No271 ヴァンパイア/元ネタ解説

Last-modified: 2024-02-17 (土) 09:10:00
所属Royal Navy→Royal Australian Navy
艦種・艦型アドミラルティV級駆逐艦
正式名称HMS Wallace→HMS Vampire (D68)(1917)→HMAS Vampire (D68/I68)(1933)
名前の由来Alfred Russel Wallace(1823-1913) イギリスの博物学者、生物学者 生物の分布境界線、ウォレス線を特定した生物地理学のちちと呼ばれる。インドネシアとマレーシアの探検と発見の記録は「マレー諸島」として出版され、19世紀の科学探検書として最も影響力のある一冊となった。
→Vampire 民話や伝説に登場する存在 血を吸い、栄養源とする蘇った死人または不死の存在である。
起工日1916.10.10
進水日1917.5.21
就役日(竣工日)1917.9.22
イギリス海軍退役日
オーストラリア海軍就役日
1933.11.11
除籍日(除籍理由)不明(Indian Ocean raid/セイロン沖海戦の後 1942.4.9沈没)
全長(身長)95.1m
基準排水量(体重)1188英t(1207t)
出力White-Forster式重油専焼缶3基Brown-Curtis式蒸気タービン2基2軸 27000shp(27374.5PS)
最高速度34.0kt(62.96km/h)
航続距離15.0kt(27.78km/h)/3500海里(6482km)
装備(1942)4inch45口径Mk.V単装砲4門
ヴィッカース2ポンド機関砲x2(1x2)
ルイス0.303inch機関銃x4(2x2)
ヴィッカース0.303inch機関銃x4(4x1)
21inch四連装魚雷2基8門
爆雷投下軌条2基
爆雷投射機4基
装甲なし
建造所J. Samuel White, Cowes, Isle of Wight
(J.サミュエル・ホワイト社 ワイト島カウズ)
  • ヴァンパイアの属するV/W旧駆逐艦にはアドミラルティV級と小改正型のアドミラルティW級およびアドミラルティ改W級、特型としてのソーニクロフトV/W級およびソーニクロフト改W級がある。
    ヴァンパイアは最初のグループ、アドミラルティV級の5番艦。
  • アドミラリティV型駆逐艦自体は開発が第一次世界大戦中というゲーム内では旧式の艦。
    開発のきっかけは、1915年に建造が計画されていたドイツ海軍の大型駆逐艦に対抗するためであり、
    イギリス海軍本部にて設計され、計28隻が建造されている。うち初期の5隻は嚮導艦として建造された。
    主砲・魚雷と言った兵装の強化が施された艦種であるが、戦中の設計であるため工期短縮として機関を前級の物から流用したため、速度は前級より少し低い。
    大量生産されたため、第一次世界大戦後は予備役艦となりうち2隻が英連邦オーストラリアへ譲渡された。
    そして1930年代に入り、第二次世界大戦が勃発、すでに旧式艦であったアドミラルティV型は新たな戦争へと投入されていった。
     

