謎のプリンス/6~10章

Last-modified: 2021-11-24 (水) 18:50:00
 

6章

おっどろきー

■日本語版 6章 p.164
「おっどろきー……もうここじゃ冗談も言えないのかよ……」

■UK版 p.105
‘Blimey... you can't even make a joke round here any more...’

■備考

  • ロンがヴォルに関する軽口を叩いたのでモリーに怒られた時の台詞。
  • どう見ても、ふざけられる場面ではないと思うんだが。


デート中か否か

■日本語版 6章 p.184
「いまはディーン・トーマスという男子とデート中か否か?」
「そうよ」

■UK版 p.117
'Are you or are you not currently going out with a boy called Dean Thomas?'
'Yes, I am,'

■試訳
「今ディーン・トーマスと付き合ってるのか?いないのか?」
「付き合ってるわ」

■備考

  • 「そうよ」だと、どっちなのか分からない気がする。
    それと家族で買い物中だからデート中なわけがない。
    「つきあってるのか?いないのか?」「つきあってるわ」て感じかと。


お母上

■日本語版 6章 p.186
「あいつのお母上はどこへ行ったんだろう?」ハリーは眉をひそめた。

■UK版 p.119
"Wonder where his mummy is?" said Harry frowning.

■試訳
「あいつ、ママはどこにおいてきたんだろ?」ハリーはいぶかしそうに言った。

■備考

  • 「お母上」って…眉をひそめたいのは読者のほうだな。
  • ドラコを馬鹿にしてmummyという幼児語を使ってる。
    「あいつ、ママはどこにおいてきたんだろ?」とかでいいと思うんだが。
  • あと細かい点だが、このfrowningは当惑を表してる感じ。
    普通の翻訳家なら「いぶかしそうに言った。」とかそういう表現にしたと思う。


7章

暗い影を落としていた

■日本語版 7章 p.211
ヴォルデモートは、ネビルの幼年時代にも、ハリーの場合と同じくらい暗い影を落としていた。
しかし、ハリーの持つ運命がもう少しでネビルのものになるところだったということを、ネビルはまったく知らない。

■UK版 p.133
Neville's childhood had been blighted by Voldemort just as much as Harry's had,
but Neville had no idea how close he had come to having Harry's destiny.

■試訳
ネビルもまたヴォルデモートのせいでハリーに負けないほど不幸な幼年時代を送っていた。
しかし、一歩間違えば自分とハリーの運命が入れ替わるところだったということは知らない。

■備考

  • 意味が分からないほどではないが、文のつながりが悪くて読みにくい。
    これだけの文にネビルという言葉を三つも入れるのもどうかと思う。ネビルを主語にすればスムーズに訳せただろう。
  • 両親を殺されたり、発狂させられたりした二人の幼年時代は悲惨そのもので「影を落としていた」なんて生易しいものじゃない。


ジェイムズ

■日本語版 7章 p.221
「(略)リリーも――ジェイムズも――(略)」

■UK版 p.139
‘(略)Lily - James -(略)’

■試訳
「(略)リリーも――ジェームズも――(略)」

■備考

  • スラグホーンの台詞。
  • 今までは「ジェームズ」だったのに、ここだけ「ジェイムズ」になっている。


8章

ピッピッ!

■日本語版 8章 p.255
「それではおやすみの挨拶じゃ。そーれ行け、ピッピッ!」

■UK版 p.160
"Let us therefore say good night. Pip pip!"

