即戦力外ドラフト

Last-modified: 2026-07-02 (木) 23:45:53

即戦力を評して取った選手が尽く使い物にならなかったドラフトのこと。
ここでは主に2014年における中日ドラゴンズのドラフトに対する評価を扱う。


概要

2014年ドラフト会議まで

2014年の中日ドラゴンズは、主力の高齢化が進む一方で若手は伸び悩んでいたことから、ドラフト会議では即戦力重視の方針を示し、山﨑康晃(亜細亜大)の1位指名が有力視されていた。

しかし当日になって方針転換、ドラフト1位で野村亮介(三菱日立パワーシステムズ)を単独指名。野村はどちらかといえば素材型で、しかも山崎を最初に指名していれば一本釣りに成功していたために疑問の声が上がったが、最終的に社会人の有力野手4人を獲得した落合博満GM(当時)の手腕*1を評価する声もあり、この時点では賛否両論だった。また、伝統的に即戦力中心のドラフトに対して厳しい評価をすることで有名なスポーツライターの小関順二がヤクルトと共に「指名に軸を感じられない」と酷評したことで、逆にドラフトの成功を確信した中日ファンも少なくなかった。

プロ入り後

中日ではエースナンバーとされ、かつては杉下茂や星野仙一も背負った背番号「20」を与えられるなど期待を集めていた野村だったが、春季キャンプでいきなり右肩痛を発症。シーズンでも中継ぎとしてわずか3試合登板のみに終わったばかりか、その後は一軍での登板すらなく3年で戦力外通告を受けてプロの世界を去ることになる。
一方、DeNAに入団した山﨑は1年目から守護神に抜擢され、5月には月間10セーブのNPB新人投手記録を樹立するなど大活躍。最終的には58試合に登板して、2勝4敗37セーブ(新人最多記録)7ホールド、防御率1.92の好成績で新人王に輝く。その後も不調な年こそあれど、消耗の激しい中継ぎ・抑えとしてプロ入りから10年で546試合に登板する鉄腕ぶりを発揮。2018年、2019年には2年連続で最多セーブのタイトルを獲得し、2022年には29歳10ヶ月で(当時)史上最年少となる200セーブを達成するなど大活躍している。

また野村に加え、かつてのドラフト1位であった堂上直倫から剥奪*2してまで背番号1を与えられるなど、早くから異様なまでの重圧をかけられてしまった3位・友永翔太も、この年の中日の指名選手の象徴とされることが多い。
その往時の人気ぶりは一軍出場がほとんどないにもかかわらず友永スレが定期的に立っていたレベルであり、登場しないにもかかわらず登場曲が3つもある*3などとネタにされることもあった。

10人近い本指名選手に高校生が1人もいないという大胆な指名は(具体的な大卒及び社会人選手の選定自体も含めて)完全に裏目に出た形となり、1位・野村が3年で戦力外になったことをはじめ、多くの選手がかなり速いペースでチームを去っていき、残った選手もほぼ在籍しているだけで「戦力」とは言いがたい状況が続いたことでこの呼称が定着した。
ちなみに、ドラフト1位の選手はなかなか結果が出なくてもかなり長い目で見てもらえる上に引退後の保証も手厚いというのが古くから指摘される傾向であり*4、その背景には「うちはドラフト上位の選手を手厚く守る」と示すことで新規のスカウト活動を成功させる目的もあるためというのが定説だが、そんな1位の選手がわずか3年で戦力外となったことは誰の目にも明らかな失敗と映っていたことを物語っている。

