ブディズムとは、我々のよく知る仏教の英語圏での一般的な言い方。
現実の日本では、必ずしも敬虔な仏教徒が多数派というわけではないが、ニンジャスレイヤーの世界では日本人の多くは熱心な仏教徒であるようだ。
とはいえマッポーめいた社会の様相に加え、就寝時に方角を聞かれたガンドーの発言などをみるに、仏教思想は根強いが背徳行為を禁忌とする感覚は失われている模様。
日本は伝来した仏教が土着信仰である神道と混ざり合い、意外と複雑な宗教観をもった国である。
本作ではこうした日本人の宗教観を、欧米諸国の信仰心に近い感覚でアレンジした概念として「ブディズム」の名称が用いられているものと思われる。
仏教系ミュージシャンや反仏教を掲げるブラックメタルバンドなど、ブディズム思想はサブカルチャーにも浸透しており、ちょうど欧米におけるキリスト教めいた地位に仏教があるようだ。
作中でも地域や分院ごとに教えの変容が激しく、特にネオサイタマにおいては、「ブディストでも聖職者拳銃ならば自衛のため積極的に武装すべき」「聖職者でも同性同士であれば禁欲しなくてもセーフ」「ウサギは鳥なので食べてよい」というような教えが罷り通っている有様である。
本編中では神仏混淆の激しい場面が度々登場するが、我々日本人でも難しい区別を、ましてや外国人執筆者が把握するのは困難であろう。
なので本職の方がおられたら、広い心で見て頂きたい。
あ行
アアアダブ
ブラックメタリストの発するコトダマで、ブッダ(Buddha)の逆読み。リンク先参照。
アノヨ
あの世。オヒガン参照な。
関連:ニンジャアノヨ
アンタイブディズム
「反仏教主義」。欧米における反キリスト主義に実際近いものである。
思想の中心となっているのはカナガワに代表されるブラックメタルバンド。地の文ではブラックメタリストと呼ばれることが多い。
彼らや彼らのフォロワーの中にはジンジャ・カテドラルへの放火やカンヌシ殺害などの過激な行動に走る者も。
どこから持ち出したのかフランベルジュだのツヴァイハンダーだのフレイルだのといった妙に時代がかった凶器で武装していることが多い。
破戒したボンズがアンタイブディズムに走った例もある。
彼らはピュアな反ブッダ精神を持っているため、ブッダが逮捕されたと聞いて徒党を組んでブッダを殺しに行く、ニンジャに先導されて街及びブッダ像を破壊しに行くなど多くの常軌を逸した行為を行っており、本編では破壊行為よりアーティスト行為を行っているという描写のほうが少ない状態である。
そして、野外レースでのトラブル停車中、バイオ生物やスカベンジャーズと並んで警戒対象になっている事から、郊外にも出没する模様。
また、ブラックメタリストにもニンジャがいることが判明したが、ピュアな反ブッダ精神を持ったままのニンジャとピュアな反ブッダ精神を変質させたニンジャとが同時連載エピソードそれぞれに登場したことがある。
エンチャント・オフダ
御札。聖人達の名前がオスモウ・フォントで記されており、反ブッダの悪魔を寄せ付けない神聖な力を持つとされる。
オーボン
お盆(盂蘭盆)。正月、クリスマスと並び、マッポーの日本になお残る数少ない非日常の祭典。
神聖なオーボンの夜には現世とオヒガンを繋ぐゲートが開き、祖先のスピリットが地上を歩むと言われている。
オーボンの時期に合わせて、オーボン・フェスティバルなる盆祭りめいたイベントを催す地域もあるようだ。
オールド・オーボン
「旧盆」かと思いきや、1月にある祭日。1年で最初の満月の夜、とされている。
旧暦1月15日は、日本で「小正月」と呼ばれる(現代日本では新暦1月15日に行われることが多い)。正月飾りなどを焼く「左義長」「とんど焼き」は、新年に迎えた歳神を送る行事とされる。中国では「元宵節」「上元」といい、さまざまな提灯を夜通し灯す華やかな祭りが行われる。
お盆と似た要素があると言えなくもなく、実際中国の怪異小説『剪灯新話』を翻案した日本の『牡丹灯籠』は、元宵節の出来事を盂蘭盆会に移し替えている。
もっとも、新暦1月最初の満月の日は旧暦換算だと12月15日になる可能性が高いが……アッハイ、なんのもんだいもありません。
