【ザボエラ】

Last-modified: 2020-11-18 (水) 05:08:51

 魔王軍:ダイの大冒険

【バーン】

【ハドラー】【キルバーン】【ピロロ】【マキシマム】

【クロコダイン】―【ザボエラ】―【ヒュンケル】【フレイザード】【ミストバーン】【バラン】

ダイの大冒険

【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】に登場するキャラクター。
旧アニメ版の声優は龍田直樹、新アニメでは岩田光央。
 
齢890歳の小柄な魔族の老人で、同僚のフレイザードからはジジイ呼ばわり、敵対勢力とはいえ【バダック】からも妖怪ジジイと言われている。
まるでおとぎ話の魔女のような「キィ~ッヒッヒッヒッ」といった妙な笑い声が印象的。
息子に妖魔学士ザムザがいるが、ザボエラの性格から決してまっとうな親子仲とは言えない。
そもそも「子供が絶対に逆らえんもの…それは”親”じゃっ!!」と言っているのでそこからどうザムザに接していたかなど伺える…。
妻など他の家族構成は不明。
 
大魔王バーンに仕える幹部「魔王軍六大魔団長」の一人。
【魔術師】【悪魔の目玉】【バルログ】など、呪文が得意な魔法使い系と悪魔系モンスターを中心とする妖魔士団を率いる、「妖魔司教」という【ダークビショップ】辺りに当て字できそうな肩書きを持つ。
一般に「司教」と言えば地域単位で教会や司祭をまとめる役職の事だが、ザボエラの立場は指揮官と科学者であり、宗教家の側面は見られない。
他の幹部もそうだったが、彼らの肩書きは実態より通称に近いのだろう。
ただし配下には邪教神官系のモンスターがいるので、そいつらのまとめ役という意味ならさほど的外れな肩書でもない。あるいは【ハーゴン】のように、手下の統率に都合のいい宗教でも騙っているのか。
劇場版オリジナルだが【ベルドーサ】という配下がおり、【ダイ】たちへの刺客として差し向けたこともある。
 
後には謀反を起こした【ハドラー】から【バーン】の身を守った功績により、魔軍司令となった【ミストバーン】直属の部下として魔軍司令補佐=ナンバー3相当の地位を授けられた。
もっとも、その時点で魔王軍の目ぼしい幹部クラスはミストバーンとザボエラ、バーン直属の暗殺者【キルバーン】しか残っていなかったので、実態は昇進でもなんでもなかったわけだが。
 
ゲーム作品では星ドラのダイ大コラボで登場するが、切り札【超魔ゾンビ】を使った彼の最後の戦いはカットされている。スーパーライトでは当初は登場してなかったものの、2018年には超魔ゾンビも一緒に登場した。

人物像 

自らは矢面に出ず後方で小細工を駆使して暗躍するタイプだが、基本的にヘタレな上、悪どい手段を好む割には手柄に繋がらないというギャグキャラっぽい描写が目立ち、アニメ版でもややコミカルにも見える行動は多い。
だがその本性は残酷かつ卑劣、ドス黒い利己心と出世欲の塊のような人物。
自分以外のすべてを「道具」と称し、他者は自分に役立つ道具か否かでしか判断しておらず、利用価値がないものはただのゴミと断言する。そんな傲慢で酷薄な見方は実の息子にさえ例外ではなく、ザムザ自身も「自分が死んだとしても父は涙一つ流さない」と自覚していた。実際にザボエラは息子の死に涙どころか悲しんだ様子すら見せず、彼の遺した超魔生物の研究成果が自分の役に立つ事を喜び「短い一生だったが実に有意義だった」と笑っていたほど。
 
自分の身に危険がおよべば部下に【モシャス】をかけ、即席の影武者にしてさっさと逃げることも平然と行う卑劣漢であり、彼をスカウトしたハドラーですら「最も狡猾で残酷な頭脳を持ち、油断も隙もない男」と評している。
魔王軍設立の際には魔力以外にも狡猾さ、出世欲を買われて軍団長に選ばれたようだが、奸計を練る頭脳の高さを評価されつつも、それ故に当初から上司からの信頼は無かったのである。
他人には一切の情を持たないが自ら戦線に出る度胸もないため、強者には媚びて取り入る姿勢を見せるが、利用価値が無いとみるや否や即座に掌を返すため、次第に味方からの信用も無くしていった。
 
