永久伝承凍土ブィリーナ

Last-modified: 2019-01-14 (月) 00:12:27

激甚災害点 永久伝承凍土ブィリーナ

 
全土埋没(ぜんどまいぼつ)吹雪の陣(ふぶきのじん)

それが、第二の聖地キエフ(フタローイ・エルサレム)を襲った災厄の名称である。
 

告知:シナリオ
告知:味方陣営
告知:敵陣営

 

概要

開催日時:3月25日(日) 朝9:00~
定員:4名(希望者多数の場合、定員7名のFGO式にスライドします)
形式:ダンジョン式
イベント:高難度予定(霊地使用不可)
推定時間:16時間以内(交戦3回)
参加条件:なし
募集要項:経験者向けです

ログ

https://yahoo.jp/box/XbDRvS

参加者

なしセイバー/シンモラ
シンシアランサー/バルバラ・ツェリスカ
ストリード・ミトリカル・ブーリテレクキャスター/『アリス』
アウデオキャスター/聖イオアン・カッシアン
ブラムス=トーカー?キャスター/スクナビコナ?
雪野寺小白アヴェンジャー/カグツチ
クリスカラ・アラガンスシールダー/ウィーラーフ

キエフの聖杯戦争(NPC)

セイバーアルテラワシリーサ(マスター)
アーチャーアリアドネ外道地獄
ランサーヴォルフ・フセスラヴィエヴィチフラウス・ドレッセル
ライダートゥガーリン〔トゥルー〕関ヶ原大紅
キャスターウェン・カムイ〔バーバ・ヤーガ〕ケットシー・ストレイキャッツ
アサシン嘘像のハサン・サッバーハムスカリン・ロッセッティ
バーサーカーイリヤー・ムーロメツイサナ・ダヴィード・ユグドミレニア
アークエネミー冬将軍アンティ・フォン・アレンスキー
アヴェンジャーキエフのオリガなし

挿入童話

プロローグ【イリヤー・ムーロメツの目覚め】

【イリヤー・ムーロメツの目覚め】

 

 カラチャーロヴォなる村に住む、心正しい両親の間に生まれたイリヤー・イワーノヴィチ、
 人呼んでイリヤー・ムーロメツという。
 イリヤーは足はあれど歩けず、両腕は萎えて這えず、齢重ねてはや30の年を迎える。

 

 父と母が辛い畑仕事に性を出す中、イリヤーが一人留守番をしていると、三人の老人が訪ねてきて言った。
「イリヤー、起きよ。わしらは長旅で空腹に苛まれておる。貴殿の手でたっぷりと飲み食いさせておくれ」
 だが、イリヤーは首を振り答える。
「旅人よ、私はあなた方を歓迎します。ですが生憎のこと、私の手足は三十年もの間、一寸たりとも動きません。
 ですから、私の手であなた方を満たすことはできません」

 

 だが、三人の老人は続ける。「立て、イリヤー。ひもじいわしらに貴殿の手で食事をふるまうのだ」
 イリヤーは再度、首を振り答える。
「それができれば私も嬉しい。けれど、手足がきかないのです。この三十年、窓の側から動くこと叶いません。
 ですから、私の手であなた方をもてなすことはできません」

 

 三人の老人は続ける。「貴殿が立つべきときはとうに来たのだ、イリヤー。
 その手は既に血が通い、その足は大地を踏みしめよう。そして、わしらの空腹を満たすのだ」

 

 ならばとイリヤーはそれに従う。
 生まれてこの方ぴくりとも動かなかったその手足はたちまち気力に満ち、イリヤーの思うように動く。
 その奇跡に感激したイリヤーは、三人の聖像(イコン)に十字を切り、神に感謝し、食事と酒でもてなした。

 

 三人は言う。「イリヤーよ、その黄金で縁取りされた杯に酒を満たし、それを二度飲み干すのだ」
 イリヤーはその言葉に従い、自らの手で杯に酒を満たし、それをぐっと飲み干した。
 一杯目でイリヤーは人の知を超えた金剛力を手にし、二杯目でそれが半分になったのを感じ取る。

 

 そして、三人はイリヤーに告げる。

 

「心優しきイリヤーよ。世間知らずのイリヤーよ。主のために、ロシアのためにあるのだ。
 お前は戦で殺されることなく、この世では死なぬさだめだ。
 ボガトゥリとなり、守護者として、そのいのちを尽くすさだめなのだ―――」

 

第一章【アリョーシャ・ポポーヴィチと竜の子トゥガーリン】

【アリョーシャ・ポポーヴィチと竜の子トゥガーリン】

 

 目の前に広がるのはただただ広い草原、そこに一筋の道が切り裂くように通っている。
 その道には二人の勇士が馬を走らせていた。
 キエフ第三位の勇士アリョーシャ・ポポーヴィチ、そしてそのお供のエーキムだ。

 

 彼等二人は何やら焦った表情で道筋を急いでいる。
 目指すは心優しきウラジーミル公の統治するキエフの街、アリョーシャ達ボガトゥリの集う本拠地だ。
 だが、今はアリョーシャを始めイリヤー・ムーロメツ、ドブルィニャ・ニキーティチと言った英雄はみな街を空けている。
 その隙に異変が起こった、というのだ。

 

 しばらく走っていると、ようやくキエフの街が見えてきた。

 

