カスティエルとクラウリーをガチトーンで戦わせたい。そんな芝居がかったことを思いついた。
冒頭だけ全AIまかせ、あとはがっつりプロンプト書いたので矛盾がほんのちょっと…まあこの二人を戦わせるならこうなるかなという妄想と拡大解釈とフィクションと中二病でできているページ。
S13のパラレルワールドが舞台。
境界の荒野:天なる正義と地獄の主
天界と地獄が永遠に続く泥沼の戦争を繰り広げているパラレルワールド。そこは空すらも煤け、大地は塩の結晶が山岳のようにそびえ立つ、生命の拒絶された「終末の地」だ。
本来の歴史では、この世界の天使たちは冷酷な兵器であり、悪魔たちは無残に駆逐されていた。しかし、本来の次元から「異物」が紛れ込んだことで、力の均衡は歪み始める。
その荒野の最果てに、かつて「神の書記」の石版が隠されていたとされる、崩壊した神殿があった。白銀の塩の砂漠を、場違いなトレンチコートの男が一人、重い足取りで進んでいく。カスティエルだ。
彼はこの世界の「もう一人の自分」が犯した虐殺の跡を辿り、ある強力な遺物――「次元の鍵」を回収しようとしていた。これがあれば、サムとディーンを救うための扉が開ける。
だが、神殿の入り口には、不敵な笑みを浮かべて岩場に腰掛ける男がいた。
「やあ、遅かったじゃないか、羽虫の親玉。道に迷って地獄にでも落ちたかと思ったよ」
クラウリーだ。彼はこの世界の「魔王」が不在であることをいいことに、地獄の残党を掌握し、この次元のエネルギーを根こそぎ奪おうと画策していた。
「クラウリー……。なぜここにいる。君がいた地獄の監獄は、ここから遠く離れているはずだ」
カスティエルの声には、隠しきれない疲労と警戒が混じる。
「監獄? お前、俺様を誰だと思ってるんだ。あの退屈な檻なら、この世界の住人と『交渉』してさっさと引き払ったよ。それより、その奥にある石版……。あれはこちらのものだ。元の世界に帰るためのチップにしてもいいし、この世界の天使を全滅させる毒に作り替えてもいい」
カスティエルは天使の刃を袖から滑らせた。青白い光が、塩の結晶に反射して鋭く輝く。
「それは渡せない。その遺物は、この世界の均衡を完全に破壊するものだ。私は……私自身の過ちを繰り返すわけにはいかないんだ」
クラウリーはゆっくりと立ち上がり、指を鳴らした。彼の背後の影から、真っ赤な瞳を持つ不気味な煙が立ち昇り、地獄の猟犬の唸り声が響く。
「交渉決裂だな。いいか、カスティエル。俺様は地獄の王だ。お前のような融通の利かない羽虫に、俺様のビジネスを邪魔されるのは、もうこりごりなんだよ」
「私には使命がある。君の野望のために、この世界も、私の友人も犠牲にはさせない」
空を覆う暗雲から雷鳴が轟き、荒野にカスティエルの背後から巨大な「翼の影」が投影される。対するクラウリーの手のひらには、呪術の赤い光が渦を巻いた。
塩の山々が震え、異次元の荒野で「天」と「地」の頂上決戦が幕を開ける。
「いつでもいいぞ……」
不敵に笑むクラウリーの瞳が、ゆるやかに漆黒から忌まわしきレッドアイへと変色していく。いつもの飄々とした素振りを完全に消し去り、本気で屠るという意思をこれ以上なく眼前の敵へと向けた。彼の手の中で渦巻く呪術の波動は、主の昂ぶりに呼応し、苛虐と残虐に彩られた蝋燭の火のように禍々しく揺らめいている。
対するカスティエルもまた、その瞳を常の沈着な青から、さらに輝きを増したスカイブルーへと変化させた。それは全ての天使に共通する「恩寵の輝き」の一端に過ぎないが、今の彼の瞳に宿っているのは、統率され、純化された殺意そのものである。