オジゾウ
集落の用水路沿いの道に並んでいる姿が描かれている。
我々の世界の「お地蔵さん」と同じようである。
もともと地蔵菩薩(じぞうぼさつ)という菩薩であるが、われわれの世界の日本の民間信仰では「道祖神」と同一視されたり、「子供の守り神」として信仰を集めていたりする。
オツヤ
お通夜。オツヤ・リチュアルとも。
我々の世界と同じく、静まり返った状態の比喩に使われるが、一方で「オツヤめいた混乱」「オツヤめいた警報」という言葉も用いられる。
オヒガン
お彼岸。サンズ・リバーの先にある死後の世界のこと。
物語世界の根幹にも関わる。リンク先を参照な。
オブツダン
仏壇。「墓(墓標)」としての意味合いも持つコトダマ。
カトゥーンの悪役めいて「ここが貴様のオブツダンだ!」と使われる事が多い。
「金と黒」の組み合わせは、オブツダンめいた色彩であるとされる。
双子ユーレイゴスのオブツダン/センコウについては当該項目を参照されたし。
か行
カンオケ
ブディズム特有のものではないが、棺桶。特に珍妙な描写は見られない。
現実の日本語と同様に運用されている言葉であり、「窓がない(小さい)、閉鎖された(狭い)空間」を指す比喩にも用いられる。
関連:カンオケ・ホテル
カンヌシ
神主。ジンジャ・カテドラルなどを管理する聖職者。エクソシストめいた事もするらしい。
さ行
逆さトリイ
アンタイブディストによって用いられるシンボルの一つ。「不吉な逆さトリイ」という形容も。
ブディストにとって聖なるものであるトリイをひっくり返し、アンタイを示しているのであろう。
われわれの世界の反キリスト主義が、しばしば「逆さ十字」をシンボルにするのと対応する。
作中のブラックメタリストにも「逆さ十字」を用いる者がいる。
- なお、「逆さ十字」は「ペトロ十字」ともいい、イエスをはばかって逆さまに(頭を下に)磔にされたと伝えられる使徒ペトロ(初代ローマ教皇)のシンボルとして、当のキリスト教会によっても用いられるものである)
サンズ・リバー
三途の川(さんずのかわ)。死者が死後渡る川とされており、「サンズ・リバーを渡る=あいつはもう死んだ」という意のイキな使い方も存在する。
三途の川と言えば船で渡るイメージが強いが、これは後世に付与されたものであり、平安時代ごろは橋で渡るものとされていた。
本作においてはニンジャ大戦時点で「サンズ・リバーには橋が架かっている」との認識に基いた発言が確認されており、珍しく正確な歴史考証がなされている。
川岸では幼くして死んだものたちが石を積んでは無慈悲なるデーモンにそれを崩されており、それは現世への生まれ変わりの試練だという伝説がある。
また、カロン・ニンジャが川岸で死者を待ち受けており、渡り賃としてジゴクの通貨でコイン六枚を要求するという伝承も作中世界で広く知られている。
古代文明においては、死者の魂達は総数約42億の小さな舟に乗り、サンズ・リバーと七つのトリイ門を超えてオヒガンへ往くと考えられていた。
長らく伝説の存在だと思われていたが、オヒガンの領域に実際に存在していた。
ジゴク
地獄。基本的には「ジゴク」とカナ表記されるが、「地獄お」などのようにファッションや看板などで漢字表記されることもある。
「ジゴクめいて」という形容でも使われる。
死に装束
故人に施される衣装(wikipedia「死に装束」)。忍殺世界のブディズムにおいては大変「神聖で厳粛」なものであるようだ。
これは日本の伝統的な死装束であり、ニルヴァーナにおいてホトケと一体化するためにカンオケに入る死体だけにしか許されていない、神聖で厳粛な装いである。古き善き時代には、子供がちょっとでもこのような悪戯をしようものなら、祖先を侮辱するということで親に殴られたものだ。(「ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ」#1)
上記エピソードでは、ユーレイゴスの格好の若者たちが「日本の伝統的な死装束」を着ているのであるが、「これ」とは「頭にフンドシの紐を巻きつけ、顔を真っ白い布で覆う」というのものである。アイエエエ!フンドシナンデ!