【ダイ】たちとの戦いにおいては、ダイの育ての親である【ブラス】を捕まえて【クロコダイン】に人質作戦を持ちかけたり、ハドラーと組んで【魔香気】を使って夜襲をかけ、モシャスで【ポップ】の想い人【マァム】に化けて毒を盛る等々、卑劣な手法を多用しパーティーを苦しめてきたが、リスクを人に押し付け自分だけ甘い汁を吸おうとするため、ダイ達はもちろん、魔王軍でもそのやり口を快く思わない者は多い。
特にハドラーの離反後、魔軍司令となったミストバーンの前でハドラーをヘラヘラと卑下したため彼の逆鱗に触れ、「カス」だの「人から人へ 自分の成り上がりだけを目あてにうろつくドブネズミ」だのバッサリと言われる程に嫌われている。また、【ヒュンケル】【アルビナス】は当初から「ダニ」呼ばわりしており、全く相手にされていなかった。
 
魔王軍での地位喪失を恐れて自ら出陣した際には、必殺のマホプラウスでダイを仕留める一歩手前まで行ったが、ハドラーの意を受けた【ヒム】に妨害され、連れ戻され投獄される。
その際アルビナスは「いずれ彼はハドラー様に災いをもたらします。一刻も早く処刑するべきです」と進言までしている。
もっとも、当のハドラーはかつての【アバン】やダイ達との度重なる戦いを通して魔王から武人へと考えを改めるようになっていたため、ザボエラに対しても一応の情を見せていた。
曲がりなりにも自らを超魔生物に改造し力を与えた恩人にあたり、先の戦いで息子のザムザを喪っていることを汲み取り、魔牢に閉じ込めておくに留めていたのだが…。
アルビナスの進言は的中し、バーンへの反乱を決断したハドラーは、決着まであと一歩という所でザボエラに妨害されてしまい、逆に部下を喪う羽目になったのだった。

能力

妖魔の軍団を率いるだけあって優れた魔法使いであると同時に、いわゆる悪の科学者(マッドサイエンティスト)ポジションでもあるキャラクター。
老齢かつ非常に小柄であるため、魔法使いの例にもれず肉弾戦はからっきしだが、強大な魔力と技術力をもって他の軍団長からも一目置かれていた。
さらに体内には数百種類にもおよぶ毒素が流れており、これを自在に調合し爪から注入する能力や毒素を瘴気として放ち相手を眠らせる技【魔香気】や、強力な麻痺毒、注入した相手を意のままに操る毒など、様々な効果を生み出せる。
その効力は地上最強クラスの大魔道士【マトリフ】【キアリー】でも即時全快せず、体力がない者だと即死させてしまう程のもの。
 
しかし、物語後半で開かれた王国サミットでは「残る強敵」に数えられもしないどころか名前すら出ず、魔王軍ですら妖魔士団ごと忘れ去られるという扱いを受けている。
もっとも、これは後述される性格のせいであり、ザボエラの実力が低いという意味ではないが。
 
呪文の面では、【ベギラマ】【ザラキ】【モシャス】【メラゾーマ】やオリジナル呪文【マホプラウス】を使いこなす。
モシャスは本人が使うほか、部下にかけて身代わりに仕立てるのにも利用している。
またハドラーすら突破に手こずった【マホカトール】に守られている【デルムリン島】に容易く侵入したり、バーンに匹敵するほどの力を得た超魔生物ハドラーを、不意打ちとはいえ魔力の枷で拘束するなど、高等な魔法使いである事を示す様子もしっかり描写されている。
 
