論文過去問

Last-modified: 2024-01-31 (水) 20:18:23
 

年度別論題一覧表

年度総論各論
土地収用法用地事務のあり方と
コンプライアンス
用地取得
マネジメント
行政対象暴力民法補償に関する
相談の実務
公共用地交渉の実務説明会の実務用地取得
工程管理計画
用地アセスメント
令和5年度用地取得マネジメントの流れ4段階における具体的内容各々の説明会の目的、説明内容及び留意点
令和4年度不当要求に対する平素の準備事項と有事の対応策PDCAサイクルの内容及び目的について
令和3年度土地調書物件調書の必要性、内容、作成方法及びその効力相談業務の必要性、質問や要望等への対応の内容
令和元年度不正防止対策、適正な補償を確保するための各種通知権利者ごとの交渉方針並びに交渉用資料の具体的内容
平成30年度導入の背景、用地着手前の施策、用地着手後の施策補償説明会の事前準備に関する内容等について
平成29年度権利取得裁決と明渡裁決、各々の裁決の内容及び効果PDCAサイクルの内容及び目的について
平成28年度不当要求等に対する対応策、用地アセスメントとの関係相談者からの質問、要望、意見等を具体的に列記、その内容
平成27年度用地取得マネジメントの流れ4段階における具体的内容相談業務の必要性、施行上の義務、心得及び留意事項
平成26年度土地収用法の規定による事業の認定の効果について用地交渉の説明者として必要とされる心構え、説明責任等
平成25年度事業認定の要件及び事業認定手続きの概要説明会において必要とされる事前準備、説明内容及び留意点
平成24年度用地取得期間を短縮するための効率化策について相談業務における主な相談項目及び業務に当たっての留意点
平成23年度土地収用法の目的及びその主要な手続きの概要補償金の増額要求の具体例及びその対応について
平成22年度総合補償部門の業務内容及び総合補償士の役割公共用地取得計画の策定について必要な理由及びその内容
平成21年度用地取得マネジメントとは。導入された背景及び理由公共用地交渉業務の具体的内容について

令和5年度

総論
「用地取得マネジメントの流れは大きく4つの段階に区分されますが、それぞれの段階における内容を具体的に述べて下さい。」
各論
「用地補償に関する説明会は、大きく分けて用地調査等に着手する段階及び用地交渉に着手する段階に分かれますが、各々の説明会の目的、説明内容及び留意点について述べてください。」

令和4年度

総論
「不当要求に対する基本的な対応としての平素の準備として必要な事項と有事の対応策について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
 不当要求に対する基本原則は、組織的な対応である。事前に対応方針等を策定して組織
一丸となって対応することが大事である。
1.平素の準備としては、
(1)トップの危機管理(毅然とした対応)がある。組織全体としての対応、個人での対応
ではなく組織として法令遵守し毅然と対応する姿勢が必要がある。
トップ自らが不当要求には断じて応じないという方針・姿勢を示し、組織として毅然と対
応するようにする。
(2)体制づくりとして、
①対応責任者を決めておく。対応責任者は組織を代表して対応することになるので、回答
等は確認しておく。
②対応する担当者及び各自の役割分担を決めておく。
③対応マニュアルを作成しておくとともに通報体制も確認しておく。
④情報の共有化として、不当要求の状況、対応方針等を関係者へ報告することを義務化し
ておく。
⑤対応する場所について、管理権の及ぶ対応室を用意しておき、録音・録画が可能なよう
準備しておく。また、暴力追放ポスターや責任者講習会修了書を掲示しておく。
(3)警察、暴力追放センター、弁護士との連携を取っておく。特に警察へは緊急通報でき
るよう連絡体制を確立しておく。
2.有事の対応策としては、
①相手方の確認として、氏名、住所、団体名、連絡先を確認し、あわせて用件を確認する。
②人数を確認し、人数制限を行うことも必要となる。
③事前に準備した対応室で対応する。
④前もって時間制限をしておき、時間が来れば打ち切る。
⑤対応は相手方より1名程度多くして行う。
⑥冷静な対応を行い、言動には注意する。特に慎重に必要最小限で明確な言動とし、相手
に付け込まれたり、あげ足を取られることのないように。
⑦相手の土俵に乗ることのないよう、論争は回避し、約束はしないようにする。
⑧トップは絶対に出してはならない。一度出ると次からトップが対応しなければならなく
なる。
⑨湯茶を出すと長居を認めることになるので出さない。
⑩念書、わび状等を要求されることもあるが決して出さない。
⑪時機を失せず警察へ通報する。暴力、居座りが発生したら警察の協力を得ることになる
ので日頃より連携しておくことが大切である。