もっともこれは故意に冒涜的な振る舞いであるから、実際の伝統的な死装束では別であるものをフンドシで代用しているのかもしれない。きちんとした死装束の描写も見てみたい。
そこに立っていたのは、死に装束に身をつつんだドラゴン・ゲンドーソーではないか!……(中略)……額には三角の布が当てられている。死を覚悟した者の出で立ちであった。(「メナス・オブ・ダークニンジャ」)
ちなみに、特徴的な三角の布は、天冠、宝冠、額烏帽子などと呼ばれるものである。
社葬
企業のために戦い、功績を上げて死んだサラリマンは、企業をあげたセレモニーをもって葬られ、企業に備えられた墳墓に安らう事ができる。
墳墓の様式や規模は企業によって様々である。
ジューズー・タリスマン
おそらく数珠のこと。本編中にて描写されることは余り無いが、高位のボンズがこれを手にしている場面が稀に見られる。
シュライン
"shrine"。
神社や仏寺などの神聖な場所を意味する英語だが、作中では特に日本の伝統的な宗教建築の様式、外観を表して使われていると思われる。
聖徳太子
我々も良く知る歴史的偉人。仏教伝来に関与している点からか、本作ではブディズムにおける聖人とされている。
平安時代に邪悪なアンデッドを滅ぼしたとされる。詳細はリンク先を参照。
ジンジャ・カテドラル
"cathedral"は「大聖堂」の意。
神社の本殿を指すと思われるが、本作ではブディズムの宗教施設と認識されている節がある。
鐘があり(鐘つき堂を持つ神社は実在するが)、ボンズが住まい、カンヌシが念仏を唱えるなど、神仏習合が著しい。
ネオサイタマのブディズム教団では、各教区ごとに大僧正の座するジンジャ・カテドラルが置かれ、教区内の他のテンプルを管理している模様。
ここでの尼僧の制服はシスタースタイルであるようだ。
スカム禅問答
ブディズム・パンクス達の行う退廃的な禅問答。
その内容が描かれたエピソードが翻訳されるやいなや、そのあまりのインパクトと汎用性から日本ヘッズ間で爆発的流行を見せた。
あくまでも"スカム"なので、作中の禅問答が全てこのようなものではない。
(例)
「ブッダがある男をジゴクから助け出すため、切れやすい蜘蛛の糸を垂らした。ナンデ?」
「正解です」
他にも「キツネはアンチョビを与えられたが、食べられなかった。ナンデ?」、「男は象を街で働かせた。象の仲間が駆けつけ、男を踏み殺した。ナンデ?」など、何故か日本で有名な童話や児童文学が公案の元になる事が多いようだ。
聖人
忍殺世界のブディズムには「聖人」の概念がある。作中の歴史上の人物としては聖徳太子やセイント・ニチレンがいる。
現実の日本の仏教にも、自派の開祖を「聖人(しょうにん)」という尊称で呼ぶ宗派がある。このほか「上人」であるとか朝廷が認める「大師」とかの称号もあるが、いずれも高位の僧侶のためのものである。
忍殺世界の「聖人」はキリスト教(カトリック)のように、聖職者のトップによって聖人認定(列聖)されるものであるらしい。カトリックの場合もろもろの審査を経て、死後少なくとも数十年を経て列聖するのだが、ネオサイタマのブディズムは買収を受けやすくズブズブであるようで(タダオ大僧正があからさまに拝金主義者である)、存命中のある人物(非聖職者)を名誉聖人認定している。
セイント・ニチレン
ブディズムの聖人。言うまでも無いがモデルは「日蓮」。たしかに日蓮の流れを汲む諸宗派(法華系仏教、広義の日蓮宗)では「日蓮聖人(しょうにん)」と尊称するのであるが。