科学者としては、自軍の妖魔士団配下のモンスターのパワーと生命力不足の欠点を補うべく発案した【超魔生物学】が主な功績である。
これは魔族の肉体をベースに、獣や悪魔といった他のモンスターの長所となる肉体を移植手術を繰り返し行うことで、圧倒的な力を持つ合成獣を人工的に作り上げるというおぞましくも理に適ったもの。
当初は魔族から超魔生物に変身させることを念頭に置いており、変身、肉体維持に魔力を使う結果、呪文が一時的に使えなくなる欠陥があった。
しかしザムザに行わせていた研究により、魔族と超魔生物の相互変身能力を切り捨てることで呪文の問題を克服できると発見。
その結果、魔族の肉体を捨てる代わりに、強力な身体能力と呪文を兼ね備えた超魔生物ハドラーを誕生させている。
 
その後もさらに研究を重ね、超魔生物改造による生命力の大幅な消費を克服しつつ、再生能力自体を無効化する武神流【閃華裂光拳】への対策も完備した超魔生物の完成型【超魔ゾンビ】を開発し、ミナカトール攻防戦で使用している。
これは数多のモンスターの死体を合成・凝縮して死肉のパワードスーツを作り、中に乗り込み直接魔力で操るというもので、他者を平然と踏み台にしつつ自らの安全だけは手放そうとしないザボエラの卑劣な理念を体現するものであった。
また、その直前には自身の能力で作った毒素を仕込んだ投擲武器【毒牙の鎖】でポップの暗殺を狙ったり、
使い捨てながら一度に何十匹ものモンスターを詰め込める【魔法の筒】の改良版【魔法の球】で部下の魔界のモンスター軍団(のちに超魔ゾンビの材料となるよう改造済み)を召喚しているが、これらのアイテムもザボエラが自分で開発したものと思われる。
 
ちなみに、ザボエラは超魔ゾンビ発動の際に「前回の課題をすべてクリアして初めて“改良”という…!」と語っているが、搭乗者はもとより超魔ゾンビそのものも呪文が使えないので、肉体強化と魔法が両立不可という最初の欠点は克服できていないように見える。
しかし、超魔ハドラーを経て「呪文が無くても不死身のゾンビ体で圧倒するほうが安全で自分の理想に適う」という結論に至っていたのであれば、課題としては克服しているといえる。
ザボエラが目指したのはリスクを負ってまで最強になることではなく、あくまでも自分はノーリスクで一方的に敵をいたぶれるような能力を得ることなのだ。

末路

魔軍司令補佐として臨んだ最終決戦において、自軍が劣勢に陥るといつものようにその場をミストバーンになすりつけて【バーン】の護衛という名目でバーンパレスに逃げ帰ろうとした。
が、ミストバーンは最初からザボエラを全く信用していなかったため「地上の兵士達すら倒せないお前がバーンパレスに赴いてダイ達相手に何ができるというのだ?」とぐうの音も出ない嘲笑で潰される。
「たまには自分の手足を動かせ」と吐き捨てられるも、逃げるためになんとも似合わない仲間意識まで持ち出して彼の情にすがろうとするザボエラ。しかし逆にその論調を皮肉られる形で完全論破され、遂に捨てられるように突き放され一人取り残されてしまう。
この時、ミストバーンは敵であるはずのノヴァ達に深い敬意の言葉を残して去っており、軽蔑を受け一人置き去りにされたザボエラは敵対する人間たちからさえ同情されてしまう。
その上でクロコダインに降伏を持ちかけられるが、開き直ったザボエラは周りにいる瀕死の部下を皆殺しにし、自身の切り札にして最高傑作たる超魔ゾンビを生み出す。その力でミナカトールを消去しかける寸前まで追い詰めたものの、【ロン・ベルク】渾身の必殺技【星皇十字剣】によって超魔ゾンビは倒されてしまう。
 
ザボエラ本人はロンの攻撃からは辛くも逃れ脱出していたが、さすがに超魔ゾンビが負けたときの対策までは準備していなかった。
全魔力とアイテムを使い果たし、這いずって逃げようとするところをクロコダインに見つかってしまう。
往生際悪く「まだ策を残しているやも…」とハッタリをかけるが、ザボエラの性格を知っている元同僚のクロコダインは「危険となれば真っ先に逃亡するようなやつがすぐに見つかるようなところにいる時点で手札切れだろう」と即座に見抜いた。
 
