【ハーゴン教団】

Last-modified: 2024-03-15 (金) 14:09:59

ビルダーズ2

【ハーゴン】が作り上げた邪教組織。DQ2本編では単に破壊神【シドー】を崇める集団という扱いだったが、本作の世界では現実・幻の世界共に正式名称が付いている。
ドラクエシリーズにおける名前ありの信仰宗教組織としては【光の教団】【ベホマン教】【太陽の教団】【紅衣の悪夢団】【ナドラガ教団】に続き6例目。ただ、名前が付いていなかっただけでDQ2の時点でも既に組織として成立しているという意味ではDQ初の宗教組織とも言える。
 
ロトの子孫達によってハーゴンが討ち取られシドーも倒された後も残党が活動しており、本作のストーリーはDQ2本編では滅んでいるはずの【メルキド】に住む【ビルダー】見習いの主人公が教団に拐われた所から始まる。
【伝説のビルダー】が再建し、結構な規模の都市であるメルキドに侵攻し、町人の殺害や誘拐が可能なぐらいの力は持っているようだが、現状どのぐらいの勢力なのかは曖昧。
所属する魔物の話を聞く限り、首領が討伐されたお陰で全盛期とは比較にならないほど弱体化し、魔物自身が平和ボケと自嘲するほど士気も低下している。
 
しかし、嵐に巻き込まれ見知らぬ島を冒険するようになったあたりから様子が一変。
首領であるハーゴンが既に死亡しているはずなのに、教団襲撃の被害者である【ルル】さえ疑問を抱くほど不自然に強大な勢力で人々を虐げる場面に幾度も遭遇、普通の人間すらほとんど全員が教団の信者といった有様になっている。
だが、それもそのはず。本作の世界はハーゴンが築き上げた世界であり、ロトの子孫の活躍が無かった状態で歴史が進んでいる。ハーゴン自身がこの世界の創造主である以上、その教団に都合の良い世界なのも当然と言えよう。要はDQ2本編で見た幻のローレシア城の様相が世界規模で展開されているのだ。「ハーゴン教団」という名称も、現実と幻、両方の世界で共通しているため、物語が進むまで双方を区別する手段が無いのもプレイヤーを惑わせている。
 
その教義は破壊を救済とし、モノ作りを悪とするもの。それゆえ、強いモノ作りの力を持ったビルダーを根絶やしにしようとしている。
構成員はDQ2出身のモンスターが中心だが、幻の世界に住む人間の多くも信者となっている。大体の人間信者は疑問を持たずに信仰しているか、恐怖によって従わざるを得ないかのどちらかである。
オープニングムービーではハーゴンの前に引き出された人々が【女神像】を破壊するように強要され、拒否した末に処刑されるというシーンから始まり、教団支配下の島では実際に女神像を破壊しろと強要され、心折れて従ってしまう男性もいる。
一方、「モノ作りが原因で欲望や奪い合いが起きる」「トラブルの原因であるビルダーは悪人」と、直接関係のない問題をモノ作りやビルダーのせいに見せかけるなど情報操作も行っており、硬軟両面から人間を追い込み教団に従わせていることが伺える。
人々が希望を持ち始めた辺りで介入し、それが確立しかけたところを台無しにすることで、より深い絶望を与えるのが常套手段だったようだ。
なお、幻の世界に住む教団員たちは、上級幹部を除いて信仰する破壊神の名前を知らされていない。これはDQ2最終盤までシドーの名が出てこなかったことを彷彿とさせるが、今作では破壊神と同名の少年シドーを冒険させる上で、関係性を悟られないための処置でもあったようだ。実際に幹部たちは主人公がシドーの名前を出しただけでことごとく驚き、一目置くようになってしまっていた。
 
幹部として、教団員を取りまとめる「三神官」の【ヨージス】【アデン】【ジゴック】や、各地の島で活動する「総督」の【ヒババンゴ】【メドーサボール】、「大総督」の【アトラス】が存在する。
【悪霊の神々】からはアトラス一柱のみ実体での登場となった。
また、作中には未登場の【フィー】の故郷の島で【ベリアル】が大総督を務めていたことも判明している。
組織全体としては、アトラス配下の参謀や兵団長たちや包囲軍大将、かんごく島の上層部の魔物、宣教師【ウゾーン】など多くの魔物が幹部の配下として登場するほか、その更に下に兵士や教団員である膨大な数の魔物が付き従っている。総督やその配下は、各地で行われていたモノ作りを破壊し、モノ作りを復活させる主人公を妨害してくる。
 
