勇者アバンと獄炎の魔王
【ブラス】、【バルトス】、【キギロ】同様、魔王時代の【ハドラー】の部下で彼の側近の1人。
種族名は「デストロール」といい、【トロル】系統の突然変異種として書物などのみに残されていた幻の魔物であるらしい。
耳が尖った巨漢で巨大な【こんぼう】を手に持っているのはトロルと共通しているが、その肉体は同種によく見られる弛んだ身体ではなく、鍛え抜かれた「細マッチョ」系の姿をしている。身なりも袈裟のような衣装を身にまとい丸眼鏡を装着しており、まるで知的な僧侶のような出で立ちである。
粗暴なトロル一族の中でも珍しい慧眼を持ち、ハドラーの参謀のような立ち位置にある。ハドラーからの伝聞だけで【アバン】の人となりをほぼ正確に解析し、戦闘経験を積むため【カール】を出奔して武者修行の旅に出ることを予見している。その一方で「私でもそうする」と発言しながら自身の身体をパンプアップさせており、単なる知性一辺倒ではない。これらは興奮・興味を示した時の姿からしても、トロルらしい戦闘に対する強い欲求が元になっていることが読み取れる。
こうした文武両道に優れた姿勢と実績ゆえか、ハドラーからも参謀として一目置かれているようで、ハドラーが何らかの事情で身動きが取れない際における魔王軍の運営や別動隊を指揮しての作戦実行など大きな権限を与えられている。
【ヨミカイン遺跡】の図書館を占領していた【エビルマージ】の上司でもあり、自身にとって図書館は知識欲を満たしてくれる憩いの場だったという。
トロル一族が原始的な武器で暴力を振るうことしか能が無い醜く粗暴な種族であることやそれと同類であることを快く思わず、身体を絞り込み勉強で知識を高め、図書館を占拠したのも学習の為である。故にデカブツ等と言われるとキレる。
アバン一行を凌ぐほどの怪力と様々な呪文を使いこなし、【マトリフ】に「(トロル族の)元々の超パワーに器用な呪文が加わっているのでまだ戦っちゃいけない」と評されるほどの戦闘力を持っており、一行が止めを刺すに至らなかったほどである。
なお、同族を嫌ってこそいるが、部下としてはキチンと用いており、個人的な好き嫌いに任せて部下の戦力評価を誤るようなことはしていないようだ。
また、基本的には知性ある者を好んでいるものの、武闘派である【クロコダイン】には好意的な印象を抱いた一方で、【ザボエラ】については「全く憧れない」「知性さえあればいいというものでもない」と否定的な評価を下している。
単なるトロルのような「愚鈍なデカブツ」扱いされることを嫌悪しておりすぐ激昂する一面もあるが、マトリフから挑発された際は挑発であることをわかっているのか冷静に受け流している他、自分で自分のことを「デカブツ」「醜悪な大男」と皮肉ることもある。
あくまで「見た目から愚物扱いされること」を忌み嫌っているだけで、安い挑発に乗るほど精神力は低くない。
バルトス始め、味方からの信頼も厚く同時に彼らに対する仲間意識も確かなものだが、「それはそれとして」失態を犯した部下を罰することやいざという時に配下を自分の攻撃呪文に巻き込むことに躊躇いはない。
敵対者であろうと尊敬に値する相手ならば敬意を持って接するが、「それはそれとして」必要ならば卑劣な手を打つことも辞さない。
わかりやすく言えば、クロコダインの勇猛さと忠誠心、フレイザードの獰猛さと冷徹さ、ザボエラの知力と魔力、そして優秀な統率力を兼ね備えたすさまじくハイスペックな人物。
能力
ハドラーと伍するほどの怪力をもち、同時に優れた魔法の使い手でもある。
マトリフの放った【メラゾーマ】を同じメラゾーマで相殺し、【トベルーラ】で距離を取ろうとする彼に対しても同じくトベルーラを使って引けを取らない速度で追いかけるなど、高い魔力を備えていることがうかがえる。
また、【イオ】の呪文を棍棒で叩くことで分散させ、複数の相手を同時に攻撃するなど、応用的な技術も身に着けている。
マトリフのベタンを受けてもさほど大きなダメージを受けた様子もないなど耐久面でも優れており、総合的に見てハドラー配下の旧幹部の中では最強の実力者だと言えるだろう。
行き詰って【ミストバーン】からの密かなサポートでヒントを得たとはいえ、それ以外は独力で【凍れる時の秘法】の解除方法にまで辿り着くなど、激昂しやすくはあるものの、その知性のほども確かなものである。
ダイとポップがヒュンケルと戦った闘技場でマトリフと雌雄を決した際も、マトリフが「お前は頭がいいから動揺を誘ってメドローアを当てる隙を作らないと勝てなかった」「お前さんは初めて出会ったオレの血を沸かせてくれる素晴らしいライバルだった」とまで評したほどである。
