概要
ドラクエの読み物【モンスター物語】から描き始め、【ドラゴンクエスト4コママンガ劇場】1巻からDQ8劇場3巻まで、ほぼ皆勤(ガンガン編の6巻や無印の13巻など、いない巻も存在する)で執筆を続けたDQ4コマ界の生き字引。
キャッチコピーは「吟遊マンガ家」・「キメラのグッピー」。
バイクを趣味にしているらしく、『4コママンガ劇場』の「楽屋裏」ではその愛車にまたがり、ライダースーツを着込んでヘルメットをかぶった自画像でも登場している。
元々はテストプレーヤーとして本編の製作に関わっており、初期作のスタッフロールにはその名前を見ることが出来る。
漫画家デビュー以来画風も作風も全く変わっておらず、老害扱いされることもあるが、根強いファンも多い。
この人がいなくなったら、最早4コマ漫画劇場は4コマ漫画劇場ではないと言えるかもしれない。
画力はお世辞にも高いとは言えないが、ゲーム中ではテキストだけで済まされていた魔法や特技に独自のアクションを与えて、勇者たちもモンスターも実に生き生きと描かれているのが特徴。
特に【ふしぎなおどり】で発生する「不思議♪不思議♪」という独特のオノマトペはインパクトが強く、実際のゲーム中で不思議な踊りを見た際にこれを思い出す4コマ読者は多かったと思われる。
またゲーム本編では描かれない点(町の人々の暮らしやモンスターの生態など)に着目したネタが多い。
その長い4コマ作家生活で、読者に大きなインパクトを与えたオリジナルキャラをいくつも作り出した。
「設定を盛りに盛った作中キャラ(怪傑大ねずみなど)」もいれば、「ゲーム作品に全く存在しないキャラ(吟遊彫刻家カライなど)」という作風にも挑戦している。
本人も一発ネタで終わってしまったキャラが多数存在するのを気にしていたのか、楽屋裏で彼らに「ちゃんとワシらの出番も作らんかい!」と作者自身へセルフツッコミをさせた一幕も見られる。
以下にその一部を紹介する。
怪傑大ねずみ
【ローレシア】地方部隊長でマントがトレードマークの【おおねずみ】。
モンスターが助けを呼ぶとどこからともなく現れる正義のヒーロー……なのだが所詮おおねずみなので別に強いわけではなく、勇者一行に勝てた試しはない。
勇者たちも毎度現れる彼には「またお前か」とウンザリしている様子。
しかしながら人望はかなり厚く、部下の【スライム】や【ドラキー】たちに慕われるばかりか、【メタルハンター】のような強豪モンスターですら彼の登場に喜ぶほど(怪傑大ねずみ本人は実力差を察して逃げようとしたが)。
また彼も勇者たちへの対抗手段はそれなりに考えており、【アイアンアント】三匹と合体して守備力+39という【ロトのよろい】に匹敵する硬さを得たこともある。呪文耐性を忘れていたため燃やされたが。
一応部隊長なので【ハーゴン】麾下の軍勢が集まる会議にも出席したりしているが、案の定ハーゴンからは何故お前がいる!?と怒られた。
ほかのキャラには無い独特の活躍は多くのファンを生んだ。
ちなみに初登場は【モンスター物語】のおまけ4コマ。
ローレシア地方部隊長に昇格(?)したのは『4コママンガ劇場』7巻。
長年アンソロジーに出演するとそこそこに地位が上がるのだろうか。
少年時代の栗本は怪獣が好きで、ヒーローものの番組を見ていても、ヒーローよりも怪獣を応援していたという。
そして最終的にはいつも怪獣が負けてしまって悲しんでいた。
時は流れ、『モンスター物語』内の4コマネタを考えていたときに、「勝たないまでもモンスターのヒーローを作ろう」と思い立った。
そこでスポットが当たったのが、あまり目立った存在ではなかったおおねずみ。
マントをつけてしまおう、名前も大げさにしよう、でもネズミだから強くない、という経緯を経て「怪傑大ねずみ」が誕生したのであった。
モンスターにも明確に人格を持たせる場面が多く描かれるDQシリーズとの相性は抜群であった。
名前の元ネタは知る人ぞ知る伊達男ヒーロー、「快傑ズバット」からであろう。
後にリメイク版DQ5にて仲間になったおおねずみに「かいけつ」という名前をつけたプレイヤーもいるとかいないとか。
また、【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】にも【チウ】というおおねずみがレギュラーキャラとして登場している。
