ワルフラーン

Last-modified: 2021-09-22 (水) 14:22:49

キャラシート

【クラス】ルーラー
【容姿】透明と言っても過言ではないほどに、何処までも白く、そして無垢である1人の戦士。
【真名】ワルフラーン
【英雄点】-点
【HP】50 / 50
【筋力】A:5(消費点5)
【耐久】A:5(消費点5)
【敏捷】B+:5(消費点5)
【魔力】B:4(消費点4)
【幸運】A:5(消費点5)
 
【クラススキル】真名看破:B+
5点:セッション開始時、味方全体に自信の知り得る情報を開示する。
 
【スキル1】魔力放出(光明):A
5点:物理・魔術攻撃時、補正値5を得る。
 
【スキル2】障害を打ち破る者:EX
5点:全ての防御時、補正値3を得る。
 
 
【宝具】『人よ、善を尊べ。其は戦場を啓く永劫の救いなり(ウルスラグナ=ワルフラーン)』 ∞/∞
【ランク・種別】ランク:EX 種別:正義 レンジ:∞ 最大捕捉:1人(自身)
【効果】 自身の最大HPを2倍にする。
また交戦フェイズ終了時、周囲の人間の持つ正義、願い、善をその霊基にため込む。
 
【その他】秩序・善 人属性 性別:男性?
 
 

真名、侵食

【クラス】キャンサー
【真名】ワルフラーン【独善】
【容姿】透明と言っても過言ではないほどに、何処までも白く、そして無垢である1人の戦士。
【英雄点】?托シ假シ点
【HP】80 / 80
【筋力】EX :8
【耐久】A+++:8
【敏捷】EX :8
【魔力】EX :8
【幸運】A++ :7
 
【クラススキル】霊基罹患:A++
自身の英雄点を無限とする。
交戦フェイズ開始時、自身のHPを80にしてステータスを再臨する。
 
【スキル1】千貌:A
判定ごとに1度まで、このセッションで生存しているキャラクターを1人選択し発動できる。
そのキャラクターシートに記されている、クラススキル以外のスキルを、全て自身に適用する。
 
【スキル2】無沈無退:EX
自身がダメージを30以上受けた場合に発動する。
そのダメージを与えたキャラクターのステータスを全て2ダウンさせる。
 
【宝具】『人よ、善に縋れ。其は人理を繋ぐ永劫の覇道なり(サオシュヤント=ワルフラーン)』 ∞/∞
【ランク・種別】ランク:EX 種別:正義 レンジ:∞ 最大捕捉:1人(自身)
【効果】自身が判定を行う際に、相手が判定行った場合、その判定にスキルによる補正値を得た場合に発動する。
その補正値を全て自分の行う判定に加える。ただし令呪と援護による補正値は得ることは出来ない。
 
【その他】秩序・善/人属性/人型・正義/男性

 
 

「お前たちの声が、祈りが、俺という善の勝利をカタチにしてくれるんだ」

俺の歩む道こそが、善だ。
 

プロフィール

【元ネタ】『人類史』
【CLASS】ルーラー/キャンサー
【マスター】"みんな"
【真名】ワルフラーン〔独善〕
【性別】無性、正義に性別の意味はない。
【身長・体重】187cm・91kg
【肌色】白【髪色】銀【瞳色】灰
【外見・容姿】透明と言っても過言ではないほどに、何処までも白く無垢である1人の戦士。
       その細かい容姿や鎧の意匠などは召喚者や周囲の人間の思う"正義"の形に応じて変化する。
       手には黄金に飾られた刃を持つ。此れは彼の持つ十の姿の内の最後の姿が持つ武器に由来する。
【地域】全世界
【年代】人類史開闢より、終焉に至るまで
【属性】正義・善
【天地人属性】『人』
【その他属性】人型・正義
 