「不愉快だ」
カスティエルの低く冷徹な声が響く。彼の手元に握られた天使の刃が、神聖な力を受けて見る間に伸長し、十字架の意匠を宿した鋭利な長剣へと姿を変えた。両者の間にはまだ50mほどの距離がある。物理的には到底届かぬ間合いだが、カスティエルはその位置から容赦のない一閃を繰り出した。それは肉体を切り裂くためのものではなく、長きにわたる共闘の中で築かれた、両者の間にある何らかの「絆」を断ち切るための宣戦布告であった。
「……たまには気が合うな」
クラウリーは冷笑を浮かべ、優雅なスナップハンズで虚空を掴んだ。出現したのは、石突きから先端に至るまで、この世の理では説明のつかない未知の素材で形作られた漆黒の槍だ。光をことごとく吸い込むかのような不気味な穂先には、かつての大天使ミカエルの槍を模した魔のルーン文字が、呪いのごとく刻まれている。
カスティエルが切り裂いた空間を、クラウリーが黒槍で横薙ぎに払う。刹那、光と闇のクロスロードにおいて、塩の砂漠の大気が悲鳴を上げるように激しく震えた。
周囲の何者も立ち入ることを許さない、絶大な霊威に満ちた一騎打ちのフィールドが、白銀の荒野に静かに、そして強固に形成されていく。
ドン。音は遅れて届き、実体は疾く奔る。
指先は軽やかに、それでいて力強く荒野の砂を蹴散らした。50mもの絶望的な間合いを一気通貫に駆け抜けたのは、カスティエルが先だった。
それはまるで一本の青白い雷光。翻るベージュのトレンチコートが光に混ざり、聖なる意思を宿した微細な色彩となって、地獄の王の喉を掻き切らんと肉迫する。
「汚れた染みになれ」
吐き捨てられた言葉はどこまでも冷たい。
カスティエルの纏う大気は一瞬で凍てつき、冷厳なる神の一撃が剣先にまで込められた。青白い恩寵の渦を巻いた刃が、クラウリーの喉を深々と切り裂いた――かに見えた。
だが、その青き光を真正面から受け止め、あべこべに覆い潰さんとする魔力の胎動が、辺り一帯を支配していく。もしここに人間がいれば、それだけで精神が崩壊するほどの、純然たる悪の波動だ。天使たるカスティエルは物理的な無傷こそ保っていたが、対極に位置する、全てを呑み込むような闇の大口に、わずかばかり息を詰まらせた。
「”染み作り”はお前ら天使のほうが得意分野だったはずだろ?」
かすかな、それでいて地獄の底まで響き渡るようなフィンガースナップの音が鳴り響く。
クラウリーの周囲にまとわりついていた濃密な闇が凝縮され、主の操る槍の動きに合わせて四つの禍々しい黒球へと変貌した。形成された半円形の黒い障壁は、カスティエルの突貫をほぼ完全に弾き返すだけでなく、その衝撃を倍加させて突き放す。
「三下の兵士が、この俺様に触れようなどとおこがましい!」
次の瞬間、黒い障壁は一瞬で元の浮遊する黒球群へと戻った。即座に態勢を整えたクラウリーが、カスティエルに向けて上段から必殺の衝天突きを繰り出す。呼応した四つの魔力黒球は、空中で巨大な悪魔の牙を模した造形へと姿を変え、逃げ場を失った「羽虫」を大地へと叩き落とさんと追撃を開始した。
立ち込める塩の砂煙によって、両者の姿は外側からはほとんど視認できない。しかし、その混沌とした煙の奥底では、絶え間なく紅と蒼の閃光が激しく交錯し続けていた。
クラウリーの一撃を間一髪で避けて飛び退ったカスティエルのトレンチコートに、鋭い切れ目が走る。
