無骨な漢の贈り物

「そうか貴様がヘラクレス、世界最強と呼ばれた同士。そして天上人の無茶ぶりにふり回された者同士……同病相憐れむものを感じるな」
「この東京では同じ『転光生』の身、宜しく頼むシヴァ。話は変わるが……編み物などに興味はないか？」
個としての武を極めし、堂々たる万夫不当たち。
シヴァとヘラクレス、彼らはいずれも故郷世界に名だたる偉丈夫であった。
この東京で、今は同じ武道学園に通う彼らが出会ったのは、「手芸」と呼ばれるものだった。
きっかけは確か「ボロボロになった修行衣をちょっと縫いたい」、そんな話だった気がする。
打ち倒す他者はそこには無く、乗り越える障害は現れず、ただ「最強たる己」との闘いあるべし。
戦い抜いた先に在るものはそう、想いを込めた完成品。
此度の勝利、我が手中にあり！　……と、意気込んだまま毛糸まみれの姿で編み物を続ける２人。
しかしそれでいい、それがいい。
これまでにない強き相手との闘い、そこに新たな物語は生まれるのだから。