Book2:リカルドがマンテア公に宛てた報告書。新聖龍王とその姪カリス姫について記されている。

Last-modified: 2008-11-14 (金) 21:57:08

聖天使の月4日

 

マンテア公閣下

 

本日、ようやく新たな聖龍王陛下への拝謁がかないました。
アルフォンス殿下薨去の際にお会いしました時と印象はほとんど変わらず、外観、言動、いずれも神聖王家の血を引くとは思えぬお方です。
歴代聖龍王のなかでも、これほどその聖冠が似合わぬ人物はいなかったであろうと思われます。
あの方をアウロスの代理人と呼ぶことには、神聖王国の民ですら、すくなからぬ抵抗があるように感じました。

しかしながら、なんと申しましてもこの度の驚きはかの聖龍王ではなく、その10歳年下の姪にあたるカリス姫です。
かの姫は10歳まで聖域で過ごされただけあり、人というよりは妖精に近いように見受けられます。
その物腰の優雅さ、姿形の美しさは云うにおよばず、知性、品格、声音、あらゆる点におきまして、まさしく神聖王国の女王にふさわしいお方と申せましょう。
未だ14歳ながら、姫のアウロラにおける人気の高さはすさまじく、聖龍王陛下でさえ叔父君という以上のご好意を抱かれているようです。

この先、カリス姫の夫となる人物には注意が必要でしょう。
聖龍王陛下への国民の期待は低く、北方で不穏な動きが高まっている今、国内の不安は増大しています。
このままですと、姫が次期聖龍王の母君となられる可能性も否定できません。そのとき、姫の隣に座す人物がアウロラ人ではなくてはならぬ理由はありませんから。

 

閣下の忠実なる僕
リカルド・ヴィテッラ