女神天征悪窟シェオール

Last-modified: 2018-10-15 (月) 17:09:12

あらすじ

 

 ―――そいつの話をしよう。

 

 欲に溺れる者には罰を。常識にして、ありきたりな帰結。
 人の身では得られぬものを得る、それは代償が伴うものだ。

 

 そいつは言った、「■■が欲しい」と。
 ならばと言った、「代償を払え」と。

 

 これは一時の情欲に溺れ失ったものを、取り戻そうとする話である。
 だが、それを欲したのはそいつの勝手だろう。
 その結果、どのような末路を歩んだのかもまた因果応報というやつだ。

 

 哀れな子羊に、救いは訪れるのか。ハッピーエンドはあるのか。
 お代は見てのお帰り、愚者たちの喜劇を存分に愉しんでいくことだな!

 

  *

 
女神天征悪窟シェオール
 
終章・無限闇魔神塔(エピローグ・ヤルダバオト)
 

  *

 

 それは、1人の男の欲望(イーヴィル)から。

 
『湖月魔女』
 

 愛もなく、死もなく(ニンギョノチニクヲクライ)、そこにあるのは無限闇(シェオール)

 
『厄災熊嵐』
 

 もう一つの我欲(アルターエゴ)三騎の堕天した女神(イレギュラークラス)

 
『真性悪神』
 

 望め。正義ある戦いを。
 でなければ、悪は打倒し得ない――――

 

  *

 

そして、戦いは根の国の名を冠した、地底の迷宮へと移る。
ヘブライの最高神降臨の祭壇、女神天征悪窟(メガミテンセイアクツ)シェオールなど偽りの名。
ここは日の本の国の深き底、根の国。
世界を貫く無限闇魔神塔、その対極に位置するは死に連なる旅路、イザナギ神の伝承に名高き三途の道。

 

女神転生明津(メガミテンセイアクツ)ヨモツヒラサカ、魔性(リヴァイアサン)との最終決戦が始まった。

概要

2017/5/28開催、参加者7名
告知画像:http://yahoo.jp/box/4kq1X1
募集画像:http://yahoo.jp/box/gb6Viy

ログ・リプレイ

ログ
https://yahoo.jp/box/jOQdS6

参加者

ゴルド・レインワークスセイバー/大月源
お守り:アーチャー/バロール〔リリィ〕
撒士田紗枝ランサー/戦神ヘズ
ヴァルター・アンシェイドキャスター/ヘカテ
ストリード・ミトリカル・ブーリテレクキャスター/エコー
緑谷理久アヴェンジャー/タケハヤスサノオノミコト〔オルタリリィ〕
外道中陰アヴェンジャー/エプンキネカムイ

 

・NPC
市下卒歌ルーラー/アシャヤカトル
鈴墓禅清シールダー/光神ルー〔イヴィル・ブライド〕
謎のアヴェンジャーキャスター/ハンス・クリスチャン・アンデルセン

 

外道悪徒:イレギュラークラス三騎
ヴェルダンディ〔イヴィル〕
パコロカムイ〔イヴィル〕
テスカトリポカ

 

ランサー/ジャガーマン
天邪鬼
アルターエゴ/リヴァイアサン

事の顛末(ネタバレ)

数百年前

遥か昔(一説には7世紀頃とも)、若狭国(現在の福井県)において、
八百比丘尼、人魚の血肉を食らったことにより不死身に。
この「死ねない呪い」はサーヴァントにおいては「不死の贖罪者」スキルとして発現している。

 

飲まず食わずでいることで自然消滅するという話もあるが、
元が村娘であった八百比丘尼にはそんな苦行など耐えられるはずもなく……
(人魚の肉を食らった逸話にしても、宴席で振る舞われたが皆手を付けなかった所、
 思わぬ珍味に興味を持ち、ついついつまみ食いしてしまった、というものである)

 

覚者への救いを求め尼僧となるもその三大欲求を断ち切る事ができず、
日本全国を行脚することで楽に死ぬ方法を求め歩き、
遂に江戸時代、そして幕末に行われた第一次聖杯戦争と第二次聖杯戦争に立ち会う。
そこで英霊の事を知った八百比丘尼は宝具であれば自分が死ぬ可能性があるのではないか、と思い至る。
なお、聖杯戦争自体はどちらも英霊の暴走によって勝者なしで決着した。
(ちなみに第一次聖杯戦争は1800年頃、江戸時代である)
各地に八百比丘尼伝承が残っているのは、自らの知名度を高めるためこの時に打った布石である。

 

1900年頃、文明開化の真っ最中に西欧から伝わったアンデルセンの「人魚姫」を知る。
人魚に縁深い彼女は英霊としてアンデルセンを召喚し、人魚姫と同じ方法で死ぬことを思い付いた。
しかし八百比丘尼は魔術回路を持たないためマスターとして聖杯戦争に参加することは出来ないため、
「世界」と契約することで、生きたままサーヴァントとして各時代に召喚されるようになる。

