いつかどうして夢の鬼

「あたし、絶対忘れないよ」
「ああ、もう別れなんぞコリゴリだぜ…へへっ」
スズカが護ると誓った、新宿・歌舞伎町。
その街の危機の度、現れては去っていく謎の淑女の姿があったという。
その正体がバレバレであろうとなかろうと、その在り方はスズカにとって共感に値するものだった。
かつて、多くを魅了した己の姿への忌避と悔恨。
それが招いた悲劇の古傷は今も、２人の魂の奥深くで疼いている。
しかし、生きているならば時間は、否が応にも全ての傷を癒していくもの。
とある数奇な巡り合わせがあったらば、２人は新宿駅近くのショッピングストリートへ行くことだってあったろう。
世を忍ぶ偽りの姿を得るため、と自分に言い聞かせて娑婆の装いに触れることだってあったろう。
しかしそれでも、生きていればいつか再び別れは来るのだろう。
ああ、この泡のごとき夢の思い出がどうか、それに耐える力を２人に与えて下さいますように。