 高壁の門を抜け、人が囁き合う街道を抜け、キエフのほぼ中心にあるウラミジール公の館の扉を勢い良く押し開ける。
 そこには、吹き抜けになっているロビーの中央で、人、家畜、家具、清濁問わずあらゆる物が積み重なってできた大きな山があった。
 その頂点には偉大なる太陽公ウラミジールが苦しそうにうめき、そしてそんな彼を椅子代わりにして一人の女性が座り込んでいる。

 

 女性はふぅ、と口から炎を軽く吹く。
 アリョーシャ達はすらりと剣を引き抜き、身構えた。
 それに気付いた女性は軽く笑い、嬉しそうに翼をパタパタとはためかせる。

 

「……遅かったですねー、大いなる勇士アリョーシャ・ポポーヴィチ。
 約束通り、このトゥガーリン・ズメエヴィチ、文字通り武功の山を積み立ててキエフに参上しましたよ?」

第二章【イリヤー・ムーロメツとウラジーミル大公の不和】

【イリヤー・ムーロメツとウラジーミル大公の不和】

 

 心優しきウラジーミル大公は勇士たちをねぎらい、またすべての身分のものが集う名誉ある酒宴を開催する。
 しかし、彼はただひとり、最も優れた勇士イリヤー・ムーロメツを招くのをお忘れになられた。
 それに激怒したイリヤーは絹糸の弓に鋼の矢じりを番え、聖堂の金の円屋根(ドーム)を射抜き、告げる。

 

「酒飲みの貧者どもよ、この金の円屋根の破片を拾え。それで酒代とし、私と一緒に酒場で飲もう」
 貧者のみならず勇士たちは急いで金の破片をかき集め、イリヤーのもとに駆け寄り喝采する。
 ありがたや。我らがイリヤー・ムーロメツ、ありがたや!

 

 事を知ったウラジーミル大公はたいそう慌てなされ、
「皆の者、知恵を絞ってくれ。この名誉ある酒宴の席に、イリヤーをいかに招くか、誰に招かせるかを考えておくれ」と問う。
 それに対し、イリヤーをよく知るアリョーシャ・ポポーヴィチは告げる。
「それならばドブルィニャ・ニキーティチがいい。彼はイリヤーが神に誓いし義兄弟だ。彼の言う事なら聞きましょう」

 

 酒場に使わされたドブルィニャは義兄弟に告げる。
「前に誓いました、兄弟はお互いの言うことに従うと。義兄弟イリヤー、今は私に従って欲しい」
 イリヤーは義兄弟ドブルィニャに告げる。
「なるほど良い者を使わされた。義兄弟であれば、神に誓って私はお前に従わねばならぬ。
 義兄弟でなければ、私は言うことを聞く必要などなかった」

 

 イリヤーはドブルィニャと共に、ウラジーミル大公の名誉ある酒宴の席につく。 
 王より席を譲られ、誰よりも上座にて大杯の酒を飲み干し、たらふく飲み食いしてうかれて騒ぐ。

 

 そして、顔色を伺うウラジーミル大公にイリヤーは告げた。
「よくぞドブルィニャ・ニキーティチをよこされた。最も良い者を使わされた。
 彼が義兄弟でなくば、参ることはないどころか、絹糸の弓にて公とお妃を射抜くつもりでした。
 あの大きな罪を、今はもうお許しいたしましょう」

第三章【ジェド・マロース】

【ジェド・マロース】

 

 少女は手に息を吐いていた。いじわるな継母に家から追い出されたのだ。
 身体が冷え、かちかちと歯が当たる。木の枝も凍り、時折割れるような音を出す極寒の中である。
 いちだんと冷えた風が当たり、少女は顔を上げる。

 

「娘さん、あたたかいかね?」

 

 ふと、空からそう声を掛けられる。
 少女はその声の主に応える。

 

「ええ、あたたかいわ。冬将軍のマロースさま」

 

 彼の気を害してはいけない、気立てのいい少女はそう思ったのだ。
 少女の吐く息がダイヤモンドの粉のようにきらめいてゆく。

 

「あたたかいか。これでもかい、若く綺麗な娘よ」

 

 冬将軍マロースは空から降りると、少女に向けて歩みを進める。
 ぱき、ぱき、と木々が凍り折れ、吹き付ける寒風はますますその勢いを強める。
 そして、ジェド・マロースは少女をその冷たい双腕で包み込んだ。

 

 ―――次の日。
 木々の下で少女は上等な毛皮の外套、そして美しい刺繍のヴェールを着て、
 高価なアクセサリーや金銀財宝の贈り物のたくさん入った箱のそばで、安心しきった寝息を立てていた。

断章【うるわしのワシリーサ】

【うるわしのワシリーサ】

 

 とある商人の娘の八歳のワシリーサは、母親の死ぬ間際に枕元へと呼び寄せられ、言葉を掛けられます。
「愛するワシリーサよ、お母さんの最後の言葉をよく覚えておき。
 この人形をあげます。肌身離さず、誰にも見せないようにし、困ったことが起きたらお人形にご馳走して相談しなさい。
 お人形はお腹がいっぱいになると、あなたを助ける方法を見つけてくれるでしょう」
 そこまで言い終えて娘にキスをすると、母親は息を引き取りました。

 

 商人は一人娘ワシリーサのことを想い、ワシリーサのために同じ年頃の二人娘を持つ継母と結婚しました。
 しかしこの継母と二人娘は意地悪で、美しいワシリーサを妬み、仕事という仕事を押し付けてワシリーサを苛めます。
 けれどワシリーサはそれでも美しくなり、ふんぞり返る継母と二人娘は歪んだ心なので日に日に醜くなっていきます。
 ワシリーサの秘密はあの人形でした。毎日の食事の一番美味しいところをとっておき、人形に食べさせてあげるのです。
 すると人形はワシリーサの良き相談相手となり、毎日の仕事を夜のうちに済ませておいてくれます。
 さらに日焼け止めの薬草まで教えてくれ、ワシリーサは涼しい木陰で人形とお話しているだけで良かったのでした。

