秘密の部屋/5~8章

Last-modified: 2021-09-22 (水) 06:44:50
 

5章

鶏の時の声

■日本語版 5章 p.98
鶏の時の声でみんな早起きしたのに、なぜか、やることがたくさんあった。

■UK版 p.53
They were up at cock-crow, but somehow they still seemed to have a great deal to do.

■試訳
皆、夜明けとともに活動を開始したのに、なぜかずっとやるべきことに追われているようだった。

■備考

  • 「コケッコッコー」のことを、「時を告げる声」「時をつくる声」などというが「時の声」とはいわないはず。
    「ときのこえ」といえば「鬨の声」と書いて、軍勢が士気を鼓舞していっせいに上げる声のことでは。
    利いた風な日本語を使おうとして間違ったみたいのはとても見苦しい。
    無理せず、「鶏の声とともに起きたのに」とか普通に書けばいいのに。
  • 「早起きしたのに、なぜか、やることがたくさんあった。」というのは、
    朝早くから仕事を始めたのになかなか片付かなかったという意味だろうと前後の文からわかるが、やはり日本語になっていない。
  • 「鶏の時の声」というのも変な日本語だけど、そもそも cock-crow とは「夜明け」のこと。
    文字通り「オンドリの声のするとき」という意味ではないはず。(US版ではdawnになってる)
  • あとここで「早起き」なんて要らない言い方するくらいなら、
    もっと思い切って他の部分を日本語として筋の通る言い方にこなしてもいいんじゃないかと思う。
    『皆、夜明けとともに活動を開始したのに、なぜかずっとやるべきことに追われているようだった。』
    とかさ。逆にseemed(のようだった)のニュアンスは忠実に残すべきと思う。


いろんなこと知ってるのね

■日本語版 5章 p.99
「マグルって、私たちが考えているよりずーといろんなこと知ってるのね。そう思わないこと?」

■UK版 p.54
"Muggles do know more than we give them credit for, don't they?"

■試訳
「マグルって実は私たちが思ってるより、いろいろなことが出来るんじゃない?」

■備考

  • 後ろの席を振り返り、ハリー、ロン、フレッド、ジョージ、パーシーが全員並んで心地よさそうに収まっているのを見たウイーズリーおばさんのセリフ。
  • こういうknowを「知ってる」と直訳するのは、珍訳とまで言わないけど「普通に下手な訳」の典型かもしれない。
    「できる」とか「技がある」とか、状況に応じて柔軟に意訳できないと本当は話にならないはず。
    「マグルって実は私たちが思ってるより、いろいろなことが出来るんじゃない?」とか。
  • あと"don't they?"みたいな付加疑問を「そう思わないこと?」と訳すのってどうなんだろう?
    普通は軽く同意を求める風に、後尾を「じゃない?」「ねえ」にしとくもんだと思う。


丸まるっちい魔女のおばさん

■日本語版 5章 p.106
丸まるっちい魔女のおばさん

■UK版 p.58
a plump witch

■試訳

  1. ぽっちゃりした魔女
  2. 小太りの魔女

■備考

  • 丸まるっちいは地の文としてふさわしくない。
    「ぽっちゃりした」とか「小太りの」などとすべき。


6章

うわさをすればで

■日本語版 6章 p.128
「もうふくろう郵便の届く時間だ――ばあちゃんが、僕の忘れた物をいくつか送ってくれると思うよ」
ハリーがオートミールを食べ始めた途端、うわさをすればで、頭上に慌ただしい音がして、
百羽を越えるふくろうが押し寄せ、大広間を旋回して、ペチャクチャ騒がしい生徒たちの上から、手紙やら小包やらを落とした。

■UK版 p.68
'Post's due any minute--I think Gran's sending on a few things I forgot.'
Harry had only just started his porridge when, sure enough, there was a rushing sound overhead
and a hundred or so owls streamed in, circling the Hall and dropping letters and packages into the chattering crowd.

