Book24:カリスティア王国成立に関する本。

Last-modified: 2008-12-27 (土) 23:20:20


アウロラの北辺を守るルノン山脈。この北側山岳地帯は、長いこと人の住めぬ地で、オレニア、ミリス、グラヴィア、湖水同盟諸国、いずれの支配も管理も及ばぬ地であった。
しかし、そのためかここ数百年の間には盗賊、魔物、その他あやしきものどもの跋扈するところとなり、はなはだ危険な地域となっていた。
とはいえ、神聖王国の結界をこえるほどの力を持つものたちではなかったため、アウロラはその制圧には関心を示さず、他の周辺諸国も積極的に対策を講じようとはしなかった。

山岳地帯は魅力ある土地とは云えず、そのような場所のために国力を割くのは得策ではないと、周辺諸国は考えていた。
また、もしその山岳地帯の無法ぶりが無視できない状況になれば、神聖王国がなんとかしてくれるだろうというのも一致した見解だった。
ルノン山脈付近に住む者や、その辺りを通過したい者たちにとっては、この土地の治安悪化は無視できる問題ではなかったが、いずれの国も「国外の問題」として、陳情もまともに取り合ってはもらえなかった。

そのようななかに、この英雄は現れた。彼がどこの生まれで、どのような育ちをしてきたのかを知る者はいない。
わかっていることは、ある時ひとりの若者が現れ、このルノン北山岳地帯に巣食う危険なものたちを掃討し、あるいは支配下におさめ、その地に彼の王国を築いてしまったということである。
しかもおどろいたことに、この若者はあらかじめ周辺諸国から、盗賊や魔物の一掃とひきかえに、この地の独立を容認する旨の書状を、個別に得ていたのであった。

とは云え、この、突然の新国家の出現には、あらかじめ容認の言質をあたえていた諸国も、反発を覚えたようである。
独立を宣言するや、周辺諸国は、その土地は自国の属領であり独立は認められない、無法者の集団は国家とは呼べない、この若者こそが悪魔神の使いである、などと云って反発し、この地域にあらたな紛争がまきおこるかに見えた。
しかし、この問題は意外なことにアウロラの介入によって決着をみた。
聖龍王は、この国の独立を支持し、この若者の王としての資質を高く評価するとの声明を出したのである。

これはユーフラニア中を驚かせた。
聖龍王が国際紛争に対し、このように積極的にどちらかを支持するような言動をとることは、きわめて異例だからである。
そのため、この若者はそもそもアウロラ王家の人間ではないかとの噂が流れた。
それが事実であるかは、今までのところ確かめられていない。

ところで、この若者自身は、王になりたいと願ったわけではなかったようだ。
その後明らかになったことだが、彼が当初望んでいたのは、アウロラの北辺を守る地に静かに暮らしたいということだけであった。
しかしその望みのために、結果的に彼はこの地に秩序と平和をうちたてることとなった。
そして彼の友人や配下となった者たちはみな、この若者を王と呼びたがった。

そのようにして、アウロラの北には、新たにカリスティアという名の小国家がうまれたのである。
星王暦5014年のことである。