こちらも魔物を従えるアイテムを【クロコダイン】から譲渡され、怪傑おおねずみと同様に謎のカリスマ性を発揮していた。
吟遊彫刻家カライ
オリジナルキャラの1人。似た名前の【ガライ】の彫刻家バージョンといってもいいだろう。
初登場は怪傑大ねずみと同じくモンスター物語のおまけ4コマ。寝ている【ストーンマン】に彫刻を施して半裸の女性に変えてしまった。
4コマ漫画劇場初登場時は寝ている【ばくだんいわ】を使った彫刻を作ろうとしたが【メガンテ】で木っ端微塵になってしまう。
その後何事もないように復活しては【うごくせきぞう】の頭を胴体から落とした挙句ばくだんいわを乗せて逃げてしまったり【ちきゅうのへそ】の【ひきかえせ!】の石像にいたずらしたりした(結果スライムに笑われた)。
ストーンマンを勝手に改造した半裸婦像はかなりクオリティが高いのだが、一方で地球のへその石像に施したものは子供の落書きレベルと作品の出来の差が激しい。
気分の差だろうか。
余談になるが、当時はDQ1にしか登場していないストーンマンと共演したかと思いきや、DQ3出典の地球のへそや爆弾岩も登場したりなど時系列がカオス。
ギャグ漫画なので深く考えたら負けである。
キャットフライスーパーX
【バラモス】によりパワーアップされたスーパーキャットで、レベル99の【武闘家】よりも素早く、【アッサラーム】の塀も一っ飛びと強力な性能を誇るのだが、実用化のメドは立っていないため、
朝、軒先に届けられたミルクを飲んで逃げる程度の被害しか人間に与えられていない。
その為か似たようなスタンスの怪傑大ねずみより知名度は低く、たった1本だけの出番というのが惜しまれる。
遠くへ飛ばされた二人
『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場』3巻で初登場した、DQ3の武闘家と【魔法使い】の男性コンビ。
毎回のように二人同時に【バシルーラ】で飛ばされてしまう。
基本的に行き先は【ルイーダの酒場】ではなく、飛ばされた先で更に酷い目に遭いがち。
落下点に【いっかくうさぎ】の群れがいたり、通りすがりの動く石像の鼻穴にはまり、くしゃみで更に遠くへ飛ばされたりする。
ちなみに武闘家は一角ウサギの角が頭を掠めて頭頂部の髪の毛が刈り取られてしまい(いわゆる逆モヒカン状態)、この時に毛根が死んでしまったのか以後ずっとそのままというヒドい仕打ちを受けている。
一度は、アリアハンへ自力で辿り着こうとした際にもバシルーラで飛ばされた事もある。
魔法使いはレベル12で【ルーラ】を覚えるはずなのに何故か使って帰ろうとはしない。どうやらMPが尽きているのが原因らしいが宿代をぱふぱふ屋で散財する、運良く持っていたキメラの翼をモンスターに食われるなど不幸に暇ない二人である。
何度も飛ばされる(そして飛ばされた先でも大抵不幸な目に遭う)二人の運の無さも相当なものだが、そのたび冒険を中断して二人を捜索する羽目になる勇者他一人の苦労も相当なものだろう。
……と思いきや、勇者は勇者で再会した時には既に新しい仲間を連れていて「パーティーが一杯だから自力でアリアハンまで帰ってね(要約)」と発言したりするなど中々の外道だったりする。
最終的にバラモス城に飛ばされて、戦闘中のバラモスに衝突してしまっている。
成功率と性質上、ある意味【ザキ系】より厄介なFC版バシルーラを上手くネタにした良作。
福引大王
【ローレシア王】が【福引き】に挑戦した際の変装した姿。読者はもちろん、町の人々にも強烈なインパクトを与えた模様。
とりあえず【やくそう】を当てた。
無印18,20巻の楽屋裏にも登場する。
マヒャドじいさん
熱帯夜を過ごす【イシス】の住民のために【マヒャド】を放つ日常を送る。
家族に息子の「ヒャダルコおじさん」と孫の「ヒャド君」がおり、3人で氷の呪文を連発している。
彼らは善意でやっているのだが、町の住民(及びたまたま宿屋に泊まっていた勇者一行)はみんな氷漬けにされるため感謝されているのかどうかは不明。
何周年記念かで再登場したときもあった。
なおこのネタが登場した当時シリーズは4までしか出ていなかったのだが、残念ながらヒャド系呪文の中で唯一「ヒャダイン○○」は登場していない。いるとしたらヒャダイン母さん辺りだろうか?