キョートの通貨オールド・イェンの札には「セイント・ニチレン」が描かれたものがある。ネオサイタマにも「ニチレン」をニックネームとする人物がおり、忍殺世界では歴史上の宗教的偉人としてメジャーであるようだ。ただし具体的事跡にはまだ触れられていない。備えよう。
ゼン
禅。
作中では深い精神性をたたえたものの形容として「ゼンめいた」が使われる。
「ワオ……。……ゼン……」という言葉は、神聖なアトモスフィアに心打たれ涙した登場人物の口から漏れ出した言葉で、ヘッズスラングとしても使われている。
センコ
線香。主に霊前に供える細い棒状の御香。
メタファーとしても多用されており、ナラク・ニンジャの眼光はセンコめいて細く、赤い。
そしてニンジャスレイヤーにとって、彼が屠るニンジャの首こそが、亡き妻子に送るセンコである。
ゼンモンドー
詳細は不明だが「リブート、レイヴン」にてガンスリンガーが、タカギ・ガンドーの問いかけに対し「俺の知能指数は凄いぞ。ゼンモンドー20段だ」と発言しており、
その段位が知能指数を計る物差しとなっているらしい。
上記のスカム禅問答での殴る威力と言うわけではないと思われる。
ソクシンブツ
即身仏。
修行者が瞑想状態のまま絶命しミイラ化したものを、崇敬の対象としたものである。
忍殺作中では、「ソクシンブツ」と表現される、ミイラ化したニンジャが登場した。
ソウル憑依者は絶命していたが、ニンジャソウルは生きていた。
人物のやせ衰えた姿が「ソクシンブツめいた」と表現されたりもしている。
祖先
日本語の「ご先祖様」に相当する意味合いのコトダマ。「アンセスター」とも表記される。実際の日本同様、祖霊信仰がブディズムと混淆しているようである。
オーボンには祖先のスピリッツが戻ってくるという。また「良い買い物をした」客に店員が「今夜祖先に報告できるよ!」と声をかけている。きっと夢枕に立つのであろう。
奥ゆかしい警句として「祖先が監視中」がある。身から出た錆で名誉を失いそうな際には、「アンセスター」への言い訳を考えて絶望することになるが、「ご先祖様に申し開き(顔向け)できない」という日本語の慣用句によるものであろう。名誉を失えば「アノヨでアンセスターにムラハチされる」と信じられ、恐れられているようである。
た行
ディーモン
主に像として彫られ、英雄像の下で踏みつけられているもの。この構図は江戸時代に好まれたモチーフだという。
モデルはおそらく四天王像において彼らの下で踏まれている邪鬼。
テクノ・タントラ業者
カルマポイント制なる、目に見えない秘密のゲームスコアめいたものでなんかする業者らしい。
- ソンケイのことが「目に見えない秘密のゲームスコアめいたものであり、テクノ・タントラ業者たちのカルマポイント制にも似ている」と解説されたことがあるが、テクノ・タントラ業者そのものは現段階では詳細不明。
- 顕教の経典たるスートラ(経)に対して密教の経典がタントラ(緯)。カルマとは業、行動。どちらもブディズム用語なのでブディズム関連の業種ではないかと思われる。
デジ・ネンブツ
詳細不明。ある電脳系暗黒メガコーポが某所からの依頼に応じ人体実験で開発中のサイバー・ネンブツ・ソフトウェアと同一か。
おそらく何らかのサイバネ的技術処置により自動脳内再生されるようになったネンブツ(念仏)であり、使用者の脳内では電子がゼンめいてキマっていく。
電脳麻薬(参考:イルカチャン)めいた作用をもたらすと考えられる。
一部の敬虔なアンダーグラウンド者の中には使用者もいる。
