【取扱説明書】

Last-modified: 2024-03-18 (月) 13:10:12

概要

各種製品に付属する文書。操作方法など、その製品を利用するにあたって必要となる基本的な説明がなされている、いわゆる「マニュアル」。
ゲームソフトの場合は、コントローラの使い方やゲームシステム・パラメータの説明、簡単なヒントなどが書かれたもの。PS系では「解説書」と呼ばれている。
FCやSFCではソフトによっては新聞紙のような折りたたみ式の大きな1枚のシート形式の説明書も存在したが、DQシリーズはすべて冊子の形を採っていた。
DQ1からDQ4までのFC時代は二色刷、DQ5以降はフルカラー。製本方法は中綴じ。サイズは対応ハードウェアによって異なり、パッケージのサイズに合わせられていることが多い。
 
【ドラゴンクエストへの道】には、

今度のドラゴンクエストはマニュアルなんか読まなくても
やっているうちに遊び方が自然にわかるようにしましょうよね

との台詞があり、実際にDQ1の【ラダトーム城】【ラルス16世】の部屋では、勇者を動かしながら基本的なコマンド操作を覚えることができるように設計されている。
だからといって説明書がおざなりになっているというわけではなく、特に初期ドラクエの取扱説明書はとても丁寧に書かれていて、かつ分厚く読みごたえがある。
当時のファミコンゲームではまだコマンド式RPGというジャンルそのものが新しく、プレイヤーへの教育的な側面もあったのだろう。

内容

ストーリー、キャラクター、冒険の始め方と終わり方、移動中の【コマンド】(とパラメータ)、施設、【戦闘】(と【作戦】)、その他システム、おまけ要素、アドバイスの順に書かれていることが多い。
基本的に、コマンドは全掲載。複数のマップが存在する作品では最初に冒険することになる世界のみ地図を掲載している。
ヒント集ではゲーム内で説明されない重大なヒントもあり、DQ3では【あいのおもいで】、DQ4では【バロンのつのぶえ】を使用するタイミングが書かれている。
 
DQ3まではユーザーに語りかけるような丁寧な語調になっており、パラメータや【呪文】も一つ一つ文章で解説されている。【アイテム】解説もイラストはあるものの文章をメインとした構成になっている。
DQ4からはごく一般的な文章に変わり、項目番号が付くようになった。パラメータは【つよさ】コマンドと合わせて記載される形になり、呪文は新登場や仕様変更されたものを中心に取り上げ、全呪文は一覧での掲載という形に簡略化された。アイテムはイラストが中心でその周辺に解説が書かれる形に変化した。
以降、SFCやPSの時代までは同様のスタイルが続いた。呪文はごく一部を除いて全掲載であるが、逆に特技については一部のみの掲載に留まっている。
DQ7からは呪文・特技が一覧のみでの掲載となり、おまけ要素が巻末の方に纏められるようになった。
PS時代まではキャラクターたちの挿絵も載っている。DQ6とSFC版DQ1・2は比較的シリアスな絵だが、それ以外ではデフォルメされたコミカルなイラストが用いられている。
 
PS2の時代からは簡略化傾向が始まり、「移動の基本」の中に施設や乗り物の情報が纏められるようになった。呪文も全掲載ではなくなっていき、DQ8では【錬金釜】【スカウトモンスター】が非掲載である(3DS版では掲載)。文中のイラストもキャラクター紹介を除けばモンスターの公式イラストのみに留まるようになった。
DSシリーズでは項目番号が消滅。DQ9では【マルチプレイ】にかなりのページが割かれた一方、呪文・特技はそれぞれたったの6つ、アイテムもゲーム内のアイコンを用いた一覧表でごく少数が載るのみと、風前の灯になってしまった。
 
そして時代の流れにより、DQシリーズに限らず2010年代のハードのゲームは、紙の取扱説明書は簡単な操作方法(DQではボタンの割り当て、コマンド、通信方法)だけを書いたシートに変わった。
配信・ダウンロード形式であるモバイル(ガラケー・スマホ)版や3DS・PS4などのDL版ではそもそも紙の説明書が無く、Switch用ソフトのDQ11Sではとうとうパッケージ版の紙説明書すら廃止された。
これらのソフトでは、作品公式ウェブサイト上やオンラインマニュアル、ゲーム機のメニュー画面から参照できる「電子説明書」(ニンテンドー3DSの場合)、ゲーム内で閲覧可能な【たびのこころえ】といったものが代替手段となっている。
電子説明書ではDS時代までのようなコマンドやシステム・おまけ要素などの解説はあるものの、ワールドマップや呪文・特技・アイテムの解説は完全に姿を消した。
 
今となっては貴重な資料でもあるファミコン時代の取扱説明書は、ゲームに登場しなかった設定を補完するための読み物としても楽しめる。
DQ1では【ムツヘタ】【アウラ】という説明書にしかその名が登場しなかったレアな人物がいる。
またDQ2では、容量の都合でボツになってしまったイベントシーンでの一枚絵が掲載されていたり、【ベホマ】の説明文中にいきなり「インド」「仏陀(ブッダ)」という現実世界の単語が登場したりしている。
そして当然のことながら、ゲームソフトを問屋に納品する期日までには刷り上げておかなければならないため、取扱説明書もゲームの制作と並行して執筆・編集されている。
そのためか、制作中の設定が残っていると思われる記述もあり、DQ2の説明書に載っているゲーム画面の味方ステータスは、表示のレベルにしては【HP】【MP】が高くなっており、後にレベルアップによるステータス上昇が低く調整されたことが伺える。
極めつけはSFC版DQ3の説明書で、なんとゲーム中に登場しない没アイテムである【てつのそろばん】なる武器が御丁寧にもイラストつきで紹介されているほどである。
後に出版される公式ガイドブックなどの書籍とは設定が異なってくるケースもあり、例えばDQ3の説明書での【ライデイン】は「高電圧のかかった糸を敵にからませる」、【ギガデイン】は「敵の体を内部から破壊する」と説明されている。
このようなことが、説明書が貴重な資料とされるひとつの所以であるともいえる。
 
説明書の文中に読者に向けて情報を与えるキャラクターが登場している作品もある。
終章で冒険のヒントやアドバイスを伝えるキャラクターとしては、まずDQ4の説明書に「エニックスの仙人」(イラストは無し)が登場した。
SFC版DQ3の説明書には【堀井雄二】をモデルにした「ホリー仙人」(当時【月刊Vジャンプ】連載されていたコーナーのものと同じ姿)が黒板を使って勇者に授業をしているようなイラストが描かれている。
DQMの説明書では【わたぼう】が、そしてDQM2の説明書では【ワルぼう】が冒頭から登場し、全般的な案内役を務めている。