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【ザボエラ】

Last-modified: 2019-08-06 (火) 02:11:19

 魔王軍:ダイの大冒険

【バーン】

【ハドラー】【キルバーン】

【クロコダイン】―【ザボエラ】―【ヒュンケル】【フレイザード】【ミストバーン】【バラン】

ダイの大冒険 Edit

【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】に登場するキャラクター。アニメ版の声優は龍田直樹。
 
齢890歳の小柄な魔族の老人で、同僚のフレイザードからはジジイ呼ばわり、敵対勢力とはいえ【バダック】からも妖怪ジジイと言われている。
まるでおとぎ話の魔女のような「キィ~ッヒッヒッヒッ」といった妙な笑い声が印象的。
家族構成は息子の妖魔学士ザムザがいる以外は不明。最低でも妻はいるはずだが、存命なのか死別したのか、はたまた離縁してザムザを引き取ったのかは不明。
 
大魔王バーンに仕える幹部「魔王軍六大魔団長」の一人であり、彼が率いるは【魔術師】【悪魔の目玉】【バルログ】など、呪文が得意な魔法使い系・悪魔系モンスターを中心とする妖魔士団。
「妖魔司教」という【ダークビショップ】辺りに当て字できそうな肩書きを持つが、その割に活動は専ら軍司令官および科学者としてのものであり、宗教家の側面は見られない。
ただし神官系が部下にいることから、ハーゴンのようになんらかの邪教を用いて彼らを従えている可能性はある。
肩書きを響きだけでテキトーに決められた可能性も否定はできないが…
劇場版オリジナルだが【ベルドーサ】という配下もおり、【ダイ】たちへの刺客として差し向けたこともある。
 
後には謀反を起こした【ハドラー】から【バーン】の身を守った功績により、魔軍司令となった【ミストバーン】直属の部下として魔軍司令補佐=ナンバー3相当の地位を授けられた。
もっとも、その時点で魔王軍の目ぼしい幹部クラスはミストバーンとザボエラ、バーン直属の暗殺者【キルバーン】しか残っていなかったので、実態は昇進でもなんでもなかったわけだが。
 
ゲーム作品では星ドラのダイ大コラボで登場するが、切り札【超魔ゾンビ】を使った彼の最後の戦いはカットされている。スーパーライトでは当初は登場してなかったものの、2018年には超魔ゾンビも一緒に登場した。
 

人物像  Edit

基本的にヘタレな上、悪どい手段を好む割には手柄に繋がらないというギャグキャラっぽい描写が目立つ。
だがその本性は残酷かつ卑劣、ドス黒い利己心と出世欲の塊のような人物。
自分以外のすべてを「出世のための道具」と捉え、強者には媚びて取り入る姿勢を見せるが、利用価値が無いとみるや否や掌を返すため、次第に味方からの信用も無くしていった。
利用価値がないものはただのゴミ、そんな傲慢で酷薄な見方は実の息子にさえ例外ではなく、ザムザ自身も「自分が死んだとしても父は涙一つ流さない」と自覚していた。
実際にザボエラは涙どころか悲しんだ様子すら見せず、彼の遺した超魔生物の研究成果が自分の役に立つ事を「短い一生だったが実に有意義」と狂喜していたほど。
 
自分の身に危険がおよべば部下に【モシャス】をかけ、即席の影武者にしてさっさと逃げることも平然と行う卑劣漢であり、彼をスカウトしたハドラーですら「最も狡猾で残酷な頭脳を持ち、油断も隙もない男」と評している。
魔王軍設立の際には魔力以外にも狡猾さ、出世欲を買われて軍団長に選ばれたようだが、奸計を練る頭脳の高さを評価されつつも、それ故に当初から上司からの信頼は無かったのである。
ただし、バランがダイを味方に引き入れようとするのが表向きにバレる前の時点では、ハドラーには心底忠義を尽くしていた模様。
 
【ダイ】たちとの戦いにおいては、ダイの育ての親である【ブラス】を捕まえて【クロコダイン】に人質作戦を持ちかけたり、ハドラーと組んで【魔香気】を使って夜襲をかけ、モシャスで【ポップ】の想い人【マァム】に化け罠に嵌めたりする等々、相手の心情を利用するような手段ばかり用いていたため、敵味方問わず快く思われていない。
 
