大盗賊団

大盗賊団『マッドデビル』
徒党を組んで商団を襲う山賊集団である。

帝国の騎士団を相手にしてもゲリラ戦を繰り広げて殲滅されずに生き残り、被害を拡大させている。

田舎町の冒険者ギルドなどが手を出そうものなら町ごと滅ぼされてもおかしくない相手である。

「何だ、テメエは！」

盗賊の一人が怒声を上げた。

しかし、その声は明らかに狼狽していた。

大盗賊団『マッドデビル』は、一国を相手にしても引かない巨大組織である。

そのアジトに踏み入って来た目の前の者が理解できず、虚勢を張るように盗賊は大声を出して威嚇した。

巨大な斧を持つ大男がそれを制するように前に出た。

この大盗賊団の頭領である。

その怪力から繰り出される一撃は、全身鎧に身を包んだ騎士団の者をまっぷたつにかち割ったという逸話がある。

この大男の頭領がアジトに踏み込んだ者を生かして返す気はないだろう。

大男はうなり声を上げて襲いかかった。

俺たちゃ　山賊
　エ～ンャ　ソ～ヤ♪

世間を騒がす　大怪盗♪

ブッチャー様たぁ　頭のことだ！

マスクをかぶって　大暴れ♪

悪党仮面の代名詞！

肥えた貴族は　財産没収♪

うるさい役人　裸にしちまえ！

俺らに怖い　ものはねぇ♪

怪盗ブッチャー　大怪盗！

この歌を歌えとかマジかよ。

俺もう足を洗おうかな……

だが、今更他に行く所はねぇんだ。

帝都の牢屋しか、な。

帝都の貴族達は贅沢三昧だ。

領民の苦しみなど分かっちゃいねぇ。

真面目に働く領民達がどんな目に合っているか。

盗賊家業の方がよっぽどマシに生きられるんだよ。

ウソだろう。

帝都のテンプルナイツが出てきやがった。

もうダメだ。

すげえ！

テンプルナイツの騎士相手に負けてねぇ！

お頭、すげぇ！

今ならあの歌、歌っても良いぜ！

やっちまえ！

山道を封じて商隊の荷を奪え！

どーせ、たいした物は運んでねーんだ。帝都を干上がらせちまえ。

地方から税を搾り取ってるだけだろう。

お頭に勝てる奴なんか居やしねぇ！

テンプルナイツもたいしたこと無いんじゃねぇ？

あの噂は本当だったのかもな。

確か、ある吸血鬼の討伐に失敗して弱体化したとか。

吸血鬼ごときに負けるなんざ、だっせぇな。

宿った名刀コテツ