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添付山川穂高の西武からソフトバンクへのFA移籍、またはその前後に起こった一連の騒動。
FA移籍の伏線 
中村剛也に次ぐ西武の和製大砲の座を確固たるものにしつつあった山川であったが、2022年にオールスターゲーム*1前の練習風景を配信していたNPB公式動画チャンネルでの映像に入り込んだ柳田悠岐（ソフトバンク）と浅村栄斗（楽天）の会話が話題になる。
浅村「アグー*2ソフトバンク行くらしいっすよ」
柳田「えっ？」
浅村「アグーソフトバンク行くらしい」
柳田「誰？アグー？えっ？来年じゃないの？」
浅村「来年じゃないか…（この後は聞き取れない）」
FA権取得前からソフトバンク入りを示唆するという、見方によってはタンパリングにも該当するような内容は大きく話題となった*3。そしてオフの契約更改では、来季国内FA取得見込みであることも受けて山川は単年契約を選択。西武はFAでの流出が続いていた*4ため、来季オフでの山川のFA移籍も確実であると見られていた。
FA取得年、まさかの不祥事
2023年5月11日、週刊文春の記事
で、山川が強制わいせつ致傷の疑いで警察の聴取を受けていたことが報じられる。
記事には「隠れ家個室風の飲食店に誘うよう装いながらホテルの一室に連れ込む」「何度も断ったが無理やり押し倒された」「女性の衣類を無理やり剥がし激しく陰部を触り腟内や下半身から出血させた」*5といった内容が書かれていた。山川は娘がいる既婚者であることから不倫という要素も持ったこのニュースは、2023年のスポーツ界を代表する一大スキャンダルへと発展した。
また記事内には山川に対する直撃取材のやり取りも掲載されており、こちらが非常にツッコミどころ満載だったことから当時のなんGで山川を擁護する者はごく少数であった。
直撃取材での山川の発言まとめ*6
長いので格納
詳しいことは弁護士に任せており、今は何も話せない。
ただ…
僕は完全に違うと思っていて自信をもって言えますが、ここは書いて欲しいというか､無理矢理したっていうのは確実に否定しています。
まだ起訴になるか、不起訴になるかの話の最中です。僕としてはもちろん不起訴になる事案であろうと思っている。ただ、相手が納得していない部分もあり、
相手が弁護士をたてているので僕もちゃんと弁護士をたてて。球団にもそれは説明していますし。
（妻に）すぐに言いました。すぐに言ってすぐに謝りました。大変申し訳ない、ごめん、と。本当ごめんって言ってちゃんと伝えましたし、奥さんからは「馬鹿だね」みたいな。
奥さんがいながらこういうことをしてしまった。去年の11月、オフの話ですけど、お酒を飲んで焼き肉を食べて、そういうことになってしまったこと、それについては経緯を説明して、
まあごめん、本当にごめんと言って。奥さんもそれに対しては馬鹿だねえ、と。それについてめちゃくちゃ怒られて。
怒られはしましたけど、まあ今、結構大事な事件になってしまっていて、表には出ていなかったけど、それがいずれ表に出るでしょう、という話はしていましたし、
本当に迷惑をかけてごめんと伝えました。ただ、本当に無理矢理はしていないので、これだけは100％、確実に、刑事の人とかに確実に言っている。そんなことをするわけがない。
僕お酒強いですし、お酒を飲んで酔っ払った勢いとかそうとかでもないです。もうぜったいに力とか、相手がめちゃめちゃ嫌がっているのにっていうことは絶対にない
彼女は無理矢理されたといっているからこういうことになっているんだけど、多少なりけがをさせてしまったことは申し訳ない、という思いです。ただ無理矢理したということが論点であるならば、
絶対にそうではないので。
けがを相手がしたことは、ちょっとひっかいちゃったのかなと思っているんですけど。それでけがをさせてしまったのは本当に申し訳ないと思っていますけど、