特にハドラーの離反後、魔軍司令となったミストバーンの前でハドラーを卑下したため彼の逆鱗に触れ、「カス」だの「人から人へ 自分の成り上がりだけを目あてにうろつくドブネズミ」だのバッサリと言われる始末。また、【ヒュンケル】【アルビナス】は当初から「ダニ」呼ばわりしており、全く相手にされていなかった。
 
魔王軍での地位喪失を恐れて自ら出陣した際には、必殺のマホプラウスでダイを仕留める一歩手前まで行ったが、ハドラーの意を受けた【ヒム】に妨害され、連れ戻され投獄される。
その際アルビナスは「いずれ彼はハドラー様に災いをもたらします。一刻も早く処刑するべきです」と進言までしている。
もっとも、当のハドラーはかつての【アバン】やダイ達との度重なる戦いを通して魔王から武人へと考えを改めるようになっていたため、ザボエラに対しても一応の情を見せていた。
曲がりなりにも自らを超魔生物に改造し力を与えた恩人にあたり、先の戦いで息子のザムザを喪っていることを汲み取り、魔牢に閉じ込めておくに留めていたのだが…アルビナスの進言は的中し、バーンへの反乱を決断したハドラーは、決着まであと一歩という所でザボエラに妨害されてしまい、逆に部下を喪う羽目になったのだった。

能力 Edit

妖魔の軍団を率いるだけあって優れた魔法使いであると同時に、いわゆる悪の科学者(マッドサイエンティスト)ポジションでもあるキャラクター。
老齢かつ非常に小柄であるため、魔法使いの例にもれず肉弾戦はからっきしだが、強大な魔力と技術力をもって他の軍団長からも一目置かれていた。
さらに体内には数百種類にもおよぶ毒素が流れており、これを自在に調合し爪から注入する能力や毒素を瘴気として放ち相手を眠らせる技【魔香気】や、強力な麻痺毒、注入した相手を意のままに操る毒など、様々な効果を生み出せる。
その効力は地上最強クラスの大魔道士【マトリフ】【キアリー】でも即時全快せず、体力がない者だと即死させてしまう程のもの。
 
しかし、物語後半で開かれた王国サミットでは「残る強敵」に数えられもしないどころか名前すら出ず、魔王軍ですら妖魔士団ごと忘れ去られるという扱いを受けている。
もっとも、これは後述される性格のせいであり、ザボエラの実力が低いという意味ではないが。
 
呪文の面では、【ベギラマ】【ザラキ】【モシャス】やオリジナル呪文【マホプラウス】を使いこなす。
モシャスは本人が使うほか、部下にかけて身代りに仕立てるのにも利用している。
またハドラーすら突破に手こずった【マホカトール】に守られている【デルムリン島】に容易く侵入したり、バーンに匹敵するほどの力を得た超魔生物ハドラーを、不意打ちとはいえ魔力の枷で拘束するなど、高等な魔法使いである事を示す様子もしっかり描写されている。
 
科学者としては、自軍の妖魔士団配下のモンスターのパワーと生命力不足の欠点を補うべく発案した【超魔生物学】が主な功績である。
これは魔族の肉体をベースに、獣や悪魔といった他のモンスターの長所となる肉体を移植手術を繰り返し行うことで、圧倒的な力を持つ合成獣を人工的に作り上げるというおぞましくも理に適ったもの。
当初は魔族から超魔生物に変身させることを念頭に置いており、変身、肉体維持に魔力を使う結果、呪文が一時的に使えなくなる欠陥があった。
しかしザムザに行わせていた研究により、魔族と超魔生物の相互変身能力を切り捨てることで呪文の問題を克服できると発見。
その結果、魔族の肉体を捨てる代わりに、強力な身体能力と呪文を兼ね備えた超魔生物ハドラーを誕生させている。
 
その後もさらに研究を重ね、超魔生物改造による生命力の大幅な消費を克服しつつ、再生能力自体を無効化する武神流【閃華裂光拳】への対策も完備した超魔生物の完成型【超魔ゾンビ】を開発し、ミナカトール攻防戦で使用している。
これは数多のモンスターの死体を合成・凝縮して死肉のパワードスーツを作り、中に乗り込み直接魔力で操るというもので、他者を平然と踏み台にしつつ自らの安全だけは手放そうとしないザボエラの卑劣な理念を体現するものであった。
また、その直前には自身の能力で作った毒素を仕込んだ投擲武器【毒牙の鎖】でポップの暗殺を狙ったり、
使い捨てながら一度に何十匹ものモンスターを詰め込める【魔法の筒】の改良版【魔法の球】で部下の魔界のモンスター軍団(のちに超魔ゾンビの材料となるよう改造済み)を召喚しているが、これらのアイテムもザボエラが自分で開発したものと思われる。
 