中日の2014年ドラフト指名選手一覧

通算成績は2025年レギュラーシーズン終了時点。「一軍出場」は、入団後に移籍した先でも出場がある場合「通算出場数(指名球団での出場数)」で示す。

順位名前守備位置出身一軍出場備考
1野村亮介投手三菱日立パワーシステムズ3試合2017年限りで戦力外
2浜田智博投手九州産業大1試合2016年に育成落ち*52020年限りで戦力外
3友永翔太外野手日本通運34試合2019年限りで戦力外
4石川駿内野手JX-ENEOS31試合2020年限りで戦力外
5加藤匠馬捕手青山学院大350
(269)試合
現役。
2021年途中にロッテへトレードされるも、
2022年オフに再トレードで中日に復帰(詳細は後述)。
6井領雅貴外野手JX-ENEOS216試合2021年限りで戦力外
7遠藤一星内野手*6東京ガス293試合2021年限りで戦力外
8山本雅士投手四国IL・徳島3試合2018年限りで戦力外
9金子丈投手大阪商業大11試合2017年限りで戦力外
育成1佐藤雄偉知投手東海大付属相模高(育成指名であることを理由に入団拒否*7
育成2石垣幸大投手いなべ総合学園高なし2016年限りで戦力外
育成3藤吉優捕手秀岳館高なし2017年限りで自由契約*8
育成4近藤弘基*9外野手名城大40試合2016年に支配下登録されるも2019年限りで戦力外

育成指名はともかく、本指名の選手はいずれも即戦力を期待されながら、谷繁元信森繁和体制の2018年までの4年間で、7位の遠藤が1年目の2015年にそれなりの出場機会を得た程度にとどまり*10、その遠藤ですら2017年に守備難を理由に激戦区の外野手に転向してからは出場機会が減少傾向となった。
なお、彼らの入団当初の二軍打撃コーチは殆ど実績を残していない上にかつて森岡良介とのトラブルで無能扱いされていた高柳秀樹1人しかいなかったことから育成ミスとする意見も存在する。

その他

  • 2014年ドラフトは全体を見ても不作気味の年で、2013年入団選手よりも早くに引退したケースが多いと話題になったこともあり、特に即戦力路線で指名を行った球団にとっては難しいドラフトだったともされている。
    • この年1年目から「即戦力」として活躍できたと言えるのは投手なら山﨑の他にはパ・リーグ新人王の有原航平(早稲田大→日本ハム)と高木勇人(三菱重工名古屋→巨人)、野手を含めても中村奨吾(早稲田大→ロッテ)、野間峻祥(中部学院大→広島)、西野真弘(JR東日本→オリックス)が挙がる程度であった。
  • 落合の即戦力重視ドラフトはこの年に限らず、彼が最初に携わったドラフトである10年前の2004年ドラフトでもこの2014年ドラフトと同様に大学生・社会人選手のみ(計11人/投手6人・野手5人)を指名している。
    • このドラフト自体は2位の中田賢一を筆頭に4位で川井進、5位で鈴木義広、6位で石井裕也と息長く活躍した投手を計4人獲得しており、投手に限れば十分成功と言えるが、涌井秀章横浜高校から西武が1巡目で指名)を1位指名するよう推薦するスカウト陣の声を落合が「高校生はいらない」と押し切って*11自由獲得枠で獲得した樋口龍美(当時28歳)は3年間で一軍登板がないまま引退しており*12、野手陣に至っては当時黄金時代にあった中日野手陣の層の厚さに阻まれたこともあるが、全員レギュラー奪取どころか一軍定着すら果たせず、落合が監督を退任した7年目の2011年限りで全滅している。
  • 2010年代後半以降の中日は即戦力中心、及び社会人出身の選手のドラフト指名を極力避けるようになっており*13、良くも悪くも後のドラフトに影響を与えたともいえる。

14年ドラフト組総退団までの動向

与田剛体制になった2019年は一転して、14年ドラフト組は一定の活躍を見せた。加藤は中日捕手陣では最多の92試合に出場。遠藤はスタメン出場こそ19試合にとどまったものの、代打・代走など様々な役割に対応できることから重宝され、シーズンを一軍で完走し108試合に出場した。
井領もアルモンテの不振や平田の一時離脱などで55試合に出場。8月に故障離脱したものの、一時は月間MVPの候補に挙がるほどの活躍をするなど、打率.290の好成績を残した*14。また、石川は一軍出場は少なかったもののファームで打率・打点の2冠となった。
しかし2020年は悉く不振に陥り、遠藤・井領は揃って打率2割前後に低迷。石川は度重なる怪我と高齢(当時30歳)が影響したか同年限りで戦力外通告を受けることとなった。
また、加藤は木下拓哉やアリエル・マルティネスに押されて出番が減少していき、2021年シーズン中に加藤翔平とのトレードでロッテに放出された。
そして残る遠藤・井領は2021年も目立った成績を残すことはできず、2人とも10月7日に戦力外通告を言い渡され引退。指名した全選手が中日からいなくなった