しかし、主人公が出くわすほとんどの教団員が「破壊こそ正義、モノ作りとビルダーは悪」と口を揃えつつ、その思想は幹部から末端までてんでバラバラであり、足並みが揃っているとは言い難い。
破壊が救いであると説いて真面目に破壊行為を遂行する者もいれば、それらしい理屈をこねては破壊が正しくモノ作りは悪いと決めつけたり、単に物を壊すことを楽しんでいたり、思考停止して教団に従っているだけであったり。
それぞれの支配地域を見ても、破壊への解釈が異なっている。
 

  • 【モンゾーラ島】のヒババンゴは、大規模に環境を汚染し、物や人を傷つけ愉しんでは絶望の原因をモノ作りのせいにしている。
    しかし、無軌道に破壊を繰り返すばかりだったせいで魔物側にも物資や食料の不足を招き、教団に対する不信感を募らせる者も出している。副総督の【マギール】ですら、破壊だけでは教団も魔物も滅ぶという状況に疑問を持ってモノ作りの手がかりを独自に集め、自宅で野菜の栽培を試みていた。
  • 【オッカムル島】は「豊かな資源を求めて人が争ったから」という理屈で資源採掘をやめさせられている。
    しかし【ゴルドン】の話を聞く限りでは、最大の問題であるゴールドラッシュの崩壊は、総督のメドーサボールが恋愛感情をこじらせた逆恨みでゴルドンをストーンマンにしたため。
    元来そういう性格だったのを判った上で教団が送り込んできたとも考えられるが、どちらにしろ信仰に基づいての行動ではなく、その動機は「自分より注目される美しい物が気に食わない」という、明らかにモノ作りとは無関係な私怨に過ぎない。魔物の襲撃や地震は頻発しているが、総督自身は次の美しいモノが現れるまで地下坑道に引き篭もって何もしておらず、手下も独断で行動している節があり、指示を出しているかさえ怪しかった。
  • 【かんごく島】では「物づくりは執着を、執着は恐れを、恐れは憎しみを、憎しみは絶望を生む」という名目で、教団に反抗的な人間を捕らえモノ作りの否定教育に取り組んでいる。
    主人公を含む囚人たちには、荒れ地を耕し【キャベツ】を育てさせ、食べ頃になったら畑を焼かせ無駄にさせる、といったモノ作りの無意味さを刻み込み改教させるための拷問じみた更生プログラムが日々課せられていた。だがそのサイクルに「モノ作り」がキッチリ組み込まれているため、破壊はモノ作りなくしては成り立たないことを自ら証明してしまっている。
    圧倒的優勢にかまけて看守の意識もかなり低く、見張り台を直せと「モノ作り」を要求してきたり、【エッチなほん】を作れないかと聞いてきたり、仕舞いにはエッチなほんに夢中になって職務をサボる始末。
  • 【ムーンブルク島】のアトラスは「戦争こそ究極の破壊」として、人間に教団との戦争を永遠に続けるよう強制している。
    しかし、そもそも戦争に必要な武器や薬、食糧、城砦はモノ作りの産物であり、それらを禁じられた人間は一方的に消耗するばかりで、実際には魔物側が人間の城を破壊し虐げるのを楽しんでいただけ。ビルダーが来訪した時点ではうっかり城を制圧してしまったせいで永遠に続けろと命令したはずの戦争ができない状態に陥っておりむしろ困っていた。各兵団の連携も取れておらず、世界より先に人間を滅ぼすべくスパイを送り込んで揺さぶりをかけたり教団が利用するために【ミナデイン砲】を作成させたりと権謀術数を駆使する参謀に対し、戦いを楽しむためだけに兵を小出しにするアトラス総督の計画も噛み合っておらず、結果として人間側に各個撃破されていった。
  • 教団の聖地である【破壊天体シドー】に控える幹部たちは「蝕まれるように滅びゆく残酷な世界の希望は、一思いにすべてを無に帰す破壊神」という思想の下で、破壊神シドーとハーゴンに仕えており、ビルダーが訪れたときには世界の破壊による終焉を見届けていた。
    しかし幹部の三神官たちですら、頭では破壊神による救済を受け入れようとしつつ本心では拒否感を抱く者破壊をありがたがる者大人しく静観している者と態度はバラバラ。
    一般の魔物信徒に至っては「破壊天体で待っていれば救いが訪れる」ぐらいの漠然とした情報しか与えられておらず、幻の世界の真実はおろか、救い=世界の破壊という教義の詳細すら知らされていないため、シドー復活による星の崩壊が始まるとパニックが起きていた。
    個々の信徒も、腹を空かせてあっさり料理に転ぶ者実は園芸が趣味の者そもそも自分自身が兵器という作られた存在である者モノ作りやビルダーを悪とする根拠を全く理解しておらず周囲に流されていただけの者など信心の薄い者ばかりで、世界の崩壊を前にしてあっさり教義を投げ捨て箱船作りに参加し、全員揃ってビルダーになってしまった。