一般流通の程度は不明。しかし第3部中盤では、スポーツと並んで「健全なもの」とされ(欺瞞!)、社会への普及が図られている。
電子ハカバ計画を担う会社の名前も「デジ・ネンブツ社」であるため混同に注意。
テンプル
寺院(Temple)。
神社は「シュライン」、寺は「テンプル」と使い分けようとしているめいたアトモスフィアは実際ないではない。
テンプルでは、ニンジャによってよくボンズが殺される。
作中登場するネオサイタマのテンプルは、「ネオサイタマ」のページの宗教施設の項目にまとめられている。
トリイ・ゲート
鳥居。本作においてはスピリチュアルな部分が強調されており、現実世界だけでなく、コトダマ空間においても神秘のモチーフとして度々登場する。
考古学的な知見によると、オヒガン信仰の産物であり物理世界とアノヨを繋ぐポータルの概念を象徴的にあらわしたもの。
また、古代のサムライを恐れたサラリマンによって、ビルの屋上などに建てられる事も実際多いらしい。
現実でもオフィスビルの屋上や周辺に小さな鳥居や祠があるのは珍しい事ではないため、原作者=サンの取材の成果と言えよう。
な行
ナムアミダブツ/ナムサン
それぞれ「南無阿弥陀仏」「南無三」。
作中人物が唱えるほか、地の文でも多用されるフレーズであるが、特に我々の知る意味と特別違うというわけではない。
ちなみに、「南無」は敬意や尊敬を意味するサンスクリット語「ナマス」「ナモー」に由来し、
仏教では帰依を示す意味で用いられている。
「南無阿弥陀仏」とは大雑把に言えば、「阿弥陀仏よ、あなたを信じます」という意味、
「南無三」は「三宝(仏・法・僧)よ、あなたを信じます」という意味である。
作中でも「ナムサンポ」(南無三宝か?)などのバリエーションがある。
なお、アニメイシヨン英語版のナレーターは、日本語版がナムアミダブツ!のところでOh My Budda!と言っている。
ナムアミダ・ブッダ!
特に差し迫った事態に置かれた際、作中人物によって「ナムアミダ・ブッダ!」と叫ばれる時もある。「ナムアミダブツ」の上位のコトダマであるらしい。表記には「ナムアミダブッダ」などの揺れがある。
「ブッダ」を、自らの信奉する人間に置き換えて唱える、実際冒涜的とすら思える用法もある。作中では「ナムアミ・ダ・ラオモト=サン!」が唱えられた(レオナルド・ダ・ヴィンチめいて「ダ」が切れるのはなんだろう)。ヘッズも敬意を表現するために使うことがある(例:「ナムアミ・ダ・ホンヤクシャ=サン!」)。
ニルヴァーナ
本来は「涅槃(ねはん)」を意味する。
本作では、「俺の魂は救われた」と感じた人物が死んで「ニルヴァーナへ行く」、あるいは自分の行いが悪いので「ニルヴァーナにゃ入れない」といったセリフがある。また、別の個所には、死者はニルヴァーナに行ってホトケと一体化するのだともある。ブディストにとっての天国めいたものだろうか。
アンセスター(祖先)のスピリットがいるというアノヨ(オヒガン)との教義的な違いはよくわからない(もっとも、現実でも「あの世」「黄泉の国」「彼岸」「浄土」の違いを理解し使い分けるヘッズは少ないであろう)。
ノロイ・ボード
墓地にある「スキー板めいた」もの、つまり卒塔婆(そとば)のこと(より厳密には「板塔婆」(いたとうば))。個人の追善供養のため、法要の際に立てるものである。
誰も正確な意味を知らぬ古事記時代のノロイ文字が書かれている
(「ネクロマンティック・フィードバック」#1より)。
