2019年、中日ドラゴンズの応援歌「サウスポー」に与田剛監督(当時)が寄せた意見。
具体的には同曲の歌詞「お前が打たなきゃ誰が打つ」の「お前」を指す。
これが発端で起こった一連の騒動はなんJ内外を問わず「お前騒動」と呼ばれるようになった。
発端 
この年の7月1日、中日ドラゴンズ応援団が次のような声明を突如発表した。
中日ドラゴンズ応援団
@dragonsouendan
【重要なお知らせ】
この度、当団体で使用している「サウスポー」について、チームより不適切なフレーズがあるというご指摘を受けました。この件について球団と協議した結果、当面の間「サウスポー」の使用は自粛させて頂くこととなりました。
皆様には何卒ご理解、ご協力の程宜しくお願い致します。
15:00 - 2019年7月1日
「サウスポー」はピンクレディーの同名楽曲を原曲としたチャンステーマで、中日の応援歌の中でも比較的人気のあるものであっただけに、様々な憶測が飛び交った。
そのサウスポーの歌詞は以下の通りである。
オイ!オイ!オイ!オイ!オイ!オイ!Let's go(選手名)!(繰り返し)*1
みなぎる闘志を奮い起て
お前が打たなきゃ誰が打つ
今ー勝利を掴め オイ!オイ!(選手名)!
……と、特に歌詞の中に問題のありそうな表現が見つからなかったため、当初はこの「サウスポー」というタイトル*2が問題にされたのではないかと思われた。
しかしその後の報道で歌詞の中で選手を「お前」と表現していることが「不適切」とされたことが判明。さらにその意見は外部から寄せられたものではなく監督直々のものであることも判明した。
【中日】人気応援歌のサウスポーを自粛へ 「お前が…」のフレーズが不適切
(中略)「お前が打たなきゃ誰が打つ」という歌詞で人気だったが、与田監督が「『お前』という言葉を子どもたちが歌うのは、教育上良くないのではないか」と指摘。球団側が歌詞の一部変更を求めた結果、使用を取りやめることになった。
ソース
与田、大炎上 
与田の言わんとする事にも一理あるものの、大局的には不必要に盛り上がりに水を差す発言と見做され反論意見が続出*3。
あっという間に全国ニュースになり、テレビではここぞとばかり著名人が公然と与田を批判。慣れ親しんだ応援歌が突如消えてしまった中日ファンからも「その前に強い姿を見せてくれ」などと猛反発の声が上がった。
さらに与田が過去に起こした問題行動まで蒸し返され、
- お前よりもっと不適切なフレーズがあるのではないか
- チームが5位と低迷している状況下で応援歌の歌詞にクレームをつけている場合か
- 9回裏に6点を取られてサヨナラ負けするチームの方が不適切
- お前が過去に起こした不倫&妊娠中絶の方が子供に悪影響
などと大炎上。
なんJでも例に漏れず与田叩きはヒートアップする反面、ここに便乗して
- 「打て」などの命令形を排除した応援歌が作られる
- 「竜達」が「お前達」に名称変化
- 「巨人小笠原スレ」の派生形の「中日与田様スレ」(ヨッダレ)が誕生
- 与田自身が「お前達終身名誉総帥」に認定
- 実況スレではお嬢様専を彷彿とさせるほどの丁寧語でのレスが溢れ、少しでも汚い言葉や命令形が出たり、選手がエラーや炎上したりするたびに「はい不適切」「はい意見書」などとレスされるようになる
- 祖父江大輔に至っては歌詞に「おまえ」が含まれる『宙船』を登場曲に使っていたため存在自体が不適切だとされてしまう
などなど様々な面でネタにされ、なんJの流行の最先端を担う中日が存在感を増していく流れをさらに加速させた。
これによって与田は与田様という尊称あるいは蔑称でも知られるようになったのである。
加えてその後は加藤宏幸球団代表も失言した上に、当時のオーナーであった白井文吾が「『お前』は不愉快になる言葉」などと与田を全面擁護したため、批判の矛先は白井や加藤など球団上層部にも拡大。
中日球団そのものが攻撃対象となり火に油を注ぐ結果となってしまった。
与田様深緑の智将グリニデ説 
この騒動がヒートアップしたなんJでは与田監督と三条陸・稲田浩司の漫画『冒険王ビィト』*4の名悪役・グリニデの同一人物説が提唱された。
作中では人類と敵対する魔人(ヴァンデル)の最高クラスの実力者として主人公のビィト一行の前に立ちはだかる強敵で、頭脳派を自負し「深緑の智将」の二つ名を持ち、暴れるしか能のない粗暴な魔人を嫌っている――が、実際にはキレやすく暴れると手がつけられない性格の持ち主で、逆上したときの戦闘力こそが最大の武器であり、グリニデ自身がそうした自分の本性を忌み嫌っているといった複雑性から人気の高いキャラである。
(本来の異名も「血塗られた獣」であり、前述の「深緑の智将」もそうした評判を嫌ったグリニデが自ら広めたものであることが明かされている。)
特徴的には普通の人間よりも遥かに大柄で恵まれた体格を持つ、配下として個々の戦闘力は低いが数で優れるモンスター軍団を従え勢力を広げる*5、「お前」と呼ばれるとキレる*6などの描写が与田監督と関連づけられネタにされる。
選手・OBらの反応 
2019年中日キャプテン・高橋周平を始め選手たちは「別に構わない」と思っている様子。