さすがに観念して命乞いを始めたと思いきや、これも演技。
クロコダインを騙して油断を誘い、その隙に体内で調合した「相手の意識を奪い意のままに操る毒」で彼を操ろうと、差し伸べられた手に飛びかかった。
しかしそんな行動さえ読み切っていたクロコダインは【グレイトアックス】の柄を落としてザボエラの両腕をへし折り、その重さで地面に縫い留めてしまう。
地面に這い蹲らされ、死刑宣告に今度こそ行った本気の命乞いも空しく真上から【獣王会心撃】を撃ち込まれ、潰されるように惨めな死に様を晒した。
完膚なきまでに追い込まれ、浅はかな策に縋るも空しく最期を迎えるくだりは、ロトの紋章の【冥王ゴルゴナ】に共通するものがある。
 
「この世には本当に煮ても焼いても食えぬ奴がいる」と最早救いなしとして容赦なくとどめを刺したクロコダインだが、本来は魔王軍でも一目置かれた程の高い魔力と実力を持ちながら、出世欲に目が眩み、他人の力ばかりを利用しているうちに腐りきった下衆になってしまったザボエラの惨めな姿には軽蔑を通り越して哀れみすら感じていたようだ。
かつて地位にとらわれた末に恥を捨ててその汚れた策にすがった身としてか「自分もダイたちと一番初めに戦っていなかったら同じ様になっていたかもしれない」と欲望の恐ろしさも吐露しているが、それを聞いたクロコダインの友人バダックは「自分の誇る良き友人クロコダインは、例え敵のままであったとしても決してそうはならなかったろう」と断言した。

凋落の原因

ハドラー、クロコダイン、ヒュンケル、バラン、ロンと魔王軍から離反していった者も多い中、忠義によるものかはともかく、ザボエラは最期まで組織としての魔王軍は裏切っていない。
超魔生物、超魔ゾンビ、魔法の球など、科学者や研究者としての魔王軍への貢献も大きく、ハドラーの叛乱時にバーンを救うという決定的な実績も残している。
ザボエラが提案・主導した個々の作戦も、戦略的に見れば非常に合理的なものが多い。
 
ブラスを人質にとった作戦は、ダイの親を想う心を上手く利用したものであり、半人前のポップが本来なら使えないはずの【マホカトール】を使い、心打たれたクロコダインが追撃を躊躇っていなければ、勇者の命運は絶たれていたはずの完璧な策であった。
手痛い反撃を受けて焦りを見せていたクロコダインをそそのかして性に合わない策に参加させたとはいえ、言うなれば個人的な感情を軍事目的より優先した結果の失敗な上、当のクロコダインは死亡。
そんな彼を蘇生液によって救ったのもザボエラなのだが、蘇ったクロコダインはそのまま人間側に寝返るという、ザボエラにとっては恩を仇で返される結果になった。
 
バラン戦後にハドラーを誘って仕掛けた闇討ちは、敵が弱った所で追撃し始末するという合理的な作戦である。
実際ダイのパーティはポップ以外ザボエラの魔香気で眠りにつき、ダイ以外は地面に大穴が開いても起きてこないほどで、唯一戦えたポップもザボエラが感情的な隙をついて戦闘不能にした。
マトリフの乱入、予期せぬダイの新たな力という想定不能な事態さえなければ、パーティ全滅さえあり得たのである。
 
ハドラー戦後、ザボエラがダイを捜索して倒そうとしたのも、バーンが直々に魔王軍最大の障害と認めたダイを倒すこれ以上ない絶好の機会であり、味方側のヒムの妨害が入らなければ確実にダイたちを倒せていた。
軍の秩序維持という観点では、独断専行したザボエラを作戦の内容や結果に拘わらず処罰することにも一理あるのだが、ハドラーによるヒムの派遣は「自分がダイを倒すこと」に拘った公私混同の部分が強かった。
 
ミナカトール防衛戦ではポップを殺そうとして【メルル】に妨害され、結果としてポップの覚醒を引き起こしてしまったが、最大戦力のミストバーンがロン・ベルクとの戦闘で釘付けにされる中、ミナカトール妨害の為に唯一守られていなかった術者を不意打ちで殺す作戦は最良の選択だと言える。これが成功していればダイ達一行は【バーンパレス】に登ることすらできず、最終決戦を挑む計画そのものが実行できなかった。
 