ちなみに現実の卒塔婆に書いてある文字は梵字である。現在では「卒塔婆プリンター」なるハイテク機器が存在しており、それを使えばボンズにはショドーのワザマエも宗教的なんかも必要ないという手抜…アッハイ、コスト削減でマーケティング的にも大正解です。
は行
ハカバ
墓場。
古い時代の墓場の上に建物が建てられたり、電子化された墓も存在するなど、マッポーのネオサイタマではだんだんと死者への畏怖の心が失われてきている。
ついにはアマクダリによって、(墓場となっていた土地の開発を進めるため)ネオサイタマ中の墓を電子化するという「電子ハカバ計画」が推し進められることになった。
武装霊柩車
忍殺世界において、政治家、ハイ・ボンズ、ヤクザ・オヤブンといった要人の死体は、「闇モージョーの呪術儀式」の危険(現実のキリスト教の聖遺物の考え方に似るか)やら、死者の名誉を汚さんとする敵対組織による妨害やらに晒されている。
これら妨害を撃退し、死体をテンプルに無事納めるために武装したのが、武装霊柩車である。
作中世界では、「武装霊柩車乗りのコミュニティ」が形成されているらしい。
「謎めいて神秘的な生業」と地の文で評されている。
ブッダ
仏教の開祖、仏陀(ゴータマ・シッダールタ)。忍殺世界では一般的な神様として周知されている存在。
即物的には何千年も前に死んだとされるが、信心のある人々の間では、われわれを見守る存在であったり、何かしらの加護を与えてくれる(はずの)存在であったりするようだ。
「寝ている」という理解もされているようで、マッポーの世においては「ブッダよ、あなたは今も寝ているのですか!」という言葉が、「天は見放したのか」というアトモスフィアで発せられることが多い。
イヴォーカー及びシルバーカラス曰く「ゲイのサディスト」らしいが、本職のまじめなボンズであるアコライトは「ブッダには運命を操作する権利も力もなく、物事はただ様々な営みが折り重なって導き出される物」だと解釈している。
- われわれの世界では、「仏陀」とは「悟りを開いた者」という意味である。複数いる「悟りを開いた者」としての「仏陀」(広義のホトケ。ナントカ如来とかナントカ仏とか。この境地を目指す修行者が「菩薩(ぼさつ)」(ボディサットヴァ)である)という用法と、「仏陀」になった俗名ゴータマ・シッダールタ(いわゆる「お釈迦様」)を特に指す用法とがある。
- 悟りを開く、すなわちわれわれがブッダになるための教えが本来のブディズムである。すべての存在はブッダになれるという(一切衆生悉有仏性)。故にわれわれもほとんどブッダ。
ブッダに関連するヘッズスラングについては、「ヘッズスラング」ページ該当項も参照。
ブッダ!
キリスト教英語圏では「Oh My God(おお、神よ!)」や「Jesus(ジーザス!)」などと神に呼びかけたり感情を訴えたりする表現が多くあるが、この「God」や「Jesus」に対応する言葉として忍殺世界で「ブッダ」が使われる。
「ブッダファック!(<Jesus Fuck!)」、「ブッダシット!(<Holy shit!)」、「ブッダミット!(<God damn it!)」、「ブッダアスホール!(<God's Asshole!)」など、聖なるものを利用した英語の間投詞を「ブッダ」に置き換えたコトダマもあり、そのインパクトからかヘッズ間や実況でも少なからず使用される。
また、ヤクザ天狗の代名詞「ブッダエイメン!(Buddha Amen!)」は彼が独自に考案したニンジャを浄化するモージョーを取り行う際に発せられる祈りめいたコトダマで、彼の登場時に地の文=サンが叫ぶ事も。
ブッダよ、あなたは今も寝ているのですか!