 

 業を煮やした継母は商人が旅に出ている間、人食い魔女バーバ・ヤーガの森に何かと用事を付け、ワシリーサを何度か使わせます。
 しかし人形に正しい道を教えてもらい、ワシリーサはバーバ・ヤーガの小屋を避け無事に帰ってきます。
 とうとう継母はワシリーサにバーバ・ヤーガの小屋へと向かい、魔法の火種を貰ってくるように告げます。
 泣きじゃくるワシリーサに人形は告げました。「怖がらなくて良いんだ、うるわしのワシリーサ。ただし、私を手放してはいけないよ」

 

 そしてワシリーサは人の骨で彩られたバーバ・ヤーガの小屋へと向かいます。
 バーバ・ヤーガはワシリーサの頼みを聞くと、小屋の片付けと、洗濯と、小麦五俵の脱穀と、夕飯の支度を命じ、できなければ食べると脅します。
 しかし次の日、それらの仕事が人形の手助けによって済まされ、文句の付けようもなかったのでバーバ・ヤーガは舌打ちしました。
 バーバ・ヤーガは次の日は追加でケシの実の泥を落とすよう命じるものの、人形の手助けでそれも済ませてしまいます。

 

 さらに次の日、ワシリーサにどういったことか問い詰めると、ワシリーサは母親の祝福が守ってくれていると返します
 バーバ・ヤーガは目の中が燃えるしゃれこうべをワシリーサに手渡すと、忌々しげにワシリーサを追い出します。

 

「祝福された人間に用はないよ。さぁ、この火種を持ってお帰り」

第四章【ヴォルフ・フセスラヴィエヴィチ】

【ヴォルフ・フセスラヴィエヴィチ】

 

 年若い姫マルファ・フセスラヴィエヴナ、彼女は毒蛇に白い太腿を打たれると子種を宿す。
 明るい月が照り渡るキエフに生まれるは剛力無双の勇士ヴォルフ・フセスラヴィエヴィチ。
 生まれてから一時間半も経つと、赤子は絹の帯にダマスク鋼の鎧、黄金の兜に三百プード(4800kg)の戦槌矛を母に求める。

 

 七にして読み書きを覚え、十にして変身術を覚え、十二になると足掛け三年で七千もの家来を得る。
 齢十五となる頃、天竺の王サルトゥイク・スタヴルーリエヴィチとその妃アズヴァーコヴナこと若きエレーナが、
 出陣の準備を整え、キエフを攻め込み、教会を焼き払い、修道院を略奪すると噂が流れる。

 

 さて勇んでヴォルフは七千人の勇士と共に天竺に攻め込む。
 しかし天竺を守るは隙間なき白い城壁。ヴォルフは頭を働かせ、己と部下を蟻に変えて忍び込ませる。
 七千人の若武者を元の姿に戻すと、戦装束に身を固めて部下たちに下知をくだした。

 

「さて、命知らずの若武者どもよ。天竺の国をのし歩き。
 老いも若きも斬り殺し。国中に一粒の人種を残すな。
 ただし、各々の好みにまかせ、数を数えてきっかり七千人の美しい乙女たちの命だけは助けて己が妻とせよ」

 

 そしてヴォルフは金銀に包まれた宮殿の鉄の扉を蹴破り、
 天竺の王サルトゥイク・スタヴルーリエヴィチの白き腕をひねり上げ、床に投げつけて粉々に砕き、
 玉座につくと若きエレーナを妻に娶り、金貨銀貨の樽を空け、部下一人について10万頭ずつ馬の群れと牛の群れを分け与えた。

 

 若きエレーナはなぜサルトゥイクをあのように殺したのかと問うと、天竺の王ヴォルフ・フセスラヴィエヴィチは答えられた。

 

「王たるものを長いもので打ったり、首を斬ってはならぬだろう?」

断章【セファールの白い巨人】

【セファールの白い巨人】

 

 地表が燃えている。
 世界が燃えている。

 

 文明らしきものは全て踏みつぶされた。
 知性あるものは隷属さえ許されなかった。

 

 早すぎる、と予言者はおののいた。
 戦うのだ、と支配者はふるいたった。
 手遅れだ、と学者たちはあきらめた。

 

 でも、少しぐらい残るだろう、とアナタたちは楽観した。

 

 ――――――それが、姿を現すまでは。

 

 *

 

 時はB.C.12000。流星は惑星に牙を剥いた。
 その名を捕食遊星ヴェルバー02。文明捕食体。旧き神々ですら敵わぬもの。
 地上を旧き支配者が如く、喰らい、破壊し尽くす「それ」は、―――星の願い、「世界を救う聖剣」の前に敗れ去る。 
 その際に本体は月へ落着し、そして地上侵略の触覚たる「セファールの巨神」は砕け、世界へと散らばった。

 

 そして巨神の頭脳体は、サハラ砂漠にて匈奴(フンヌ)の末裔に発見され、
 戦うべき機構であったそれは、フン族の長として広大な草原を駆け抜け、「神の懲罰」と呼び称えられる。
 ヒトでなかったそれは、ヒトとして生き、そして、ヒトとして死んだ。