ちなみに、ザボエラは超魔ゾンビ発動の際に「前回の課題をすべてクリアして初めて“改良”という…!」と語っている。
これは彼の唯一の建設的な名言であり、科学者としてあるべき姿勢というものを読者に見せている。
搭乗者はもとより、超魔ゾンビそのものも呪文が使えないので、肉体強化と魔法が両立不可という最初の欠点は克服できていないと指摘されることもあるが、超魔ハドラーを経て「呪文と両立するより不死身のゾンビ体で圧倒するほうが強くて安全」という結論に至っていたのであれば、課題としては克服している。

末路 Edit

魔軍司令補佐として臨んだ最終決戦において、自軍が劣勢に陥ると、ミストバーンにその場を任せて、自身は【バーン】の護衛という名目でバーンパレスに逃げ帰ろうとした。
が、ミストバーンは最初からザボエラを全く信用していなかったため「地上の兵士達すら倒せないお前がバーンパレスに赴いてダイ達相手に何が出来るというのだ?」とぐうの音も出ない嘲笑で潰される。
なんとも似合わない仲間意識まで持ち出して彼の情にすがろうとしたが、逆にその論調を皮肉られる形で論破され、遂に捨てられるように突き放され一人取り残されてしまう。
この時、ミストバーンは敵であるはずのノヴァ達に深い敬意の言葉を残して去っており、一人置き去りにされたザボエラは敵対する人間たちからさえ同情されてしまう。
その上でクロコダインに降伏を持ちかけられるが、開き直ったザボエラは周りにいる瀕死の部下を皆殺しにし、自身の切り札にして最高傑作たる超魔ゾンビを生み出す。その力でミナカトールを消去しかける寸前まで追い詰めたものの、【ロン・ベルク】渾身の必殺技【星皇十字剣】によって超魔ゾンビは倒されてしまう。
 
ザボエラ本人はロンの攻撃からは辛くも逃れ脱出していたが、さすがに超魔ゾンビが負けたときの対策までは準備していなかった。
全魔力とアイテムを使い果たし、這いずって逃げようとするところをクロコダインに見つかってしまう。
往生際悪く「まだ策を残しているやも…」とハッタリをかけるが、ザボエラの性格を知っている元同僚のクロコダインは「危険となれば真っ先に逃亡するようなやつがすぐに見つかるようなところにいる時点で手札切れだろう」と即座に見抜いた。
 
さすがに観念して命乞いを始めたと思いきや、これも演技。
クロコダインを騙して油断を誘い、その隙に体内で調合した「相手の意識を奪い意のままに操る毒」で彼を操ろうと、差し伸べられた手に飛びかかった。
しかしそんな行動さえ読み切っていたクロコダインは【グレイトアックス】の柄を落としてザボエラの両腕をへし折り、その重さで地面に縫い留めてしまう。
地面に這い蹲らされ、死刑宣告に今度こそ行った本気の命乞いも空しく真上から【獣王会心撃】を撃ち込まれ、潰されるように惨めな死に様を晒した。
完膚なきまでに追い込まれ、浅はかな策に縋るも空しく最期を迎えるくだりは、ロトの紋章の【冥王ゴルゴナ】に共通するものがある。
 
クロコダインはとどめを刺す際「本当に煮ても焼いても食えぬ奴がいる」と吐き捨てているが、本来は魔王軍でも一目置かれた程の高い魔力と実力を持ちながら、出世欲に目が眩み、他人の力ばかりを利用しているうちに腐りきった下衆になってしまったザボエラの惨めな姿には軽蔑を通り越して哀れみすら感じていたようだ。
「自分もダイたちと一番初めに戦っていなかったら同じ様になっていたかもしれない」とも吐露しているが、それを聞いたクロコダインの友人バダックは「自分の誇る良き友人クロコダインは、例え敵のままであったとしても決してそうはならなかったろう」と断言していた。