各論
「PDCAサイクルを活用した用地取得工程管理について、サイクルの内容及び目的について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
(用地取得工程管理について)
 公共用地取得は、多数の権利者に相対すること、権利者の権利意識の高揚により、用地
取得の完了までに解決するべき課題は多数にのぼる。
また、用地取得のための各種手続きは同時並行的に実施しなければならないものもあり、
工程管理を行うことは大変重要である。
用地取得マネジメントにおいても、用地アセスメントで把握した用地取得の円滑な実施
を阻害する要因(用地リスク)を踏まえ、 用地取得期間を短縮するための効率化策を適用
した上で策定される用地取得工程管理計画に基づく工程管理は、重要な位置を占めるもの
である。
(PDCAサイクルを活用した用地取得工程管理の目的)
 用地取得工程管理においても、必ずしも計画どおりに用地取得が進むものではなく、用
地取得の進捗を分析・評価した上で、計画と実際の差異を解消するため、新たに効率化策
を講じて、用地取得を進めるのが、PDCAサイクル を活用した用地取得工程管理の目的
である。
(PDCAサイクルの概念)
一般に用いられるPDCAサイクルは、
「Plan」;計画
「Do」;実行
「Check」;管理
「Action」;改善
であり、最後の「A」を次のサイクルにつなげることで、らせんを描くようにサイクルを
向上させるという考え方である。
(用地取得工程管理におけるサイクルの内容)
 用地取得工程管理をPDCAサイクルにあてはめると次のような流れになる。
(P):用地アセスメントにより把握した用地リスクを踏まえ、用地取得期間を短縮させ
る効率化策を適用した用地取得工程管理計画の策定
(D):用地取得工程管理計画に基づく用地取得の推進取得の推進
(C):用地取得進捗状況の分析・評価
(A):新たに把握した用地リスクに対する効率化策の検討、適用効率化策の検討、適用
 ここで、最後のAを新たなサイクルにつなぐ(二次サイクル)と次のようになる。
(P):用地取得工程管理計画書の定期的な見直し、更新
(D):新たな効率化策を導入した用地取得の推進
(C):用地取得進捗状況の分析・評価
(A):新たに把握した用地リスクに対する効率化策の検討、適用
 上記のように、サイクルをつなぎ、新たに発生する課題に対応策を適用することで、サ
イクルの内容が向上し、用地取得期間を短縮し、早期に用地取得を完了させようとするも
のである。

令和3年度

総論
「土地収用法の手続きとして、土地調書及び物件調書の作成が必要となりますが、その必要性、内容、作成方法及びその効力について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
一.土地調書・物件調書
 土地調書・物件調書は、収用・使用の対象となる土地・物件の内容、権利関係等につい
て、収用委員会の審理に先立ち、起業者が作成するもので、土地調書は土地の収用又は使
用の裁決申請書と共に、物件調書は明渡裁決の申立書と共に提出が必要な書類となる。
二.土地調書・物件調書の内容
 土地調書・物件調書には、収用・使用の対象となる土地・物件について、
1.土地・物件の所在及び所有者の氏名、住所
2.収用・使用しようとする土地の面積
3.物件の種類、数量
4.土地・物件に関して権利を有する関係人の氏名・住所及びその権利の種類・内容等を
 記載して、実測平面図を添付する。
三.土地調書・物件調書の作成方法
1.土地・物件調査権(法第35条)
 事業認定の告示があった後は、起業者は、土地調書・物件調書の作成のため土地・工作
物に立入り測量し、又は、調査することができる。
2.通常の作成方法(法第36条)
 起業者が作成し、署名押印した土地調書・物件調書に、土地所有者等が、その調書に直
接署名押印して作成する。土地所有者等は、署名押印の際、その調書に異議を付すること
ができる。土地所有者等が、署名押印を拒否した場合は、市町村長が吏員を立ち会わせ、
署名押印させることができる。
3.縦覧方式による作成(法第36条の2)
 一筆の土地、又は、一筆の土地にある物件に、補償金の見積額が1万円以下の権利者が、
百人以上存在する土地・物件については、起業者が作成し、署名押印した土地調書・物件
調書を、地元市町村において1か月縦覧(土地所有者等には起業者から、その旨、個別通
知)し、土地所有者等から異議申出書が提出された場合は、それを土地調書・物件調書に
添付することで、作成することができる。
四.土地調書・物件調書の効力
 収用委員会審理において、起業者が土地調書・物件調書の内容に即した主張しかできな
いことは無論、土地所有者等も、土地調書・物件調書の記載事項に誤りがあることを立証
する以外、付した異議の範囲内でしか意見を述べることができない。
 収用委員会は、付した異議の部分を除き、土地調書・物件調書に記載されている内容、
権利関係を前提に、裁決してよいこととなる。