球団OBの権藤博・田尾安志・高木守道らも「気にしたこともない」とコメントしており、他球団でも応援歌に「お前」のフレーズが入っている坂本勇人(巨人)らの選手たちからも「気にしない」「気にしたこともなかった」などの意見が出た。
坂本に至っては記者の質問に対し爆笑している。
不適切なフレーズを含まない応援歌の例 
«チャンスの御テーマ3»
御御御ー御御ー 御ー御ー御御御ー
御バットに御想い込めなさって 御御御ー御 DRAGON Soul御見せください
適切なスタンドの声があなた様の御力になることをお祈り申し上げます
恐れなさらずに振りぬいてください 御ー御ー御ー
«新チャンステーマ案»
○○様
いつもお世話になっております
中日応援団です
このたびの打席の件ですが
打球を外野スタンドまでご送付いただけましたら幸いです
お手数をおかけし誠に申し訳ございませんが
上記ご確認の程よろしくお願いいたします
失礼いたします
「お前」応援は不適切か否か 
「お前」という言葉は確かに俗的なものであって、上品と言える言葉遣いではない。以前よりも女性や子どもが多く球場に足を運ぶようになった昨今において野球の伝統的な応援スタイルが変革を迫られている事は紛れもない事実*7であり、応援スタイルを客層および時代の変化に合わせて改善していくべきという議論自体には一定の合理性がある。また、応援団が球団から活動を認めてもらっている立場であることを考慮すれば、監督を含む球団側から何らかの要請が出されること自体は理解に難い話でない。
しかしながら、応援の本質的な主体は、あくまでも球場に足を運ぶ一般のファンである。ファンが自発的に行っているはずの応援を球団側の要請によって使用中止にまで至らしめるのであれば、彼らに対して合理的な説明がなされるべきであることは言うまでもない。しかし与田監督が示したのは、これを子どもたちが歌うことによって健全な教育に悪影響を及ぼすのではないか、という単なる蓋然性の示唆に過ぎないものであった*8。
反対に、「お前」応援は不適切ではないとする立場の根拠としては、2019年の夏の甲子園が挙げられている。騒動から間もなくして開催された高校野球大会であったためその応援にも注目が集まったが、「お前」入り応援歌*9は変わらず使用されており、青少年の健全な教育をその目的に掲げている*10高校野球大会の場ですら演奏自粛に追従する動きは見られなかった。
言うまでもなく、NPBの他11球団も中日の動きに同調する向きは無い。ここまで述べられたように、「お前」応援が不適切だという意見は現在の野球界において極めて少数派であると言わざるを得ない。
本人がお前発言 
2019年11月25日、大島洋平の契約更改の際に、与田が大島に電話で「お前が必要だ」と発言したことがスポーツ報知で報道された。
共有されたTwitterのツイートのリプ欄には、案の定「はい不適切」のコメントが殺到した。
これについてはネタ交じりに「元々ファンごときが監督や選手にお前と言うのが不適切だっただけであって、与田様自身が使う分には何ら問題はない」という解釈によるフォロー(?)も行われている。
また、実況パワフルプロ野球などではマイライフなどの実在選手・監督が登場するモードで与田が当たり前のように「お前に~」と発言しており、ネタにされている。
その一方で、本件との因果関係は不明だが、パワプロ6のサクセスモードで初登場した「そこのお前」というモブキャラ*11及び検証用として長く多くのプレイヤーに親しまれていた同名選手*12の名前が「そこのあなた」「そこのヒト」(こちらは公式でも使われた)に変わるといった変化が現れている。
騒動の終焉 
2020年シーズンになり、中日ドラゴンズ応援団もシーズンで使用する応援歌を発表したが、サウスポーはしれっとその中に含まれていた*13。
これに対する与田監督や球団上層部からの抗議は報じられず、新型コロナウイルスの流行で応援の声出し自体が控えられたこともあり、結局一連の騒動はうやむやに終わってしまった。
そして与田・白井が退任し立浪和義が監督に就任した2022年2月、中日応援団は正式にサウスポー復活を表明。立浪も「我々は応援してもらってる立場。そんなに気にしない」とコメントし、中日ファンは歓喜に沸いたのであった。
なお肝心の中日の低迷のほうは改善されなかった模様。
与田監督の評価 
このようにネタ方面で大炎上してしまいかつての私生活の問題も取り沙汰され、采配面でも若手と中堅ベテランの運用バランスで賛否があった与田監督だが、
- 大野雄大を復活させたり、柳裕也に投手二冠を取らせるなど、竜の死体とまで酷評されていた投手陣を整備した功績
- 選手批判を避ける方針
- CSがなく他球団の追撃が相対的に苛烈ではない年だったとはいえ暗黒期の中日を一度は3位に導いた実績がある
- 低迷はフロントの責任が重大
- 後任の立浪監督の評判も決して高評価寄りとは言えない
などから、監督としての評価は必ずしも批判一色というわけではない。
関連項目 
- 代打三ツ間…不適切なフレーズならぬ不適切な采配として知られる。
- 与田の肩幅
- うんち
- ようやっとる
- ヨッダレ
- ここだけお嬢様しかいない実況スレ
- お前、変わらんかったな…後任の監督による発言。
- お前が死ぬんやで
- お前に言われんでもわかっとる!
- お前達/お前さん達
Tag: 中日 監督 応援歌 絶許