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Last-modified: 2011-02-24 (木) 00:22:38

第八十二景 白刃 はくじん

ドクッ ドクッ
カシュ スゥ
ズズ カッ
ドクン ドクン
ズズズ
ドクッ

 

ぎゅう
桜吹雪の中で心と心をつなぎ合った源之助が 乙女の胸の内に棲む何者かの存在を知らぬ筈はない
ドクン
(斬ってくださいまし)
三重の深部に潜みし魔を断ち 永遠の契りを交わすために
藤木源之助は今 運命の妖刀を抜いた

 

ザム スゥ
ズズ
ザクッ
(ああ あれこそは…)

 

「怪物め」

 

みりり
その場に居合わせた全ての者が 清玄の異様な姿に吸い寄せられるが如く
駿河大納言忠長さえも…
この誘引力こそが 清玄の魔技を必殺たらしめているのだ

 

(逆光…)
きりり
ザウ
(廻り込んで攻むるか…)
ズオ ザウ
ドクン ドクン ドクン
固唾を飲んで真剣試合を見守る武士(もののふ)
仇討試合の時とは比べものにならぬ静寂に 盲竜の感覚は研ぎ澄まされた
ズズ