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Last-modified: 2007-04-07 (土) 20:34:29

第四十二景 双眸

急所を断ったかに見えた
源之助の小刀は
清玄の衣服に編みこまれた
鎖に阻まれ浅手に留まった

 

「伊良子清玄 どうやら鎖に
 救われたようですな…」
「鎖を着込むは決闘とあらば当然の仕儀
 士道不覚悟にはあたるまい…」
「確かに…」
「しかし見よ 雪千代
 藤木源之助は大小のみにて
 この敵討に臨んでおる

 

 当道者の刃ごときをおそれるようでは
 当家武芸師範役には務まらぬとの腹積もりじゃ」

 
 

「源之助…」

 
 

まず涼之介の顔が浮かび
口中にある味がよみがえった
忘れ得ぬ 血の味だ

 

さらに驚くべき事実に気付く

 

伊良子清玄は今 源之助を見ている
"感じる"のではなく 見ている
鮮やかに 見ている

 

双眸を切り裂かれた清玄が
いかなる方法を用いているかは
謎である

 
 

虎眼流 簾牙!
"簾牙(すだれきば)"は
牛股との特訓にて会得した
下段封じの秘太刀である