筋力■■■■■EX耐久■■■■■A+++
敏捷■■■■■EX魔力■■■■■EX
幸運■■■■■A++宝具■■■■■A++

クラススキル

対魔力:A
魔術に対する抵抗力。Aランク以下の魔術を無効化する。
善神ヤザタに分類される存在であるため、魔術には高い防御力を誇る。
ワルフラーンの化身の1つには呪詛返しの加護を齎す者もおり、それに由来する。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。
 
真名看破:B+
ルーラーとしてのクラススキル。
直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。
善なる者の代表者という側面から、善属性を持つサーヴァントに対しては更に+の補正がかかる。
 
神明裁決:-
ルーラーとしての最高特権。
聖杯戦争に参加した全サーヴァントに対し、二回令呪を行使できる。
通常の聖杯戦争の調停者として召喚された場合は所持するが、彼は彼自らが望んで召喚された為にこのスキルを持たない。
 

真名、侵食

霊基罹患:A++
キャンサーのクラススキル……ではなく、クラス特性。正確にはスキルですらない。
一つの霊基に対し、同じ英霊が持つ複数の側面が同時に詰め込まれたことで発現する、謂わば「霊基の病」とでも言うべき症状。
召喚時に決定された霊基での在り方を歪め、時としてそれが持つ筈の人格・能力・宝具さえをも、別側面が侵蝕してしまう。
 
ルーラー/キャンサーの場合、ワルフラーンという「善を体現する"みんな"の英雄」という霊基に対し、
その顕現した時代で定義された『善』という概念が一瞬のうちに、濁流のように流れ込む形になっている。
これは彼が人の英雄として顕現する際に、不特定多数の声に応える善なる勇者の具現としての姿を選んでしまったがため。
 
これらの彼の中に凝り固まった善は、始めこそは影響はないが、彼の顕現する時間が長引けば長引くほどに影響を表出させていく。
善とは、ただ文字通りの善を現すだけではない。大衆を動かすための名目、征服行為や復讐の正当化、扇動の為の大義名分。様々な意味を持つ。
それら全てを"みんなの勇者"として背負い続ける事で、やがてワルフラーンはその霊基の内側で自己矛盾や否定・合一・崩壊を繰り返す形となる。
善の体現者であるワルフラーンは、周囲の人間たちから受ける“善への祈り”がそのまま力となるため、個々の善への祈りが強まるこの状態では力を増す。
だがしかし、同時にそれぞれの善が否定されてもいるため、それは善の体現者であるワルフラーン自身の否定に繋がり、霊基の脆弱化も併発してしまう。
有り体に言えば、攻撃力だけが跳ね上がり防御力が下がる形になる。
 
 
やがて無数の『善』の概念はそれぞれを否定し合い、潰し、そして喰らい合う。
言うならば蠱毒の如き様相が彼の内側で作り上げられ、そしてやがて1つの善のカタチが生み出される。
 
その名は『独善』。全てを己の善を以てして染め上げんとする覇道の意志。
そして同時に、人類が今まで幾度となく繰り返してきた己の行為の正当化─────偽りとして掲げた『善』の本質。
「自分の行為は善である」。そう思い込んだ時こそ、人間は最も強い力を持つ。"この"状態に至ったワルフラーンは、まさしくそういった人間の負の側面の具現とも言える力を発揮する。
全くの嘘偽りであろうとも、国1つを優に傾ける絶対的な自己暗示。それこそが、キャンサーとして覚醒したワルフラーンの持つ、"みんなの英雄"の反転たる姿の正体である。

 

固有スキル

千貌:A
『ワルハラーン・ヤシュト(ウルスラグナ賛歌)』の詩文の中で、ワルフラーンは十の姿で現れると歌われた。
「神々の中で最も武装しているもの」を問うたゾロアスターの前に、雄牛や白馬、激しい風や発情した駱駝としてアフラ・マズダから遣わされたようだ。
特に鋭い牙持つ猪の姿は、『ミフル・ヤシュト(ミスラ賛歌)』でも登場し、ミスラの行軍に先行して、鉄の後足、鉄の前足、鉄の腱、鉄の尾、鉄の顎を振るい敵を一撃で突き殺す勇猛な姿が歌われている。
ワルフラーンがこのように多くの姿で描かれる理由は、「勝利(ワルフラーン)」に様々な形があるためだ、と解釈することができる。
 
