ミラージュ砂漠

リリートに捕まった自分は、ミラージュ砂漠
にある自然を利用した牢獄に投獄された。
彼女の話では、ラルドこそがウェポンを呼び
だした元凶とされており、あの時、共に姿を
消した自分は、共犯として指名手配されてい
たらしい。誤解を解こうにも、自分でも理解
してないことを説明することは難しかった。
それに、今はウェポン事件から１週間後だと
聞き、一層混乱した。自分は少なくとも、
あの町に数ヶ月はいたのだ……。

この砂漠の牢獄は、一種の試練となっている。
自らの潔白を証明したい者は、自らの力で、
ここを抜ける必要がある。考えることは、山
ほどあるのだが、次々と現れるモンスターの
せいで何も考えがまとまらない。とはいえ、
考えたところで、自分の身に起きたことは、
まるで分からないことだらけだ。
思考するためのピースは、ラルドとアイオラ
だろう。２人に会うためにも、今はこの砂漠
と戦うことに専念しよう。

試練の砂漠は想像以上の過酷さだった。モン
スターは砂の中から次々と現れる。確かに進
んでいるのだが風景と疲れのせいで何時間も
同じ場所で同じことを繰り返しているように
錯覚してしまう。時折現れるオアシスの蜃気
楼は、今度こそは、と芽生えた希望を無慈悲
にも打ち砕いていく。
今にも心が折れそうだが、自分にはやらねば
ならないことがある。あの亀裂と自分の記憶
の謎を解く。潔白の証明以上のことだ。

もうだめだ。心に反して体のコントロールが
できない。薄れていく意識の中で、砂丘の稜
線に人影を見た。
…気がつくとベッドの上にいた。「ああ、気
がついたか？宿泊料金と救助料金プラス迷惑
料で１億ギルだ。さっさと支払え。有料オプ
ションで砂漠を抜けるまでの付き添いも行っ
ております♪…と」なんだこの男は…。そん
な金はないと伝えると、それなら俺の仕事を
手伝うか、砂漠に放り出されるかだ、と…。

自分を助けた男、アリの命じるままに、彼の
仕事を手伝う。アリのもとには自分と同じく
試練の砂漠を越えられなかった受刑者たちが
いた。ここでもピクトロジカーの力が重宝が
られた。アリの仕事はこの砂漠の真ん中に村
をつくることだった。資材を集めるためにモ
ンスターを倒してアイテムを集めるのを手伝
う。それにしても、こんな場所に村をつくっ
て、どうするつもりなのだろうか。そして自
分はこれからどうなるのか…。

自分がアリのグループに加わることで、資材
集めは飛躍的に進んだ。アリの目的には十分
な資材が揃ったようだ。 「よし、今日で一億
ギルの借金はチャラだ。正直、助かったぜ。
また、試練の砂漠に挑戦するんだろ？ヒドい
旅だろうから、これ持ってけ」 食糧とテント
を餞別に受け取る。いい奴なのか悪い奴なの
かはわからずじまいだったが、これでなんと
か進めそうだ。 「それ全部で５千ギルな。支
払いは次に会ったときだ」 ……。

砂漠はそれからも過酷な道が続いた。それで
もなんとか進むことができたのは、アリから
受け取った餞別のおかげだ。あそこでアリに
拾われたのは幸運だったのだろう。いろいろ
働かされたりはしたが…。
まだ砂漠の終わりは見えない。それこそが試
練の醍醐味、というところなのだろうけど、
この砂漠の中でアリの貪欲さに触れた自分に
とっては、前のような絶望は感じない。じき
にゴールに着くことを信じて、また進む。

砂漠の最南で自分を待っていたのは、ロウロ
だった。リリートからの伝言があるという。
「アイオラなんてピクトロジカーは協会にも
登録されてない」 アイオラがいない？ どう
いうことだ？ また疑問が増える。 「ただし」
と彼は続けた。そして彼が語った話に、自分
は更に混乱する。「リリートの話で思い出し
たことだ。まぁ、関係あるかわからんがね」
関係は…あるのか？ 自分の生まれ故郷を滅
ぼした者の名が【アイオラ】であることが…