超魔ゾンビがロンの必殺技に敗れ去った件にしても、超魔ゾンビの防御を突破できるロンの存在自体が規格外であり、根本的にはロンが敵陣にいることもバーンが昔作った禍根が原因である。
そんなロンの両腕を結果的に破壊して戦闘不能にしており、ヒュンケルやラーハルトに並ぶ強者の一人を事実上の相討ちに持ち込んだのは間違いなく大戦果である。
ミストバーンに捨てられ開き直った勢いで戦闘に突入してしまい、ロンを含めた人間側の戦力を見誤って超魔ゾンビが長期戦に陥ったことで、そのさらに後を見越した逃走用のMPや手段が確保・準備出来なかったことも災いしたと言える。
 
こうして見ると、技術以外の戦闘面でも、魔王軍に対しての貢献度は軍団長の中でもかなり高い。
どれもこれもが「想定外の事態が無ければ敵をまとめて根絶やしに出来ていた」はずのものばかりで、他の軍団長より徹底的にダイ達を追い詰めており、技術面に於いても自軍の戦闘力を躍進させる大きな功績ばかりである。
敗北の原因も、想定不能な事態や不運、時には味方に足を引っ張られることも大きく、ザボエラ自身の落ち度とは言い難い。
しかしザボエラばかりが非難され凋落の一途をたどったのは、その出世の方法と、それに見合わぬ矮小な心構えであった。
 
ザボエラは絶大な魔力の他に頭脳を買われていたのだから、軍師として各軍団長やハドラーを後方から補佐し智謀を発揮することが組織の中で最も効率よく活躍する方法であったといえる。
ところが、バーンの思想自体が個人の武に重きを置いたもので、魔王軍の方針も「軍団長を互いに競わせ切磋琢磨をさせる」ため、連携を取らせようという発想そのものが無かった。
この環境下では、策に長けるが単純な戦闘力に大きく劣る彼は長所を活かすことができず短所のみが目立ってしまうため必然的に肩身が狭くなっていく。
 
また、取り入った幹部に自慢の頭脳を提供し、それに見合った評価を得たいなら対象をきちんと観察しその価値観にあった接し方で信頼関係を築かなければならない。
クロコダインや超魔生物になった後のハドラーならば武人としての誇り、ヒュンケルならば育ての親譲りの騎士道、ミストバーンならばバーンに対する絶対の忠誠と、強い意志や強靭な肉体への敬意を蔑ろにしてはならない。
しかしザボエラは自分が得することしか考えておらず、相手の利を挙げることもなく自分が利用する前提丸出しで接触、表面的にすら他人の価値観を尊重するという感覚がなく、寧ろ逆撫でするような言動で逆鱗に触れることさえしばしばであった。
こんな有り様で良好な関係など築けるはずもなく、その智謀は同僚にとっては評価どころか警戒の対象ですらあった。
 
一度手を組んだクロコダインは価値観に完全に相反する策を強行させられた苦悩の末に敗北、蘇生後は己の過ちを恥じそれを正してくれた人間側に寝返ってしまった。
ハドラーに関しては他の幹部よりも行動を共にした時間が長かったにもかかわらず、彼の「自らの手でアバンの使徒との決着を付けたい」という心情を図り切れずに独断専行に出ている。ハドラーを改造したのはザボエラであり動機は知っているし、ハドラーがそれを直にバーンに嘆願している場面もザボエラは盗み見ているにも関わらず、その辺りを汲んで行動することは無かった。
ハドラーのパワーアップは間違いなくザボエラの超魔生物研究の産物であり、ハドラー自身もそれは自覚している。
更に、この時期のハドラーは自分のプライドを賭けた戦いにしか興味が無く組織内での手柄や名声に執着していない。
「魔王軍の障害を排除するため超魔ハドラーという戦力を作り上げた」とでも売り込んでバックアップに徹しておけば、最前線に出る危険も少なく、ミストバーン辺りからも反感を買わない補佐役の立場ぐらいは得られたはずだった。
 