指呼の距離。クラウリーの黒球に呼応するように、カスティエルの周囲に無数の「羽根」が展開された。切っ先までの長さは大振りなアーミーナイフほどもあり、その一枚一枚が銀と青に照り映え、悪辣なるものを狩り尽くさんと主の指示を待っている。カスティエルが構え直した長剣は、チャキ、と澄み渡る金属音を響かせて主に答えた。
一方、ヴン、というノイズのような厭な音を立てて元の形に戻ったクラウリーの黒球も、地獄の主の手足となる時をじっと待つ。ぬばたまのような漆黒の槍は、ずるり、と腐食した血のような闇を吐き出し、クラウリーの殺意に共鳴した。
「こんな風に腹を割って話したのは、一体いつ以来だ?」
口ぶりだけなら、まるで数年来の友人に旧交を温めるかのようなクラウリーの問いかけ。
「黙れ」
だが、カスティエルの応答は、そんな時代もあったという事実さえ過去として冷酷に切り捨てるものだった。
「おっと、そういうツレないところも嫌いじゃなかったんだがな……!」
クラウリーの影から、猛然と三頭の影が飛び出した。鋭い牙と爪を血の色に濡らした地獄の猟犬たちだ。その姿は不可視であり、見えないからこそ、死の恐怖は増幅される。地響きのような唸り声と吠え声が荒野を支配し、カスティエルの四方から骨まで噛み砕こうと襲い掛かる。カスティエルは剣を振るが、変幻自在な不可視の爪に動きを止められてしまう。
剣を握る指先が、トレンチコートの胸元が、そして背中が、鋭利な爪で次々と掻き切られた。カスティエルの身体から、白い恩寵の輝きを放つ血があふれ出す。一撃ごとに後退を余儀なくされ、守勢に回ったその瞬間――視界が真っ白に染まるほどの凄まじい光が、辺りの全てをかき消した。
「お前に私の何が分かる!」
叫びは、まるで竜巻のように荒野を震撼させた。
カスティエルの周囲を旋回していた銀の羽根が、熱したナイフでバターを切り裂くように、不可視の猟犬たちを一掃していたのだ。辺りには、猟犬たちの末路である黒い血が雨のようにほとばしる。
「私はわりと、”ツレる”ほうだ」
ぶん、と黒い返り血で汚れた剣を鋭く振り払う。
その双眸から冷徹さが消え、代わりにもう許しはしないという苛烈な「怒り」の感情が降りてくる。カスティエルの背後で、目に見えぬ巨大な翼が静かに、そして激しく羽ばたいた。
間合いを保ったままでは、クラウリーの長槍に分がある。そう判断したカスティエルは、迷いなく踏み込んだ。至近距離での袈裟斬りから、流れるような横薙ぎへ。その剣技は、磨き上げられた精巧な機構のように正確無比であり、繰り出される一撃一撃が最短距離でクラウリーの息の根を止めようと肉迫する。
激突のたびに、空気というよりは空間そのものが震え、クラウリーの毛髪に電流が走るかのような錯覚を引き起こした。逃れようのない剣劇の風圧に圧倒され、わずかに後退したクラウリーの足首が、脆い砂の地を噛んだ。
その一瞬の隙を見逃すような「優しき天使」は、今のこの場には存在しない。
「塵になれ」
先ほどのクラウリーの槍とは対照的な、下から上への豪壮な一閃。地べたへと堕とされながらも、今なお天の理に縛られ続けるカスティエルの複雑な情念が、その切っ先に宿る。全体重を乗せた渾身の叩き上げは、まるで天界への強制的な導きのように、クラウリーの身体を上空へと跳ね飛ばした。
クラウリーの高級なコートの前面が無残に切り裂かれ、ドロリとした赤黒い悪魔の血が荒野に撒き散らされる。
