DQ10におけるグランゼニスについては【グランゼニス】を参照。
DQ9
【神の国】に居を構える、全知全能だという偉大な【神】。
名前から察せられるとおり、DQ9の世界のすべてを創造した最高神である。
トーガをまとい白いひげを生やした姿とゼニスという名前は、ギリシャ神話の最高神ゼウスを彷彿とさせる。
神の国の『東の神殿』にある石碑によると、正しき心を持つ者すべてを守り導く存在であり、「正しき者を守るため、悪しき者は滅ぼさねばならぬ」という考えを持っているようだ。
ドラクエシリーズにはDQ6およびリメイク版DQ3に【ゼニス】が登場するが、同じくゼウスがネーミングの由来だろう。
【ダーマ神殿】や【ルイーダの酒場】(もっと言えば武器防具やモンスターも)が複数作に登場するのと同じようなものか。
英語版での名前はZenus。
過去
先述の『東の神殿』に、その創世の過程を記録した下記のような石碑がある。
我は 空と 海とを わかち
空には 星々を
海には 大地を うかべた。
鳥や 魚 けもの 花々や 木々
ありとあらゆる 生き物を
我は 空に 海に 大地に 創り……
最後に 人間たちを 創った。
だが、最後に創ったという人間には「正しき者」と「悪しき者」の二種類があり、栄えるのが悪しき者ばかりであるうえ、ほかのすべての生き物を苦しめ支配するようになった。
このことを憂えたグランゼニスは、人間を「失敗作」だとしてドラゴンボールよろしく気弾一発で世界中の人間を滅ぼそうとしたが、娘である【女神セレシア】はそれを弾き返し人類の助命を嘆願。それに難色を示したことから女神セレシアは己の身を【世界樹】に姿を変え、身をもって人間の清き心を証明しようとした。
セレシアの姿を元に戻すのは、人間の清き心だけ。
身を挺しての娘の説得を受けて、グランゼニスは一時的に矛を収め、【天使界】を創造して世界樹となったセレシアをこれに移した。そして、世界樹に仕える存在として【天使】を創造し、人間の清き心のあかしを集める役目を与えた。
現在
女神セレシアが世界樹となってから数千年の歳月が流れ、現在―
【主人公(DQ9)】や【長老オムイ】らが神の国を訪れた時にはすでに、彼の姿は宮殿のどこにもなかった。
父 グランゼニスが ほろびたのなら
私も この世界も
とうに 消え去っているはず
とセレシアが言っているので、とりあえず滅びてはいないということはこの時点でわかる。
さらに物語を進めていくと、何らかの理由によって身体が分裂し、十の魔物へと分かれたということが判明する。
以下に表の形式で示す。
| グランゼニスの部位 | 誕生した魔物 |
|---|---|
| 腕 | 【魔剣神レパルド】 |
| 目 | 【邪眼皇帝アウルート】 |
| 頭 | 【ハヌマーン】 |
| 血 | 【ブラッドナイト】 |
| 不明 | 【黒竜丸】 |
| 不明 | 【スライムジェネラル】 |
| 不明 | 【Sキラーマシン】 |
| 脳(?) | 【イデアラゴン】 |
| 不明 | 【アトラス】 |
| 不明 | 【怪力軍曹イボイノス】 |
【アギロ】の発言によると、これらの魔物はすべて人類を滅ぼそうと目論む輩とされ、【宝の地図】の洞窟の最深部に封じられることになった。
レパルドやアウルートはどう考えてもエルギオスより強いのだが…
十の魔物に分かれる以前にも、史上最古の水棲生物【オーシャンボーン】や、人類を滅ぼすための魔獣【キマイラロード】を作ったりしている。【闇竜バルボロス】や【アルマトラ】も同様である。
これだけをみると大魔王ポジションにしか思えないが、彼から生じた存在には、光の側面を表す【グレイナル】や、聖なる心の象徴である【アギロゴス】もあるし、そもそも彼の行動は「正しき者を守るため、悪しき者は滅ぼさねばならぬ」という考えに基づいたものである。
宝の地図の洞窟に再登場する【グレイナル】が「神が おのれの闇を 封印せしとき バルボロスは ほろび… 弱りゆく光が 私に年をとらせた。」と言っているので、バルボロスを間接的に滅ぼしたのはグランゼニスらしい。
封印したおのれの闇って何だろう……? 自分で自分の悪しき部分を封印したのだろうか?