 

 ―――その五世紀後。
 「頭脳体」無きはずの「細胞」の一つが、若きマルファ姫の胎に宿り。
 ヒトとして急速に成長し、ヒトとして大成し、頭脳体と同様に歴史に名を残したことは。

 

 正に、運命的(Fate)というしかないだろう。

第五章【キエフのオリガ】

【キエフのオリガ】

 

 10世紀頃のおはなし。年若いキエフ公イーゴリは狩場の河を渡ろうと船を探し歩くと、小舟を漕ぐ美しい娘を見かけます。
 イーゴリは言います。「私が結婚できる年齢になったら、私の后となって欲しい」
 しかし、その娘は言い返します。「私はまだ若く、高貴な生まれではありません」
 娘は続けます。「しかし、おまえは知るべきです。私は侮辱に耐えるより、川に飛び込むほうがよいと考えていることを」
 イーゴリは彼女のはっきりとした考えと態度に言い返すことが出来ず、そのまま舟を漕いでゆく彼女を見送ります。

 

 そして結婚できる年齢となったイーゴリはあらゆる貴族の縁談を断り、
 あの日の小舟を漕ぐ少女に礼節を尽くし、使者を出して、婚姻を願うとその少女はそれを受け入れました。
 美しく成長した、その女性の名をオリガと言います。

 

 しかしオリガとの間に子を成して直ぐに、イーゴリはデレヴリャーネ族の反乱にて戦死します。
 女子供と侮り政権掌握を目論む貴族たちの中、オリガは後ろ盾もなく、細腕一つで戦うことを決意しました。
 先ずデレヴャラーネ族に四段階の復讐、その酋長を船ごと生き埋めにし、本拠地を征服した上で焼き払います。
 そして我が子スヴャトスラフをキエフ公に据え、キリスト教をキエフに受け入れるなどし、
 愛したイーゴリ公との息子が成人するまで、彼女はその人生を懸けてキエフを守り抜きます。
 その後もオリガは病没するまでの間、息子が遠征している間などは、キエフの統治などをしていたそうです。

 

 ―――ロシア正教会。
 その礎を築いた、スヴャトスラフの息子であるウラジーミル一世は、「ブィリーナ」において、名君と讃えられます。
 そしてオリガもまた亜使徒の称号を持つものとして、ロシア初期の聖人として今の今まで語り継がれています―――

エピローグ【イリヤー・ムーロメツと3つの道】

【イリヤー・ムーロメツと3つの道】

 

 ある時イリヤー・ムーロメツが広路を行くと、道が三つに分かれる辻に不思議な石の道標が立っていた。
「第一の道を行けば、死を得るべし。第二の道を行けば、愛を得るべし。第三の道を行けば、富を得るべし」
 イリヤーは驚いて馬を止め、頭を振ってこうひとりごちた。

 

「どうして富を得る道などへ行こう。私には愛する家族などいないのだ。誰のために金銀や着物を買ってやるのだ。
 どうして愛を得る道などへ行こう。私はもう老いたる身の上。若きを娶れば人に盗まれ、老いを娶れば厄介を背負うもの。
 雄々しい勇士たる私は死を得る道に行くとしようか。もうずいぶんと生き永らえ、あちこちを巡り歩いたのだから」

 

 かくして死の道へと踏み入れたイリヤー。
 呪われたカレリアの地を駆け抜け、富める天竺まで行き着かぬうちにスモレンスクの沼地に差し掛かると、
 そこには四万人の盗賊、そして泥棒や追い剥ぎがたむろしていた。
 それを容易く蹴散らすと盗賊の種一つ残さず平らげ、道標に取って返し書き加える。「第一の道の賊は平らげたり」

 

 そして愛を得る道に踏み入れるや、白石づくりの宮殿にて美しい乙女が現れ、イリヤーの手を取りもてなした。
 乙女は寝台へと導くも、勇士は告げる。「美しい乙女よ。自分こそそこの寝床で休むがよい」
 寝台へと乙女を投げつけるとくるりと寝台が回り(原文ママ)、イリヤーは乙女を残してその穴から12人の勇士を救い出す。

 

 「第二の道の賊は平らげたり」勇士は取って返し、富の道へと踏み入れる。
 広野にあった3つの穴蔵から金銀財宝を掘り起こし、乞食やみなしごたちに分け与える。「第三の道、平らげたり」

 

事の顛末

ヘルト・クリーガー

80年前――1930年台、冬木の第三次聖杯戦争においてナチス・ドイツの出資する魔術協会「祖国遺産機関(アーネンエルベ)」はアインツベルンと結託して当たる。
(なお、ナチス・ドイツはApo世界ではユグドミレニアと結託している)
しかしアインツベルンは「復讐者」のクラスを用いてアーネンエルベをも出し抜こうとしており、結果は見事に失敗。
アーネンエルベは渋々聖杯獲得を諦め、アインツベルンのホムンクルスと英霊のデータのみを得てドイツへと逃げ帰る。

 

そして1943年、聖杯戦争のデータを元にアーネンエルベは人造英霊兵団ヘルト・クリーガーの基礎設計を行う。
既にデミ・サーヴァント技術の一環として「タイプ・リヒテナウアー」などは戦線に投入されており、
聖杯戦争にも14騎が投入されるも、「魔王」のサーヴァントによって一蹴されていた。
ゆえに、寿命や適合性などの欠点を解消したホムンクルスタイプのヘルト・クリーガーの量産を目論んでいたのである。
しかしその次の年に実証試験を眼前にしながら、戦況の悪化に従い総統は金食い虫である「祖国遺産機関」の解体を決定。

