Book32:<北方略史>。北方に禍々しい魔の王国がうちたてられ、やがて北方の崩壊とともに王国が消滅するまでの経緯が、おおまかに記されている。

Last-modified: 2009-01-03 (土) 16:49:23

<北方略史>

 

魔の王国と北部崩壊



4千年紀の中頃、いずこからともなく現れた邪悪な存在が、北の地に根を下ろした。
それは密かに人間の世界に混じり土地とそこに生きる者たちを穢していった。

汚染と侵略はまず、北のファマルク王国を中心に侵攻した。
はじめのうち、北の異変は魔物の増加や凶暴化、些細な怪事件の頻発などといったかたちでしか現れなかったため、ユーフラニア諸国はその影で真に何が起きているのかにまでは、注意を払わなかった。
やがてファマルクが魔の王国に変じた時に、人々ははじめてその恐るべき真実を知り、愕然とした。
王国に君臨するその者は死によって勢力を増し、それに挑んだ数多の戦士や魔導師らはすべて倒された。
闇は伝染病のようにひろがり、土地に呪いを植えつけ、人々を狂わせた。
ユーフラニア北部の諸国は恐怖のあまり国境を封鎖し、ファマルク方面から流れ込む人々を問答無用で焼き殺すという暴挙に出た。

数年の後、ユーフラニア北部一帯は魔の版図に塗りかえられていた。
魔の侵攻をくいとめたのは、神聖王国の力であると云われているが、定かではない。
残された記録からは魔の王国内で分裂ないしは裏切りがあったと思われること、アウロラからひとりの王族が北に向かい魔の王国に入ったこと、それから三月ほどしてユーフラニア北部を白光が包み魔の王国が消え去ったことなどがわかるのみである。

しかし、魔の王国の消失は単に災厄の一掃に留まらず、事実上ユーフラニア北部一帯を壊滅させる出来事であった。
白光とそれに続く大地震の後、残ったものは何も無かった。
その地に文明があったことすら疑わせるほどに、ファマルクを中心としたユーフラニア北部の地上からは、あらゆる人工物が無くなっていた。
もちろん人間も魔物も、命ある者はすべて失われていたのである。
そのため、この出来事が神聖王国の意図によるものなのかという点には、疑問が残る。
魔の王国が、自らの滅びの道連れとして、すべてをのみこんだのではないかとの見方もある。

魔を払った奇跡と云うにはあまりに強烈なこの出来事は、一部では<第三次大崩壊>または<北部崩壊>などと呼ばれ、いまもユーフラニア北方史に残る大きな謎である。