アウルートの台詞から十の魔物は体の部位だけでなく何らかの悪しき面の象徴でもあるらしい(ハヌマーンは愚かさ、アウルートは嫉妬、レパルドは破壊)こと、さらにレパルドの台詞にはグランゼニスの心から切り捨てられ封印されたチカラとあるので、彼らは神の悪しき面そのものの一部、彼らは神自らが封印したようだ。
エルギオスによって殺されたと作中では思われていたようだが事実は異なりエルギオスが暴走する前から神自ら己を封印しておりエルギオスが穿ったのは空の神の居城だったようだ。DQ10の要素からカバラにおける生命の樹(世界樹)になった娘と邪悪の樹になったグランゼニスと考えるとその対比が興味深い。
それはさておき、グレイナルのセリフはさらに続く。内容は以下のとおり。
光と闇がよみがえり、アギロゴスのたましいも肉体へもどった。いずれあの方も自由となるはず。
余談
【教会】などでみられる「人」みたいなマークは、神の国のグランゼニスの玉座を飾っている。
作中での明確な描写はないが、まあ創造神だし、人間たちの信仰している神とは彼のことであろう。
また、【必殺技】である【神の息吹】を使うと、天空からグランゼニスが息を吹きかけてくる表現がみられる。
たぶんイメージ。封印されているし、グランゼニス本人が実際にやっているわけではないと思われる。
なお、怪力軍曹イボイノスを【みやぶる】と、「かつては一人娘と立派な宮殿に住んでいた」という解説文を見られる。
これによると、セレシアの妹を名乗る【サンディ】はグランゼニスの娘の数に含まれていない。
現実の神との類似性
自分が作ったものとはいえ、それを「失敗作」として安易に消そうとするグランゼニスを「独善的な造物主」などと痛烈に批判する向きもある。
しかし、現実世界の大勢の人間が信仰している神は、まさにグランゼニスのような神である。
『旧約聖書』に登場する創造主が、グランゼニスにとてもよく似ているのだ。
冒頭部『創世記』の天地創造について見てみよう。
この世を昼と夜に分け、空を創り、海と大地を創り、大地に植物を誕生させ、太陽と月と星、そして季節を創った。それから水中の生き物と鳥を創り、地上の生き物を創り、そして人間を創った。
何日目におこなったかは省略したが、神の国にある石碑とおおむね同じ内容である。
また、「人間は堕落し、この世の汚れになっている」とみるや、正直者の老人ノアの一家を除く人類を滅ぼして世の中を創り変えた、という『ノアの箱舟』の話があるように、グランゼニスがやろうとしたのに似たことを平然とやっている。
このほかにも、真面目なロトの一家を除いて堕落したソドムの町を灼熱で滅ぼしたり、自分ではない神を信じ始めた教徒たちを全員滅ぼそうとしたりしている。
『旧約聖書』は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の三宗教が共有する物語である。
というか、これらの三宗教は「アブラハムの宗教」と総称され、実は兄弟のような関係にあるのだ。
これらの三宗教は同一の存在を創造主として崇めているので、世界中の大多数の人間は、実際にグランゼニスのような神を「創造主」として信仰しているということになる。
余談だが、旧約聖書をベースにしたグノーシス主義における教義では、前述した神は真の創造主に遠く及ばない不完全な神である、
偽りの造物主「ヤルダバオート」が人間を創造したのだとされており、上記の創造主の暴挙を伴う傲慢はそいつのものであるとされている。
ちなみに、ここら辺はDQ7のラスボス【オルゴ・デミーラ】の元ネタとされている。
DQ10オンライン
