秘密の部屋/9~12章

Last-modified: 2024-04-13 (土) 23:27:37
 

9章

ウグドゥグ

■日本語版 9章 p.212
「そう、非常によく似た事件がウグドゥグで起こったことがありました。」

■UK版 p.108
‘I remember something very similar happening in Ouagadougou.’

■試訳
ワガドゥグー

■備考

  • ミセスノリスが石化した時のロックハートのセリフ。
  • 「ウグドゥグ」は間違いで「ワガドゥグー」となるのが正しい。
    これは西アフリカのブルキナファソという国の首都で、
    外務省のホームページにも中学生の地図帳にも「ワガドゥグー」の読みで出ている。
    調べれば直ぐ分かる事なのに適当なカタカナにしてしまった理由が分からない。

おうかがいしますがね

■日本語版 9章 p.217
「おうかがいしますがね」スネイプが冷たく言った。
「この学校では、我輩が魔法薬の先生のはずだが」

■UK版 p.110
"Excuse me," said Snape icily, "but I believe I am the Potions master at this school."

■試訳
「失礼だが」
「この学校では、私が魔法薬の教諭ではなかったかね?」

■備考

  • ロックハートの出しゃばりに対するスネイプのセリフ。
  • 「お伺いしますが」なら「私が先生なのではありませんでしたかね」と、
    軽い疑問形の様になりそうなものだけど。
    前半と後半の口調が全然違うのも違和感。
    またスネイプが自分の事を先生と言うのも違和感がある。

モチのロンさ!

■日本語版 9章 p.237
「モチのロンさ!」ロンが言った。

■UK版 p.120
"Of course I am!" said Ron.

■試訳

  1. 「もちろん、僕は言ってるよ!」ロンが言った。
  2. 「もちろんそれの事だよ!」ロンが言った。
  3. 「もちろん、そのとおり!」ロンが言った。

■備考

  • ハーマイオニーの「あなた、マルフォイのことを言ってるの――」に対するロンの返事。
  • この"Of course I am!"は「もちろん、僕はロンさ!」の意味では無い。
    会話の流れを考慮して訳せば「もちろん、僕は(マルフォイのこと)言ってるよ!」と言う意味。
  • 原文ではロンは少しもふざけていないので、作者の意図に反した余計な悪ふざけ。

10章

悪文

■日本語版 10章 p.242(※本文は改行なし)
ハリーがこれまでに無理やり演じさせられた役は、「おしゃべりの呪い」を解いてもらったトランシルバニアの田舎っぺ、
鼻かぜをひいた雪男、ロックハートにやっつけられてからレタスしか食べなくなった吸血鬼などだった。

■UK版 p.122(※本文は改行なし)
so far, Harry had been forced to play a simple Transylvanian villager whom Lockhart had cured of a Babbling Curse,
a yeti with a head-cold, and a vampire who had been unable to eat anything except lettuce since Lockhart had dealt with him.

■試訳
ハリーがこれまでに無理やり演じさせられた役は、「おしゃべりの呪い」を解いてもらった素朴なトランシルバニアの村人、
鼻かぜをひいた雪男、ロックハートに退治されて以降レタスしか食べられなくなった吸血鬼だった。

■備考

  • villager(村民、村人)は普通の表現で、スラングや蔑称とかではない。
  • 「やっつけられ」は子供っぽくて地の文に相応しくない。
  • unableは「できない」という意味なので、「食べなくなった」ではなく「食べられなくなった」とするのが正しい。
  • 原文には「~など」に該当する部分はない。

通過だった

■日本語版 10章 p.246
しかし、検査は無事通過だった。

■試訳
しかし検査は無事通過した。

■備考

  • 「通過だった」ではなく「通過した」と書くのが普通。

その場を離れた

■日本語版 10章 p.246
ハーマイオニーが大切そうにそれをカバンに入れ、
三人は、あまり慌てた歩き方に見えないよう、後ろめたそうに見えないよう気をつけながら、その場を離れた。

■UK版 p.124
Hermione put it carefully into her bag
and they left, trying not to walk too quickly or look too guilty.

■試訳
ハーマイオニーは慎重にその本をカバンに入れた。
三人は、あまり速く歩かないよう、後ろめたそうに見えないよう気をつけながら図書室から出た。

■備考

  • 英語の長文を一文のまま日本語に訳してしまうと読み辛くなるので、andの箇所で一旦区切るべき。
  • left(leaveの過去形)には「~から離れた」という意味だけでなく「~から出た」という意味もある。

チラッと見た

■日本語版 10章 p.246
チラッと見ただけでも、なぜこれが「禁書」棚行きなのか明らかだった。

■UK版 p.124
It was clear from a glance why it belonged in the Restricted Section.