 

祖国英霊召喚部門主導責任者であったヘルムート・アデナウアーはそれに反発、
ドイツに遺された資産を回収、また政治家と共に私財をなげうって魔術協会「無限埋葬機関」を設立、
数々の無辜の民衆を犠牲とした実験の果てに、1945年――とある戦場跡にて偶然が重なり、聖杯が降臨。
彼らはその地で聖杯戦争を勃発させ、人造英霊0号「タイプ・レギオン」にて連合国に降伏した祖国を再興させることを目論む。

 

……しかし、「レギオン」の降臨は失敗、
聖杯も魔術協会「時計塔」の魔術師らによって破壊され、ヘルムート・アデナウアー自身もその場で命を落とす。
そしてドイツは連合国の4ヶ国により分割統治され、後にベルリンの壁により東西に分かたれる。
最早、彼の国には魔術協会一つ運営する国力など遺されてはいなかった。

 

無限埋葬機関は地中海に存在する三大魔術教会・移動石柩「彷徨海」へと吸収される。
肉体改造を主な研究対象とする彷徨海にとって、アインツベルンのホムンクルス技術、
およびナチス・ドイツの人造英霊兵団のデータは喉から手が出るほど欲しいものだったのである。

 

70年後、元・無限埋葬機関の魔術師7人の手により、彷徨海にて7体のヘルト・クリーガーがロールアウトされる。
そのうち18733号「タイプ・シグルド」は魔術師を殺して彷徨海を脱走、18737号「タイプ・アリョーシャ」はアトラス院に渡り独自の人生を歩み始める。
そして18738号「タイプ・メレアグロス」は無限埋葬機関の保有していた秘蹟を回収する責務を了承する。
18739号「タイプ・アルテミス」、アンティ・フォン・アレンスキーは70年前の聖杯戦争の舞台となった地から聖杯を回収、
それを用いてキエフにて聖杯戦争――アークエネミーの祭壇、「ブィリーナ」を開催する。

ヘルト・クリーガーコード

18733号:セイバー「シグルド」
18734号:バーサーカー「?」
18735号:キャスター「テュケー」
18736号:アサシン「?」
18737号:ライダー「アリョーシャ」ライトニング・ブレット
18738号:ランサー「メレアグロス」フラウス・ドレッセル
18739号:アーチャ「アルテミス」アンティ・フォン・アレンスキー(ティティ)

 

なお、これ以前のナンバーは全て失敗作として廃棄されている。
また、これ以降のナンバーの生産予定は現時点では存在しない。

キエフの聖杯戦争

そしてティティはサーヴァント「アークエネミー」を召喚、アークエネミーを「裁定者」、
即ちルールマスターに据えた聖杯戦争を開幕。
ヘルト・クリーガーであるライトニング・ブレット、およびフラウス・ドレッセルがキエフに来るように仕向け、
自身はマスターであると共にアーチャーとして再召喚、
聖杯のバックアップを受けるようにして宝具の使用に不都合が出ないようにした。
そして自身、ブレット、フラウスに外来の4人のマスター、合計7名で聖杯戦争を進めることを画策する。

 

しかし、ライトニング・ブレットは来なかった。
その代わりに「世界の裏側」から来訪した幻想種スネグーラチカの一体に令呪が宿り、
その少女はロシア人の少女の名前「ワシリーサ」を名乗る。

 

召喚されたサーヴァントのうち、「セイバー」「ランサー」「ライダー」「アサシン」「バーサーカー」はティティが選択したものであり、また「キャスター」はイレギュラーのようなものなので、実は参加者の意思で選択されたサーヴァントは一騎も存在しない。
このうち「アサシン」は70年前の聖杯戦争に召喚されたものを、同一の聖杯で二度召喚されている。
アサシンの宝具「変想偽手」を使用し、フラウスの目を惑わすことを目論んだティティの意向によるものだ。

 

そして、冬将軍の宝具「全土埋没、吹雪の陣」によって視界が良くない中、キエフの聖杯戦争が勃発。
自らを「外道地獄」に変想したティティとアークエネミー・冬将軍はその強大な力量差を以て、
ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーのマスター4人を殺害、マスター権を奪取する。
それに対抗し、フラウス、ワシリーサ、そしてティティのアサシンの変想した「外道地獄」は結託する。

永久伝承凍土ブィリーナ

そして、フラウス・ドレッセルの呼びかけに応じて集まった補充マスター。
彼等はフラウスの持つ聖杯によってサーヴァントを召喚、フラウス、ワシリーサ、外道地獄の3人に協力する。
アーチャー・アリアドネの持つ宝具「解れゆく願いの糸(エテレイン)」、ミノタウロスの迷宮を導く赤い糸。
その宝具の真名解放により進撃を可能とし、一行は吹雪の中を進む。

 

先ず差し向けられたのが、ライダー・トゥガーリン〔トゥルー〕、そしてキャスター・バーバ・ヤーガ。
キエフを焼き尽くす悪竜トゥガーリンを自称する英霊トゥゴルカン、それを撃破する。
だが、外道地獄に変想していたアサシン・嘘像のハサンによってワシリーサが背後から奇襲され、脱落。
マスターを失ったセイバー・アルテラが冬将軍の手に落ちてしまう。
そしてアリアドネという英霊に偽装していたティティはかつての同胞であるフラウス・ドレッセルの前に姿を現し、
アリアドネの糸を手渡し、キエフ市街にて待つと告げてキャスター、アサシンと共に姿を晦ます。