もともと取り入り方が下手で反感を買いやすい上、実際に部下を盾に使い、上司には面従腹背、ころころ掌返しをするとなれば、せっかくの智謀を提供し実行してくれる戦力すら見つからない。皮肉にも、ある程度の立場まで出世した後の自分の形振りには智謀が働かなかったのである。
次第にやり口は露呈し、さらには幹部の脱退や戦死による空席が増えて利用する相手の選択肢が削られた上に、責任が重くなった分逃亡や失敗が許されないリスクまでも抱えてしまった。
これはピンチになるとまず逃げる思考の彼からしてみればあまりに不利、得意戦法を一つ封じられたに等しい。
  
取り入るべき相手を無くし続けた結果、彼の「無理」はミナカトール攻防戦にて堰を切ったかのように一気に押し寄せてきた。
ザボエラのようなスタンスを忌み嫌い、しかも部下になったザボエラに面と向かってはっきりと嫌悪感を示した上で「お前のようなやつは絶対信用しない」と宣告しているミストバーンは、実際に容赦なくザボエラを捨て去ろうとする。
屁理屈はすべて正論で論破され、『ワシらは仲間』という恐ろしく似合わないワードまで出してまで食い下がるが、ミストバーンはそれを嘲った上で悠々と「それほどまでの"仲間"なら私がこういう時になんと言うかも承知している筈だが?」と返し、ザボエラ自身の口から、自分が見捨てられるのは誰にも逆らいようもない「大魔王様のお言葉」なのだと言わせることで、完全に逃げ道を断った。
この際、ミストバーンが「…人生のツケというやつは、最も自分にとって苦しいときに必ず回ってくるものらしい」と告げているが、まさにその通りとなってしまった。
 
結果、彼は利用できる味方を全て失い、自身の隠し玉も敗北して追い詰められ、ついには自分に対して疑念しか持っていないクロコダインを利用できると思い込むまでに堕ちてしまった。
知略や策略を好まない事を指してか、自分を「頭が悪い」と謙遜していたクロコダインだが、むしろ要所での判断力や洞察力にはかなり秀でており、決してザボエラが評したような「力だけが取り柄のバカ」などではない。おまけに散々騙されてきたためその手口や性格は既に知り尽くしており、最初のハッタリに全く乗ってこない時点でその場凌ぎの謀略は最早通用しない相手と気付くべきだっただろう。
 
クロコダインの視点から見ればザボエラは認め難い価値観を持つ卑劣漢であり、辛酸をなめさせられ続けた因縁の相手。
しかし同時に、かつては策を貰い受け、敗死した自分を蘇生してくれた元同僚でもある。クロコダインがその直後に魔王軍を裏切っているという点では、恩を仇で返したにも等しい。
勝利を祝う仲間に黙って単独でザボエラを追跡し、発見後に即座に断罪せずわざわざ会話の機会まで設けているあたり、彼への恩義と裏切ったことへの負い目も少なからず持ち合わせていた事は伺え、ザボエラが潔く降伏したならば武人の情けで助命し、その上で万一の責任を自分で負おうと考えていたと取れなくもない。
 
しかし、前述のように人を見る目がないザボエラは、それすら踏み台に利用できる油断だと履き違え、最後のチャンスを自らフイにしてしまった。
大馬鹿と心の中で嘲笑い起死回生のチャンスと飛びかかるザボエラに対し、やっぱりなと言わんばかりに一切動じず斧を落とすクロコダイン。斧の柄で動きを封じられ、「この世には本当に煮ても焼いても食えないやつがいる」と死刑宣告を受けてはじめて読み違いに気づき「ま 待ってくれぇッ!!クロコダイ……」と本当の命乞いをするも、言い切る事すらできず闘気で捻り潰された。
降伏を装いクロコダインに吐露した「六大団長の中でワシだけがあまりにも非力! こうして策を弄する事以外に生き抜いていく道などワシにはなかったんじゃ・・・・・・!!」という言葉は、果たして単なる命乞いの出任せだったのか、それとも「本音」さえも、油断を誘う道具にちょうどいいとでも思ったのだろか。
得意の掌返しで魔王軍そのものを裏切り、保身と引き換えに情報を売り渡すといった、それこそ卑劣漢らしい逃げ道にすら縋る余裕もない最期であった。
   
