ティンバー海岸

燃える村、倒れている子供、側にはラルドが
いて、すぐ近くでは、死んでいる……違う、
これは記憶ではなく、ただの夢なんだ……。
強い日差しで目が覚める。辺りを見回すが、
見覚えのない場所にいる。ふと先ほどまでの
ことを思い出す。フードの男、空の亀裂……
どうやら自分はあれに飲み込まれて、どこか
に飛ばされてしまったらしい。幸い、大きな
怪我はしていないようだ。とにかく、今は、
国に戻るために、見知らぬ土地を進もう。

見知らぬ海岸を進みながら、思考を巡らす。
あのフードの男は確かに【ラルド】だった。
あれは、彼がやったことなのか？《ズキリ》
と急に胸が痛む。あまりの痛みに思わず膝を
つく。胸が熱い。思い出す。亀裂に吸い込ま
れる時、ラルドが近づいてくる。その右手に
はクリスタルのようなものが握られていて、
それを、この胸に……。ハッと目が覚める。
どうやら痛みで気絶していたようだ。すでに
胸の痛みはない。大丈夫、今は前に進もう。

朦朧としていた意識も感覚も海風を浴びてい
るうちに、元の感じが蘇ってきた。
ただ、ピクトロジカの感じだけがうまく戻っ
てこない。やっていることは今までと何一つ
変わらず、メモリア達もいつも通りに動いて
くれている。それなのに、何かが今までとは
違う感じだ…。
思い当たる原因はなく、決して悪い感じでも
ないのだけど、何かしっくりこない。
気のせいだろうか…。

１人で海岸線を歩き続ける。身体の感覚は元
に戻ったものの、現在位置確認が全くできて
いないこの状況では、自分の存在すらも疑っ
てしまいたくなる。
自分は本当に生きているんだろうか。肉体は
朽ち果てていて、魂だけが醒めない夢を見て
いるだけなのではないだろうか。
不安が頭の中を駆け抜ける度に、海と空と太
陽、自分の影と足跡を確認する。確かにまだ
生きている、と自分に言い聞かせる。

人の話し声が聞こえてくる。やっと、ここが
どこか聞けるかもしれないと思ったが、何か
様子がおかしい。足を速め、声の元へ急ぐ。
そこには、何かの調査団だろうか、幾人かの
人たちがモンスターに襲われていた。
「い、一体、なんなんだ、こいつらは！？」
全員が慌てている。どうやら、モンスターを
見るのが初めてのようだ。その様子からも、
ここは首都から大分離れた場所なのかもしれ
ない。っと、今は彼らを助けなければ。

彼らのリーダーである眼鏡をかけた男性は、
ピクトロジカーにも初めて会ったと興奮気味
に語った。そして、プレートのことを根掘り
葉掘り聞いてきた。聞きたいことが沢山ある
のはこちらも一緒なのだが、彼の熱心な勢い
に流されてしまう。仕方なく、いくつか答え
られる質問にだけ答えると、彼は口元に拳
をあてて深く考えこんだ。その様子は、なぜ
か少し懐かしく感じた。突然。彼は手を叩き
「僕らの調査に同行してくれ」と言った。