上述の通り、作中の人物が理不尽な状況に対し、しばしば嘆きとともに叫ぶ言葉。
実際ブッダが「寝ている」(横たわっている)姿の像や絵などがあり、コミカライズでは眠っている姿として引用されてもいるが、あれは涅槃像(涅槃仏)といい、ブッダが入滅する際の姿を表現したものである。
乱暴に言えば「死んだ」時の姿ということではあるが、肉体が消滅し煩悩から解脱したという宗教的意味合いで「入滅」「涅槃(ニルヴァーナ)」という語が用いられる。生身のゴータマさんは肉体として消滅しても、悟りを開いたものとしてのブッダ=「釈迦如来」として今もこの世を照らし道を示している、というのが宗教的理解となろうか。
ヘッズスラングとしては「ブッダよ!寝ているのですか!」等々のバリエーションで使われる。善人が危機に陥るとブッダを起こそうとし、僥倖が訪れればブッダが起きていたことに感謝するのである。
ブッダウォーリア
ブディズムに伝わる恐ろしげな何か。後述のブッダデーモン戦士と同一か?
ブッダエンジェル
ブディズムに伝わる恐ろしげな何か。モータードクロはブッダエンジェルめいたビジュアルであり、悪魔的な鉄のオニでもあるという。
神将・明王の類いか。
ブッダセイタン
セイタンは恐らく"Satan"。堕天使達によって構成される闇の軍団を率い、ブッダと敵対する存在らしい。おそらくは天魔のこと。
カナガワのアーマゲドンはこのブッダセイタンを信奉している。
ブッダデーモン
ブディズムに伝わる禍々しい何か。八つの目を持ち、貪婪な性格とされるようである。
トコロザワ・ピラーのトレーニングルームでは利用者の士気高揚のために天井にフレスコ画で描かれている他、ウシミツ・アワーのネオサイタマの夜景は「ブッダデーモンの宝石箱」に喩えられる。
ブッダデーモン戦士
「ブッダの降臨時にその身を守る戦士」と本編で言及される存在で、像に彫って飾られる事もあるようだ。
真偽も出所も定かではないが、本編での情報によると「単独の存在ではなく、目が六つの者や鎧が光っている者など沢山の種類がある」という。
おそらくは金剛力士に代表される護法善神のことだと思われる。
ブッダファイター
平安時代に作られた木像が作中に登場するが、詳細不明。
ブッダウォーリアとはどう違うのだろうか。
ブディスト
仏教徒。信仰心が強いとは言えない我々現代日本人に対し、この作中世界では大半の日本人が割と熱心な仏教徒のようである。
敬虔なブディストにとって、北の方角に頭を向けて眠る事はブッダの死を再現する行為であり、許し難い背徳行為とされる。
ブディズム・パンクス
ブディズム要素を取り入れたパンクス。リンク先参照な。
ブラックメタリスト
アンタイブディズムを掲げるブラックメタル・バンドの支持者たち。
「アンタイブディズム」の項や、カナガワのページを参照。
ボディサットヴァ
「菩薩(ぼさつ)」の意。サンスクリット語である。
悟りを開く前の修業者のことだが、民衆と共に歩むという意味で、信仰の対象となった。
修業の一環で衆生を救うべく行動中であるため、仏像においては立ち姿で表現される。
忍殺世界においてもおそらく正しいイメージで理解されており、弱い立場の人々の楯となる慈愛に満ちた登場人物の形容に用いられている。
ボンジャン・オジギ
ボンジャン式のアイサツ。片方の掌に拳を付けてオジギする。いわゆる包拳礼か。
ボンジャン・テンプル
キョートに所在するバトルテンプル。地理的・施設的な説明についてはキョート・リパブリックを参照な。
世界各地に分院が存在し、キョートにあるものは総本山であるようだ。
ボンジャン・シンイチにより開かれた寺院で、「ボンジャン・モンク」と呼ばれるバトルモンクたちが修練に励んでいる。代表的な人物としてはアコライト(カンツァイ)がいる。
シャオリン・テンプルをイメージすると実際分かりやすい。