無理矢理では絶対にない。無理矢理するほど、なんていうんですか、いかれてないというか（笑）。
2人ではないけど、知り合いとかも交えて飲んでいた仲で、仲良しでしたし。飲んだりする機会はありますよ。それはあるし、ないといったら嘘になるし、
飲むことも過去に何度もあります。普通に仲良くしている女性もいますけど、飲み友達としてね。呼んだんですけど、呼んだのも会おうって話になって。
試合も観たいってことだったので、試合を見たあとに飲んだっていう。
家族もそうですし、自分がオフとはいえ、オフの期間にそういうことをやって、今となって大事になって、大変申し訳ないことをした。家族もそうですし、
ファンの方も含めて僕に関わるすべての人に迷惑をかけてしまうということに大変申し訳ないという思いはあります。
ですが絶対に無理矢理って言うことはないんで、絶対。絶対にないっていうことは自信をもっていえますし、
そういう、なんだろな、僕からしたらやっぱ絶対にそういうことはないので。
ただ妻がいるのに他の女性と遊んでしまった、それに対してはこのご時世ですし、自分はものすごく反省しましたし、妻にも頭をさげて、娘もいますし。
自分の一瞬の欲望というか感情で、綺麗な女性と遊んでしまったというのは思います。しかし、そこで無理矢理っていうのが論点になっているのなら、絶対に違う。
相手が主張している点、無理矢理って言うところ。それは絶対にない、と絶対に否定する。警察や弁護士の人にしっかり話している。弁護士から話しがあると思います。
「今は何も話せないと前置きしておきながらベラベラと喋り立てる」「そもそも妻子持ちの身でありながら他の女性に手を出しているのに『無理矢理するほど、いかれてないというか（笑）』などと危機感の無い対応」といった点は特に槍玉に挙げられた*7。
また、別の記事内に書かれた「同意はなかったが無理やりではない」のフレーズについても当時のなんG・SNS上では突っ込まれネタにされることになった。
不起訴、そしてFA宣言へ
報道当日こそ試合に出場したものの、翌日にコンディション調整を理由に出場選手登録を抹消。その後二軍・三軍での練習参加という形で事実上の出場停止処分となり、親会社である西武鉄道における山川関連の装飾の除去、球団売店からのグッズ・グルメの撤去が行われいない扱いがなされた。
報道内容から動向に注目を集めていたこの件だが、最終的には8月29日に嫌疑不十分で不起訴処分となる。
しかし事態を重く見た西武球団側は公に無期限での出場停止処分*8を課し、山川は球団のトレーニング施設*9での練習の日々を送った。
それでも山川には故障者特例措置*10が適用され、国内FA権を取得。期限ぎりぎりまで迫る長考の末にFAを行使した山川に対し、手を挙げたのは案の定ソフトバンクであった*11。
戒めFA
FAに際し球団から山川のコメントが発せられたが、これがまた強烈なツッコミどころを抱える代物であった。
この度、私が取得させて頂いたFA権の行使について、皆様にお伝えさせて頂きます。結論を先に申し上げますと、今回、FA宣言をさせて頂くことを決断致しました。
皆様に多大なる不快な気持ち、不信感を生んでしまった一連の出来事を通じて、ただ野球をするということだけではなく、関係する全てのことを、自分ひとりで考え、また、家族と考えさせて頂きました。野球から離れることだけではなく、社会から離れることまでも考えました。
それでも、私の心から消えずに残り続けたことは、野球がやりたい、野球をさせて頂きたいという答えでした。プロ野球選手として恥ずべきことですが、ここまでの気持ちになったのは、これまでの野球人生で初めてのことです。
この私の意志を受け入れて頂けることがあるならば、ライオンズに居続けることが、ファンの皆様、球団の皆様に対する感謝の形、謝罪の形、誠意であるということも考えています。同時に、FA宣言が持つ、選手の権利として定められた制度という理解を超え、これまで聞くことがなかった声をお聞かせ頂くことで、自分自身を戒めることとなるのではないかとも考えました。