魔力放出(光明):A
聖人系サーヴァントの一部が有する魔力放出(光)とは似て非なるスキル。
光の形態をとった魔力を放出し、戦闘力を増強する。また加えて、悪属性に対しアドバンテージを有する。
ゾロアスター教の世界観において、善と高貴さ、神々(ヤザタ)の恩恵と力、偉大さは光明として表現、象徴される。
ヤザタの光は悪を滅するものでもあり、太陽や火の放つ物質的な光そのものもまた、霊界からの神々の光が物質界へ投射されたものとして信仰されていた。
 
障害を打ち破る者:EX
ワルフラーン。
ワルフラーン(ウルスラグナ)は現地語では「勝利」を意味するが、
インドの神インドラの別名のひとつ「ヴリトラハン(ヴリトラ殺し)」の音韻と「ウルスラグナ」の音韻の類似から、「障害(ヴリトラ)を打ち破る(殺す)もの」と解釈する近代の説がある。
このワルフラーンは旧来の信仰に依拠せず、現世で新たな在り方の基盤を築こうとしているため、近代の説も積極的に取り入れ、この特性を獲得した。
 

真名、侵食

無沈無退:EX
"みんな"を導く英雄としての力の象徴。大勢の人間たちを己の在り方で染め上げるカリスマ性とも言える概念。
ただ止まらずに善として歩み続ける事を意味する絶対的なる独善の意志。そしてそれで周囲を染め上げていく精神性。
沈黙はなく、退がる事もなく、己の善だけを絶対なる是とし、永劫に変わらぬ正義を掲げし事で生まれしスキル。
 
『無変』たる領域にまで至った絶対的なる精神が生み出す、他者の精神を己の属性(イロ)で侵食する、一種の侵食行為とも言える。
彼はこのスキルによって、周囲に立つ人々を自分の掲げる善性によって染め上げていき、そして絶対なる正義の名のもとに相手を圧し潰す。
その際に彼に対峙する存在は、それがどれほどの正しき存在であろうと『悪』属性と認定され、彼から受けるダメージが増大する。
 
分かりやすく言うならば常識の改変、世界の下地の書き換え。
いや、もはやそれは世界法則の修正と言っても過言ではないほどに力を発揮し、特に英霊に対しては莫大な影響を見せる。
何故ならば英霊とは人の祈りを形にするもの。逆に言えばその"祈り"に対して直接手を加え善悪の概念を己に染め上げるワルフラーンは、英霊の天敵と言っても良い。
己は善で敵は悪。眼前の敵は滅尽滅相。ただ善たる俺と、それに追従する"みんな"だけがいればいい。
ただそれだけの独善を掲げ、彼はその覇道の下に進撃を続ける。

 

宝具

人よ、善を尊べ。其は戦場を啓く永劫の救いなり(ウルスラグナ=ワルフラーン)
ランク:EX 種別:正義 レンジ:∞ 最大捕捉:1人(自身)
人として"みんなの勇者"となったワルフラーンが、その英雄神としての権能を、人たる英雄の宝具へと変化させたもの。
無辜の民や聖杯戦争の中で被害を受けた人々、あるいは特異点や異聞帯、喪失帯において虐げられる力のない者たち。
そういった彼らの"善"を求める声。正義を成したいが力を持たぬ人々の叫びや祈りに依存して姿が変わり、魔力を得て、スキル・ステータスを強化する。
 
人々の信仰から形を成す"英霊"という在り方を、英雄神としての特性を重ねて強調した、このサーヴァントの"在り方"そのもの。
ワルフラーンは「勝利」が神格化した神であり、またアフラ・マズダを筆頭とする善神ヤザタであるために、"勝利"と"善"双方への信仰のみを受け取る。
すなわち、弱きものを守り悪を砕く"善なる闘争"への思い、祈りである。
原義からは外れた言葉遣いになるが、現代的には"正義"とも言い換えられるだろう。(原義的な"正義"……裁定や道理的な側面は別の善神ラシュヌが象徴する)
 