■試訳
「そろそろ郵便くるよね――ばあちゃんが忘れ物送ってくれてるんじゃないかな」
ハリーがオートミールを食べ始めた瞬間、ネビルの言葉通り頭上から慌ただしい音がして、
百羽を越えるふくろうがホールを旋回しながら、わいわい騒ぐ生徒たちに手紙や小包を落していった。

■備考

  • 「うわさをすればで」は変な日本語だけど、もしかしてことわざの「噂をすれば影がさす」のことをいってるのかな?
    もしそうだとしても、そのことわざも、この場面には合わないような気がするんだけど…
  • あと、ネビルの口調ってニュアンス的に合ってるんですか?
    忘れ物している割には、不安なげな感じもなく、なんか自信満々というか、堂々としているというか、なんというか…
  • sure enoughは「案の定」「思った通り」とよく訳されるけど、
    ここは「ネビルの言葉どおり」なので、そんなふうに訳しとけばいいと思う。
  • ネビルの口調は微妙だけど、Post's due any minuteはさりげない感じじゃないかな。
    「そろそろ郵便くるよね――ばあちゃんが忘れ物送ってくれてるんじゃないかな」みたいな。
  • あと「ペチャクチャ騒がしい生徒たちの上から」というのも嫌だな。
    chatterとみれば「ペチャクチャ」と訳してるようだけど、
    たぶんみんな「手紙が来た」とか言って「わいわい騒いでる」って感じじゃないかと思うんだ。
    (単に「さわがしい生徒たち」でもいいかも)
    「落す」という行為にわざわざ「上から」とつけるのもどうかしてるし。
    「~ホールを旋回しながら、わいわい騒ぐ生徒たちに手紙や小包を落していった。」でいいはず。


悪文

■日本語版 6章 p.130
「……昨夜ダンブルドアからの手紙が来て、
お父さまは恥ずかしさのあまり死んでしまうのでは、と心配しました。
こんなことをする子に育てた覚えはありません。
おまえもハリーも、まかりまちがえば死ぬところだった……」
 ハリーは、いつ自分の名前が飛び出すかと覚悟して待っていた。
鼓膜がズキズキするぐらいの大声を、必死で聞こえていないふりをしながら聞いていた。

■UK版 p.69
‘… LETTER FROM DUMBLEDORE LAST NIGHT,
I THOUGHT YOUR FATHER WOULD DIE OF SHAME,
WE DIDN'T BRING YOU UP TO BEHAVE LIKE THIS,
YOU AND HARRY COULD BOTH HAVE DIED …’
Harry had been wondering when his name was going to crop up.
He tried very hard to look as though he couldn't hear the voice that was making his eardrums throb.

■試訳

  1. 「…昨日の夜ダンブルドアからの手紙が届いて、
    お前の父さんが恥ずかしさで死にはしないかと思いましたよ!
    こんなことをする子に育てた覚えはありません!
    お前もハリーも死んでいたかもしれない…」
     ハリーはいつ自分の名前が出るか、とそれを聞いていた。
    苦労して聞こえていない風を装っていたが、大声が鼓膜にひどく響いていた。
  2. 「昨夜ダンブルドア校長からの手紙が届いて、
    父さんが恥ずかしさのあまり死んでしまうのではないかと、私は心配したんですからね!
    こんなことをする子に育てた覚えはありませんよ!
    お前もハリーも死んでいたかもしれないのに!」
     いつ自分の名前が出るのだろう、ハリーはそう考えていたところだった。
    鼓膜にひどく響く大声を、聞こえていないかのように装うのに苦労した。