■試訳

  1. なぜこの本が立入禁止区域に置かれているのか一目瞭然だった。
  2. なぜこの本が閲覧制限の棚に置かれているのか一目瞭然だった。

■備考

  • 無意味な意訳。
  • また「チラッと」という表現は地の文に相応しくない。

ブラッジャーをかわす

■日本語版 10章 p.251-252(※本文は改行無し、括弧無し)
(グラウンドの反対側でフレッド・ウィーズリーが待ち構えていた。)
フレッドが力まかせにブラッジャーをかっ飛ばした。
それにぶつからないよう、ハリーは身をかわし、ブラッジャーは逸れていった。

■UK版 p.127(※本文は改行無し)
Harry ducked as Fred swung at the Bludger with all his might;
the Bludger was knocked off course.

■試訳
(グラウンドの反対側でフレッド・ウィーズリーが待ち構えていた。)
ハリーが頭を引っ込めると同時に、フレッドが力いっぱいブラッジャーを打った。
ブラッジャーの進路が変わった。

■備考

  • クィディッチの試合中、ドビーのブラッジャーがハリーを狙っているシーン。
  • このasは「~なので」では無く、「~と同時に」の意味。
  • 日本語版の表現だと、ハリーよりも先にブラッジャーがフレッドの居る場所に到達している事になる。
  • 本来の動きはハリーとフレッドが同時で日本語版と比べるとよりスリルと臨場感に溢れている。
    →ブラッジャーはハリーの頭を狙っていて、フレッドが打った所には一瞬前までハリーの頭があったという事で
    息の合ったプレイが良く分かる箇所。
    →アルゴリズム体操の「手を横に あら危ない 頭を下げればぶつかりません」のイメージ。

その程度の怪我

■日本語版 10章 p.265
「ドビーめは、ハリー・ポッターが家に送り返される程度に怪我をするようにしたかったのです!」
「その程度の怪我って言いたいわけ?」ハリーは怒っていた。
「僕がバラバラになって家に送り返されるようにしたかったのは、いったいなぜなのか、話せないの?」

■UK版 p.133(ハリーのセリフは改行無し)
"Dobby only wanted Harry Potter hurt enough to be sent home!"
"Oh, is that all? "said Harry angrily.
"I don't suppose you're going to tell me why you wanted me sent home in pieces?"

■試訳
「ドビーめは、ハリー・ポッターが家に送り返される程度に怪我をするようにしたかったのです!」
「へえ、それだけ?」ハリーは怒っていた。
「僕をバラバラにしてまで家に送り返そうとしたのは、なぜなの?」

■備考

  • ロックハートに骨を消され入院中のハリー。そこへドビーがやって来たシーン。
  • 「その程度の怪我って言いたいわけ?」が意味不明。
  • 「僕がバラバラになって家に送り返されるようにしたかったのは」が分かり難い。

11章

塊まって

■日本語版 11章 p.276
固まってグループで

■電子版 11章 p.
塊まってグループで

■試訳
固まって集団で

■備考

  • 「かたまる」を漢字で書く場合、「塊まる」ではなく「固まる」が正しい。
    なぜ、わざわざ電子版で間違った日本語に変えてしまったのか。
  • 「グループ」も「集団」としたほうがいいと思われる。

ズームアウト

2巻における代表的な誤訳を参照。

空気で作り上げて

■日本語版 11章 p.303
結局マクゴナガル先生が空気で大きなうちわを作り上げて、

■UK版 p.152
In the end, Professor McGonagall conjured a large fan out of thin air,

■試訳
結局マクゴナガル先生が何も無いところから大きな送風機(扇)を魔法で出し、

■備考

  • このconjureは魔法で何かを呼び出す事。
    つまりマクゴ先生は空中から魔法でうちわを取り出したので「空気で作り上げた」と言うのは明らかな誤訳。
    out of thin air(何も無い所から)の解釈ミスかとも思われたがconjureの訳ミス。
    何か他の単語(例えばcompose等)と読み間違ったまま無理矢理作文したのでは?と考えられる。

12章

ダントツに一番

■日本語版 12章 p.306
ダンブルドアの校長室が、ダントツに一番おもしろい。

■UK版 p.154
Dumbledore's was by far the most interesting.