祈りというものは言い換えれば、不特定多数の人々の様々な思いでもある。
この宝具はそれらのあらゆる形を持つ"善なる闘争"への祈りを、ワルフラーンという1つの霊基の下にまとめ上げる。
ワルフラーンの持つ『様々な化身の姿を持つ同一の神格』という特性は、彼を人々の祈りによって如何様にも変化する"祈りの受け皿"とするために都合のよいものだった。
それはまさしく、人々の信仰から形を成す"英霊"という概念そのものであり、英雄神と称されるに相応しい在り方と言える。
英雄神として偶像の英雄を顕わす宝具。その在り方は、ある『理想の英雄の具現』にも似る。
 
通常サーヴァントは1人のマスターからしか魔力供給の経路を繋げることはできないが、彼の場合は善に基づく勝利を祈る近隣全ての人々から"祈り"を魔力として受け取れる。
受け取った祈りや声はそのまま彼の顕現、戦闘の為の魔力として用いられる。
助けを求めるものが1人でもいれば、それだけで彼は強化されていき、現界し続けることを可能とする。
 
正義や善を体現する英雄の具現として顕現した副次的な効果と言えるが、逆に言えば善を求めるものがいなければ魔力供給を得られず、即座に消滅する諸刃の剣。
また、この宝具により、ワルフラーンは人々の祈りのカタチの影響を大きく受けてしまう。
 

真名、侵食

人よ、善に縋れ。其は人理を繋ぐ永劫の覇道なり(サオシュヤント=ワルフラーン)
ランク:EX 種別:正義 レンジ:∞ 最大捕捉:1人(自身)
 
「それがお前の善か。お前の正義か。良い正義だな、それ、くれよ」}
 
人々の"祈り"を形にする英雄という特性を形にした宝具。それをさらに一段階昇華させた、英雄というにはあまりにも悍ましすぎる"ナニカ"。
自分以外の存在が『善』として掲げた意志や、それに伴う行為。あるいはその『善』に由来して手に入れたスキルや宝具────それら全てを、根こそぎ簒奪する宝具。
独善状態へと至った彼は、自分1人こそが善であるという強烈な自己正当化の具現となっている。そしてそれを「善と呼ばれる概念は全て自分、あるいはその一部である」と解釈。
それによって、自分以外の存在が『善』と定義したものを自分の一部として取り込み吸収。そしてただ残った残り滓──────即ち『悪』を圧倒的なる善で叩き潰す。
一見荒唐無稽が過ぎる能力だが、「祈りに答えて力を成す」という彼の権能を変化させ、『善という概念』をそのまま自分の身に取り込むと考えれば辻褄は合う。
だがその行為にもはや善は無い。あるのはただ、自己の為に進撃し続ける独善のみ。
汚染されし英雄は、正義を簒奪し続け、更に歪み果てるのみである。

 

解説

ゾロアスター教に語られし英雄神。ウルスラグナとも呼ばれる。ウルスラグナ、ワルフラーンの名は「勝利」を意味する。
ウルスラグナは古代ペルシア語、ワルフラーンはパフラヴィー語(中期ペルシア語)、現代ペルシア語ではバハラーム。
 
地中海との文学的交流の中では、ヘラクレス、アレスとも同一視された。
ギリシャ語のトルコの石碑の中では、アルタグネス(アルタグン)と言う名がアレス、ヘラクレスと対応する形で記されており、ウルスラグナの別表記とも推測される。
 
ゾロアスター教神学に於いては、アフラ・マズダを筆頭とする善神ヤザタの一員とされる。
ヤザタは「崇拝に相応しいもの」の意であったとされ、善神たちは崇拝に相応しい概念や自然物が神格化されたものが多い。中でも彼は「勝利」が神格化したもの。
虚偽者や邪悪なる者に罰を与え、自らを崇拝するものには勝利を与える。
ゾロアスター教の聖典『アヴェスター』には祭儀書、小祭儀書、賛歌などが収められているが、
そのうちの『賛歌(ヤシュト)』の十四番目、『ワルハラーン・ヤシュト(ウルスラグナ賛歌)』にて讃えられる神である。
 