凋落の原因 Edit

ハドラー、クロコダイン、ヒュンケル、バランと多くの幹部達が魔王軍から離反していった中、忠義によるものかはともかく、ザボエラは最期まで組織としての魔王軍は裏切っていない。
超魔生物、超魔ゾンビ、魔法の球など、科学者や研究者としての魔王軍への貢献も大きく、ハドラーの叛乱時にバーンを救うという決定的な実績も残している。
 
ザボエラが提案・主導した個々の作戦も、戦略的に見れば至極妥当なものが多い。
ブラスを人質にとった作戦は、ダイの親を想う心を上手く利用したものであり、ポップが【マホカトール】を使い、心打たれたクロコダインが追撃を躊躇っていなければ成功し、勇者の命運は絶たれていたはずだった。
言うなればクロコダインは完璧だった作戦を個人的感情で台無しにし、敗北し死亡した彼を蘇生液によって死の淵から救ったのもザボエラなのだが、蘇ったクロコダインはそのまま人間側に寝返るという、ザボエラにとっては恩を仇で返される結果になった。
 
バラン戦後にハドラーを誘って仕掛けた闇討ちは、敵が弱った所で追撃し始末するという合理的な作戦である。
実際ダイのパーティはポップ以外ザボエラの魔香気で眠りにつき、ダイ以外は地面に大穴が開いても起きてこないほどで、唯一戦えたポップもザボエラが巧みに隙をついて戦闘不能にした。
マトリフの乱入、予期せぬダイの新たな力という想定不能な事態さえなければ、パーティ全滅さえあり得たのである。
 
ハドラー戦後、ザボエラがダイを捜索して倒そうとしたのも、バーンが直々に魔王軍最大の障害と認めたダイを倒すこれ以上ない絶好の機会であり、味方側のヒムの妨害が入らなければ確実にダイたちを倒せていた。
軍の秩序維持という観点では、独断専行したザボエラを処罰することにも一理あるのだが、ハドラーによるヒムの派遣は「自分がダイを倒すこと」に拘った公私混同な部分もあった。
 
ミナカトール防衛戦ではポップを殺そうとして【メルル】に妨害され、結果としてポップの覚醒を引き起こしてしまったが、最大戦力のミストバーンがロン・ベルクとの戦闘で釘付けにされる中、ミナカトール妨害の為に唯一守られていなかった術者を不意打ちで殺す作戦は最良の選択だと言える。これが成功していればダイ達一行は【バーンパレス】に登ることすら叶わなかった。
 
超魔ゾンビがロンの必殺技に敗れ去った件にしても、結果的に彼の両腕を破壊して戦闘不能にしており、ヒュンケルやラーハルトに並ぶ強者の一人を相討ちに持ち込んだのは間違いなく大戦果であり、そもそも超魔ゾンビの防御を突破できるロンの存在自体が想定外だった。
ミストバーンに捨てられ開き直った勢いで戦闘に突入してしまい、ロンを含めた人間側の戦力を見誤って超魔ゾンビが長期戦に陥ったことで、そのさらに後を見越した逃走用のMPや手段が確保・準備出来なかったことも災いしたと言える。
 
こうして見ると、技術以外の戦闘面でも、魔王軍に対しての貢献度は下手な軍団長よりはるかに高い。
敗北の原因も、想定不能な事態や不運、味方に足を引っ張られたところが大きく、ザボエラ自身が無能という訳ではない。
しかしザボエラばかりが非難され凋落の一途をたどったのは、その出世の方法・それに見合わぬ矮小な心構えであった。
 
ザボエラは絶大な魔力の他に頭脳を買われていたのだから、軍師として各軍団長やハドラーを後方から補佐し智謀を発揮することが組織の中で最も効率よく活躍する方法であったといえる。
ところが、バーンによる魔王軍の方針は「軍団長を互いに競わせ切磋琢磨をさせる」というものであり、連携を取らせようという発想そのものが無かった。
ザボエラ自身も自分のために相手を利用するという前提で接触するので良好な関係など築けるはずもなく、その智謀は同僚にとっては評価どころか警戒の対象ですらあった。
この環境下では長所を活かすことも味方に頼ることもできず、単純な戦闘力にも大きく劣る彼は必然的に肩身が狭くなっていく。
その上、幹部の脱退や戦死による空席が増え、責任が重くなった分、利用する相手の選択肢が削られた上に逃亡や失敗が許されないリスクまでも抱えてしまった。
これはピンチになるとまず逃げる思考の彼からしてみればあまりに不利、得意戦法を一つ封じられたに等しい。
 
