11章
どうしてもというときだけは
■日本語版 11章 p.311
「親は」ハリーが言った。「子どもから離れるべきじゃない。でも―でも、どうしてもというときだけは」
■UK版 p.177
'Parents,' said Harry, 'shouldn't leave their kids unless-unless they've got to.'
■試訳
- 「親は子供を置いていってはいけない。どうしても―どうしても、そうしなければいけないとき以外は」
■備考
- ハリーがシリウス、ダンブルドア、リリーの死のイメージを抱きつつ言うセリフ。
- このセリフの続きが後に出てきません。
文が切れてる時は言いたい事が分かってる時だと思うんですが、
前後を読んでもこの先言いたかった事が分かりません。
「どうしてもというときだけは」の後、ハリーは何を言いたかったんでしょうか? - got toの後が省略されているけれど、この場合「死によって別れる」が省略されていると思う。
have got toは自分の意思では無く、状況的にそうせざるを得ないではないでしょうか。
ここは意味合いとしては
「逃れようがない時(死による別れ)以外は親は子供から離れてはだめなんだ」かと思いました。 - 訳の「どうしてもというときだけは」だと、親の意思でと読めてしまうので変な感じがします。
12章
ホグワーツ校長に確定
■日本語版 12章 p.327
セブルス・スネイプ、ホグワーツ校長に確定
■UK版 p.186
SEVERUS SNAPE CONFIRMED AS HOGWARTS HEADMASTER
■試訳
- セブルス・スネイプがホグワーツ新校長に就任
■備考
- 日刊予言者新聞の大見出し。
- 翻訳が直訳調で不自然。
伝統と価値を高揚
■日本語版 12章 p.327
『わが校に於ける最善の魔法の伝統と価値を高揚する機会を、我輩は歓迎する――』
■UK版 p.186
'I welcome the opportunity to uphold our finest wizarding traditions and values -'
■試訳
- 『私は喜んで、魔法界のすばらしき伝統と価値観の維持に努める所存であります――』
■備考
- 【高揚】精神や気分などが高まること。また、高めること。(大辞泉)
- 普通「伝統と価値」は高揚しないよね…?
「機会を歓迎する」って言い方も変だし。 - uphold traditionsと来たら「伝統を守る」だろ。
それ以外に訳しよう無いだろ。 - I welcomeを「我輩は歓迎する」にしたのか…
ほんと機械翻訳みたい。
二の舞
■日本語版 12章 p.338
セドリックの二の舞だ。
■UK版 p.192
It was Cedric all over again,
■試訳
- セドリックの時と同じだ。
■備考
- ヴォルデモートが関係無い女性を殺した事が分かったシーン。
- 「二の舞」と言うのは
『人のあとに出てそのまねをすること。特に、人のした失敗を繰り返すこと』(大辞泉)だよ。
セドリックは失敗した訳じゃないし、誰も真似なんかしていない。
セキセイインコに目隠し覆い
■日本語版 12章 p.344
「―そして待つ」
ロンは言葉を引き取り、セキセイインコに目隠し覆いを掛けるように、ハーマイオニーの頭からマントを被せながら、呆れたように目をぐるぐるさせてハリーを見た。
■UK版 p.195
"- and we wait," Ron finished, throwing it over Hermione's head like baize over a budgerigar and rolling his eyes at Harry.