■備考

  • ロンが母親から吼えメールを受け取るシーン。
  • 読解力がなくてよく分からないんだけど、死んでしまうのが誰で心配したのが誰なの?
    どちらもアーサーなの?モリーが恥ずかしさで死にそうで、アーサーが心配したの?
    それかアーサーが死にそうでモリーが心配したの?
  • それと「おまえもハリーも」ってもう名前出てるのに、「いつ飛び出すかと」って…?
  • 「アーサーが恥ずかしさのあまり死んでしまうのではないか」とモリーは心配した、というのが正解のよう。
    こういうのは主語を省いちゃまずいと思うけどなぜかこういうときに限って省いてる。(いらないときは書いてるのに)
    ハリーが名前が出てくるのを心配していた部分は過去完了で書いてあるので、
    訳には工夫が必要だと思うんだけど、それができてないみたいだ。
  • 邦訳の「覚悟して待っていた」ってのは訳者の創作。
    「聞いていた」もよけいな付け加えだと思う。聞こえてるにきまってるし。


教科書を丸呑み

■日本語版 6章 p.135
いつものように、ハーマイオニーの答えはまるで教科書を丸呑みにしたようだった。

■UK版 p.72
said Hermione, sounding as usual as though she had swallowed the textbook.

■試訳

  1. あいかわらず、教科書を丸呑みにしてきたような答え方だった。
  2. それはまるで教科書を丸暗記したような答えだった。

■備考

  • 「鵜呑み」と「丸暗記」をゴッチャにしちゃったのかな?
    「目にこびりついて離れない」と同じような間違いだね。
  • 疑問を持たずまんま暗記することを「鵜呑み」「丸呑み」と言っていいみたいだけど
    「答え」が「教科書を丸呑みにしたようだった」というのは、なんというか言葉の使い方が横着。
    「教科書の暗唱のようだった」という意味だとはわかるけど、ひどい。
  • swallowを直訳してるのと、あとここでもやっぱり過去完了の処理の仕方でつまずいているんじゃ?
  • どうしても「丸呑み」を使いたいなら、「あいかわらず、教科書を丸呑みにしてきたような答え方だった」とすればだいぶマシと思う。
    (丸暗記のほうがもっといいけど)


耳当て、つけ!

■日本語版 6章 p.136
「(略)私が親指を上に向けて合図します。それでは――耳当て、つけ!」
ハリーは両耳を耳当てでパチンと覆った。

■UK版 p.72
‘(略)I will give you the thumbs-up. Right — earmuffs on.’
Harry snapped the earmuffs over his ears.

■試訳
「(略)親指を立てて合図します。それでは――耳当て、装着!」
ハリーはすばやく耳当てをつけた。

■備考

  • 「つけ!」って何?
    普通「つけろ!」とか「装着!」とか言わない?
    「突けっ」て感じに読めてすごく変。
  • それと「耳当てでパチンと覆った」って・・・?
    すごい痛そうなんだけど、「ぴったりと」とかの感じ?
  • earmuffs onは「耳当て、装着!」がいいね。
    二行目は『ハリーはすばやく耳当てをつけた』ってこと。
  • snapを辞書で引くと「パチン」「ポキッ」とかいう擬音が最初に載ってるけど
    この場合は「すばやく動く」という動詞。これも超まぬけ訳だね。
  • 「私が親指を上に向けて合図します。」も少したどたどしい訳ですよね。
    この場合は一人称いらないと思うけど「親指を立てて合図します」のように自然に訳せば良いのでは?


ミス・ハーマイオニー・グレンジャー

■日本語版 6章 p.148
ミス・ハーマイオニー・グレンジャー

■UK版 p.78
Miss Hermione Granger

■試訳
ハーマイオニー・グレンジャーさん

■備考

  • 「敬称+人名」だから、「ハーマイオニー・グレンジャーさん」でいいと思う。


~は、~は

■日本語版 6章 p.151
壁から写真を引っぺがすは、ごみ箱は引っくり返すは、本やカバンを奪って破れた窓から外に放り投げるは

■試訳
壁から写真を引っぺがすわ、ごみ箱は引っくり返すわ、本やカバンを奪って破れた窓から外に放り投げるわ

■備考

  • ~わ、~わ だよね。
  • 確かに~わが正しいように思える。
  • 電子版では試訳と同じ内容に修正されている。


7章

轟々と

■日本語版 7章 p.165
とたんに轟々と声があがったので、マルフォイがひどい悪態をついたらしいことは、ハリーにもすぐわかった。

■UK版 p.87
Harry knew at once that Malfoy had said something really bad because there was an instant uproar at his words.