このように、本来は神霊に分類されるべき存在ではあるが、此度は人の英霊として顕現している。
理由としては、教祖ゾロアスター自身が説いたとされる『ガーサー』には、ウルスラグナは特定の神格としては登場していない点、
並びにギリシャ神話のヘラクレスと同一視された点、ササン朝に彼の名を借りたバハラームを名乗る王が多い点などが挙げられる。
 
スキル『障害を打ち破る者』の項でも述べたように、彼はこれらの逸話を利用して人の英霊として、そして何より民々の声に応える"勇者(パフラヴァーン)"としての姿で此度は現界した。
勇者(パフラヴァーン)とは、『王書(シャー・ナーメ)』における強き英雄の代名詞であり、主にロスタムを始めとした強く、勇敢な戦士や英雄を讃える言葉を意味する。
彼はそれらの具現として、神でありながら「人の英雄」として、聖杯戦争に顕現した。
 
 
その理由はただ1つ。"英雄"という力に縋り、"願い"を叶える力を欲す─────。
聖杯戦争という、現代に現出した神代の再現たる戦場に、"勝利"を齎すために他ならない。
 
 
神代は終わり、人は神から離れた。
人は神に勝利を祈るのではなく、人の創り出した武具と技術に頼り勝利する時代となった。
故にワルフラーンの役割は終わったと思われた───────。だが、真実は違った。
人の祈りが勝利となる戦争は、この現代においても尚続いていたのだ。
 
"英霊"。かつて人類史において、人の輝きとなりて勝利を齎し続けた者たち。あるいは彼らへの祈りが形を成したモノ。
彼ら英雄達がいる事で、人は彼らに祈り、あるいは彼らに励まされ、その身を奮い立たせ勝利へと手を伸ばすことが出来る。
言うならば英霊とは一種の道しるべ。歩むべき先へと導く光と言える。
 
そしてそれは、まさしくワルフラーンが語られた在り方そのものとも言える。
戦場に颯爽と降臨し、そして祈ったものに勝利をもたらす羽根持つ善の化身。
英雄神という別名を持つ通り、まさしく彼と"英霊"という在り方は瓜二つ。似通っている概念であった。
祈りが勝利へと繋がるという点も、英霊を形作るものが人々の信仰そのものであるという点から、非常に酷似していた。
 
だからこそ彼は顕現した。聖杯戦争に、特異点に、立つ道を選んだ。
勝利を齎す人の英雄として。力無き者の声に応えて善を為す勇者として。正義を願う人々の声に応えるために。
故に聖杯戦争にて顕現する場合の彼は、本来は存在しえない第八のクラス、調停者ルーラーとして顕現し、無辜なる民を守るために召喚される。
 
これは彼が持つ、"善"の神であるヤザタとしての責任感の高さに由来する。善悪二元論を謳うゾロアスター教に語られる神だからこそ。
そして何よりも─────人としての英雄、"勇者"として顕現したからこそ。声なき声に力を与える"善"として戦うべきだと、彼は心から思いこの道を選んだ。
故に彼はその全霊を以てして善を為し、そして英雄として人々の声に応え続ける。
 
彼の戦いに終わりはない。もし来るとすれば、人々の祈りが形を成す聖杯戦争がこの世界から消える時だろう。
英霊は人の思いによってその姿形を大きく変える。その英霊が降臨することのできる場がある限り、彼は召喚される。
そしてその召喚された場に立ち、力無き者の声に応えて善をカタチとし、そして刃を振るう勇者となる。
 
何故ならそれこそが、英雄神たる彼の正しい在り方なのだから────────。
 
 

真名、侵食

正義とは何だ? 悪とは何だ?
そんな物、もはや問うまでもない。それらの中にあるのは、ただ人間の自己正当化の感情に過ぎない。
ただ"みんな"を扇動するためだけの嘘偽りに他ならない!!
 