■試訳

  1. ダンブルドアの校長室が、断然一番面白い。
  2. 面白さでは校長室が群を抜いている。

■備考

  • ダントツってのは「断然トップ」を略した俗語だよね。
    「ダントツに一番」というのは「頭痛が痛い」みたいな重複表現かな。
  • by farが「断然」、the mostが「一番」だから
    直訳の「~断然一番面白い。」で良かったのにね。
    (口語なら「ダントツに面白い」も有り)
    他のプロなら「面白さでは校長室が群を抜いている」みたいに工夫するのかな。
  • 訳者は明らかに「ダントツ」の意味を考えずに使って
    「一番」の意味を重複させてしまってるね。

胃袋がズシンと落ち込んだ

■日本語版 12章 p.307
ハリーの胃袋がズシンと落ち込んだ。

■UK版 p.155
Harry’s stomach plummeted.

■試訳
ハリーは急に気分が落ち込んだ。

■備考

  • 直訳過ぎて不自然。
  • 「stomach」には「胃袋」だけで無く「気持ち」と言う意味もある。(参考)

バーンとどえらい音をたてて

■日本語版 12章 p.309
(略)バーンとどえらい音をたてて扉が勢いよく開き、ハグリッドが飛び込んできた。

■UK版 p.156
(略)the door of the office flew open with an almighty bang and Hagrid burst in,

■備考

  • 「バーンとどえらい音をたてて」と言うのが口語的過ぎる。
    「轟音とともに」「とんでもない音をたてて」等、地の文に相応しい書き方は幾つもあるはず。

したーに、下に

■日本語版 12章 p.312
二人でわざわざハリーの前に立って、廊下を行進し、
「したーに、下に、まっこと邪悪な魔法使い、スリザリンの継承者様のお通りだ……」
と先触れした。

■UK版 p.157
They went out of their way to march ahead of Harry down the corridors, shouting,
"Make way for the heir of Slytherin, seriously evil wizard coming through...."

■試訳
「スリザリンの後継者、邪悪な魔法使いが通ります。道を開けてください。」
と先払いした。

■備考

  • ハリーがスリザリンの継承者ではないかと噂になり、廊下で指を指されたりする様になる。
    双子がその状況を面白がり、悪ノリするシーン。
  • スリザリンの継承者の為に道を開けろ、と言ってるだけだよね?
    「したーに、下に」ってどうしても大名行列のシーンが浮かんでしまう。
  • 大名行列に見立てるのも可笑しいけれど、「先触れ」という言葉が間違ってるね。
    「下にー、下に」は「先払い」だな。
  • 原書の双子は何処にでもいる様な冗談好きのティーンエイジャーの喋り方。
  • あのシーン、双子が面白がって時代がかった台詞回ししてるのかと思ってたけど、翻訳者の創作なのか…
  • 大名行列ではないけど、貴族の為に平民に「道を開けろ!」と叫ぶ護衛の真似事という印象だった
    (帰国子女の為、幼少時は日本で言う大名行列を知らかった)

無理やり笑いをひねり出した

■日本語版 12章 p.331
もう遅過ぎたが、二人は無理やり笑いをひねり出した。

■UK版 p.166
Far too late, Harry and Ron forced themselves to laugh,

■試訳
既に手遅れだったが、二人は無理に作り笑いした。

■備考

  • 「~無理に作り笑いした」とした方が自然な気が。
  • 最初の部分も「既に手遅れだったが、~」の方が良いね。

コメント欄

・情報提供、検証、議論、誤字脱字の指摘など様々な用途にお使いください。
・コメントの先頭にあるラジオボタンを選択すると、そのコメントにぶら下がる形で返信できます。
・スパムや荒らしコメントが投稿された際は、削除にご協力ください(「編集」から削除できます)。
・任意ですが、書き込みの際はできるだけお名前(HN)を入力してください。

  • モチのロンさ! って元々は真面目な場面のセリフなんだ -- 2021-11-07 (日) 09:58:45
  • 時代劇っぽい表現はやめてほしいんよ…… -- 2023-03-27 (月) 12:16:42
    • ハリーポッターに全く合わないよね -- 利用者? 2023-11-11 (土) 10:10:16
  • モチのロンさ!は結構好き -- 2023-05-12 (金) 19:33:51
    • わかる -- 2024-01-30 (火) 23:08:28
  • 「その程度の怪我って言いたいわけ?」は、ドビーが怪我に対して軽く見ていることについて、ハリーが皮肉的に返しているのかなと思った。 -- 2024-01-19 (金) 15:13:18
  • 田舎っぺって・・・ -- 2024-02-11 (日) 20:56:32
    • 村人でいいよね -- 2024-04-13 (土) 23:27:36