そんな「無理」の中で誰かに取り入るというのは、彼にとっては生き馬の目を抜く大切な手段だったのだろう。
そして取り入った幹部と信頼関係を保てれば、その頭脳で補い合い見合った評価を得られたはず。
しかし、その為には対象をきちんと観察し、その価値観にあった接し方をして信頼関係を築かなければならない。
クロコダインや超魔生物になった後のハドラーならばその武人としての誇り、ヒュンケルならば青年が抱く異性への純情、ミストバーンならばバーンに対する絶対の忠誠並びに強い意志と強靭な肉体を持つ者への敬意、といった具合に。
だがザボエラは彼らの価値観を理解せず、寧ろそれを逆撫でするような発言をして逆鱗に触れることさえしばしばであった。
特にハドラーに関しては他の幹部よりも行動を共にした時間が長かったにもかかわらず、彼の「自らの手でアバンの使徒との決着を付けたい」という心情を図り切れずに独断専行に出ている。ハドラーを改造したのはザボエラであり動機は知っているし、ハドラーがそれを直にバーンに嘆願している場面もザボエラは盗み見ているにもかかわらず……。
ハドラーのパワーアップは間違いなくザボエラの超魔生物研究の産物であり、ハドラー自身もそれは自覚している。更に、この時期のハドラーは最早手柄や名声への執着が無かった。
つまり大人しくバックアップにでも徹して、活動の幾らかは自分のお陰と売り込んでおけば、それだけで安全かつ誰の反感も買わず立場を得ることが出来たはずだったのだ。
 
もともと取り入り方が下手で反感を買いやすい上、実際に部下を盾に使い、更に掌返しをすると思われれば、せっかくの智謀を実行に移すだけの信用が無くなるのは火を見るより明らかだった。
皮肉にも、出世した後の自分の形振りには智謀が働かなかったのである。
せめて、例え演技であれ魔王軍への忠誠心を表に立てていれば、ミストバーンもザボエラを無碍には扱えなかっただろう。
 
そうして取り入るべき相手を無くし続けた結果、彼の「無理」は、ミナカトール攻防戦にて堰を切ったかのように一気に押し寄せてきた。
ザボエラのような怠け者を忌み嫌い、しかも部下になった時にザボエラの本質の全てを痛烈に指摘し「お前のようなやつは絶対信用しない」と宣告している相手を騙すのはいくらなんでも無理だろう。
屁理屈はすべて正論で論破され、『ワシらは仲間』という恐ろしく似合わないワードまで出してまで食い下がるが、ミストバーンはそれを嘲った上で即座に「それほどまでの"仲間"なら私がこういう時になんと言うかも承知している筈だが?」と返し「大魔王様の言葉はすべてに優先する」の一声の下に完全に捨てられる。
この際、ミストバーンが「…人生のツケというやつは、最も自分にとって苦しいときに必ず回ってくるものらしい」と告げているが、まさにその通りとなってしまった。
 
結果、彼は利用できる味方を全て失い、自身の隠し玉も敗北して追い詰められ、ついには自分に対して疑念しか持っていないクロコダインを利用できると思い込むまでに堕ちてしまった。
知略や策略を好まない事を指してか、自分を「頭が悪い」と謙遜していたクロコダインだが、要所での判断力や洞察力にはむしろ優れており、決してザボエラが評したような「力だけが取り柄のバカ」などではない。
おまけに散々騙されてきたためその手口や性格は既に知り尽くしており、最初のハッタリに乗ってこない時点で、その場凌ぎの謀略は通用しない相手と気付くべきだっただろう。
 
クロコダインの視点から見れば、ザボエラは辛酸をなめさせられ続けた因縁の相手だが、同時にかつて策を貰い受け、負けた自分を蘇生させており、その直後に魔王軍を裏切ったという点では、立場を悪くさせた借りのある相手ではある。
また、勝利を祝う仲間に黙って単独でザボエラの追跡に出ており、発見後にわざわざ交渉の機会まで設けている。
ザボエラが潔く降伏したなら、武人として一度だけは情けをかけて命だけは助ける責任を自分で負おうと考えていたと取れなくもない。
 