■試訳

  1. とたんにざわめいたので、(略)
  2. とたんにざわざわしだしたので、(略)
  3. とたんにざわめきだしたので、(略)


■備考

  • 「喧々囂々」の「囂々」を使おうとして、「轟々」にしちゃったのかな。
    「轟々」は音がとどろき渡るとき使うのでここは違う気がする。
  • roarに轟音たてる意味があるから引きずられたのかもしれない。
    でも児童書に非常用漢字(しかも使い方が怪しい)を持ってくるのが、そもそもの間違い。


人っ子ひとり

■日本語版 7章 p.170
「ほかにはだーれもおらんかったんだ」(中略)
「人っ子ひとりおらんかったんだ。 ...」

■UK版 p.88
"He was the on'y man for the job,"(中略)
"An' I mean the on'y one. ..."

■試訳

  1. 「この仕事をやるっちゅうたのはあいつだけだった」
    「他にはだれもおらんかった。 ...」
  2. 「この仕事には、あいつしかいなかった。」
    「つまり、あいつ一人しか来なかったんだ。」


■備考

  • ロックハートがなぜ防衛術の教師になれたのかを話すハグリッドのセリフ。
  • 「人っ子ひとりいない」というのは「ある場所に人影がない」という意味で「他に適任者がいなかった」という場合に持ってくるのは間違い。
  • "He was the on'y man for the job,"だけだとまるで能力的な最適者のようだけど
    ハグリッドが言いたかったのは、"An' I mean the on'y one."(他に応募者なし)の意味。


消えかかった蝋燭が吐き出す音

■日本語版 7章 p.176
そのとき、何かが聞こえた――消えかかった蝋燭が吐き出す音ではなく、
ロックハートがファン自慢をペチャクチャしゃべる声でもない。

■UK版 p.92
And then he heard something - something quite apart from the spitting of the dying candles
and Lockhart's prattle about his fans.


■備考

  • spitting soundといえば沸騰した水や油がジュウジュウいう音。
    この場合も「すっかり小さくなったロウソクのロウが蒸発する音」のことだろう。
    (小さくなると溶けたロウが炎にあたってプツプツいうかも?そんな感じか)
    邦訳はspit(吐き出す)の直訳から適当に書いたと思われる。
  • しかし「ファン自慢をペチャクチャしゃべる声」ってのも変な日本語だ。


トロトロ

■日本語版 7章 p.178
「ハリー、いったいなんのことかね? 少しトロトロしてきたんじゃないのかい?」

■UK版 p.132
"What are you talking about, Harry? Perhaps you're getting a little drowsy?"

■試訳
「ハリー、君はいったい何を言っているんだね? もしかして少し眠たくなってきたんじゃないのかい?」

■備考

  • ロックハートの部屋で宛名書きの居残り中のハリー。
    バジリスクの声を聞いたあと、そんなものは聞こえなかったというロックハートとの会話。
  • 「トロトロ」がおかしい。
  • ロックハートはハリーが寝ぼけていると思っている。
  • 原文のareが斜体になっているためか、「いったい」を太字にしているが意味不明。
  • 斜体は強調なので文を工夫して言葉を強めればよい。


8章

腹がへったぞー

■日本語版 8章 p.204
「……腹がへったぞー……こんなに長ーい間……」
(※おどろおどろしいフォント)

■UK版 p.105
"... so hungry ... for so long ..."

■試訳
「……空腹だ……とても……ずっと……長い間……」

■備考

  • ハリーにだけ聞こえる不気味な声、のはずだが全然怖くなかった。むしろギャグ。




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