各論
「補償相談業務は、用地取得マネジメントにおける効率化策のひとつとして位置づけられていますが、補償相談業務の必要性と、相談者からの質問、要望、意見への対応等、業務の的確な対応の具体的な内容について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
 はじめに、補償相談業務は、用地取得マネジメントの骨格である「用地取得工程管理計
画」において、用地取得期間を短縮させるための有効な効率化策として位置づけられてい
る。この業務の必要性・具体的対応等について以下に述べる。
1.必要性
 事業を計画的に遂行するためには、事業予定地内の土地等の権利者及び周辺住民の、事
業や用地取得等への不安を解消することが、事業を円滑に達成するために重要となる。
 特に、生活環境に著しい変化を伴う事業においては、土地所有者等が不安や疑問を持つ
事業内容やスケジュール及び用地取得に伴う補償内容・移転先(代替地)、移転時期、契
約、支払い並びにそれらに伴う、課税・各種社会保障等の影響について、早期に適切な相
談対応をすることが効果的であり、これを行うのが補償相談業務である。
2.補償相談の対応等
 相談者からの相談に対応するうえでの義務及び心得としては、①法令を遵守し、業務で
知り得た個人情報等は、決して外部に漏らさないこと、②相談者への説明にあたっては、
正確に良心的に行い、不審の念を抱かれるような言動は厳に慎むこと、③監督職員との連
携を密にし、報告・相談及び連絡を行うこと等である。
3.業務の的確な対応
 業務を実施するうえで具体的に必要となる内容は、①契約書及び発注者の仕様書等を充
分理解すること、②相談者には誠実な言動に配慮すること、③補償基準及び運用並びに取
扱いを理解したうえで、改正等についても速やかに確認のうえ理解すること、④発注者の
用地関係事務規程等について把握・理解すること、⑤発注者の不正防止対策を確認・理解
するとともに、予め体制を整えておくこと、⑥相談者からの相談は、その意向を正確に把
握し、一般的内容を超えるような場合は、速やかに監督職員に報告・協議のうえ対応を図
ること、⑦相談の記録は、正確に速やかに作成し提出すること等である。
4.その他留意事項
 補償相談業務は、相談者となる者に応じて「職員型」と「委託型」及び「専門家委託型
」に分類されるが、特に「委託型」においては、複数の相談員が異なる見解を示したり、
発言内容に極端に相違があったりした場合、相談者とのトラブルが発生することが想定さ
れるため、実施にあたっては、補償相談実施マニュアル及び想定問答集等を作成し、受発
注で確認しながら、相談員のマニュアル等への理解を深めるための対応が必要である。

 