 

セイバーとアーチャー、キエフの聖杯戦争における三騎士を失った一行は更に進む。
そこで待ち受けたのはアサシン、キャスター、そしてバーサーカー・イリヤー・ムーロメツ。
キエフ最強の英雄であるイリヤーもまた冬将軍の手に落ち、「狂化」を付与されて襲ってくる。
最強の英雄との激戦、それに勝利してアサシン・嘘像のハサン、そしてバーサーカー・イリヤーを撃破。
……だが、キエフの「抑止力」足り得るイリヤー・ムーロメツを倒したということは、
冬将軍に対抗する力が消滅したということも同義であり、倒されることすら冬将軍の軍略の内であった。

 

……そして、冬将軍は更に軍略を進める。
宝具「全土凍結、極夜の陣」を発動、激甚災害の規模が地球全土へと及ぶ。

陽光凍結、白夜の陣

冬将軍との正面激突、キャスター、セイバー、ティティの4騎に加えて無数のズィーマー・ソルダートが相対する。
「冬の軍略」で冬将軍陣営には真っ当にダメージが入らず、吹雪を盾に耐える事は出来るものの、
セイバーの「軍神の剣」、キャスターの「全て塗潰す三色の騎士」、ティティの「月女神の愛矢憎矢」により、
一行は不利な立場に立たされる。

 

………そこに現れたのは、ワシリーサこと「幻想種スネグーラチカ」。
冬将軍の登場によって世界の裏側から引き出された妖精である。
ワシリーサはセイバーと言葉を交わすと、その身を挺して、自らは「世界の裏側」に戻り、その吹雪を止める。

 

……だが、冬将軍は第三宝具「陽光凍結、白夜の陣」を発動。
「極夜」と「白夜」は表裏一体、白夜を止めようとも極夜、極夜を止めようとも白夜が訪れる。
つまり、ワシリーサの挺身は無駄だったのだ。
更に冬将軍の手によってフラウスの腕が切り落とされてその令呪が奪われ、
キエフの最後のサーヴァントであるランサー・ヴォルフ・フセスラヴィエヴィチすら冬将軍の手に落ちてしまう。
ヴォルフはそのまま宝具「天竺狼王」を発動、一行に牙を剥いた。

 

だが、フラウス・ドレッセルはストリード・ミトリカル・ブーリデレクの声で再起、
メレアグロスの宝具「獣命穿つ苦悶の槍(カリュドーン・スレイヤー)」を発動。
更にアルテラから借り受けたマルスの剣、マルスの守護獣は「狼」であり、狼となったヴォルフを引き戻す。

 

ヴォルフはヴェルバー02の細胞が生を受けた英霊であり、軍神の剣でアルテラと同調。
アルテラとヴォルフの手によって放たれる「涙の星、軍神の剣」が冬将軍に直撃。
冬将軍がキエフの聖杯戦争の英霊と交わしていた全ての契約が、これによって「破壊」される。
キャスター、ランサー、セイバーはこれによって自由になり、冬将軍に反目。
そして、軍神の剣の残滓によってキエフ第八の英霊──アヴェンジャー・キエフのオリガが召喚される。

 

オリガの宝具によって破壊される「白夜」。
即座に「極夜」に戻ろうとするものの、バーバ・ヤーガの「全て塗潰す三色の騎士」によって
「昼」に固定されたことで、「白夜」と「極夜」も失われ、冬将軍は丸裸にされる。
………そして、アークエネミー・冬将軍は漸く、長い戦いの末に撃破され、
フラウスが聖杯に願ったことによってこの激甚災害が無かった事にされ、世界は平穏を取り戻したのであった。

エピローグ-2【悪しきカムイ】

【悪しきカムイ】

 

