ミディール海岸

海岸の危険地帯を抜け、あるピクトロジカー
の元、再実習を受けることが今回の目的だ。
しかし２度目の指示違反も、この程度の罰で
済んでいるのは、もしかしたらロウロの
口利きがあったからなのかもしれない……。
「いや、考えすぎかな」海岸線が終わりを
告げ、やっと協会指定の実習教師に出会う。
「あなたが命令違反の常連？ 私がきっちり
再教育してあげるわ」そして出航の合図が
危険な海上実習の始まりを告げた。

「出航しないのかって？じゃあ聞くけど、
船であいつらと戦ったことは？もちろんない
わよね。そんなの顔を見ただけでわかるの。
出航はちょっとだけ延期して、海での戦い方
を叩き込んであげるわ」
ロウロに負けず劣らず、口の立つ実習教師で
余計なことを言わなければよかったと後悔
するぐらいだ。だけどさっきみせてもらった
彼女のピクトロジカは今までみたことのない
優雅で気品に満ち溢れたものだった。

「だいたいわかってきた？その顔じゃまだ
ピンときていないようだけど、続きは海の上
でやりましょう。お待ちかねの出航ね。気を
ひきしめなさい！」
ようやく船に乗り込むことになったが、確か
に何もわからない状態のまま海にでなくて
よかった……。微妙な差ではあるが、地上で
の戦い方とは、なんというかバランスのとり
方が違うようだ。改めて出航の汽笛が鳴るが
それを待っていたかのようにモンスターが！

船長は実習教師リリート・ハーモスター。
数多くのピクトロジカーを生んだ、名家ハー
モスター家の次期当主。ロウロとはタイプの
違う強い信念と自負を持つエリート貴族だ。
「はぁ？この程度のこともできないわけ？」
言葉は厳しいが、名家の技を間近で見れる
機会はそうない。「なに、うれしそうにして
るの？」と不機嫌そうに聞くリリート。素直
に指導を受けれるのがうれしいと告げると、
「ばっかじゃないの」と少し顔を赤くした。