令和元年度

総論
「用地取得の不正防止対策について、適正な補償を確保するための各種通知等が発出されていますが、これら通知に基づく取り組みについて述べてください。」

合格論文例

合格論文例
(はじめに)
 公共用地の取得等に伴う補償事務に従事する者は、常に厳正・公平な立場で業務を遂行
することが求められている。いやしくも外部からの不当要求や圧力に屈しない使命感と高
い倫理観を保持して、権利者に対応することが求められていることを認識する必要がある。
1.不正防止対策についての取り組み
 職員一人一人が、法律及び補償基準等の規範となる法令を遵守し、また各起業者の用地
事務取扱規定や各通達等を十分に理解し、毅然とした理念を念頭に行動しなければならな
い。また、組織においても日常の業務において、倫理観を含めた取り組みが必要である。
(1)組織全体としての取り組み
 業務の報告の徹底、警察との連携強化、職員の意識啓発、所属における研修実施。
(2)多段階チェックシステムの確立、徹底、強化
 補償金額提示ルールの確立及び遵守、チェックシートの徹底、検査及び監査の強化、第
三者チェックの確立及び徹底。
(3)不当要求を抑制する取り組み
 道路区域制度の活用、用地取得直前行為の詳細調査など。
(4)情報公表による透明性向上の取り組み
 取得土地単価の範囲の公表。
(5)土地収用制度の積極的な活用
 土地収用法に基づく事業認定の適期申請を積極的に活用する。
(6)不当要求に対する警察、弁護士会等との連携強化
 警察、弁護士会等の関係機関と早めの相談等を行い、緊密な連携を図る。
(7)危機管理マニュアルの作成
 組織としての対応として、危機管理マニュアルを作成する。事前に職員へ周知すること
も重要である。
(8)危機管理マニュアルに基づく庁舎等の施設整備
 危機管理マニュアルに基づき、庁舎の監視カメラ等の設置、会議等の応対場所の録画設
備、非常通報設備等の設置を実施。
2.その他
 特に用地補償に関する不当要求の行政対象暴力に対しては、担当職員のみならず、組織
として法令を遵守し、警察をはじめとする関係機関の協力を得て、その排除を行うことが
重要である。

各論
「公共用地交渉の実施に際しては、公共用地交渉方針の策定及び公共用地交渉用資料の作成等が必要となりますが、当該区域全体及び権利者ごとの公共用地交渉方針並びに公共用地交渉用資料の具体的な内容について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
 公共用地交渉とは、関係権利者の特定、補償額算定書の照合、用地交渉方針の策定及び
用地交渉用資料の作成等を行った上で、関係権利者と面談し、補償内容の説明等を行い、
円滑な用地取得への協力を求める業務である。
 交渉の進捗により段階があり、調書の説明及び確認が第一段階、補償内容の説明、損失
補償協議書の説明及び交付が第二段階、補償契約書の説明及び契約の承諾が第三段階とな
っている。
 関係権利者との面談に先立ち実施する公共用地交渉方針の策定と公共用地交渉用資料の
作成は重要な作業であり、交渉の成否を左右するものとなるため、発注者と十分協議の上、
策定及び作成を行う必要がある。
 以下に具体的内容を列記する。
(公共用地交渉方針)
①当該事業区域全体での交渉スケジュールと、権利者ごとの交渉スケジュール。
②当該事業全体での補償基準等の適用範囲等。
③当該事業全体に係る土地価格決定について。
④当該事業全体に係る税の特例措置等の説明。
⑤権利者ごとの補償内容に応じた用地取得等の手続き、物件等の移転方法、移転工法、建
物等物件移転料、営業補償、その他通損補償等の算定方法、内容等。
⑥権利者ごとの用地交渉の進め方、注意点。
⑦補償金の支払い方法等。
⑧補償契約締結後の措置(移転履行状況の確認等)。
(公共用地交渉用資料)
①事業概要等を説明した冊子、パンフレット。
②補償基準等の目的、概要を説明したパンフレット(各補償項目の概要説明を含む)。
③事業スケジュール、交渉段階や進捗を説明した資料。
④工事平面図、その他工事概要を示した図面。
⑤用地平面図。
⑥土地価格決定の根拠資料。
⑦補償金における税金の取扱いを説明した冊子やパンフレット。
⑧権利者ごとの補償客体に合わせた補償方法、移転工法等を説明する資料。
⑨権利者ごとの土地調書、物件調書、損失補償協議書等。
⑩契約に必要な書類等(印鑑証明書等)を示した資料。
⑪想定問答集等。
 以上を準備し、発注者と十分な協議の上、公共用地交渉を実施する。
 交渉実施においては、法令、規定に則り遂行し、正確かつ良心的に対応して、関係権利
者の理解が得られるよう努めること。