吹雪のキャスター:「………きひひっ」
吹雪のキャスター:「出遅れたようだね! ヘルト・クリーガー18737号〔タイプ・アリョーシャ〕」
吹雪のキャスター:「それともこう言うべきなのかなかな、ライトニング・ブレット!」
ライトニング・ブレット:「………」
ライトニング・ブレット:「いや、これは僕の物語じゃない―――僕が出る幕では、なかったから」
吹雪のキャスター:「おやおや? 〔タイプ・アルテミス〕……アンティフォナの熱烈なラブコールを知っていてなお?」
吹雪のキャスター:「トゥガーリン。そしてイリヤー・ムーロメツ。明らかにアリョーシャ・ポポーヴィチを意識しての配役(キャスト)だよだよ!?」
ライトニング・ブレット:「ううん、これは僕の舞台ではない。〔タイプ・メレアグロス〕の舞台だったんだ」
ライトニング・ブレット:「少なくとも、ティティの手でイリヤー・ムーロメツが主役の座から降ろされた時点で、僕の出番ではなかったんだ」
吹雪のキャスター:「へぇ? アリョーシャ・ポポーヴィチとイリヤー・ムーロメツにはそこまで密接な関係がありありかな?」
ライトニング・ブレット:「―――ああ、そうだね」
ライトニング・ブレット:「覚えているかな、ティティのヘルト・クリーガーの説明を」
ライトニング・ブレット:「ティティはこう言った」
ライトニング・ブレット:「ヘルト・クリーガー総勢14騎。その全てが神に連なる英霊の血を得ていた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
ライトニング・ブレット:「それは、アリョーシャ・ポポーヴィチも変わらない―――」
ライトニング・ブレット:「アリョーシャという男は、イリヤー・ムーロメツを導くための、サンスクリット神話で言う所の「転生体(アヴァターラ)」だったんだ」
ライトニング・ブレット:「イリヤー・ムーロメツが道を踏み外さぬよう、世界が遣わした使徒だった」
吹雪のキャスター:「おっどろきー! あはははは!」
吹雪のキャスター:「んんー? それじゃ、アリョーシャはどの神様の化身だったのかな!? かな!?」
ライトニング・ブレット:「さて、何だろうね。ヒントはこれまでにも幾つも出てたはずだけど」
吹雪のキャスター:「………くすくすくす、きひひひひひひひ!」
吹雪のキャスター:「そうだね、キエフ第「()」位の英雄様。それともとも、ご本尊様って言うべきかな!?」
吹雪のキャスター:「思わぬ偶然もあったものかな! それとも何等かの意思? ともかく私としては崇めなきゃね!」
ライトニング・ブレット:「そこまで大層に持ち上げられるようなものでもないよ。何より、アリョーシャは弱い、人間だった」
吹雪のキャスター:「へぇー? キエフの守護者でありながら、弱い!? またまたご冗談を!」
ライトニング・ブレット:「…………そうだね。いい機会だし、誰かに話してしまっても良いかも知れない」
ライトニング・ブレット:「あの日の、本当の出来事を―――ブィリーナ〔アリョーシャ・ポポーヴィチと竜の子トゥガーリン〕の真実を」
ライトニング・ブレット:「……………………」
ライトニング・ブレット:「トゥガーリン・ズメエヴィチという一匹の竜種がいた」
ライトニング・ブレット:「半人半竜の彼女は人の世間に馴染めず、しかしそれでも人と共に歩みたいという思いを胸に懐き」
ライトニング・ブレット:「……そんな彼女をプロデュースするため、その妹のクラサ・ジラントヴナが一肌を脱いだ」
ライトニング・ブレット:「クラサ・ジラントヴナはトゥガーリン・ズメエヴィチを振る舞い、キエフの勇士アリョーシャの前で力を見せた」
ライトニング・ブレット:「けどね、人と竜の価値観は違う」
ライトニング・ブレット:「竜の力の魅せ方―――それは、キエフを蹂躙すること(・・・・・・・・・・)だった」
ライトニング・ブレット:「そしてクラサ・ジラントヴナは鼻を高くし、トゥガーリンにキエフに向かうように告げる―――」
吹雪のキャスター:「きひひひひ、なるほどなるほど!」
吹雪のキャスター:「ブィリーナの一節〔アリョーシャ・ポポーヴィチと竜の子トゥガーリン〕のあらすじは有名だもの!」
吹雪のキャスター:「そこからアリョーシャ・ポポーヴィチはトゥガーリン・ズメエヴィチを討伐してしまう! 悲しいねぇねぇ!」
吹雪のキャスター:「でも話を聞く限り、キエフに現れたのはクラサ! トゥガーリンの妹、クラサ・ジラントヴナ!」
吹雪のキャスター:「退治されたのはトゥガーリン・ズメエヴィチ! 人違いに気づかないなんて間抜けだねぇ!」
ライトニング・ブレット:「…………違うんだ(・・・・)
ライトニング・ブレット:「トゥガーリンを殺したのは(・・・・・・・・・・・・)アリョーシャじゃなかった(・・・・・・・・・・・・)
ライトニング・ブレット:「幾ら、神の化身であろうと―――アリョーシャ・ポポーヴィチはそこまで強い、人間ではなかった」
ライトニング・ブレット:「アリョーシャ・ポポーヴィチは(・・・・・・・・・・・・・・)イリヤー・ムーロメツに(・・・・・・・・・・・)助けを求めたんだ(・・・・・・・・)
吹雪のキャスター:「―――――」
吹雪のキャスター:「……きひっ。じゃあ、もしかしてして?」
ライトニング・ブレット:「そう。イリヤー・ムーロメツはクラサ・ジラントヴナの顔を、その翼を、知らなかった」
ライトニング・ブレット:「―――ただ、悪意なく。人のために、勇士のためにあろうとしたトゥガーリンを、イリヤーは手に掛けて」
ライトニング・ブレット:「そしてイリヤー・ムーロメツは、トゥガーリンから衣服と名馬を奪う」
ライトニング・ブレット:「―――そして、言葉を失うアリョーシャに向けて言葉を掛けた」
天の声: 
天の声:『あなたが私を頼ってくれて本当に嬉しい、愛するアリョーシャ』
天の声:『だから、これはあなたの手柄で構いません』
天の声:『どうかもっと、私のことを頼ってください』
天の声: 
吹雪のキャスター:「………きひ。きひ、きひひひひひひひ!」