余談だが、現実の砂漠は夜になると砂からあっという間に地熱が逃げてしまって熱帯夜になるどころか夜は冷える。日中はともかく夜にはマヒャドじいさん達は必要ないかもしれない。
また、栗本自身は現在では「砂漠の夜は寒い」ということに気付いているようであり、無印の20巻には【ピラミッド】の【マミー】(【ミイラおとこ】?)が「夜は冷えるんだよなー」とつぶやくネタがある。
一方でリメイク版DQ3のイシスには「夜に野外で水浴びしている女性」が登場するため、DQ3世界においては「砂漠は昼も夜も暑い」のが公式設定のようだ。
メダパニ勇者
【やけつくいき】で麻痺してしまった【やいばのよろい】装備の【勇者】に遊び半分で呪い武具を装備させたところ、麻痺が解けたがあまりのインパクトに誰もよらなくなってしまった。
これのお蔭で各地で無血開城するばかりか【バラモス】までも改心させてしまう。
しかしこの代償か【教会】で呪いを解こうにも勇者が混乱しているせいで失敗。【シャナク】習得までこの状態維持というオチになってしまった。
旅のタテフダ職人カンバンヤラ・ヨロズ
旅人のために【立て札】を立てたり、世界中の立て札や看板を研究したり、世界一のカンバンを探したりして旅をしている職人。
【主人公(DQ3)】を筋肉質にし、サークレット部分を立て札にしたような風貌をしている。
ウソと大げさが大嫌いであり、ウソが書かれている立て札を作った人をこらしめることも。
無印の17~20巻やギャグ王編の1,2巻に登場する。
モンスター仮装大会
特定のキャラではないが、栗本の持ちネタの一つ。
当時大人気だった「欽ちゃんの仮装大賞」のパロディネタ。
DQ1~DQ4までの敵の総大将が主催で、そのシリーズのモンスターに仮装をやらせるというネタ。
だが、ひどい作品には制裁が加えられることもある。
DQ5では1本だけ存在し、トルネコ4コマでも開催されたが、その後のシリーズでは登場しなくなった。
主な制裁
- 【ウドラー】のタンス(仮装というか加工)…燃やされる
- 【キラーマシーン】の器械(機械)体操…【アトラス】激怒
- 【ガーゴイル】の【ホークマン】なりきり「ホーク(フォーク)を持ってホークマン!」…【ハーゴン】が【ザラキ】で殺そうとするも効かず(恐らくハーゴンは「ガーゴイルを標的にしてザラキを唱えた」が、相手は「ホークマンになっていた(→標的となるはずのガーゴイルがいない)」ため回避されたのだと思われる)、観客が全滅。その後ハーゴンはザオリクを連発して事態の収拾に奔走する羽目に。
- 【ゴースト】のおたまじゃくし…ふだん温厚な【ダースドラゴン】が火を吐いて燃やした
- 【じごくのハサミ】の洗濯ばさみ…【魔法の玉】の攻撃
- 【エレフローパー】のタコ踊り…どこからともなく怒り狂う魔人が現れる。
- 魔神が火を持ったら火魔神⇒暇人…山のように大きな魔神激怒。ただ、このネタは一般観客他、同席していた【ロザリー】にもウケていた。
- 【だいまどう】が組体操で窓の形を作り「大窓」…【ミニデーモン】への格下げに処される。なお過去にDQ1の【まどうし】が似たようなネタ(身体をカンテラで明るく照らしただけで「大魔道」と言い張る)をやってブーイングを受けていたりする。
制裁以外に起こった事態
- 【パペットマン】の人形劇…ハーゴンがツッコむ間もなく会場にいた怪傑大ねずみ・スライム以外全員のMPが不思議な踊りで0になる
- ウドラーがリベンジのために吟遊彫刻家カライに自分の枝をつまようじにしてもらう…ハーゴンが「許す」と泣いて呆れ、コメントをしなかった
- 【キングコブラ】数匹と【ダークアイ】が合体して【メドーサボール】…絡まって取れなくなってしまう。ハーゴンは大笑い
- 【ばくだんいわ】がゴロゴロ集まって【メタルスライム】のマネ…「メ……」と口にした瞬間、バラモスを含めた会場のモンスターたちが一斉に逃げ出し、後にはマホカンタをしたガメゴンロード1匹しか残らなかった……。なおそのガメゴンロードにはウケたのか拍手をもらえた。
- 山のような魔神がゲスト出演、客席のエレフローパーを呼びつけ、酒を飲んで火を吐いてたこ焼きに。誰も文句を言えなかった。