 

平成30年度

総論
「用地取得マネジメントについて、その導入の背景及び用地着手前の施策、用地着手後の施策について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
( 導入の背景)
 近年における公共事業予算の長期縮減傾向に伴い、重点的かつ効率的な事業実施が必要
となるとともに、事業効果の早期発現が求められている。事業効果を早期に発現していく
ためには、事業期間に占めるウエイトが高い用地取得期間を短縮することが不可欠であり
、用地取得の円滑化、迅速化が強く求められている。
 このため、公共用地の取得業務を定式化し、用地取得を担当者の能力から組織力で実施
するための条件整備が必要である。
そして、予め明示された完成時期を目標とした計画的な用地取得を実現するため、事業
の計画段階から将来の共用までを見据えた周到な準備を行い、必要となる施策を適時適切
に行う「用地取得マネジメント」が確立された。

( 用地着手前の施策)
 用地取得マネジメントは、単独の施策を表すものではなく、用地取得に関する全ての工
程を総合的に管理するという概念であり、事業計画に今まで以上の用地取得の視点を盛り
込むことがあげられる。用地取得の円滑な進捗を阻害することが想定される個別の要因を
「用地リスク」、その要因の調査、把握を行うことを「用地アセスメント」と呼ぶ。
用地アセスメントと事業予定区域における「地籍調査の先行実施」は、用地着手前の施
策として、用地取得期間の短縮を図る重要な施策である。

( 用地着手後の施策)
 用地取得マネジメントにおける用地着手後の施策として、事業区間全体について、用地
リスクごとの処理期間等を明記した「用地取得工程管理計画」の策定と、当該計画に基づ
いた計画的な用地取得の推進が挙げられる。
当該計画に基づいて計画的な工程管理を推進していくことになるが、用地取得の進捗状況
や、新たな用地リスクの発現等により、期間短縮を図るための効率化策( 相談窓口の設置
、事務所支援体制の充実、アウトソーシングの活用、土地収用法の積極的活用) の導入が
検討される。
これらの効率化に通常の業務における短縮も含めて、これを案件ごとに集約したものが
「用地取得工程管理計画書」であり、当該計画書に基づいて用地取得の工程管理を進めて
いく。又、用地取得の進捗状況や、新たな用地リスクの発現等により、随時見直しを実施
していく必要がある。

各論
「補償説明会の開催には、事前の準備が必要となりますが、下記の事項について、事前準備に関する内容等について述べてください。
(1)実施時期の判断
(2)招集者の確定方法
(3)説明会通知文の内容
(4)説明会場・開催時間の決定に関する留意点
(5)説明会に用意するもの
(6)説明会当日の受付に関する留意点」

合格論文例

合格論文例
1 . はじめに
 用地補償に関する説明会は、その開催時期と目的より、大きく2 つに分類される。1 つ
は用地調査等に着手する段階、2 つ目は用地交渉に着手する段階の各説明会である。課題
は「補償説明会」とのことから、後者であるものと考えられるため、以下の記述はその前
提で述べる。
2 . 事前準備の内容等について
(1) 実施時期の判断
 用地取得工程管理計画を策定し、それに基づき実施時期等を定める。用地交渉前の説明
会は、補償額算定書の照合が終わったタイミング等になるため、前提作業の進捗管理も十
分行ったうえで実施時期を判断する( 逆に言えば、時期に合わせて前提作業を進めて行く
必要がある。行政等とも要調整) 。
(2) 招集者の確定方法
 用地調査等の成果より権利者を特定し、権利者名簿等を作成するとともに、漏れがない
よう地元精通者等の確認を得る。
相続未了の者については、固定資産税の納税者など実質的管理者を招集する。
また、遠隔地居住者等には、地元の親戚等を通じて連絡してもらう等配慮する。
(3) 説明会通知文の内容
時候の挨拶、事業協力への感謝、説明会の目的、日時、会場、主な説明内容、発出者、
問合せ先等を記載する。併せて、出席できない方への対応も添えておく。
(4) 説明会場・開催時間の決定に関する留意点上記(1) の実施時期の判断とも連動するが、
行政や地元の自治会長等と調整し、一般的には地元の公民館等で開催することが多い。開
催時間( 日時) は、多くの権利者が出席できるよう地元の慣習等も踏まえ決めていく。
その際、地元の行事等と重複しないよう留意する。所要時間は2 時間程度。
(5) 説明会に用意するもの
① 権利者名簿
② 補償内容、課税の特例等のパンフレット
③ 土地価格、建物等物件補償に係る説明資料
( 多くの者に共通する内容を中心に)
④ 事業計画のパンフレット、工事平面図等
⑤ 用地平面図
⑥ 想定問答
⑦ 説明用機器等
(6) 説明会当日の受付に関する留意点
 誰が出欠したかは、その後の用地交渉に影響するため、権利者名簿にて確実に確認し記
録しておく。家族が代理出席することもあるため、続柄、氏名も確認が必要。
また、欠席者には後日、資料送付等のフォローアップを行う。
権利者以外の者については、趣旨を説明して、原則入場をお断りする。
最後に補償コンサルとしては、発注者と連携を密に、役割分担のうえ、各種の準備を行
うことになる。