やや離れた地点に着地し、片膝をつくクラウリー。血に塗れたコートは普段よりも重々しく、湿った光を放っているが、彼から立ち昇る魔力の胎動が衰えることはない。
「……安心しろ。クリーニング代は請求しないでおいてやる」
振り払うのは、肉体の痛み。持ち上げるのは、殺意よりもなお暗く沈んだ絶望。そして噛み締めるのは、王という名の孤高。
ヴン、という特徴的なノイズと共に、地を駆ける。瞬間移動にも等しいクラウリーの疾駆音は、王の凱旋を歓待する地獄の亡者たちの悲鳴へと塗り替えられ、周囲の空気を弄した。
「連絡先など、死んでも知りたくはない」
クラウリーは漆黒の槍をあえて逆手に持ち替え、石突きをくるりと回転させながらの凄まじい叩き上げ、そして間髪入れぬ撃ち落としを見舞う。インパクトの瞬間、浮遊していた黒球が金床のような巨躯の塊へと変貌し、追撃として重圧を加えた。
諸共にならんとするその落下突きは、地獄への扉を無理やりこじ開けるかのような威力で、カスティエルを塩の地の底へと沈めんとした。
ギチィィ……。
鍔迫り合いの最中に響いたその不快な音は、金属が軋む音ではない。カスティエルの「器」そのものに、耐えきれぬ負荷がかかり罅が入っていく音だ。だが、カスティエル本人の表情に一点の曇りもない。彼はそのベージュのトレンチコートを、あたかも天界の重装鎧であるかのように扱い、防ぎきれなかった槍の衝撃を肉体そのもので受け止める。
「……頑丈な器だな」
力点の不安定さに合わせ体を鋭くひねり、間合いを取り直したクラウリーが忌々しそうに吐き捨てた。
天より墜ちたカスティエルの翼は、もはや本来の飛翔能力を失っている。地を駆ける速度においても、悪魔の機動力を持つクラウリーには一歩譲るだろう。だが、彼には代えがたい「頑健さ」があった。ジミー・ノバックという至高の器は、天使が元来持つ耐久性を爆発的に跳ね上げ、カスティエルの恩寵を支える強固な城塞と化している。痛覚など、とうの昔に空へと置いてきたのだ。
呼応した銀青色の羽根が、狂える竜巻のように舞い踊り、迫りくる黒球を次々と屠っていく。
「礼を言おう。よく言われることだ」
纏わりつく闇と槍の穂先を、鬱陶しい羽虫でも払うかのように剣で退ける。羽根に迎撃され雲散霧消した黒球たちは、再びクラウリーの背後へと収束し、槍と剣は互いの間合いを測るように構え直された。二種類のコートが荒野の風塵になびき、散った黒い霧と聖なる光輝が、灰色の地を静かに漂っていく。
「もうお前には、守るべき天界も、従うべき玉座も何もありはしないだろうが」
先に動いたのは、やはり機動力に勝るクラウリーだった。二歩、三歩と優雅に後退しながら、鋭いスナップフィンガーを響かせる。
残された黒球がその意思を汲み取り、クラウリーの纏うコートに負けぬ高級な質感を帯びて変貌を始めた。それは二つの尾を持つ禍々しい黒翼のようでもあり、あるいは真ん中から裂けた無惨な魔王のマントのようでもある。クラウリーの背後、やや後方に浮遊して定着したその「翼」の中央には、不気味な血の色の紋様が浮かび上がった。
「俺様を見ろ。俺様はこの手で、地獄のすべてを、その力を手に入れたんだ」
黒翼を模したマントは、まるでクラウリーの手足の延長であるかのように、優雅に、そして傲慢にはためきながら空中へとせり上がっていく。
「……ッ」
カスティエルの喉から、短い呻きが漏れた。クラウリーの背後に浮かぶ黒翼は、瞬時に二対の巨大な漆黒の拳へと形を変え、二十メートルの間合いを光に近い速度で埋めた。凄まじい風圧が吹き荒れ、直視することさえ叶わぬ疾さ。音すら置き去りにする、苛烈極まる乱打の嵐だ。