■試訳
- ロンは言葉を引き取ると、うるさく騒ぐ小鳥のカゴに覆いを掛けるような感じでハーマイオニーの頭にマントを被せ、ハリーに向かってやれやれという顔をしてみせた。
■備考
- "baize over a budgerigar"というのは「やかましい人を黙らせる」と言う意味のイディオムだそう。
baizeはインコが寝る時カゴに掛けてやる覆いだけど騒がしい時もこれを掛ければ大人しくなるらしい。
この訳では意味が分からないね。 - あとrolling one's eyesを良く直訳してる様だけどこれもどうかと思う。
呆れたりした時の表情の事だけど、日本語で目をぐるぐると書かれても変だし。 - セキセイってわざわざ付けてる所がセンス無い。
痛い変身
■日本語版 12章 p.348
痛い変身が終わるとハリーは一メートル八十センチ以上の背丈になっていた。
■UK版 p.197
Once the painful transformation was complete, he was more than six feet tall and,
■試訳
- 辛い変身が完了すると、ハリーは優に180センチを超える背丈になっていた。
■備考
- 訳文がこなれて無いから、ハリーの身長か何かを意識して変な書き方になってしまった様に思える。
「180cm以上」には「180cm」も入るし、それだと英国人としてはあえて書く程のノッポとも思えないからね。 - 実際は6フィート(183cm)超なんだから、たぶん185~7cm位になったと考え、
「辛い変身が完了すると、ハリーは優に180センチを超える背丈になっていた。」
とかすればもう少し自然に読めるかな。 - the painful transformationを痛い変身と訳すのか。あんまりだ。
13章
魔とめられ
■日本語版 13章 p.361
四角い紙は一枚一枚のページで、それが集められて折りたたまれ、魔とめられてから、作業者の脇にきちんと積み上げられていた。
■UK版 p.205
that the paper squares were pages, which when assembled, folded and magicked into place, fell into neat stacks beside each witch or wizard.
■備考
- ハリーがアンブリッジの部屋に着く前のシーン。
- magic intoは別に造語でも無いけどな。
魔法で~な状態にするっていう意味だよ。
ちなみにmagic awayだったら魔法で姿を消す、みたいな意味。
無理やり「魔とめる」にする必要は無い。 - 普通に辞書にある通りのmagicの動詞の意味で「魔法をかける」で良いじゃん。
- 「魔法でまとめて」じゃ駄目なのか。
魔とめて何て単純に気持ち悪いよ。
魔のいいことに
■日本語版 13章 p.368
なんと魔のいいことに、ぐしょ濡れのロンがお手上げだという目つきで乗り込んできた。
■UK版 p.209
To his enormous relief, when it rattled to a halt at level two, a soaking-wet and wild-eyed Ron got in.
■備考
- ハリーが部屋を出てエレベーターでロンと会う所。
- 別に「魔のいい」とかって造語をする必要は無いだろう。
- 訳者はまた勝手にアピールポイントにした訳か。
これはキツイ。 - わざと特定の単語のまを魔に換えるのは訳者の十八番だな。
- 「ぐしょ濡れ」って言葉汚くないか?
それに、アダルトものっぽい響きがある。 - だいたい「ずぶ濡れ」とするべき所を「ぐしょ濡れ」としてる。
あと「ぬかるんだ畑」を「グショグショした畑」とする等、擬態語を使う事自体が不適当で汚い例も多い。 - 決して「間違い」じゃないんだけれど、訳者の選択する形容詞って何で下品な響きのものが多いんだろう…
青物商
■日本語版 13章 p.378
「両親の職業、青物商」
■UK版 p.215
'Parents' professions: greengrocers.'
■試訳
- 八百屋
- 青果販売業
■備考
- 確かに辞書引くと、そのものずばり青物商って出てくるんだけど、これってどうね?
八百屋さんが職業書くねは青物商となる?と思ったりして、少し検索したら歴史ものしかヒットしなかった。 - greengrocerは普通は八百屋だよね。
役所の書類らしくするなら「青果販売業」ってとこだと思う。
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- シリアスなストーリーにギャグ表現は相応しくないわ -- 2023-10-15 (日) 22:24:40
- 八百屋を青物商というのはおかしくないようなきがする。近年ではあまり使われなくなった表現ではあるが。 -- 2024-02-10 (土) 07:32:30
- 今では八百屋ではなく青果店と言うらしい -- 2024-02-10 (土) 15:43:03