 

平成29年度

総論
「収用又は使用の裁決には、権利取得裁決と明渡裁決がありますが、各々の裁決の内容及び効果について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
1.権利取得裁決の内容
権利取得裁決は、起業者が土地の所有権等を取得するために必要な事項について裁
決するものであり、具体的には次のとおりである。
1)裁決事項
① 収用又は使用する土地の区域、使用方法及び期間
② 土地等に対する損失の補償
③ 起業者が権利を取得する時期
2)当事者主義
損失の補償は、起業者・土地所有者等それぞれの申し立ての範囲で裁決しなけれ
ばならない。
3)不明裁決
損失の補償は、補償を受ける土地所有者等の氏名、住所を明らかにして裁決しな
ければならないが、補償を受ける土地所有者等の氏名、住所が確知できないときは、
土地所有者等が不明であるとして裁決することができる。
2.明渡裁決の内容
明渡裁決は、土地所有者等が土地を明け渡すために必要な事項について裁決するも
のであり、具体的には次のとおりである。
1)裁決事項
① 損失の補償
② 起業者に土地を明け渡す期限
2)当事者主義等
当事者主義及び不明裁決の内容は、1.権利取得裁決の内容と同様である。
3.権利取得裁決の効果
1)補償金の支払い義務の発生
起業者は、権利取得裁決で定められた権利取得の時期までに、補償金を支払わな
ければならない。
ただし、相手が受領を拒否した場合又は不明裁決の場合は、供託することができ
る。
2)権利の取得
起業者は、権利取得裁決で定められた日において、土地の所有権を取得する。
4.明渡裁決の効果
1)補償金の支払い義務の発生
起業者は、明渡裁決で定められた土地の明渡し期限までに、補償金を支払わなけ
ればならない。
ただし、相手が受領を拒否した場合又は不明裁決の場合は、供託することができ
る。
2)土地の明渡し期限
土地を占有している者は、物件等を移転させ明渡し期限までに土地を起業者に明
け渡さなければならない。
3)市町村長による土地の引渡しの代行
起業者の請求により、市町村長は土地の所有者等に代わり、土地を引渡さなけれ
ばならない。
4)都道府県知事による代執行
起業者の請求により、都道県知事は代執行することができる。
5)買受権の発生
取得等した土地が、長期間、事業の用に供さない時は、買い戻すことができる。