「速い……」
それは単一の対象を狙い定めた攻撃ではない。カスティエルが立つ地殻ごと、その存在をまとめて粉砕せんとする、百とも千とも知れぬ「超速」の制裁。いかに鋼の如き頑強さを誇るカスティエルといえど、たまらず腕を十字に組み、防戦に徹するほか術がない。暴力的なまでの威力と圧力に押され、防御姿勢のままジリ、ジリと後退を余儀なくされる。
爆砕する塩の破片と衝撃波の隙間から、どうにか反撃の一手を見出そうとしたカスティエルの視界に、不吉な黒い影がよぎった。
「冥途の土産だよ、カスティエル」
乱打を叩き込みながら、音もなく間合いを潰したクラウリー。彼は槍を低く構え、体勢の崩れたカスティエルの脳天目がけ、無慈悲な一撃を振り下ろした。
着弾と同時に、地の底から地獄の怨嗟が這い上がる。古代の暗黒言葉が呪詛となって具現化し、上下から突き出した魔獣の牙のような追撃の杭が、堕ちた天使を逃さず挟み込んだ。
ドォォォォォン――。
天を衝くほどの爆轟が、白銀の荒野の果てまでいつまでも木霊し続けた。
ギチィィ……と鳴り響く大気の軋み。切れ目のない爆轟のあと、いつまでも砂煙は止まない。それでも風がひとつ、またひとつと土煙のベールを剥ぎ取れば、その奥に紅と蒼の光が弱々しくも、しかし確かに揺らめいているのが視認できた。
カスティエルのトレンチコートは縦にざっくりと裂け、剥き出しになった肩の傷口からは、生々しく白い恩寵の血が水銀のように滴り落ちている。器の全壊こそ免れたものの、時折漏れる咳には赤い血が混じった。並の人間であれば「消滅」という言葉すら生温いほどの打撃を受けながら、それでもカスティエルは、その青い瞳に光を灯したまま生きていた。
「……反則だろ、それは!」
感情を隠しきれず、苛立ちを剥き出しにしてクラウリーが叫ぶ。
創造を司る神の兵――天使だけに与えられた、「奇跡」という名の特権。柔らかな治癒の光がカスティエルの全身を包み込んでいた。秒速の勢いで傷口は塞がり、あとには血痕の染み付いた器だけが残る。カスティエルは口元の血を拭い、肩で荒い息をついた。傷が癒えようとも、流血と共に失った体力や、乱打をまともに浴びたことによる脳震盪までは完全には拭い去れない。重い足取りでわずかに足を引きずりながらも、彼は「ざっ」と砂を蹴り、クラウリーとの距離を一歩詰めた。
「……初めに、神は天と地を創造された」
朗々と、それでいて地響きのように重いカスティエルの特徴的な声が、天から降り注ぐかのように響き渡る。
ゴオン、と鐘の音にも似た振動が周囲の空気を変革していく。灰の地の片隅、天使と悪魔が対峙するこの区画だけ、大気の密度が劇的に変化した。先ほどまで暗黒の胎動に呼応して喚いていた亡者たちが、一斉に息を潜める。クラウリーもまた、本能的な危機感に眉根を寄せ、槍を杖代わりにして足元の砂を強く踏みしめた。
「……荒れ……野の、果てに……」
天の彼方から轟音が轟く。物理的な実体を伴わない圧力でありながら、この区域に存在するあらゆる生物の時間が止まったかのように、身動きを封じられる。それは「圧倒的な何か」を讃える儀式のようでもあった。大地も、大気も、吹き荒れる風ですらも、その偉大なる力に首を垂れたかのようだ。
「Gloria, in excelsis Deo(天のいと高きところの神に栄光あれ)」