その後の加藤

ロッテへ移籍していた加藤匠は初年度から57試合に出場、優勝争いに貢献したものの打率が1割を切るなど打撃面は相変わらず。翌2022年シーズンは松川虎生(2021年ドラフト1位)や佐藤都志也(2019年ドラフト2位)の台頭により24試合の出場に留まっていた。
ところが中日は同年オフに山下斐紹、桂依央利に戦力外通告をし、アリエル・マルティネス含めて3名もの捕手が退団。その矢先には石橋康太がクリーニング手術により長期離脱を余儀なくされ、壊滅的な捕手不足に陥ってしまった。その中で昨年まで中日に在籍し投手陣を知り尽くしている加藤匠に白羽の矢が立ち、無償トレードによる中日復帰を果たした。復帰後はサブ捕手として一軍でも重宝され、2025年シーズン終了時点では加藤が即戦力外ドラフト組で唯一の生き残りとなっている。


同年の類例

ここでは同じくらい(もしくはそれ以上に)悲惨な結果に終わった、同年の東京ヤクルトスワローズと東北楽天ゴールデンイーグルスのドラフトにも言及する。

東京ヤクルトスワローズの場合

同年はヤクルトも即戦力重視の指名を行ったが、たった3年でドラフト1位含む5人+育成1人が戦力外。残る2人も2019年に山川、2020年に風張が戦力外となり、6年でヤクルトから全滅。風張はトライアウトを経てDeNAに移籍したがその年限りで戦力外となり、7年でNPBから全滅した。
その惨状たるや、

  • 全投手の登板数を合算してもたったの105*15
  • そのうち88試合は風張一人で稼いでおり*16それ以外の投手は全員登板数10試合未満
  • 公式戦で打席に立ったのは投手の風張のみで、野手で入団した2人は共に一軍での打席どころか出場数が0*17

という有様で、上述した中日より更に悲惨な結果に終わってしまった。

順位名前守備位置出身一軍出場備考
1竹下真吾*18投手ヤマハ1登板2017年限りで戦力外
2風張蓮投手東農大北海道オホーツク93
(88)登板
2020年限りで戦力外
同年オフにDeNAへ移籍するも翌2021年に戦力外
3山川晃司捕手*19福工大附城東高なし2019年限りで戦力外
4寺田哲也投手四国IL・香川3登板2016年限りで戦力外
5中元勇作投手伯和ビクトリーズなし2016年限りで戦力外
6土肥寛昌投手Honda鈴鹿8登板2017年限りで戦力外
7原泉外野手第一工業大なし2017年限りで戦力外
育成1中島彰吾投手福岡大5登板2016年に支配下登録されるも2017年限りで戦力外


東北楽天ゴールデンイーグルスの場合

シーズン最下位に終わったこの年、通常ドラフトで7人、育成ドラフトで2人指名。1・2位、育成1位では素材型の高卒選手を指名し、それ以外を大卒・社会人・独立リーグ出身の即戦力で固めるという、どちらかと言えば即戦力に比重を置いたドラフトであった。
しかし、3位以下の7人全員が6年でチームから戦力外になりかつ8年でNPBから去った。2位の小野も二軍の帝王のまま鈴木大地の人的補償でロッテへ移籍したため、わずか6年で2位以下が楽天を去るという中々に荒廃したドラフトとなった。

唯一残った安楽智大は中継ぎ転向で一定の結果を残していたが、同僚へのパワハラというシャレにならない不祥事で自由契約となり、9年目にして楽天から全滅。結果的に中日やヤクルトに負けず劣らずの悲惨な結果となってしまった。

