ワクワク補強
Last-modified: 2017-11-10 (金) 09:06:51
東北楽天ゴールデンイーグルスによる外国人補強のこと。特に
- メジャーリーグで好成績を残した
- 1億円以上の高年俸
- 国内他チームに在籍経験がない
を満たした選手を補強することを指す。後述の事情から、打者補強に関して使用されることが多い。
経緯 
2004年の球団創設以降に主軸として貢献してきた山崎武司の衰えに加え、その後継者たる日本人打者も育てられていなかったことで、イーグルスは長打力不足に悩まされていた*1。
2010年以降はマイナーリーグやメキシカンリーグで活躍した選手や元メジャーリーガーの日本人を中心に打者の補強が行われたが、統一球導入のタイミングも重なり、期待通りの活躍をした選手はほぼいなかった*2。
すると2012年8月に楽天球団社長へ就任した立花陽三は、この貧打を脱却すべく高年俸の目玉選手を次々に獲得する方針を打ち出す。
立花にとって初のストーブリーグとなった同年オフにはNPB史上最多となるメジャー通算434本塁打の強打者アンドリュー・ジョーンズと2009~2011年にミルウォーキーブルワーズでレギュラーを務めたケーシー・マギー(現・読売ジャイアンツ)を獲得*3。田中将大を中心とした投手陣に対し破壊力不足だった打線は二人の期待通りの活躍*4で強力にチームを牽引。球団創設初のリーグ優勝、さらには日本一まで達成する。
日本一の余韻冷めやらぬ翌2014年2月に行われた立花へのインタビューの中で「『僕らがワクワクしない選手を獲って、球場にお客さんが来るか?
』っていう議論をよくしています」と発言したことから、特にイーグルスの大型補強を指して「ワクワク補強」と称されるようになった。
評価の逆転 
ところがその2014年はワクワク補強の目玉とされたケビン・ユーキリスが大誤算で故障の末にシーズン途中帰国、同じく高額契約のトラビス・ブラックリーも僅か3試合登板に終わる。その後もギャビー・サンチェス、ジョニー・ゴームズら高年俸選手が期待外れに終わる例が続出。
それだけに留まらず、低年俸で獲得したゼラス・ウィーラーやライナー・クルーズ、シーズン途中に緊急補強したカルロス・ペゲーロ、他球団在籍経験のあるジョン・ボウカー、ウィリー・モー・ペーニャ、ブライアン・ファルケンボーグらの立花の方針と合致しない選手たちの方が成績を残してしまう事態が頻発した。
また、怪我を理由に帰国したユーキリスが本国でアイス・バケツ・チャレンジ*5に勤しんでいたり、性格の明るさも評価されていたゴームズが「チームに馴染めなかった」と退団後に語るなど野球以外の面でも問題が噴出。
これらのことから「ワクワク補強」は煽りワードとして定着し、立花自身も「ワクワククソメガネ」などと呼ばれるようになってしまった。補強の失敗に引きずられるかのようにチーム成績も低下、2013年の日本一以降は3年連続でBクラスに沈んでいる。
そして2017年、ワクワク補強は事実上終結*6。皮肉なことに同年の楽天は夏場まで首位を争い、ワクワク補強が成功した2013年以来4年ぶりとなるAクラス(3位)の座に収まった。
主なワクワク補強選手の楽天通算成績 
名前 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 備考 |
アンドリュー・ジョーンズ | .232 | 50 | 165 | 2013~2014年所属 低打率ながらも長打力と高出塁率でチームに貢献 経験とリーダーシップも武器に主力として活躍 |
ケーシー・マギー | .292 | 28 | 93 | 2013年所属 ジョーンズとともに主軸として活躍 同年はベストナイン獲得(三塁手) |
ケビン・ユーキリス | .215 | 1 | 11 | 2014年所属 メジャー通算150本塁打、2009年WBC米国代表 故障のため5月に帰国、そのまま退団 |
ギャビー・サンチェス | .226 | 7 | 18 | 2015年所属 メジャー通算61本塁打 |
ジョニー・ゴームズ | .169 | 1 | 7 | 2016年所属 メジャー通算162本塁打 不振で登録を抹消され家庭の事情で帰国、退団を申し入れ5月13日に自由契約*7 |
【比較】非ワクワク補強選手の楽天通算成績 
2013年以降の低年俸で獲得した選手、他球団在籍経験のある選手を一部抜粋(成績は2017年終了時)。
名前 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 備考 |
ジョン・ボウカー | .248 | 7 | 22 | 2014年途中から所属 元巨人の助っ人で前年14本塁打 期待された成績には及ばず同年限りで退団 |
ウィリー・モー・ペーニャ | .268 | 17 | 40 | 2015年在籍 NPBでは3球団目の所属チームに 一定の成績を残すも得点圏での弱さがネックとなり戦力外 |
ゼラス・ウィーラー | .266 | 72 | 220 | 2015年~ 1年目の終盤から主軸に定着 2017年には31本塁打で外国人シーズン本塁打の球団記録を更新 |
ジャフェット・アマダー | .242 | 32 | 84 | 2016年~ 低打率ながらも夏場に強い長距離砲として活躍 |
カルロス・ペゲーロ | .280 | 36 | 101 | 2016年途中~ 2017年前半は「恐怖の2番打者」として打線を牽引しシーズン26本塁打 192cm・119kgという恵体ながら走力もあり、2017年の内野安打数はリーグ3位 |
なお、特にウィーラー、ペゲーロ、アマダーの3人は補強が成功した例であり、その陰で非ワクワク補強で失敗した選手が多いこともまた事実である。しかし3人の2017年度合計年俸は約2億1500万円でユーキリス(3億円)やサンチェス(2億5000万円)1人分以下で打線の軸となっており、どちらがコストパフォーマンスのいい選手かは自明であるだろう。
余談 
イーグルスと同じく楽天が運営しているサッカーJ1・ヴィッセル神戸は、2017年に獲得した元ドイツ代表のFWルーカス・ポドルスキを筆頭に海外の大物選手を次々と獲得することで知られる。その一方で彼らの多くは年俸に見合わない働きに終わり、チームの成績も伸び悩むことが定番となってしまい、こちらもワクワク補強として注目を集め始めている。
なお、立花は同年10月からヴィッセルの運営法人である楽天ヴィッセル神戸株式会社の代表取締役社長に就任し、野球とサッカーで社長を兼務している。
関連項目 
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