しかし、前述のように人を見る目がないザボエラはそれすら履き違え、最後のチャンスを自らフイにしてしまった。
大馬鹿と心の中で嘲笑い起死回生のチャンスと飛びかかるザボエラに対し、やっぱりなと言わんばかりに一切動じず斧を落とすクロコダイン。斧の柄で動きを封じられ、「この世には本当に煮ても焼いても食えないやつがいる」と死刑宣告を受けてはじめて読み違いに気づき「ま 待ってくれぇッ!!クロコダイ……」と本当の命乞いをするも、言い切る前に最期の言葉となった。
今際の際にクロコダインに吐露した「六大団長の中でワシだけがあまりにも非力! こうして策を弄する事以外に生き抜いていく道などワシにはなかったんじゃ・・・・・・!!」という言葉は、果たして単なる命乞いの詭弁だったのか、自らの「本音」をも策を弄することに使ったのだろうか。
得意の掌返しで魔王軍そのものを裏切り、保身と引き換えに情報を売り渡すといった、それこそ卑劣漢らしい逃げ道にすら縋る余裕もない最期であった。
   
なお、もう一つ大きな理由として「ダイの大冒険という作品の世界観と作劇」という都合も挙げられる。
この作品は騎士道精神や仲間との絆を軸にしつつ、大群さえ凌駕するほど優れた実力者の存在感と、その武勇が激突するシーンの比重が大きい。
そのため、組織的な軍略や集団戦の有効性はあまり描写・肯定されず、最終的に軍団長、あるいは彼等に準じる実力者さえいれば侵攻作戦やバトルが成立するようになっていった。
軍全体に技術的な貢献をするが武勇に劣るという科学者タイプには、もとより合わない環境だったわけだ。
他の幹部連中のようなプライドや信念を見せつけるタイプの見せ場が採られなかったのも、根っから非道で悪趣味、何より自分は動かず他人を利用する輩という個性が押し出されたャラクター造形故か。
 
同じドラクエ漫画である『ロトの紋章』が、大群で襲い掛かり圧倒してくる敵が現れれば主人公パーティでさえ押し止めるのは困難となり、時に主要人物さえ命を落とすのが珍しくない世界観だったのとは真逆と言える。
もしザボエラがロト紋世界にいたなら、その戦略は大きな脅威としてクローズアップされていたかもしれない。
同じく作中屈指の卑劣漢で非常に高い実力を備えながら、一方的な不意打ちの暗殺という手段で実力者を葬ったことが無い【キルバーン】にも、同様の事が言えよう。
 
なお、ロト紋の【冥王ゴルゴナ】とは結構共通点が多い。

  • 敵の幹部
  • 醜悪な老人
  • 魔法使い兼マッドサイエンティスト
  • 自分以外の存在を己の野望達成のための道具にしか見ていない卑劣漢
  • 命を弄び、部下を盾にしたりゾンビとして操ったりすることも辞さない外道
  • かつての身内に命乞いしながら騙し討ちするものの、あっさり見破られて切り捨てられる惨めな最期

…が、あちらは命惜しさに遠巻きから策を弄するようなタイプではなく、時には自ら戦線に赴いて敵と相まみえているため、この一点だけはザボエラよりマシであろう。

余談 Edit

上述のとおり、「キィ~ッヒッヒッヒッ」という特徴的な笑い方が有名だが、実は作中で最も笑い方のバリエーションが豊富なキャラでもある。
キヒヒヒやヒッヒッヒッといった基本の笑い方の他にも

  • キキキ
  • クククク
  • クヒヒヒ
  • グヒェッヒェッヒェッ
  • ギェッヘッヘッヘッ
  • ギョヘヘ
  • ヒョエッヘッヘッ
  • キョエ~ッヘッヘッヘッ
  • ギョニャァァァッ

など、珍妙で下品な笑い方については枚挙に暇がない。
自分は安全なところにいて、不利な状況の敵をあざ笑うシーンが多いザボエラの特徴とも言える。
 
ただし中盤以降は笑い方のバリエーションも減って、「キィ~ッヒッヒッヒッ」に統一されていった。
また、ザボエラ自身も物語後半以降になるとさすがに肩身が狭くなって笑っていられるような立場になくなっていった為、あまりこの笑い声を聞く事もなくなった。
ちなみにこの笑い方はザボエラとザムザが親子であるという事を示す要素ともなっており、ザムザが人間に化けてまだ正体を現していないときにも、この笑いを発してほくそ笑んでいた。

DQMSL Edit

妖魔司教ザボエラ名義で登場。系統はゾンビでランクはS。超魔ゾンビに転生できる。