「ボンジャン!ハイ!」というシャウトは印象的であり、ヘッズの間でも流行した。
ボンズ
坊主。ブディズム聖職者の総称。坊主頭は「ボンズ・ヘアー」と呼ばれる。
ブディズム組織の位階制度では、下から順に「レッサーボンズ」「マスターボンズ」「アークボンズ」といった位階に分かれている。
カラテの訓練と厳しい戒律によってブッダの真意に近付こうとするテンプルは「バトル・テンプル」、そこに属する者は「バトルボンズ」と呼ばれる。
忍殺とは直接関係ないが、現実でも戦国時代に日本を訪れたヨーロッパ人が仏教の僧侶(坊主)について「ボンズ」(bonze)と記している。翻訳チームがアトモスフィアを重視してそのままボンズと訳しているのであろう。
ボンノ晩
ウシミツ・アワーから朝の四時まで、一時間毎に必ず丁度百八打になるように夜通しテンプルの鐘を撞き続けるというブディズムの実際迷惑な風習。二月に一度、各テンプルのニュービー・ボンズが修行の一環としてこれを行うらしい。
おそらく大晦日の除夜の鐘と庚申信仰の庚申待がミクスチャーされたなんかだと思われる。
ま行
マッポー
「末法(まっぽう)」の意。釈迦如来の説いた「教え」「正しい行い」「悟り」の内、悟りと正しい行いがなくなった状態を表す言葉。
転じて、救いのない状態や、堕落・腐敗した社会などを表すコトダマとして、ニンジャスレイヤーの世界観を形容するためによく用いられている。
警官を表す「マッポ」とは別の意味のコトダマであるので、誤用に注意。
この2つのコトダマの類似は、作中でもラップにおける韻というカタチで触れられている。
マッポーカリプス
古事記に予言されているという事変。「マッポー」+「アポカリプス」。
アポカリプスの本来の意味は、キリスト教における黙示(隠されていた真理・知識を神が人々に開示して伝える)を表す単語であるが現在では終末論的な意味で使われる事が多く、作中でもそのような意味で使われている。
また、第4部の公式な名称として「エイジ・オブ・マッポーカリプス」と名前が取られているほか、第4部シーズン1・シーズン2の最終エピソードにも名前が用いられている。
マニ・ローラー
マニ車(ぐるま)。表面に経典が刻まれた円筒形をしており、それを回すことで経典を読んだと同等の効果があるとして、文字を読めない者でも功徳を積むことができるという仏具。大きさ・形状はさまざまで、寺院に据え付けるものもあれば、手に持ってまわすハンディタイプのものもある。
作中ではマニ・ローラー化されたブッダメイスやガトリング砲が登場し、殺戮しながら功徳を積むというあまりにも冒涜的なアブハチトラズでヘッズを戦慄させた。
ミコー・プリエステス
巫女。寺院に勤める女聖職者。
ツイッターアーゲームブック#2では何故かカンヌシでなくグレーター・ボンズと共に登場している。案の定バストは豊満らしく、多くのヘッズが蚊柱を立てた。
現在、本編中に本物のミコー・プリエステスが登場した事はない。
しかし、「バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト」にて比喩として挙げられているほか、「ナラク・ウィズイン」にて登場人物がミコーに扮するなど、随所で言及がみられる。
また、物理書籍版限定エピソードだが、「ネオサイタマ炎上#4」所収の「コロス・オブリヴィオン」には、ミコーのコスプレをする女性が出る。
ただしブラックメタルバンドの追っかけであり、本物とは似て非なる冒涜的な内容であったが。
や行
ユーレイ
幽霊。
柳の下に立つ透き通った女、というのが忍殺世界においてもティピカルなユーレイ・イメージのようである。
ユーレイゴスたちはユーレイを「無価値で虚無的な存在」の代名詞と考え、自分たちと重ねあわせる。
ユーレイゴス
ゴス文化の一形態。リンク先を参照な。