全体を把握し作品を批評するポジションに立つことである
    • 著者は、ポルノグラフィの読者になることのうちにあるこれらの性的能動性を女性が獲得することは、既存の性の二重基準を揺るがすことではないか、と考察している
      →一方的で、加害被害の関係が明確な「まなざし論」に対する異論?
  • もちろん、「問題」を指摘することには重要な意義がある
    • フェミニズムのポルノグラフィ批判運動は、ポルノグラフィにいやな感覚をもつ人がいること、性犯罪の問題が見過ごされていることを指摘するという重要な役割を担った
    • 問題が放置されてるなら、批判はまずなされるべしだし、表現を作り出しているものはそれに応答する責任はあると思われるからだ
    • 対話を経て、よりいい表現が生みされていく必要があると思うからである
  • しかし、その一方で、個別の表現を批判するというスタイルの運動には限界がある
    • その理由の一つは、表現は多様な読みが可能であるという点である
    • 同じ立場に属する人同士であっても、ある人にとって不快感を与える表現が、他の人にとっては問題がないという場合が大いにあり得る
      →視座の違い
  • 誰が差別を決めるのか
    • 批判運動は、それをおこなう当事者を「正しい」存在に祭り上げてしまう効果をもつ
    • とりわけ、ポルノグラフィについての議論をするとき、「正しい」立場から意見を述べることには危険が伴うことを忘れてはならない
  • 性の二重基準(ダブルスタンダード)
    • 「母親運動」(仮):ポルノグラフィを大人男性の悪文化と位置づけ、子どもたちにこのようなものを見せないのが「母親の責任」であるとする
      • この背景には、快楽的な性にたいする否定観を読者が、特に女性がもたされてしまう、という構図がある
    • 女性たちは、男女の性の二重基準に対応する形で作り出された主婦/娼婦という二分法にさらされている
    • 主婦的アイデンティティを維持するために、快楽的な性に対する否定感を表明し続けなければいけない現状こそが、問題にされるべきもうひとつの主題ではないか
  • フェミニズムが、女性を単なる無垢な被害者と位置づけてポルノグラフィを批判するならば、それは、女性には性欲がないとする性の二重基準を、自ら再生産することになってしまう
    →【レイシズム変数】
    • セクシュアリティについて議論をするとき、「無垢でもなんでもない私」から出発することの意義を忘れてはならない
    • むしろ、いかなるときも、女性は性差別に対して無垢でも何でもないという、その点から議論は始められるべきであることを、何度でも確認しておきたい
  • 確かに、抑圧・被害体験を言語化することは、最初の一歩としてとても重要なことではある
    • 自分のせいだと思っていた生きにくさが、社会構造の問題だったのだ、とわかることの意義は強調してもしたりない
  • しかしそればかりでは、フェミニズムの言説が女性の生きにくさを強調し、受動的な女性像を再生産することにつながってしまう
    →「被害者の語り」が「被害者」属性を固定化させてしまうという悪循環
  • 私たちは、むしろポルノグラフィの受け手に「女性」がなることへのジェンダーの越境性にこそ、目を向けるべきではないか
    • 性差別と切り捨てると、ポルノグラフィがジェンダー秩序を揺るがしている側面を見過ごしてしまう
  • 女性向けポルノコミックは、性行為の対等性を示す傾向にある
    • それは、二者間の性行為で、受けは自分が感じていることを相手に見せつけることによって、相手をコントロールするという能動性をもつことを描いている
      →『邪視』への対抗法?『使い魔』系の技法?
  • 男性も女性もポルノグラフィを楽しむということを前提にすべき
    • 女性の性的欲望が無視されがちな社会で、フェミニズムの議論が、「女性がポルノグラフィを楽しむ」という経験を見過ごすことがあってはならないだろう
  • もちろん、女性が自己を性的でないと提示することは、単に否定されるべきことではない
    • 過剰に性的なイメージで意味づけられてしまうことを批判することは、主体性の回復として重要なことである
    • 過剰に性的に見られることを拒否しながらも、自らの性的欲望の否定に陥らない語りを私たちは模索していく必要があるだろう
      →『呪文』による対抗?語り直し?
  • どのような事柄にも、ジェンダーを維持する側面と壊乱する側面がある
    • 私たちはそのどちらの側面とも緊張関係をもちながら、思考を深めていくしかない
      電子化◯