ガラムサイズ城塞

湿り気の中で意識を取り戻すと、そこは独房の
ような空間だった。後頭に鈍い痛みが残る中、
何人かの小さな話し声が耳に入る。これは…？
と会話に加わるも、語られる内容はにわかには
信じがたいものだった。
そこにいる人間は皆、メモリアだという。そし
て、自分もそうだと告げられる。いつからメモ
リアに……？洞窟で経験したことを思い出す。
メモリアだった自分、混乱。今までのピクトロ
ジカーとしての記憶と自分の乖離は一体……？

独房に鍵はなかったが、部屋から数歩離れた暗が
りからは、モンスターの気配が感じられる。
唯一の小窓からは悲鳴や炎の爆ぜる音が聞こえる。
まわりで交わされる会話からの状況を把握する。
ここは外世界の街、ガラムサイズ。数日前から攻
撃を受けている。攻撃しているのは、ピクトロジ
カー協会……？現在の協会は、ラルドが指揮を執
り、外世界に向けて、攻撃を始めているらしい。
理由はわからない。ただ、何かを探していると。

協会による襲撃の中、この場所に留まり続ける
わけにはいかない。まわりのメモリア達と突破
口を求めて暗がりの中を彷徨う

ここにいるメモリアは、全員が協会から喚びだ
されたものらしい。そして、自分自身も……。
さらに、極めて稀だが、自分のように、人のよ
うに意思を持ち、最終的に暴走してしまうメモ
リアがいるらしい。その原因を探る目的で、自
分は研究所に送られる途中だったのだ。

モンスターを倒して進み、やっと見つけた重い
扉を押し開けると、そこは屍が並べられた城の
大広間だった。片隅には十人余りの生き残りが
意気消沈し、じきに訪れる最期のときを待って
いるのだという。理不尽さに抗う気力はすでに
尽きていた。

外の街は炎に包まれていた。視界に広がる凄惨
な光景が、過去の記憶を呼び覚ます
それは幼い頃に焼かれた故郷の街の風景だった。

煙に包まれる街の中、心を決めた。
その場の生き残りたちにそれを告げる。驚きと諦
めが混ざった表情で向けられる一瞥に返すのは、
自然とこぼれた清々しい笑顔だった。

今立ち止れば本当の「死」になってしまう。
立ち向かい、道を切り開きたい。
誰が敵で、何が悪なのか、この目で見て、
思考したい。
自分は「協会」と戦う。

協会の攻撃を一時的とはいえ、押さえること
に成功し、研究者たちと話す機会を得た。
そして訴える。自分はメモリアではないこと。
この身体も自分の物ではないということを。
そして研究者の中に見知った顔を見つけ驚く。
「ロウロ！」突然、名前を呼ばれ驚く彼。
なぜ名前をと聞く彼に、ポイゾナ草のことを
話し「それよりロウロこそ、協会は絶対じゃ
なかったのか？」と聞き返すと、彼は苦笑し
ながら、自分が誰かを理解してくれた。