就役から太平洋戦争開戦まで

  • ヴァンパイアはイギリスにてシェイクスピア級駆逐艦として1916年10月10日に起工、翌年5月21日にWallace(ウォレス)と命名され進水、9月22日に竣工した。
    竣工後は第4駆逐隊に所属、本国艦隊や地中海艦隊などに使用された。
  • それから16年後の1933年、ヴァンパイアはイギリス海軍の手を離れ英連邦オーストラリア海軍へ譲渡された。
    ポーツマスでの引き渡し完了後、ヴァンパイアは予備役となるが第二次世界大戦の勃発により再就役した。
  • 第二次大戦開戦後は、オーストラリア近海での哨戒活動に従事。
    その後はシンガポールへ移動、他の駆逐艦と合流後は一路ヨーロッパへの戦いへと参加、地中海へと派遣されている。
    その途上では当時、通商破壊活動を行っていたポケット戦艦アドミラル・グラーフ・シュペーの捜索も行い、1939年のクリスマスイブにマルタに到着した。
  • オーストラリアは保有していた5隻の駆逐艦を全て地中海に派遣したが、いずれもヴァンパイアとほぼ同時期の老朽艦揃いだった。
    このためドイツの対英宣伝放送は5隻を「オーストラリアの屑鉄駆逐群」(Australia's Scrap Iron Flotilla)と嘲笑したのだが、彼女たちはイギリス第10駆逐群の中核として八面六臂の活躍を演じたのだった。
    • 活躍を重ねるにつれこの綽名は誇りとともに乗員の間に浸透し、現在に至るまで長く記憶されている。5隻が初めてマルタに揃い踏みして70周年となる2010年には、これを記念して公式の行進曲(リンク先11曲目)が作られた。
  • 当初はマルタと南仏の間で船団護衛についていたが、イタリアが参戦すると北アフリカへの輸送作戦に参加し、カラブリア沖海戦では第二次大戦のオーストラリア海軍では初めてとなる戦死者を出している。
  • その後は機関部の修理をはさみながらギリシャでの増援・撤退作戦に参加。平行して北アフリカへの輸送作戦や対地支援にも参加している。
  • 1941年5月からはドイツ軍への包囲下にあったトブルクへの強行輸送、通称「トブルクフェリー」に参加した。
    しかし2回目の作戦後、開戦以来働きづめだったボイラーがついに音を上げ、修理のためにシンガポールへ回航、「Scrap Iron Flotilla」の僚艦を残して一足先に地中海を後にしたのだった。
  • そして12月、今度は日本がマレー半島に奇襲上陸、事後の宣戦布告もないまま太平洋戦争が勃発したのである。
  • 1941年12月8日、日本軍を攻撃するためプリンス・オブ・ウェールズレパルスら東洋艦隊と共にヴァンパイアは出撃。
    しかし12月10日、彼女たちは日本艦隊と戦うことなく沈没してしまう。マレー沖海戦の勃発である。
    襲い掛かる敵機に対して、航空援護もないままヴァンパイアは応戦している。
    この戦いで、日本軍の陸上攻撃機の雷撃によってプリンス・オブ・ウェールズとレパルスは沈没。
    僚艦である駆逐艦エレクトラと共に、ヴァンパイアは沈没した2艦の生存者救助へと当たった。
    翌年1月26日には、日本軍の駆逐艦隊とも交戦している。
     

セイロン沖海戦とヴァンパイアの最後

  • 大損害を受けたイギリス海軍はインド洋セイロン島にその戦力を避難させ、本国艦隊からの増援も受け反撃の機会を伺った。
    マレー沖海戦を生き延びたヴァンパイアもセイロン島に駐留していた。
    だが、セイロン島のイギリス艦隊に対して日本海軍はイギリス東洋艦隊の殲滅を計画。
    南雲忠一中将率いる機動艦隊が迫りつつあった。
  • 3月末、イギリス軍は侵攻中の日本艦隊を発見、4月5日には機動艦隊からの空襲で重巡ドーセットシャー、コーンウォールの2隻が沈没した。
    4月9日、日本艦隊を補足したイギリス艦隊は脱出を開始するも、セイロン島への空爆が開始される。
    この間に、イギリス空母ハーミーズと共に離脱中であったヴァンパイアは日本軍機に補足されてしまう。
    日本軍の艦爆隊、計67機による空襲を受け、ハーミーズは撃沈されてしまうもこの時点ではヴァンパイアは生存していた。
    攻撃隊が一時去った事を確認した乗員たちは安堵したが、次の攻撃隊が飛来、ヴァンパイアは爆撃にさらされその生涯に幕を下ろした。
    幸運にも戦死者は8名に留まり、生き残った乗員はハーミーズの乗員と共に病院船に救出された。

小ネタ

  • 駆逐艦ヴァンパイアはYKアワーズで連載中の漫画「蒼き鋼のアルペジオ」にも登場。
    メンタルモデルとしても登場しており、こちらでヴァンパイアの存在を知ったというプレイヤーも少なからず存在するだろう。
  • 悪名高きP7版(旧運営版)戦艦少女にも違うイラストレーターで実装されていた艦の1人。
    P7版のサービス終了後に担当イラストレーターが現行の戦艦少女に参加したという変わった経緯がある。
  • 海外艦が多く、プラモデルでは日本艦・有名艦以外は国内でのキット化に恵まれないゲーム内実装艦が多いゲーム内で、大御所タミヤからキットが発売されている数少ない艦。
    しかも割と最近の発売であり、モデラー提督の諸氏にも簡単に手が届く艦のひとつ。
    (実はもともとピットロードから発売されていたのだが、金型が転売されてしまいタミヤが買い取ったもの。他にボーグの金型も同様のルートでタミヤに渡っている)
    • 余談だが運命を共にしたハーミーズも最近になって発売されたが、こちらは模型界の狂犬アオシマからの発売。
      例によって九九式艦爆によって沈められている絵がパッケージになっている。あんまりだ。