Book35:竜剣伝説に関する本。

Last-modified: 2009-01-03 (土) 19:52:50

世に<竜剣>とよばるる三剣あり
神のつくりし<聖龍の剣>
妖精のつくりし<銀竜の剣>
人のつくりし<黒龍の剣>

<聖龍の剣>は聖なるを従え
<銀竜の剣>は邪なるを滅し
<黒龍の剣>は魔なるを破る
すなわち

<聖龍の剣>は神の世を
<銀竜の剣>は妖精の世を
<黒龍の剣>は人の世を
守る剣なり

いずれも古より世を守護せし剣なれば、互いに刃を交えるは究極の禁忌なり
また、
ひとりが手にしうる<竜剣>はひとふりのみなれば、数多を望むは愚かなり

<竜剣>は、つねの人の持つことあたわざる剣なり
ただ選ばれたる主のみが<竜剣>を知りうれば、<竜剣>もまた主の声のみにぞ従う

主の許しなくして、選ばれざる者の<竜剣>に触れるは、死をもってむくいられん



<竜剣>伝説はユーフラニアに古くから存在し、多くの英雄伝説とも結びついている。
とくに<黒龍の剣>と、それを操る<光の黒龍>を巡る伝説は、人々にとって最も身近で人気のあるものとなっている。
それは<光の黒龍>が、人間が目指しうるひとつの頂点であり、過去に実在した英雄たちだからである。
いまも魔道や剣技を極め、我こそは次の<光の黒龍>たらんとする者は少なくない。

しかしながら、最後の<光の黒龍>が世を去ってから既に千年近くが経とうとしているにも関わらず、いまだ<黒龍の剣>を見出した者は現れていない。
それを指して、偉大なる魔法と伝説の時代は既に終わりを告げたのだと云う者もいる。
確かにそれは、多くの者たちが感じていることであろう。
<大災厄時代>とその後に続いた<混迷の百年>の後、この世界から偉大な魔導師たちはほとんど消え、妖精たちもまたことごとく死に絶えてしまった。智慧と伝承は失われ、世界から魔法は消えつつある。
<竜剣>が我々のまえに現れることは、もうないのかもしれない。