ただ、メドローアについては数百回の試行を試みたものの、反応すら起こせていない。これはガンガディアの能力が低い…というわけでは決してなく、むしろたった数日で習得したポップが異常なだけであろう。マトリフ自身が生涯のライバルと認めた魔道士ですら習得できなかったメドローアをものにしたことで、後付けとはいえ間接的にポップの株も上がっている。
また、施行を試みられたということは、両手で異なる種類の呪文(メラ系とヒャド系)を同時に使うことはできるということでもある。それだけでも、バーンが「器用な真似」と評するほどの技巧なので、ガンガディアも並みの術者よりもはるかに優れた技量の持ち主であることは間違いないだろう。
ただし、作中での描写の限り、ベギラゴンやイオナズンなどの極大呪文に分類される呪文は習得していない模様。ドラゴラムは習得できており、魔力的な問題は薄そうであるが、トロルという種族的な限界によるものだろうか。
もっとも、この世界ではベギラゴンやイオナズンは使い手がほとんどいないきわめて強力な呪文であり、アバンも魔王ハドラーがイオナズンを使えると知った時には驚愕している。
大魔道士となったポップも原作終了時点まで習得には至っておらず、単に魔力が高いというだけでそうそう会得できるような代物ではないようで、ガンガディアが習得していなくても特に不思議ではない。
来歴
ヨミカイン編で敗北した上に本を燃やした部下のエビルマージを始末する形で初めてアバン一行の前に姿を現し、前述の性能で一行を追い詰めた。しかしマトリフの策にはまり、彼に罠の本からの解放を許してしまい、挑発に乗ったことで自身が痛めた床に誘導されて【ベタン】を受け、そのまま地の底まで叩き落とされた。
その後【トベルーラ】で脱出したが彼の危険度を察知し、これ以上古代呪文を利用されないようにと自身に最適な最強呪文の本を一冊確保した後に図書館を沈めて撤退した。
【サババ】編では多数のギガンテスとトロル系モンスターを引き連れ、主君ハドラーと共にサババに侵攻。
自身はマトリフと対峙し、互いの考えの一致に笑みを浮かべつつ相手の知力の高さに羨望を抱くなど、ライバル的な立場となっていた。
ハドラーが【死の大地】まで吹き飛ばされ、アバン一行にも【ルーラ】で逃げられたのを見てハドラーの元へと撤退している。
【凍れる時間の秘法】編では呪文攻撃が主体である【パプニカ】に天敵とも言える殺人機械【キラーマシン】を送り込んでいる。【ウロド荒野】での決戦でもハドラーに同行しマトリフと三度目となる対峙。これまではマトリフ相手にいっぱい食わされていたものの、図書館での戦い以降に新たに覚えたルーラを交える奇襲策によって強烈な物理攻撃を叩きこみ、事実上彼を下すことに成功。その好敵手からの評価を震えるほど喜び、同時に敬意を表す一面も見せた。
しかし感傷に浸り過ぎたのか、一瞬の隙から自身のメラ系と、それを狙ってマトリフが放ったヒャド系が合体して起きた消滅作用が発生。
逃れるためにルーラで地底魔城に撤退。結果、アバンがハドラーに仕掛けていた凍れる時間の秘法の成功を許してしまった。
【地底魔城】突入編ではハドラーに「勇者一行の相手は私達が引き受けるので玉座から一歩も動かないように」と進言し、自身は闘技場にてマトリフと対峙。
彼に想いを告げ、自分の能力だけで戦いたかったものの魔王軍の幹部として勝利せねばならず、竜化呪文の書の圧倒的な力でメドローアを放つ隙を与えぬよう攻め続ける。
ブレスを弾くアバンの盾ですら力押しで破壊したが、頭の良さが災いして小型のメドローアの発生に動揺した隙を突かれ、最大級のメドローアを許してしまい、喉元の火炎器官に引火して爆散。
最期はドラゴラムの書をマトリフに託し、また図書館を破壊してしまったことを後悔していたが、マトリフに素晴らしいライバルだったと言われたことを嬉しく思い、安らかな顔で燃え尽き息を引き取った。
余談
「同族の粗暴さを嫌い知的に振る舞うことを志しながらも、実際には熱しやすく誰よりも暴力的」と言う設定は、【三条陸】・【稲田浩司】のダイ大原作コンビによる「冒険王ビィト」に登場する敵キャラクター、深緑の智将グリニデを連想する読者も多い。セルフパロディであろうか。
もっとも、ガンガディアはグリニデと比べるとかなり自制が効き、デカブツ呼ばわりされてすぐに頭に血が上っていたのも初交戦の時だけで、以降は自分から冗談めかして口にしたりもするなど欠点を反省し克服している様子が伺え、実際にはだいぶタイプが違っている。
なお、グリニデの部下にはキギロ同様の植物魔人・フラウスキーがおり、そちらはキギロと「体質を活かした弾丸を飛ばす遠距離攻撃」「種のような本体さえ無事なら実質不死身」と言う能力が共通している(性格はあまり似ていない)。
そしてダイ大の外伝漫画に登場したボストロールという点はクロブレの【ボストロール・デ・アール】と共通している。