各論
「PDCAサイクルを活用した用地取得工程管理について、サイクルの内容及び目的について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
1.PDCAサイクルの目的
用地取得工程管理計画書は、事業区域内に存する全ての用地リスク情報やそれらの
リスクに対して用地取得完了目標期限までに講じる措置(取得期間短縮の効率化策)
を踏まえた処理期間を明らかにしたもので、当該計画書に基づく工程管理により、用
地取得完了目標期限に向けた、効率的かつ効果的な用地取得を計画的に行おうとする
ものである。
しかし、当該計画書に基づく用地取得が、全て計画どおりに進むとは限らない。そ
のため、工程管理の中で遅延の発生の把握と原因の分析・評価を適宜適切に行い、実
工程と計画の差異の是正を図る目的で活用されるのが、PDCAサイクルである。
2.PDCAサイクルの内容
PDCAサイクルは、P(計画)→D(実行)→C(管理)→A(改善)という4
つの段階のサイクルを順次実行し、最後のAを次のサイクルのPに繋げることで、螺
旋を描くように一周ごとにサイクルを向上させ、継続的な業務改善を図ろうとするも
のである。各実施段階の内容は次のとおりである。
①P=Plan(計画)
用地取得工程管理計画書(管理用)の策定・更新である。当初の工程管理開始時点
では、既に第2用地アセスメントに基づき策定済みのため、第1次サイクルにおいて
は、次のDからのスタートとなる。
②D=Do(実行)
用地取得工程管理計画書に基づく用地取得の推進である。用地取得工程管理担当者
は、会議等で適宜適切に進捗状況の報告を受け、管理運営する。また、特に監視を要
する用地リスクについては、その最遅着手時期をクリティカルポイントとして明確化
し、対応状況を確認する。
③C=Check(管理)
用地取得が計画どおり進捗しているかの確認評価である。用地取得工程管理担当者
は、会議等で遅延の発生や新たな用地リスク発現を注視し、それらが確認された場合
は、対応方法について関係各課と調整し、連携を図る。
④A=Action(改善)
用地取得期間短縮の効率化策導入と計画の是正である。C段階で確認された取得の
遅延や新たな用地リスクに対し、新たな効率化策導入等により、遅延の発生・拡大を
防止し、実工程と計画の差異の是正を図る。
 以上がPDCAサイクルの第1次サイクルである。そしてこの1次サイクルにおけ
るAの是正が、2次サイクルのPに繋がることとなる。このように一周ごとにサイク
ルを向上させながら継続的な工程管理を行うために用いられるのがPDCAサイクル
である。このPDCAサイクルを活用した工程管理を実施することで、用地取得工程
管理計画書に基づく用地取得完了目標期限に向けた、効率的で計画的な用地取得の実
現が可能となる。

 

平成28年度

総論
「不当要求等に対する応対としての具体的な対応策、取組み及び不当要求を抑制する手法としての用地アセスメントとの関係について述べてください。」

合格論文例

合格論文例
(1) はじめに
公共用地交渉に従事する者は、常に厳格であり公平性の観点を持って業務を遂行していか
なければならない。特に外部の圧力や不当要求に対しては、強い使命感及び法令遵守によ
る倫理観が求められている。
この倫理観による法令遵守をコンプライアンスと称している。最近の事例として、用地の
不祥事の発覚により起業者の信頼の失墜に至るということもあり、リスク管理という観点
からもコンプライアンスがクローズアップされている。
(2) 具体的な対応策、取組み
用地職員の一人一人が、法律、基準等の規範となる各法令について遵守し、また、各起業
者が定める用地事務取扱規程や通達等にも十分な理解を示し、毅然とした理念を念頭にお
き、組織としても日々の業務において倫理観を持って行動することが重要である。
① 組織全体としての対応
業務の報告、警察との連携、用地職員の啓発(研修等の実施)
② 多段階のチェックシステムの確立・徹底・強化
補償金額提示のルール化、担当者・用地課長とのチェック体制、第三者によるチェック機
能の充実、検査及び監査に対する強化
③ 不当要求の発生を抑制
道路区域制度の活用、用地取得前行為の詳細調査
④ 情報公表による透明性の向上
土地単価等の範囲を公表
⑤ 土地収用法の的確な活用
事業認定の適期申請により、用地取得完了期限を見据えた適期申請を積極的に活用する。
⑥ 不当要求に対する警察や弁護士会との連携を強化する。
(3) 不当要求を抑制する手法としての用地アセスメント
不当要求の発生を抑制する手法として、用地取得直前行為の詳細調査等が挙げられる。こ
れは、用地アセスメントの調査事項により、事前に反社会的勢力等の存在が明らかになる
可能性がある。
具体的な調査事項として、権利者調査、目視調査、地元聞き込み調査、公的記録簿等調査
により、人的用地リスクの阻害要因を把握することが可能である。また、個別ごとの阻害
要因を把握、分析、評価等を行うことにより、用地取得工程管理計画書に反映し、効率的
かつ効果的な用地取得が計画的に推進できる。