そのような曖昧で自分勝手なものが、善の本質だと言うのなら
 
此処に誓う。俺の歩む道こそが、善だ。
 
 
端的に言えばそれは、英雄という概念が持つもう1つの側面。多くの人間を大義名分の下に扇動する、一種の『お題目』の具現。
"みんな"の声に応える善たる『英雄』ではない。むしろその逆、圧倒的なる力を以てして大勢を染め上げる『英雄』。それがキャンサーと化した彼の姿である。
ありとあらゆるカタチの"正義"を吸収し、自己否定や自己矛盾を超えた先に、彼は英雄と呼ぶべき概念のその先へと至ってしまったのだ。
英雄神であるからこそ英雄として望まれる形を実現する。故に彼は、英雄が持つ最悪の側面を実現させてしまったのだ。
 
『独善』。人類史において幾度となく繰り返され続けてきた行為。
ただ己の行為を正当化させる為に。敵の悪性を際立たせる為に。自分たちの間違いを無かったことにするために─────。
様々な理由で語られてきた、言ってしまえば「大義名分としての善」。その中で、一種の神輿として担がれてきた『英雄』という概念。
現在の彼はそういった英雄の側面を具現化させた存在として立つ。即ち善悪の価値観を曖昧にし、自分という存在こそが正しいのだという自己正当化のための自己暗示。
善という曖昧な概念の煮凝りとなった彼は、やがてそういった『独善』という名の癌によって霊基を侵食され、最終的には、最も間違った英雄のカタチを成す結果となった。
 
 
"みんな"の声に応える英雄ではなく、"みんな"を染め上げる大義名分(えいゆう)。
────────それが、善なる声に応え、正義を実現しようとした英雄神の末路である。
 
 
彼に正しき英雄としてのカタチを思い出させる方法は、たった1つしかない。
祈りに応えるという英雄として立ったが故に歪み果てたのならば、その歪みを正すのもまた、祈りしかない。
 

 
 

性格

責任感が強く、ヤザタとして善を為すことこそが"英雄"の義務であると思考している。
そのために力無き者の声に応えて顕現し、そして彼らの声を糧として立ち上がり、最後には悪を打ち破る。
まさしく「英雄」や「勇者」という概念をそのまま具現化させたような人間であり、あらゆる人々を惹きつけるカリスマ性に似た特性も持ち合わせる。
 
だが、"みんな"の声を基にして力と為す性質上、彼自身と言える物が存在しない。
彼を構成する要素は全て、言ってしまえば周囲からの借り物。故に彼には彼自身と言える要素が無い。
これは彼を構成する祈り────────『善による勝利』というものが1つの存在ではないという事を意味している。
人が無数にいれば、その数だけ祈りは存在する。だからこそ、彼の心身を成す善というものは非常に曖昧になり、混沌となっていく。
 
だが曖昧であろうとも、彼は善による勝利を掲げ続け戦場に立つ。
何故なら自分を呼ぶ声があるから。英雄に縋る叫びがあるから。
ならば英雄として立ち、勇者として戦場を切り開く──────それが己の役割であると、ワルフラーンは己を貫き続ける
 

真名、侵食

キャンサーへと転じた彼は、ただ絶対なる『己』を善とし、そしてその善という価値観で全てを染め上げようとする。
その様に躊躇はなく、判断もなく、責任もなく、撤退もない。まるでただ命令を行使し続けるだけの機構の如き存在になる。
悪性樹を守護するのもそれが理由。悪があるが故に、善とはより濃く輝く。故に、彼は悪性樹の守護者としてマスターである趙の手で再臨させられた。
自分の善に染め上げられるのならば善、それ以外は全て悪であると見做し、悪であると判断すれば無慈悲に滅ぼし、跡形もなくこの世から消滅させる。
この世界に悪はいらない。要るのは善なるもののみ。即ち自分と、自分に追随する命だけと─────彼はただ、独善の名の下に、進撃し続ける。