ジェイミー・ロマック(元DeNA)の成績を元にした、KBO出身野手のNPBにおける成績の予測方法。
(KBO時代の成績)-(ロマックのNPB→KBO移籍前後の成績差分(後述))
で計算される。
経緯
ジェイミー・ロマック(DeNA時代、2016年)
2015年オフ、DeNAベイスターズはアーロム・バルディリスの後釜となる三塁手としてロマックを獲得。ラミレス監督も「5番・三塁で20本塁打」を期待するなど主軸として待望されていた。
しかし開幕後は打率は0割台と低迷。本来のラミレスは我慢強くスタメンを固定する傾向かつ選手批判を極力しないスタイルであったもののロマックに対しては「我慢の限界」と言わしめ、5月に梶谷隆幸(現巨人)の復帰と入れ替わりで二軍落ち。以降もたまに一軍に上がっては三振して再度抹消、を繰り返し、最終的に.113(71-8) 0本 2打点という(ある意味)驚異的な打撃成績を叩き出してシーズンを終了した*1。
当年限りで解雇されたロマックはオフにアメリカへ戻り、サンディエゴ・パドレスとマイナー契約を結ぶ。年明けのWBCではカナダ代表として出場するも8打数5三振、打率.125と相変わらずの不振であり、NPB時代の打率が公式中継で何度も晒される羽目となった。
ジェイミー・ロメク(KBO時代、2017~2021年)
WBC終了後、パドレス傘下のAAAエル・パソ・チワワズで活動。NPB時代とは別人かと思うほど打ちまくり、4月の月間MVPを獲得。5月7日にKBOのSKワイバーンズ(現・SSGランダース)へ移籍。登録名は「ロメク」*2となった。
移籍後も好調は続き、アダム・ダンさながらの本塁打(と三振・四球)を量産。最終的に打率.242、31本、64点、OPS.898という好成績を残し、KBOのシーズン途中加入外国人選手の最多本塁打記録を更新した。以降2021年に引退するまで主力選手として活躍を続け、SK/SSGファンからは「マッカーサー将軍」の異名を付けられた*3。
ロマック算
ロマックがNPB→KBOへ移籍した際の主な成績変動は以下。
項目 | 2016年 (NPB) | 2017年 (KBO) | ⊿ |
---|---|---|---|
打率 | .113 | .242 | +.129 |
本塁打 | 0 | 31 | +31 |
OPS | .374 | .898 | +.524 |
以上をもとに、「逆にKBOの野手がNPBに移籍した際は、ロマックの増加分がそのまま減少するのでは?」という理論がまことしやかに囁かれるようになる。この時点ではまだ荒唐無稽なネタの域を出ない発想ではあったものの、それを図らずも実証したのが後述のウィリン・ロサリオであった。
ウィリン・ロサリオ
阪神入団~開幕前
ロサリオは2017年にKBOのハンファで打率.339、出塁率.414、37本塁打、111打点、OPS1.075と好成績を残し、阪神と翌年の契約を結ぶ。マット・マートンやマウロ・ゴメスが去った後の助っ人野手が総じて不振だった時期も相まって、ファンから期待を集めていた。
年明けの春季キャンプではそのパワーを遺憾なく発揮し、スポーツ紙にケビン・メンチばりの見出しが続々と掲載されるなど、「今度こそバースの再来か」と騒がれた。一方で「KBOで活躍しNPB入り」という点から「ロマックの再来」を危惧する声も見られた。
シーズン開幕前の時点で、上述のロマック算を当てはめてロサリオのシーズン成績を乱暴に予測する試みも行われた(下記)。
打率 :.210(-.129)
本塁打:6本(-31本)
OPS :.551(-.524)
オープン戦の成績は43打席で打率.143、1本塁打に対し11三振と低調。不安を残しながらも、ロサリオは開幕を4番で迎える。
開幕後~退団
開幕後は懸念が的中。パワーこそ申し分ない*4ものの、「『外に大きく逃げる球』および『外角の落ちる球』、『真ん中の球威のある直球』全般に弱い」弱点が露呈し、三振やゲッツーを量産した。守備面でも拙守を重ね、一時期は三振王・最多併殺・最多エラーの裏三冠王を獲得する勢いであった。
最終成績は
打率 :.242(281-68)
本塁打:8本
OPS :.658
と出場試合数を考慮しても*5予想と大差ない数値に収束し、当年限りで解雇。
雑な発想からリアル感のある予測値を導き出した実績から、KBO出身選手の成績予測方法として用いられるようになった。
(参考)ロサリオの成績比較
項目 | 2017年 (KBO) | 2018年(NPB) | |
---|---|---|---|
ロマック算 | 実際 | ||
打率 | .339 | (.210) | .242 |
本塁打 | 37 | (6) | 8 |
OPS | 1.075 | (.551) | .658 |
なぜロマック算が成り立つのか
主な理由は下記の2つ。
- 2018年までのKBOのストライクゾーンは上下が狭く左右に広い特殊な傾向が強く(下記画像)、他国と比較すると総合的に狭かった。
- 投手の実力がトップクラスとそれ以外で乖離している。
以上よりKBOは打高傾向が極めて強いリーグであり、KBOからNPBへ移籍した選手はストライクゾーンの差および投手のレベルの差への対応に苦戦しやすいと考えられる。
※画像出典:中央日報「국내선 3할, WBC선 삼진 … ‘우물 안 K존’에 갇힌 한국 야구」*6
韓国国内でもKBOの打高環境は問題視され、2019年シーズンからボールが変更されリーグ本塁打数が42%減少*7。打高傾向は緩和されている。
以上の通りKBO→NPBへの移籍に伴い成績が下降する根拠はあるものの、ロマック算自体は選手の能力の分析を放棄した簡易的な推定方法に過ぎず、下がり幅が毎回ロマック(ロサリオ)と同程度である保証もない。あくまでネタとしての予測に留めるべきである。
類例
いずれもKBOで好成績を残したものの、NPBで苦戦した野手。
逆に両方で活躍したと言える近年の野手は、MLBにも挑戦した李大浩(元オリックス→ソフトバンク)や、ボール変更後のKBOで活躍したジェリー・サンズ(元阪神)くらいである。