各論
「補償相談業務の実施に当たっては、相談者からの質問、要望、意見等を的確に把握したうえでの応答や対応となりますが、これらについて、具体的に列記してその内容を述べてください。」

合格論文例

合格論文例
① 質問しやすい雰囲気を創造する
相談者は、何もわからない状況なので、いきなり質問の内容を聞くのではなく、季節の話
題から入るなどして、質問しやすい雰囲気を作り出すことが必要である。
② 質問内容を的確に把握して応答する
事前に補償相談業務マニュアル等で想定される質問を十分に把握するなどの事前準備をし
ておき、相談者の質問には的確に把握して回答する。また、質問内容を復唱して確認する
ことも必要である。
③ 応答する場合、簡潔に平易に回答する
用地補償関係の用語は専門用語が多いので、できるだけ専門用語は避けて、簡潔に平易に
わかりやすく回答する。
④ 誠実に対応する
簡単で常識的な質問に対しても誠実に対応する。
⑤ 信頼関係を築く
相談者に対しては、正確かつ良心的に対応するとともに、約束したことは速やかに実行す
るなど、信頼関係を築くことが重要である。
⑥ 相手のよき理解者となるよう心がける
話し上手よりは聞き上手になることが重要で、いきなり質問の内容に入るのではなく、世
間話から始めて相談者の話をよく聞き、いわばよき理解者となることが必要である。
⑦ 質問内容が起業者の判断、回答となる事項のときは、速やかに起業者に連絡し指示を
受ける相談内容が相談範囲を超えている場合や起業者が回答する必要がある場合は、起業
者に連絡し指示を受ける。
⑧ 相談者の要望、苦情、質問はその内容を十分に把握して、起業者に報告して指示を受
ける相談者からの要望、苦情、質問について、不正確なところがある場合は、その場で質
問するなどして十分に把握し整理して、記録簿に記載し、起業者に報告して指示を受ける。
⑨ その場で回答できない質問については、後日に検討して速やかに回答する旨を伝える質
問内容がその場で回答することが困難な場合やわからない場合は、安易な返答をせずに、
後日検討して回答する旨を伝える。
⑩ 相談者からの要望、苦情、質問については、項目別に整理し記録、保管する

 

平成27年度

総論
「用地取得マネジメントの流れは大きく4つの段階に区分されますが、それぞれの段階における内容を具体的に述べて下さい。」
各論
「用地補償に関する相談業務の必要性と補償相談の実施に際しての施行上の義務、心得及び留意事項について述べて下さい。」

 

平成26年度

総論
「土地収用法の規定による事業の認定の効果について簡潔に説明して下さい。」
各論
「公共用地交渉の実施にあたり、説明者として必要とされる基本的な心構え、説明責任等について述べて下さい。」

 

平成25年度

総論
「事業認定の要件及び事業認定手続きの概要を述べてください」
各論
「用地調査等に着手する段階での用地補償に関する説明会において必要とされる事前準備、説明内容及び留意点について述べてください」

 

平成24年度

総論
「用地取得マネジメントにおける用地取得期間を短縮するための効率化策について簡潔に述べて下さい」
各論
「補償相談業務における主な相談項目及び補償相談業務に当たっての留意点について述べてください」

 

平成23年度

総論
「土地収用法の目的及びその主要な手続きの概要について述べて下さい」
各論
「補償金の増額要求の具体例をあげて、その対応について述べて下さい」

 

平成22年度

総論
「補償コンサルタントにおける総合補償部門の業務内容はどのようなものですか、また、総合補償士の役割について述べて下さい」
各論
「用地取得業務を行うに当たり適正な公共用地取得計画を策定する必要がありますが、その理由及び具体的な内容を述べて下さい」

 

平成21年度

総論
「用地取得マネジメントとは何ですか、また、公共用地取得業務において用地取得マネジメントが導入された背景、理由について述べて下さい」
各論
「公共用地交渉業務の具体的な内容について述べて下さい」