ライトニング・ブレット:「―――そして、イリヤーが去った後に、遺されたのは竜の躯と、戦利品を手に立ち竦むアリョーシャ」
ライトニング・ブレット:「全てはタイミングが悪かった」
ライトニング・ブレット:「……姉の成功した姿をひと目見ようと、クラサ・ジラントヴナが来てしまったのも、その時だった」
ライトニング・ブレット:「アリョーシャ・ポポーヴィチの前で、クラサ・ジラントヴナはトゥガーリンの骸を抱え吠える」
ライトニング・ブレット:「―――そして、クラサ・ジラントヴナは涙と共に、叫ぶ」
ライトニング・ブレット:「その竜鳴雷声(なきごえ)が、未だに脳裏から離れない」
ライトニング・ブレット:「―――『いつの世も、人は竜の敵なのですか。人に寄り添おうとした竜を、哀れとは思わないのですか!』」
ライトニング・ブレット:「―――『ただ単に、そこに在るだけで神の敵などと。退けられるべき存在であるなどと!』」
ライトニング・ブレット:「―――――――『いつまでも、竜は人に勝てないままなのですか!』」
ライトニング・ブレット:「――――『であれば私は呪います。人を、神を。竜の格下にあると見下します』」
ライトニング・ブレット:「――――『未来永劫、無窮に、常世全てにおいて、生々世々と万劫末代まで』」
ライトニング・ブレット:「―――――――『人の世を呪い、人の敵であり続ける!!』」
ライトニング・ブレット:「……………………」
吹雪のキャスター:「実に怨嗟のよう籠もったものだね! 末代まで祟られる勢いであろうあろう!」
ライトニング・ブレット:「あの時に、僕は心に誓った。霊基に刻んだ」
ライトニング・ブレット:「彼女のために勝利を。もし第二の生があるならば、一生をそのために捧げると」
ライトニング・ブレット:「………クラサ・ジラントヴナを勝者にするために。人に対する復讐を遂げさせるために」
ライトニング・ブレット:「……………………」
ライトニング・ブレット:「アリョーシャ・ポポーヴィチはトリグラフという神の器でありながら、一人の弱い人間だった」
ライトニング・ブレット:「イリヤー・ムーロメツがいないと何も出来ないくらいにね」
ライトニング・ブレット:(そして、ブレットは自らの武装である銃を握りしめる)
ライトニング・ブレット:「…………名前だけでも、縋らなければ何も出来ないくらいに」
吹雪のキャスター:「………ふぅん」
ライトニング・ブレット:「……笑っていいよ、キャスター」
吹雪のキャスター:「いや、別に? 笑うも笑わないのも私の自由だし? それにさ、思うところもあるしね」
吹雪のキャスター:「思うところ?」
吹雪のキャスター:「まぁ、私の真名はバーバ・ヤーガさね。三色の騎士を使う魔女はバーバ・ヤーガだけだけ」
吹雪のキャスター:「でもでも? それだけじゃ、正解ではない(・・・・・・)
吹雪のキャスター:「そう、私のホントにホントの真名。それは―――」
吹雪のキャスター:「『この世、全ての悪(ウェン・カムイ)』」
吹雪のキャスター:「そう。―――可怪しいとは思わなかったかなかな、私の存在はあまりにも(・・・・・・・・・・)都合が良すぎるとね(・・・・・・・・・)!」
吹雪のキャスター:「まるで(・・・)ご都合主義の権化の魔女のようにさ(・・・・・・・・・・・・・・・・)!」
ライトニング・ブレット:「……まぁ。話が上手すぎるとは思いましたね」
ライトニング・ブレット:「〔タイプ・アルテミス〕……ティティは彷徨海に居た時から、抜け目のない人でした」
ライトニング・ブレット:「イリヤー・ムーロメツによる抑止を回避したりと幾重にも策を張る彼女が」
ライトニング・ブレット:「―――特に、今回は軍略の化身・冬将軍もいた。そんな彼女がキャスターのようなサーヴァントを看過するはずもない」
ライトニング・ブレット:「そんな彼女が獅子身中の虫であるあなたを見逃した」
ライトニング・ブレット:「まるで(・・・)斯くあれと願われたように(・・・・・・・・・・・・)
吹雪のキャスター:「………きひひ」
吹雪のキャスター:「物語というものには語り手だけでなく、読み手がいる。ストリード・ミトリカル・プーリデレクのように」
吹雪のキャスター:「そう、この『ブィリーナ』を読み、そしてその結末がハッピーエンドであるように、無邪気にも望んだ子供がいた」
吹雪のキャスター:「―――その子供は、メアリー・スーとして自らの知り合いの姿を、物語に落書きするように書き込む」
吹雪のキャスター:「そう。ハサン・サッバーハはモデルとなる人物は特にはないと宣った」
吹雪のキャスター:「だが(・・)その方向性は誰かによって操作されたものだった(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
ライトニング・ブレット:「ハサン・サッバーハが変身した人物……」
吹雪のキャスター:「そして、その人物に近い魔女を、反願望器によって『機械仕掛けの魔女(マギカ・エクス・マキナ)』として創造した」
吹雪のキャスター:「………それが私という、「英霊バーバ・ヤーガ」の正体」
吹雪のキャスター:「言うなれば、アルターエゴ……「ウェン・カムイ〔バーバ・ヤーガ〕」こそが私の真名さ」
吹雪のキャスター:「ゆえに、他にもバーバ・ヤーガは居るのだろうさ。どこかの売店の店員だったり、オーバーデストラクションにニートしてるのかもしれない」
ライトニング・ブレット:「………では、貴方はもう召喚されることはないと?」
吹雪のキャスター:「別に別に? 私という霊基が存在したことは「座」で確定するしね?」
吹雪のキャスター:「ま、別世界からマスターを連れてきて契約とか面白いかもかも。例えればあの変装のオリジナルとかねぇ?」
ライトニング・ブレット:「その時は、敵ではありたくないものですね」
吹雪のキャスター:「それは時の運じゃな~☆」
ライトニング・ブレット:「では僕の運がいいことを祈ろう。……ウェン・カムイと、遭遇しないと尚いいですね」
吹雪のキャスター:「………くつくつくつ、きひひひひひひ!」