Ver.7で登場するが、細かいデザインは刷新されている。
詳しくはこちらを参照(ネタバレ注意)。
ウォーク
2020年9月配信の1周年記念クエスト序章にて名前のみ登場。
魔王の手下の会話で、この世界に創造神グランゼニスが存在することが明らかになる。
ウォークのメインストーリーとDQ9の世界に何らかの関連があることを示唆する要素の一つ。
「さばきのこん」の攻撃呪文【バギムーチョ】詠唱時にも現れる。
2025年9月の6周年イベント「英雄を継ぐ者」では残留思念のエルギオスの回想という形で、天使界に放たれたエルギオスの閃光にグランゼニスも飲まれた描写がされている。
また、同イベントのサイドクエスト「神の落とし文」では、グランゼニスの過去について補完するような内容も語られており、同イベントのストーリー4章につながる。
かつて現れた【魔王ラスヴェーザ】はグランゼニスの心臓と人間への憎悪を依り代に作られており、人間を滅ぼさんとする魔王を倒す=神の死=世界の消滅…という、最悪の形で利用されていた。
これまでの導きの英雄たちが「命を懸けて心臓を封じ続ける」という、女神セレシアの非情ともとれる決断を繰り返していた原因であり、これが女神ペルセリアの復讐の結実でもあった。
イベント5章ではペルセリアによって魔王の心臓を含む全身を得たことで現代に【大魔王ラスヴェーザ】が復活。さらに【神魔王ラスヴェーザ】へと姿を変える。
その後はセレシアの狙い通り、奇跡の仔である主人公が依代になることで、主人公が冒険で積み重ねた勇気・力・信じる心がグランゼニスを浄化。心臓を封じていた世界樹の根で胎児のように丸くなって眠り、セレシア曰く長い年月をかけて神の記憶と力を取り戻していくという。
神の落とし文
DQ9で語られている通りに世界を創造したグランゼニスだが、人間に「悪しき者」がいることを懸念し、世界の行く末と共にセレシアに見守らせることとしていたが、「悪しき者」の反逆を想定し、セレシアにとって妹にあたる「ペルセリア」を作り出し、2柱態勢とすることとした。
グランゼニスはある時、地上において自身の意に沿わずに生まれてくる「奇跡の仔」という存在がいることを知る。
その「奇跡の仔」は人間であることもあれば異なる動物である事もあり、神であるグランゼニスらの存在を認知しているかのような行動が取れるのだという。
その時点ではその「奇跡の仔」が直接的に神の脅威となるようなことは無かったのだが、グランゼニスにとっては大きな不安要素だった。
なぜなら「奇跡の仔」はグランゼニスが意図して生み出したものでは無く、それでも生まれてくるのは自身以外の何者かがそう作り出したからに他ならないからだ。
そして彼にとってもっと悪い事に、娘のペルセリアが人間の男を愛してしまった事を彼女とセレシアの2人の会話で知ってしまう。しかもその相手はあろうことか「奇跡の仔」。
それによりもたらされるものを恐れたグランゼニスは、その相手の「奇跡の仔」を滅ぼし去る。ペルセリアも『東の神殿』から名を消し去るなど存在した痕跡ごと全て抹消するという、非情な決断を下す。
ペルセリア自身は手を下される前にセレシアによって人間界へ追放された事で抹消を免れたが、ペルセリアはグランゼニスとセレシアへの復讐を誓って地上へと消えていた。
それでも不安は消えないグランゼニスは、ここに至って人間を滅ぼすことを決意。以降の流れはDQ9でも語られている上述の通り。
しかしグランゼニスは、この天使による試みが失敗する時はいよいよ人間を滅ぼし、そればかりか世界の全てを消し去って最初から創造し直す、ということまでも決意していた……。