「ゆらぎ」とは、端的に言うと(平均値に対する)数値のブレのこと。
モンハンシリーズでは、不確定要素を指すときに開発スタッフがこの言葉を用いることがある。
そして、それを基としたスラング。
開発スタッフの用いる「ゆらぎ」
- モンハンにおいてこの言葉が初出したと思われるのは、辻本Pと藤岡Dが任天堂の岩田社長(当時)と行った対談
「社長が訊く『モンスターハンター3』 6. 入るたびに“揺らぎ”のある世界」である。
このインタビューの中で、藤岡Dは「同じクエストの中でも毎回違いが生まれるように仕様を組んだ」と述べており、
他にも、その後のMHP3に対する4Gamerの開発者インタビューでは、
一瀬Dが「こちらで用意した遊びに、不確定要素から生まれるクエストごとのドラマが加わることで、
長く遊んでいただけていると思っています。」と述べていたり、
辻本PがMH4発売時にカプコンの株主へ向けた開発者インタビューにおいて
「シリーズを通じて「ゆらぎ」と言われる要素も取り入れています。
いわゆる「運」が作用する部分で、一発でいい形になる時もあれば、そうでない時もある。
そういうリアルでアナログな部分がある方が、
プレイヤー同士の会話のきっかけになって面白いのかなと考えています。」
「元々マルチプレイの場合、「ゆらぎ」がきっかけで自慢できるポイントがあったり、
会話が生まれたりすることもあると思います。それは普段の生活でも同じでしょうし、
そういう日常生活の要素をゲームにも取り込んでいますね。」と述べるなど、
開発スタッフの中では一貫した理念として扱われているようである。
- 上記インタビューにおいて、開発側がこの「ゆらぎ」の具体例として挙げているのが、
アイテムオブジェクトの変化や、モンスターの乱入などであるが、
これ以外にも「社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇 第10回:『モンスターハンター3G』」
において、藤岡Dがブラキディオスの粘菌を「攻略法にちょっとした“ゆらぎ”が生まれるんです」
と解説しており、セオリー通りの攻略だけでは済まない要素として入れた事を明かしている。
なお、岩田社長(当時)は「それが、駆け引きの深みになるわけですね。」と理解を示すコメントをしていたが、
藤岡Dは「ある意味、僕の好みというか、ちょっとプレイヤーを悩ませたいんですよね(笑)。」と、
一種の意地悪要素であるかの発言で返していた。言わない方が評価されたんじゃないのかコレ。
- MHST2の開発者に向けた電撃オンラインのインタビューでは、
「モンスターのクセを完全に読める=固定化はつまらないと思い、揺らぎを入れたが、
結局その揺らぎが運の要素であり、勝っても負けても満足感が薄いと反省した結果揺らぎを廃止した」
という意味のコメントがある。
メインシリーズと派生作品、アクションとRPGといった違いはあるが割と全否定に近い。*1
スラングとしての「ゆらぎ」
- この「ゆらぎ」はゲームの単調化を防ぐ上では欠かせない要素ともいえるが、
反面、プレイヤーの許容範囲を超えると不満要素にしかならず、
ゲームの評価を下げてしまうことにも繋がりかねない。
実際問題として藤岡Dが対談の中で話したブラキディオスに関する発言がもととなり、
セオリー通りの攻略を不安定にする意地悪要素などを指す言葉として、
プレイヤー側も「ゆらぎ」「YURAGI*2」を用いるようになった。
具体例としては、- ザボアザギルのように同じ事前動作からの攻撃派生の多さで、手出しを困難にするケース
- シャガルマガラの地雷やダラ・アマデュラのメテオ等、
一定時間モンスター自体の行動とは別に発生する無差別攻撃で狩猟が妨害されるケース - 狂竜化・極限状態のように、行動ごとにモーション速度がランダムで変化し、
回避などのタイミングを狂わされて事故が誘発されるケース
これらはその性質上、こちらでとれる対策の余地が少なく、
こちらが経験を積んでも確実に対処する事が難しいため批判の的になることが多い。
特に防御力が低く一撃死があり得るガンナーにおいては、「ゆらぎ要素で駆け引きに深みが出る」というより
むしろ「ゆらぎ要素が発生して駆け引き以前の段階で唐突に殺される」ケースが非常に多いのでなおさらである。- 「駆け引き」と言えば聞こえはいいものの、実際問題こういった不確定要素は
プレイヤーの不利にこそなれど、有利に働くことはほとんど無いことも非難される要因であろう。
特にモンハンというゲームは「モンスターは何十回も攻撃しないと倒れないが、こちらは数発喰らえばお終い」
「プレイヤーはダメージを受けると吹っ飛ぶ(気絶する)ので、モンスターと比較して被弾そのもののリスクが高い」
という基本設計であるため、「多少のリスクは目をつぶる」という戦法をプレイヤーが取りにくく
「ゆらぎ」とはそもそも相性が悪いといえる。 - また、モンハンシリーズは一回敵を倒せば終わりというゲームではなく、
素材が揃うまで、もしくはそれ以外の目的が達せられるまで連戦するのが普通という点も、
ゆらぎへの風当たりを強くしている。
ゲームである以上、単調な連戦(所謂作業ゲー)ではつまらないというのはもっともな意見なのだが、
モンハンシリーズでは連戦前提の上、素材などの成果を求めて見知らぬ人と共闘する仕様上、
「毎回不安定要素に振り回されるのはたまったもんじゃない」といった風潮になりやすい為である。 - ただし変化する状況に対してアドリブ的に対応する事を楽しむ層や
ゆらぎを否定した結果パターンゲーに行き着く事を危惧する意見も存在する。
- なお、上記の用法の他に発掘装備やお守り、ギルクエ、MH4(G)のオトモアイルー等の
性能が完全にランダムで決まる(=性能にゆらぎがある)コンテンツを指す場合にも使われる事がある。
これらの詳細については各記事を参照。
- アイスボーンでは、公式イベントである狩王決定戦2019-2020の東日本大会において、
藤岡Dが所謂ガンナーの右上バグに対して「ゆらいでますね」などと発言して物議を醸した。- 右上バグは公式からは仕様と断言されているものの、プレイヤーからすれば、
発生をコントロールできない不具合挙動そのものである。
それを改善できておらず、放置していると見なされても仕方がない状況の中で、
「ゆらぎ」の一言で片付けたことに対しては、参加者も含めて多くの不信の声が上がった。
- 右上バグは公式からは仕様と断言されているものの、プレイヤーからすれば、