FA宣言により西武ライオンズ以外の球団の考えを聞いた上で、残留か移籍の判断をさせて頂くことは、新たな野球人生へと歩ませて頂きたいという、私の一方的な願い、自分本位な意思のように聞こえてしまうであろうことも、重々承知しております。それでも、私が宣言させて頂くことで、何より、私自身のこれからの野球人生に対して、重い責任を持ち続けることの覚悟であることを、どうか少しでもご理解いただけたら幸いです。
結びになりますが、ご伝達が遅れましたことにつきまして、誠に申し訳ございませんでした。お待ちいただき、また、ご心配いただきましたこと、心より感謝申し上げます。
「他球団から寄せられる厳しい言葉で自らを戒めたい」という趣旨と思われるが、ソフトバンクしかオファーをしていない時点でその理屈は意味を成しておらず、「選手の権利として定められた制度という理解を超え」る前に完全に常人の理解を超えており、これ以降山川のFA騒動に関しては「戒めFA」というワードが定着することになる。
実際にネット上では「現所属先で禊を済ませるのが筋ではないのか」という旨の指摘が多く上がっており、山川の主張を支持する向きは（贔屓が得をする一部のホークスファンを除けば）ほとんど見られなかった。
宣言後、1か月間音沙汰無し
西武は減額制限に近い年俸及び単年契約を提示し、宣言残留は認めるとしたが、再交渉の予定はないと渡辺GMが明言。
一方ソフトバンクの三笠GMはFA宣言が公示後、「（不祥事の）事案についてもしっかりと調査するのが、我々がまずやらなければならないこと。」とした。この発言は当初、獲得に批判的な者への「十分な調査を行って、問題ないと判断した」とする方便に過ぎず、1週間程度で結論が出るだろうという見通しが多かった。
しかし1か月以上が経過しても、入念に調査中であるという報道が続く。オフに楽天におけるパワハラ問題が発覚してコンプライアンス意識の向上が叫ばれたこともあり、 一部では獲得からの撤退論のほか、「獲得後にソフトバンクが、もしくは残留後に西武が無償トレードを行うのでは」「ソフトバンクが撤退しセルフ戦力外になることで真に山川の『戒め』とするのでは」といった予測まで出た。
ソフトバンク移籍、入団会見
12月14日にソフトバンクが山川と大筋合意したという報道が各社でなされ、12月19日には山川穂高のソフトバンクへのFA移籍が正式発表された。
そして即日、福岡PayPayドームの会見場でと異例*12の形となった入団会見が行われた。
会見では関係者や西武ファンへの謝罪が行われたが、公の場での初めての謝罪がソフトバンク側での会見という経緯は再び非難を呼ぶことになった*13。
また「コンプライアンスを見つめ直した結果として山川獲得に踏み切る」という動きをはじめ、王貞治会長が「挽回するチャンスを与えていくべき」と発言するなど、球団側と世論の認識のズレも浮き彫りとなる結果となった。
余波
山川の移籍決定後、
ソフトバンクに関連して上記のような流れが発生。戒められているのは本人よりも周りの方なのでは？と言われ、多方面に飛び火したことから一連の出来事はブタフライエフェクト（ブタフリンエフェクトとも）と呼ばれた。
また、東スポが「移籍が決まった年末の時点で睡眠がままならないと本人が明かしていたように、精神的に相当こたえていた」と報道しており、事実であれば自らの戒めに成功しているとも言える。
3月2日にソフトバンクホークスの選手応援歌が発表されたが、山川の応援歌に「甲斐野」と「戒め」という文言が入っていると話題になった。
戦いの覚悟をこの舞台 で今示せよ
立ち上がれ再び 飛ばせ空の彼方
それが原因か、開幕前日の3月28日に歌詞が変更されることになった。
鮮烈な一打を 放てスタンドの彼方へ
一振りで決めるぞ 高く遠く飛ばせ
