思い出した。
王は――あのひとは決して公平ではなく、つねに真実を語るわけでもない。
私の人間の父は、ルシーヌについて、なにひとつ知らされなかった。
アウロラの王族でありながら、父は私が真に何者であるかも、その役割も知ることはなかった。
あのひとは、伝えようとすればできたはずなのに、それをしなかった。
そのため父にとって私は、母を死なせた恐ろしい怪物――血まみれの呪われた存在でしかなかった。
寧ろ、あのひとは積極的にそう信じこませようとしたのではないかとさえ思う。
私は、多くの子どもたちがそうであるように、父の期待にこたえようとした。
父を喜ばせようとした。
そうして、父に愛されたかった。
けれど、父は私を怖れ、たぶん……憎んでいた。
死ぬまで、父は私を許さなかった。
すべては、あのひとがそのように望んだからだ。
私が、あのひと以外の何者にも心をうばわれないように、あのひとは私のまわりから、あらゆる繋がりを注意深く断ち切ってしまった。
あのひとがあたえる以外のものは、なにひとつ私に届かぬようにしてしまった。
それが、あのひとの――王のやりかたなのだ。
彼に出逢えたことは、いまとなっては奇跡のように思える。
どれほど彼を愛していただろう。