儀式の祭壇、ひとりの少女

外道悪徒はベルゼブブを召喚し、最高神バアルに回帰させるための布石として、
確実にベルゼブブを召喚するための触媒として3騎の女神サーヴァントに守らせた「シェオールの祭壇」を創り上げる。
天邪鬼を神霊としての属性を取り戻させた「天魔令呪(グリードカウント・フェアリーテイル)」もその一環。
無限闇魔神塔の跡地を選んだのも次元境界線が曖昧であり、インフェルノの地平に極めて近い地場を創りやすかったため。
(「シェオール」「ヘルヘイム」「ミクトラン」「テイネモシリ」が全て地獄の名称であるのも、
 インフェルノ(煉獄)に近い状況にするためである)
人理案件ではないためカウンターガーディアンは作動しない、実に巧妙なダンジョンではあったが
次元干渉を観測し、それを危惧したとある第二魔法の使い手によって
無限闇魔神塔ヤルダバオトに縁深いルーラー・アシャヤカトルがシェオールの祭壇に送り込まれる。

 

一方、いつものようにとある聖杯戦争に参加したひとりはいつものように英霊召喚を行う。
だがその時に召喚したサーヴァントである八百比丘尼は召喚されるや否や、英霊融合を断行。
座で得たデミ・サーヴァントの情報を元に行われたそれは、本来であれば失敗するハズであった。
だが、ひとりの「幸運体質」によって成功してしまい、八百比丘尼はマスターとして活動するに足り得る肉体を得た。

急襲

そして、遂にシェオールの儀式を行う段階に当たった所、
スキル「千里眼(偽)」によってシェオールの情報を得た八百比丘尼が急襲。
なお、八百比丘尼本人にとっては単にアンデルセンを召喚する「聖杯戦争」があれば良かっただけであり、
聖杯戦争における敵がほぼ不在であったシェオールは彼女にとって、格好の舞台だったのである。

 

彼女はハンス・クリスチャン・アンデルセンを密かに召喚、彼に自己同一性(ボンド)を与えて不死身にし、
そしてアンデルセンに3画の令呪を使用し、宝具を自分に使うことを強要した。
その時にアンデルセンの宝具を使用するには時間が必要だと知ると、
時間を稼ぐために、掠め取ったフォトニック結晶の魔力を使用してアルターエゴ・リヴァイアサンを創造。
リヴァイアサンの変化能力を使用してセンチネルたる三騎の女神サーヴァントを寝返らせる。
(なお、全員ともリヴァイアサンの変化した「外道悪徒」を偽物であると気付いていたが、
 各々の思惑を持って外道悪徒を裏切り、八百比丘尼の方に付いていた。
 ヴェルダンディはかつての契約者であるひとりの気配を感じ取ったため、
 パコロカムイは恩義を忘れ自らを反転させた外道悪徒に嫌がらせするため、
 テスカトリポカは単純に裏切った方が面白いし目立つから、という理由)

 

慌てた悪徒は急遽、イレギュラークラス・天邪鬼を召喚。
(本来は儀式を先送りしてベルゼブブを召喚するつもりだったが、
 以前の聖杯戦争で悪徒に懐いていた天邪鬼の方が割り込んできた。
 また、天邪鬼は悪徒すら気付いていなかった事実である、
 八百比丘尼の身体が平行世界の悪徒の実娘である外道人理(ひとり)であることにも気付いており、
 天邪鬼が八百比丘尼の自殺を止めるのに躍起になったのも、これが最大の理由である。)

 

サーヴァントに対しては無敵といえる天魔令呪も「令呪」には違いなく、
3画しかないためおいそれと使えない悪徒は天邪鬼に事態の収拾を命じて逃げ隠れた。
天邪鬼はかつて外道悪徒に与えられた女神の権能で自らの外見に「嘘」を付くことで、
市下卒歌に変身、その姿で外部のマスターに助けを求める。
八百比丘尼、その間隙を突いてリヴァイアサンを強化すると共に、
シェオールの祭壇を「女神転生明津ヨモツヒラサカ」に創り変えていく。

女神天征悪窟シェオール

天邪鬼は第三陣営として抗っていたアシャヤカトル、そして密かに接触を図ってきたアンデルセンと協調。
アンデルセン、この時に人間観察スキルで天邪鬼の抱く内面を面白がり、
「だったら面白い方を書いてやろう!」と密かに宝具「貴方のための物語(メルヒェン・マイネスレーベンス)」を天邪鬼のものに書き換える。

 

