リンドブルム大緑地

ここはリンドブルム大緑地らしい。本当かと
何度か確認したが、間違いはないと言う。
彼らは、最近発見されたプレート鉱床の調査
をするためにここに来たらしいのだが、何か
がおかしい。というのも、自分の知っている
リンドブルムの鉱床は、十年以上前に枯渇し
辺りの緑地もなくなったと記憶している。
なのにここは、緑も土地も瑞々しさで溢れて
いる。だが……そう思考を巡らせた時、辺り
からモンスターの声が響き渡った。

調査団の面々とリンドブルム大緑地を進む。
協会から派遣されたものと思い込んでいたが
「ピクトロジカー協会？最近はそういうのも
あるのか」と、存在すら知らない様子。どこ
か遠方からの調査団なのだろうか。
モンスターに対する装備も甘いし、ガード役
のピクトロジカーがいるわけでもない。
「新しいモンスターの探索調査だしね…」
そうはいっても、このご時世でこんな呑気な
調査団は逆に珍しいな…。

青天の霹靂。突然上空に現れた雷雲が、轟音
とともに稲妻を地に落とす。岩の陰に身を寄
せて、雷が過ぎ去るのを待つ。一転して木々
の隙間からは鮮やかな光が射すが、一行は言
葉を失った。
雷で倒れた巨木が小一時間前に通過したばか
りの吊り橋を谷底に落としていた。退路を断
たれた一行の顔は青くなっていたが、自分は
動じない。目的地がどこであれ、今は前に進
むという選択肢しかないのだから。

体を休めるのに、ここで一晩キャンプをはる
ことにした。目的地はまだまだ先だが、当初
予定していた距離の半分程度しか進行できて
いないらしい。「こんなにモンスターに襲わ
れるとは…想定外だよ…」遭遇率はさほど高
くはないと思うが、この調査団なら想定具合
も推して知るべしか…。
夜明けを待って、進行を再開しようと荷物を
まとめていると、食糧やら物資が盗まれてい
ることに気づいた…。

既に退路を断たれた一行は、残された少ない
食料で目的地まで進まねばならない。
冗談のような最悪の事態を前にして、絶望に
のみこまれるかのように思えた一行だったが
「でもまあピクトロジカーがいればなんとか
いけるよね」「そういえばそうか」「いける
いける」「ちょっとお腹空くだろうけどね」
ちょっと待って…ピクトロジカーでもできな
いことが…と言い掛けたが、みんなの士気を
そぐことはできない…いこう。

あれから２日間ほど歩き続けて、ついに食糧
も底をついた。メモリア達の白魔法で疲れを
いやしながら進んできたものの、もはやここ
までかもしれない。疲れ果てて、諦めが頭に
浮かんだそのとき、声が静かにあがった。
「あれ…あそこになんかみえない？」「ん…
あれは…」「ちょっと待って！しらべる！」
視界の先にある巨大岩群。それが目的地だっ
た。あそこまでは急いで半日。最後の力をふ
りしぼって、足を踏み出した。

遂に目的地に到着。長かったのか、短かった
のか。とりあえずここまでくれば、街も近く
物資に困ることはなさそうだ。疲れと安堵で
眠りに落ちる。
どれだけ時間が経ったのか。仲間の悲鳴が森
に鳴り響く。モンスターか！？まわりを見渡
す。どの方向にもモンスターが…油断してい
る間に囲まれてしまったようだ…。
これだけの数、自分１人でやれるのか？
でも、やるしかない！

討ち漏らしたモンスターが調査団を襲う。
だめだ！ 絶望が頭をかすめた時、迅速の影
が、モンスターを断ち切る。あの太刀筋は！
「ラルド！」彼もここに飛ばされていたのか。
喜びと不安の感情がごちゃ混ぜになる。
「ははは、眠れる戦士が目覚めたぞ」調査団
の男が驚きと喜びの顔を見せる。彼の話では
以前から、ここでずっと死んだように眠って
いたらしい。恐る恐るラルドに問いかけると
「ここは…？ 俺は…誰なんだ…」と言った。