順位名前守備位置出身一軍出場備考
1安樂智大投手済美高231登板2023年限りで自由契約*20
2小野郁投手西日本短大附高172
(39)登板
現役。
2019年オフに人的補償でロッテに移籍。
3福田将儀外野手中央大112試合2017年限りで戦力外
4ルシアノ・
フェルナンド
*21
外野手白鷗大72試合2018年オフに育成落ち。
2019年に支配下復帰するも2020年限りで戦力外
5入野貴大投手四国IL・徳島30登板2018年限りで戦力外
6加藤正志投手JR東日本東北10登板2016年限りで戦力外
7伊東亮大外野手*22日本製紙石巻8試合2016年オフに育成落ち、2017年限りで戦力外
育成1八百板卓丸外野手聖光学院高43
(27)試合
2017年に支配下登録されるも2019年限りで戦力外
同年オフに育成契約で巨人に移籍、
2021年に支配下復帰するも2022年限りで戦力外
育成2大坂谷啓生内野手青森中央学院大なし2016年限りで戦力外


関連項目

Tag: 中日 ヤクルト 楽天 ドラフト


*1 GM退任前後の報道や落合が後年自らのYouTubeチャンネルで語ったところによれば、実際には落合に権限はほとんどなかったのだが、当時のなんJ民は知る由もなかった。
*2 同年オフに背番号を「63」に変更。63番は同年オフに自由契約を経て巨人に移籍した堂上の実兄・剛裕がつけていた番号で、直倫は背番号の変更を迫られた際に「兄の番号だから」と迷わず63を選んだ、と引退時に明かしている。
*3 巨人や楽天など一部球団は二軍戦でも登場曲が流れるが、中日については二軍戦では流さないスタイルを現在も継続している。
*4 現に野村や後述の樋口も引退後、2024年時点でも球団職員として中日に残り続けている。
*5 戦力外通告を受けた選手は任意引退か自由契約を選ぶ必要があるが、育成選手契約に切り替える場合も形式的には戦力外通告を経ている。
*6 2018年より外野手登録。
*7 高校卒業後は社会人野球・ホンダ鈴鹿硬式野球部でプレーし、2019年勇退
*8 形式的には戦力外通告を経ている。球団は契約更新を予定していたが、本人がプロでの限界を感じたとして社会人野球入りを志したため。
*9 実父は同じく中日の投手であり、一軍初登板でノーヒットノーランを達成した近藤真市。
*10 7月から上位打線で起用されるなど、最終的に41試合の出場で打率.271(140-38)、4本塁打を記録。
*11 落合政権時に編成を担当していた中田宗男の手記によれば、2008年のドラフトでも大田泰示を1位指名しようとしていたが「野本がいい」と反対されて大喧嘩になってしまったとも書かれている。
*12 なお残る投手の金剛弘樹(9巡目)は二軍では抑えとして活躍するものの一軍では結果を残せず、2012年限りで引退している。
*13 このドラフト以降、2023年に度会隆輝(ENEOS、抽選で外し交渉権は得られず)、津田啓史(三菱重工East)、加藤竜馬(東邦ガス)を指名するまで長らく社会人からの複数指名をしてこなかった。
*14 ただし103打席で3四球のみと選球眼に難があり、出塁率は.311にとどまった。
*15 他球団での記録を含めても110。
*16 その風張も半分以上の登板数を2018年で稼いでおり、それ以外の年は10試合前後の登板にとどまっている。
*17 この結果、この年にヤクルトが指名した選手は誰一人として安打や打点、得点を記録していないという珍記録が生まれてしまった。
*18 安樂智大(済美高→楽天)の外れ1位。
*19 2019年のみ、捕手登録のまま投手としてもプレー。
*20 安樂も形式的には戦力外通告を受けている。
*21 出身・国籍はブラジルだが、日本の中学・高校課程を修了しているため日本人選手扱い。
*22 2017年より内野手登録。