■試訳
「そろそろおやすみの挨拶をしよう。ではでは!」

■備考

  • 間投詞のpip-pipはイギリスのスラングでバイバイという意味。
  • 大抵の辞書には普通に載ってるんだから、せめてまじめに引けよといいたくなる。
  • "pip pip"ってさりげなくてかわいい語感のあいさつだね。
    「ではでは」なら短い音を二つ重ねる感じ、おどけた感じがピッタリだと思う。
    「そろそろおやすみの挨拶をしよう。ではでは!」なら納得。


9章

それ以上は押せなかった

■日本語版 9章 p.260
「わからないわ……自分を偉く見せたがるのはマルフォイらしいけど……でも嘘にしてはちょっと大きすぎるし……」
「そうだよ」
ハリーは相槌を打ったが、それ以上は押せなかった。

■UK版 p.163
‘I don't know... it would be like Malfoy to make himself seem more important than he is...but that's a big lie to tell...’
‘Exactly,’said Harry, but he could not press the point,

■試訳
「そこなんだよ」ハリーが言った。しかし、その点をさらに主張する事はできなかった。

■備考

  • 「ドラコが何かたくらんでいる」という説に支持を得ようと、ホグワーツ特急で見聞きした事をハリーがロンとハーマイオニーに話している場面。
  • pressを「押す」と訳したのは直訳すぎる気がする。邦訳では、「いったい何を押すの?」という感じ。
  • the pointが訳から抜けていることも分かりにくさの原因かもしれない。「その点を押す」とでもすれば、だいぶ分かりやすかったのでは。
  • 6巻のハリーはとにかく「ドラコが悪巧みをしている」という考えに囚われて、ロンとハーマイオニーにもそれを理解してほしくて仕方ない様子。
    だからExactlyも、もっと強い感情を込めた表現に訳したほうがよいのでは。「そうだよ」ではハリーの必死さが伝わらない。


どういう孫を持つべきかという考えでなく

■日本語版 9章 p.263
「あなたのおばあさまは、どういう孫を持つべきかという考えでなく、あるがままの孫を誇るべきだと気づいてもいいころです(略)」

■UK版 p.165
“It’s high time your grandmother learned to be proud of the grandson she’s got, rather than the one she thinks she ought to have(略)”

■試訳

  1. 「(略)どういう孫を持つかにこだわるべきでなく、あるがままの孫を誇るべきだと気づいてもいいころです(略)」
  2. 「(略)理想の孫ではなく、ありのままの孫を誇りにしてもいいころです(略)」

■備考

  • これは「どういう孫を持つかにこだわるべきでなく~」みたいにしないと文がつながらないよね。
  • 原文は「理想の孫ではなく、ありのままの孫を誇りにしてもいい頃」というような意味で、
    たしかに自然な日本語のセリフにしにくそうな感じなんだけど、この訳はないね。


教科書を出せとは頼んでおらん

■日本語版 9章 p.268
「我輩はまだ教科書を出せとは頼んでおらん」

■UK版 p.168
"I have not asked you to take out your books,"

■試訳
「教科書をだせとは言った覚えはないぞ」

■備考

  • askを直訳すれば「頼む」だが、「我輩」と言っている偉そうな人間が
    教科書を出せと「頼む」のはおかしい。


五人の教師を持った

■日本語版 9章 p.268
「我輩が思うに、これまで諸君はこの学科で五人の教師を持った」

■UK版 p.168
‘You have had five teachers in this subject so far, I believe.’

■試訳

  1. 「たしか諸君は、これまでに五人の教師からこの科目を教わっているな」
  2. 「たしか諸君はこの教科で、これまで五人の教師についたな」

■備考

  • 英語習いたての中学生でも、こういうhaveは「持った」と訳さないと思う……
  • 「師を持った」のではなく、「この教科で五人の教師に教わってきた」という文脈。
  • ついでに、I believe(たしか)を「我輩が思う」というのもひどい直訳。
  • 主語の省略が下手なこともあって余計日本語として不自然なんだよね。


悲劇的だな、ウィーズリー

■日本語版 9章 p.272
「悲劇的だな、ウィーズリー」

■UK版 p.171
‘Pathetic, Weasely,’