天使は、最後の一節を謳い遂げた。
それが神聖魔法の詠唱であるとクラウリーが気づいた時には、すでに手遅れだった。カスティエルが聖句を綴り終えた瞬間、天空の蓋が割れたかのように、白と青の輝きを纏った無数の光線が降り注いだ。
それは旧約聖書に記された「火の刑罰」を彷彿とさせたが、鼻を突く硫黄の臭いは伴わない。着弾するたびに、光で形成された白く美しい羽根が粉雪のように舞い散る。降り注ぐ光線の数はもはや計測不能。それは逃げ場を奪う光の牢獄となり、クラウリーを、そしてこの歪んだ世界そのものを浄化せんと荒野を焼き尽くしていった。
視覚を奪う苛烈な光の奔流の中で、クラウリーにできたことは、ただ槍の柄から決して手を離さないことだけだった。人間であれば網膜を一瞬で焼き潰されているであろう神の制裁。それは悪魔とて例外ではなく、容赦なく肉体を貫いていく光線の欠片は、漆黒のマントによる防壁を以てしても防ぎきることは叶わない。
「させ、るかァァッ!」
光の雨に打たれながらも、肺の奥から絞り出した息は溶岩のように熱い。槍一本を支えに吹き飛ばされかけていた体を低く沈め、足先で岩の感触を確かめると、地獄の業火を込めてそれを思い切り『蹴った』。
ヴン、という空気を引き裂く咆哮と共に、クラウリーの体が奔る。けたたましく降り注ぐ光の束のわずかな隙間を、弾丸のような鋭角の軌道で縫い上げ、彼はただ一点を目指す。
降り注ぐ光のグラウンドゼロ。自ら引き起こした奇跡の輝きに、自分自身が一番驚いているかのような――あの、どこまでも「すっとぼけた」天使の元へ。
「何度言えばわかるんだ、お前という奴は……!」
一瞬の無防備を晒したカスティエルの眼前に、泥臭く、しかし執念深くたどり着いたクラウリー。掲げた槍は誰よりも不遜に、神の威光に怯える亡者たちの士気を鼓舞するように高く突き立てられた。何百万枚ものガラスが砕け散るような光線の轟音に抗い、黒いマントを大きく広げて空を奪い取る。
「お前は、何も持たないただの『羽虫』なんだよ、カスティエル!!」
そこにあるのは、二対の死。クラウリーが手にする漆黒の槍と、段を違えてマントから形成された巨大なランス。クラウリーは自らの体を「く」の字に折り曲げ、マントの槍を先頭に据えると、急降下しながらのドリルスピンを敢行した。
主の意図を察した地獄の亡者たちが、ここぞとばかりに虚空へ地獄の門を形成する。悪霊たちの放つ赤黒い暗黒魔術が、地の底から噴火のごとく無数に立ち上り、降り注ぐ神の光線と衝突。天と地、聖と魔の力が真っ向から拮抗し、空間そのものが軋みを上げた。
「……Cheerio(地獄に落ちろ)」
羽虫を叩き落とし、血祭りに上げんとする漆黒の呪い(ブラックカース)。
爆炎と光が収束したあと、荒野には静寂が訪れていた。
カスティエルのトレンチコートはもはや襤褸(ぼろ)となり、クラウリーの槍の穂先がその喉元を数ミリの差で捉えている。一方、カスティエルの天使の剣もまた、クラウリーの胸を貫く寸前の位置で静止していた。
「……ふん、相打ちか。実に見苦しいな、お前も俺様も」
クラウリーが肩で息をしながら、忌々しそうに口の端を歪める。カスティエルはスカイブルーの瞳を細め、静かに答えた。
「……同感だ。だが、この世界で君と死にゆくのも、悪くない結末かもしれない」
二人の視線が交錯する。そこにあるのは、敵意でも友情でもない、数多の次元を共に渡り歩いてきた者たちにしか理解し得ない、歪な「信頼」の残滓だった。