電子戦争

かつて、化石資源枯渇に先立って旧世紀の世界を襲ったのは、Y2Kとそれに伴うIP枯渇問題であった。それから暫くして、限られたIPと違法プロキシサーバ基地を巡り、暗黒メガコーポ群主導による論理物理両面での電子戦争が勃発した。彼女が飛翔している電子領域はいわば、旧世紀の残骸なのだ。
――「キョート・ヘル・オン・アース」序「エンタングルメント」#5より

「しかし、ネットワークIPアドレスは新世紀における新たな植民戦争の様相を……」
「所謂『電子戦争』の結末としてもたらされた、EMP障害……汚染……各国は関与を否定しておりますが、結果として今のこの冬の時代は厳然たる事実であります。私もまた、あの日あのオーロラを……」
――「ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ」#6より

概要

21世紀初頭に起こったとされる戦争。忍殺世界のマッポー的な世相を生み出した原因となった出来事である。
ニンジャスレイヤープラスのディスカバリー・オブ・ミスティック・ニンジャ・アーツ（7）c.3000BC-4643AD：ニンジャ簡易年表によると、2004年から本格化したとのこと。

電子戦争により地上には重金属酸性雨が降り注ぐようになり、海洋は汚染され、磁気嵐と殺人マグロによって日本は物理的・電子的鎖国状態となった。さらに、電子戦争末期にはEMP（電磁パルス）障害とオーロラが観測された。
このため、電子戦争末期にはバンザイ・ニュークを使用した高高度核爆発による電子的攻撃がなされたという考察もある。あるいは、磁気嵐やオーロラの原因はY2K後に起こったとされる小規模ポールシフトが原因ではないかという考察もある。
海洋の汚染やEMP障害について、各国は関与を否定している。

Y2KによるUNIX技術者の多大な犠牲と合わせて旧世紀のインフラやテクノロジーは破壊され、現在では電子戦争により失伝したテクノロジーの残骸がオーパーツとして登場する。
広く使われているネットワーク技術自体にもブラックボックス化した部分が存在し、誰もその存在理由と目的を知らないといったことがあるようだ。

また、電子戦争を原因として宇宙開発は断念された。タケル・フクトシンの回想によると、衛星軌道の汚染を理由に宇宙への挑戦そのものが禁忌とされたようだ。
「宇宙開発時代」という文言もあり、宇宙植民が絵空事と成り果てた現代においては、過去の人間が想像した輝かしい未来の一片として扱われている。ただし、宇宙開発に伴い開発された素材やテクノロジーは健在で、一部企業の製品は宇宙開発用の素材であることをウリにしている。

『ニンジャスレイヤー』の物語から十数年前は電子戦争期間中であった。
ミニットマンなど、電子戦争帰りのニンジャや電子戦争の退役軍人も登場する。彼等の存在から、電子戦争ではすでにニンジャが戦線に投入されていたことが伺える。
20世紀の大戦期にも、軍将校に扮したニンジャが紛れ込んでいることが確認されているが、彼等は「戦力として従軍している」というよりは、「影の支配者として忍び込んでいる」存在であろう。ミニットマンのようにニンジャが使役される立場となったのがいつ頃かは現状でははっきりしない。

電子戦争が起こった時にはすでに生体LAN端子を兵士に設け、武器とLAN直結することでの論理トリガによる制御や、四肢のサイバネ化などがなされていたようだ。
ニンジャスレイヤープラスのインタビュー・ウィズ・ニンジャ PLUS版（24）によると、それらの技術は当時はまだ戦争の最前線でしか使われておらず、市井に広がったのは戦後であるとのこと。

原作者によれば、いずれは真実が語られるらしい。備えよう。

元ネタ・考察

Y2Kとは、日本では「2000年問題」とも呼ばれる現実に起こった問題である。
これは、コンピュータの年号管理が下二桁を利用したものだった場合に2000年を迎えると00年と認識され、1900年と誤認されることによりデータベースの日付順の並びがおかしくなったり、誤作動を起こす可能性があるとされた問題であり、我々の世界では、多くの企業が事前にプログラムの改善を行ったり、交通や電力関係などではトラブルが起こらないよう念のため慎重な運用がなされたりすることで事なきを得ている。
忍殺世界のコンピュータは構造が大きく違うのか、ソフトウェアの負荷・エラー・オーバーフローで物理的に火を噴いたり爆発したりするので、より致命的な問題であろう。

IP枯渇問題も同様に我々の世界で現実に起こっている。詳しくはWikipediaを参照されたし。どうやら忍殺世界ではIPv4からIPv6への移行に失敗したようだ。
それもそのはず、移行など出来るわけがなかった。忍殺世界においてはIPv4アドレスもインターネットも近代人類が発明した紛い物であり、本物には限りはなかったが、紛い物は意図的に限りがあるように作られていたのである。

W「IPアドレスは桁数が少なく、有限で、割り当てがカツカツです。それが資源めいて、ニンジャスレイヤー世界では奪い合いの戦争に至りました」
――ザ・ヴァーティゴ＆ジェリー・タグチ・ウィルキンソンの質疑応答より

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