■試訳

  1. 「なっとらんな、ウィーズリー」
  2. 「情けない奴だ、ウィーズリー」

■備考

  • 闇の魔術に対する防衛術の最初の授業で、いくら気張っても無言呪文が上手くいきそうにないロンに対するスネイプの言葉。
  • どう考えても「なっとらんな」とか「情けない奴だ」とかの方が自然だと思うんだが。
  • 「哀れな」「情けない」「おそまつな」という意味のPatheticを「悲劇的」と訳すのはおかしい、
    pessimistic(悲観的)かなにかと間違えているのではないかと2巻の時に指摘があったけど6巻でもまだやってたのね。


『先生』なんて敬語をつけていただく必要はありません

6巻における代表的な誤訳を参照。


口癖が出た

■日本語版 9章 p.283
口癖が出た。

■UK版 p.177
said Slughorn again.

■試訳
もう一度言った。

■備考

  • 英語ではもう一度言ったとしか書いてないが本当に口癖なのか?


10章

おぞましくもあり、痛ましくも思いながら

■日本語版 10章 p.300
黒くなった指を、おぞましくもあり、痛ましくも思いながらハリーはまた同じ質問をした。

■UK版 p.188
Harry asked again, looking at the blackened fingers with a mixture of revulsion and pity.

■試訳
黒くなった指を見て、おぞましくも痛ましくも感じながらハリーはまた同じ質問をした。

■備考

  • 「おぞましくも痛ましくも感じながら、」という意味だと思うけど、やはり文章が文法的につながってない。
  • 「黒くなった指を見て、おぞましくも痛ましくも感じながら~」とすればいいのに、なぜこうなってしまったんだろう。


本文と挿絵の不一致

■日本語版 10章 p.302
案内板を通り過ぎるときにハリーが見上げると、木片の一方はいま来た道を指して、「グレート・ハングルトン 8キロ」とあり、
もう一方はオグデンの向かった方向を指して、「リトル・ハングルトン 1.6キロ」と標してある。
※同ページには木製の標識の挿絵があり、挿絵には「リトル・ハングルトン 1マイル」「グレート・ハングルトン 5マイル」と書いている。

※原文は改行なし。

■試訳

  1. 挿絵の文字を本文の表記に合わせて統一
  2. 挿絵を削除

■備考

  • 絵を入れるなら本文との統一ぐらいしてほしい…。


ちんちくりん

■日本語版 10章 p.312
「(略)この小汚ねえ、ちんちくりんの穢れた血め!」

■UK版 p.196
“(略), you filthy little Mudblood, do you?”

■試訳
「(略)この小汚ねえ、チビの穢れた血が!」

■備考

  • 魔法省からきたオグデンに対するゴーントのセリフ。
  • かなりキレてるのに「ちんちくりん」てなんか笑っちゃったんだけど俺だけ?
  • littleだから普通に「チビ」でいいと思う。
    なんで「ちんちくりん」なんて古い俗語を使うのかわけわからん。


夕暮れの迫った

■日本語版 10章 p.319
(略)もう夕暮れの迫ったダンブルドアの部屋に、正確に着地した。

■UK版 p.200
(略)they landed squarely on their feet, back in Dombledore's now twilit office.

■試訳
(略)薄暗くなったダンブルドアの部屋に、(略)

■備考

  • ペンシーブの旅を終えハリーとダンブルドアが校長室に戻ってくる場面。
  • ハリーが校長室に行ったのが夜の8時。過去から帰ってきたのは10時くらい。
    少し話をしてからダンブルドアの「もう遅い時間じゃ」というセリフもでてくるのに「夕暮れの迫った」部屋に帰ってきたというのはつじつまが合わない。
  • twilitはtwilight(夕暮れ時・薄明かり)の形容詞形だったと思うが、必ずしも「夕暮れ時の明かりに照らされた」という意味ではない。
  • このシーンのすぐ後にダンブルドアが予備ランプを点けてるので訳は「薄暗い」が妥当。


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