ザボエラが失敗と凋落を続けたもう一つ大きな理由として「ダイの大冒険という作品の世界観と作劇」という都合も挙げられる。
この作品は騎士道精神や仲間との絆を軸にしつつ、大群さえ凌駕するほど優れた実力者の存在感と、その武勇が激突するシーンの比重が大きい。
そのため、組織的な軍略や集団戦の有効性はあまり描写・肯定されず、最終的に軍団長、あるいは彼等に準じる実力者さえいれば侵攻作戦やバトルが成立するようになっていった。
組織全体に技術的な貢献をするが武勇に劣る科学者タイプには、もとより向かい風の環境だったわけだ。
他の幹部連中のようなプライドや信念を見せつけるタイプの見せ場が採られなかったのも、根っから非道で悪趣味、何より自分は動かず他人を利用する輩の因果応報が強く演出された故か。
 
同じドラクエ漫画である『ロトの紋章』が、敵側に卑劣な手段や狡猾な策謀を巡らす敵が当たり前のように存在し、大群で襲い掛かり圧倒してくる敵が現れれば主人公パーティでさえ押し止めるのは困難となり時に主要人物さえ命を落とすのが珍しくない世界観だったのとは真逆と言える。
もしザボエラがロト紋の魔王軍にいたなら、【アルス】達を精神的にも大きく追い詰める一大脅威として化けていたかもしれない(あちらのパーティにはヒュンケルやクロコダインのような「成熟した大人」が居ない事も大きい)。
同じく作中屈指の卑劣漢で非常に高い実力を備えながら、一方的な不意打ちの暗殺という手段で実力者を葬ったことが無い【キルバーン】も、同様の事情だと言える。
 
そんなロト紋の【冥王ゴルゴナ】とは共通点が何気に多い。

  • 敵の幹部
  • 醜悪な老人
  • 魔法使い兼マッドサイエンティスト
  • 自分以外の存在を己の野望達成のための道具にしか見ていない卑劣漢
  • 命を弄び、部下を盾にしたりゾンビとして操ったりすることも辞さない外道
  • かつての身内に命乞いしながら騙し討ちするものの、あっさり見破られて切り捨てられる惨めな最期

…が、あちらは命惜しさに遠巻きから策を弄するようなタイプではなく、時には自ら戦線に赴いて敵と相まみえているため、この一点だけはザボエラよりマシであろう。

余談

上述のとおり、「キィ~ッヒッヒッヒッ」という特徴的な笑い方が有名だが、実は作中で最も笑い方のバリエーションが豊富なキャラでもある。
キヒヒヒやヒッヒッヒッといった基本の笑い方の他にも

  • キキキ
  • クククク
  • クヒヒヒ
  • グヒェッヒェッヒェッ
  • ギェッヘッヘッヘッ
  • ギョヘヘ
  • ヒョエッヘッヘッ
  • キョエ~ッヘッヘッヘッ
  • ギョニャァァァッ

など、珍妙で下品な笑い方については枚挙に暇がない。
自分は安全なところにいて、不利な状況の敵をあざ笑うシーンが多いザボエラの特徴とも言える。
 
ただし中盤以降は笑い方のバリエーションも減って、「キィ~ッヒッヒッヒッ」に統一されていった。
また、ザボエラ自身も物語後半以降になるとさすがに肩身が狭くなって笑っていられるような立場になくなっていった為、笑い声自体を聞く事も少なくなった。
ちなみにこの笑い方はザボエラとザムザが親子であるという事を示す要素ともなっており、ザムザが人間に化けてまだ正体を現していないときにも、この笑いを発してほくそ笑んでいた。

DQMSL

妖魔司教ザボエラ名義で登場。
原作では悪魔系モンスターを率いていたが、本作では転生先に合わせたのかゾンビ系。ランクはS。超魔ゾンビに転生できる。