マスターが集い、彼らと協力した天邪鬼はアンデルセンを強制送還するために聖杯を破壊するために行動。
(なお、敵に「外道悪徒」がいるので、イレギュラークラスである天邪鬼自身が信用されない可能性があり、
 また、万能の願望器たる聖杯を破壊することは魔術師にとって受け入れ難いことなので、
 自分の正体と本来の目的はギリギリまで隠し通すことにしていた。
 また、しれっと八百比丘尼が「謎のアヴェンジャー」として自軍に混ざっていることにも気付いていたが、
 ここで八百比丘尼をとっちめても何の解決にもならないため、あえて泳がせていたのだ)

 

そして無事3騎のセンチネルを撃破し、聖杯への道を切り開く。
しかし本性を出した八百比丘尼はリヴァイアサンの変化を解除、
聖杯を強奪してヨモツヒラサカの奥底である最終FLOOR「ヨミ」へと逃げ込む。

女神転生明津ヨモツヒラサカ

強大なサーヴァントであるリヴァイアサン、彼女もまた八百比丘尼の自己同一性(ボンド)で不死身になっている。
満を持して現れた悪徒は天魔令呪でアンデルセンに掛けられた八百比丘尼の令呪を相殺、
自由になった彼は宝具「貴方のための物語(メルヒェン・マイネスレーベンス)」を天邪鬼に使用、神霊・天探女に回帰させる。
そして天探女は権能「心を読む」で八百比丘尼とリヴァイアサンの心に潜り込み、乙女の秘密(シークレットガーデン)を暴く。
それは「死滅願望」「支配欲」「幸運体質」であり、最後の幸運体質こそが勝利の鍵であると判断。

 

リヴァイアサンは八百比丘尼のアルターエゴ、更に自己同一性によって本体との繋がりは深いため、
リヴァイアサンを叩くことで八百比丘尼にダメージをフィードバックさせ、彼女本体に天魔令呪が効く状態を創り上げる。
そして天魔令呪を八百比丘尼に使用、彼女のスキルであり、デミ・サーヴァントを維持している「幸運体質」を無効化させた。
デミ・サーヴァント状態が解除されひとりは自由になり、リヴァイアサンは消滅。
八百比丘尼はまだ死ねないことに恨み節を叫びながら、座へと戻っていった。

 

そして、シェオール自体もまたヴァルター・アンシェイドの仕掛けた爆弾により崩壊、こうして一つの話は結末を迎えたのである。

 
ちなみに

「明津」は神奈川県に実在する地名であり、川沿いの土地のことを指す言葉から来たもの。
同じく川沿いの土地を由来とする地名が東京都内を始め、
同じ読みの「阿久津」「圷」「安久津」などとして東北地方・関東地方の各地に存在している。
ゆえに八百比丘尼は冥府の川、即ち三途の川から連想してこの名称を付けたのだ。
リヴァイアサンも元ネタは海魔、水と連想する土地であればその能力も十全に発揮できる。
(ただし黄泉比良坂と三途の川は厳密には別物である。その辺りは混同しないように)

 

三途の川伝承は日本だけのものではなく、世界各地にも存在する。
有名なのはギリシャ神話の「ステュクス」であろう。地底の川であり、
かのアキレウスは母親に踵を握られ逆さに浸されたことにより、不死性を得たとされる。
そのステュクスの支流の一つである「コキュートス」は嘆きの川と呼ばれ、
ダンテ・アリギエーリの「神曲」においては堕天使ルシファーなど大罪人を幽閉する氷獄となっている。
他にも神曲においてはアケローン川が登場し、冥府の船渡しカロンが船で罪人を待っている。
このように川の伝承は死後の世界とは切っても切れないものであり、
故に「女神転生明津」と名称されるに至ったのだ。

 

そして、神奈川県の「明津村」はかつて、別の名前であったとされる記録が残っている。

 

―――「悪津村」と。

補足

冒頭に挿入されたアンデルセンの詩歌。これは外道悪徒のことを指しているように見せかけていたが、実際はラスボスである八百比丘尼のことを指した批評。
当時はこの詩を解読することで、八百比丘尼の正体のヒントを掴む切欠となるものだった。
………が、流石に遠回り過ぎた模様。

 
 

 ―――そいつ(八百比丘尼)の話をしよう。

 

 欲に溺れる(人魚を喰らう)者には(不死)を。常識にして、ありきたりな帰結。
 人の身では得られぬ「もの」(不老不死)を得る、それは代償が伴うものだ。

 

 そいつは言った、「■■(結末)が欲しい」と。
 ならばと言った、「代償(贖罪)()え」と。

 

 これは一時の情欲(食欲)に溺れ失ったもの()を、取り戻そうとする話である。
 だが、それを欲したのはそいつの勝手だろう。
 その結果、どのような末路(不老不死)を歩んだのかもまた因果応報というやつだ。

 

 哀れな子羊に、救いは訪れるのか。ハッピーエンドはあるのか。
 お代は見てのお帰り、愚者たちの喜劇を存分に愉しんでいくことだな!