Book14:<ドュエの宝石>に関する本。海の彼方より持ち来たりた宝石と、それらを用いてつくられたアウロラの数々の宝について書かれている。

Last-modified: 2008-11-19 (水) 21:46:55

<ドュエの宝石>

 

コルランは、妖精たちのうちでももっとも冒険心に富む者であった。彼は大海の彼方より、六つの美しい石を持ち帰った。
すなわち、紅のランガ、紫のアンドュルマン、碧のアメル、翠のデノワ、白銀のレリザン、黄金のラジュールである。
これらの石には、人の世が始まる以前の大いなる精霊たちの力が宿っていた。ランガには火の精霊フレシェールの力が、アンドュルマンには闇の精霊ノワルデュの力が、アメルには水の精霊オルフィージュの力が、デノワには風の精霊エリュスールの力が、レリザンには光の精霊セレーヌの力が、そしてラジュールには大地の精霊カルディージュの力が、というふうに。

コルランはこれらの美しい石を、娘グレスにおくった。グレスが聖龍王のもとに嫁いだたき、これらの石もともに聖域をはなれ、神聖王国の宝となった。
これらの石は、持ち帰った土地の名からドュエの宝石と呼ばれた。

聖龍王アンリ2世の時代に、名匠ミシェル=ロンゾの手により四つの石を用いた大地の冠、焔の杖、水の指輪、風の靴が作られた。これらは聖龍王のしるしとされ、その後神聖王国での王位継承の儀式ではかならず用いられるようになった。
これらの品を正しく身につけ、聖句を唱えた者だけが、聖龍王として、精霊の門をくぐることができると云われていた。

ある時、悪しき野望にとらわれた魔導師ネクにより、王冠と杖と指輪と靴は奪いとられてしまった。
ネクは精霊の力を得るために、精霊の門をくぐろうとこころみ、王冠と杖と指輪と靴を身につけて、門の前にて聖句をとなえた。
はたして、門は開かれなかった。いぶかしむネクに、天上より千のいかづちの矢がふりそそぎ、魔導師は滅んだ。
彼は右手に杖を持ち左手に指輪をはめていたのだが、これは聖龍王がいつわりを教えたのであり、本来はその逆に身につけるべきであったと云う。
この雷にうたれたために、王冠と杖と腕輪と靴とはみごとに破壊されてしまった。しかし、それらにはめられていた石だけは残ったと云う。

また、別の時代にはドュエの宝石をもちいて、六つの聖杯がつくられた。
この六つの聖杯でくんだ水には、それぞれ神秘の力が宿るとされ、精霊たちの聖杯として尊ばれた。
しかしそのうちの一つ、黄金の聖杯はある時盗み出され、アウロラの外へと持ち出されてしまった。
神聖王国では、失われた聖杯の行方を手を尽くして探してきたが、いまだ見つけられてはいない。
黄金の聖杯を盗み出したのが何者かは定かではないが、多くの者たちが追放されたメルキュール=エルメの仕業ではないかと疑った。
しかしなんらかの証拠があったわけではなく、その後のメルキュールの足取りをたどった者も、何ひとつ見つけることはできなかったと云う。