つまるところ「モノ作りは悪。破壊こそが救済」という教義の根拠がスカスカなのだ。
それどころか活動拠点となる教会や祭壇等はほとんど【伝説のビルダー】が作ったあるいは作らせたモノを使用し、人から奪った船などを移動用に有している上、調理を施した【あんサンド】を兵糧として配給しているなど、不完全とは言え自分達はしっかりモノ作りの恩恵に預かっている上に悪とみなしたビルダーの手までしっかり借りていたりと、教団の活動そのものにさえ矛盾がみられる。
根本的問題を抱えた信仰を強制された結果、生活が困窮している人間側はもちろん、魔物側にも教義を疑問視する者や、ちょっとした切っ掛けでビルダー側に付いてしまう者、教義よりも戦いや破壊が楽しめればそれで良いような者が多く出ていた。
 
蓋を開けてみれば、ハーゴンは自身が既に滅んだ身であるため、「自分の思い通りにならないなら自身の教団も含め世界のすべてが破壊されてしまえば良い」と自暴自棄な考えを抱いており、ゆえに教団存続にも興味がなく約束の地にいる自身の配下に目もくれていない。居城にいる悪霊の神々の幻影ですらゴミ呼ばわりしている。
それどころか、自棄を起こす以前の状態でも本心では自分の望む世界を「作る」ための準備として破壊を掲げていただけだった。
教団を利用したシドー再召喚計画の舞台となる幻の世界からしてハーゴンが「作った」ものであるし、教団を立ち上げることもまた組織とそれに関わる事物を「作る」ことであり、もはや出発点から矛盾している。
まだ生きていた頃のハーゴンも「世界を破滅させる」ことを目的として掲げていたので、破壊神シドーがその野望を文字通り成就させたとすれば世界共々滅ぶか大打撃を受けるであろう魔物や教団も最初から捨て駒同然になってしまう。
DQ2本編で世界破滅を目指す動機は語られていなかったが、素直に「世界を作り替えるため征服したい」では魔物連中を扇動できないとでも思ったか、あるいはもっと根本的に世界をリセットするべきという考えに取り憑かれていたのだろうか?
 
結局、首領であるハーゴン自身が創造を望んでおり、信仰対象の断片たる【少年シドー】からも教義の矛盾を指摘される始末。
そもそも今作の破壊神シドーは「創造の力が満ちた世界に現れる破壊の神」という、モノ作りあればこそ生まれる存在だと解釈されており、少年シドーにもモノ作りに強い憧れを抱く心が備わっていた。
最終的には主人公達の活躍により総督陣は壊滅、幹部たる三神官をはじめ多くの魔物達もモノ作りと破壊の共存を肯定的に受け止めるようになり、ハーゴンの意を酌んだ集団としては完全に空中分解することになった。
 
破壊天体シドーの幹部たちは慌ただしく箱船で次元の狭間に脱出することになり、その後にハーゴンが討たれたため、恐らくは解散命令も出ていない状況となっていた。その中で構成員が残らず足を洗ったのか、かんごく島の上層部や主人公と接触しなかった教団の魔物といった面々が上層部の崩壊に気付かず残党化しているのかは長らく不明だった。
しかし、最終アップデートで教団幹部たちのその後が描かれた際に、現最高幹部にあたるアデンらは「他の魔物を導くために旅立った」ことが明らかとなった。よって、反抗する連中はだんだん減っていき、それに伴って教義と勢力は弱まっていくことになるだろう。

関連書籍

かつてエニックスから刊行された「モンスター物語」では、この教団の原型となったであろうハーゴンが率いる邪教についても解説がなされている。
最初は病気の治癒などを目的にした平和的な教団を装い、人心を掌握していった。
その教団の実態にムーンブルク王が疑問を持ったため、ハーゴンはムーンブルクに侵攻して滅ぼしたということになっている。
小説版ではハーゴンが「悪のみが世に栄え世を救う」という教義を抱え、人間を1人でも多く信者とするため教団を創っている。
こちらではシドーが大魔神と呼ばれており、ハーゴンと破壊を結び付ける要素が無い。CDシアターでは、単純に教徒を生贄とするため教団を作成している。
ビルダーズ2は破壊と創造がテーマであるため、これまで不明確だったハーゴンの動機が設定され、教団の教義もモンスター物語とは違う物になっている。
 
ギャグ漫画である【ドラゴンクエスト4コママンガ劇場】では、遥かロンダルキアの居城からなぜか水晶玉ではなく望遠鏡で王子一行の様子を覗き見したり、仮装大会を開催したり、手旗信号の「オウジタチガキタゾ」がいつの間にか「オオシタバキバゾ」に変わってて大わらわになったりと、(主に【栗本和博】によって)割と間抜けな連中として描かれることも多い。
これらの一見コミカルでフレンドリーな要素も、ビルダーズ2のハーゴン教団には引き継がれている。