【よく使う20文字のカタカナ】

Last-modified: 2021-04-05 (月) 21:16:14

概要

ドラクエシリーズのシナリオライターである【堀井雄二】が、【ポートピア連続殺人事件】【ドラゴンクエスト】を開発する際に選定した20字のカタカナのこと。
【ドラゴンクエストへの道】の作中で、【中村光一】がこう呼んでいる。
当然だが、両作品では使えるカタカナの種類が共通では無い。あくまで20種類という数が同じというだけである。
【メルキド】にいる女性が「ぽーとぴあ」と表現しているのに対し、ポートピア連続殺人事件では「ポートピアれんぞくさつじんじけん」と表記されていたことからもそれが分かる。
 
20文字に絞られた理由は「ROM容量の少なさ」と語られることも多いが、実際は「ファミコンのメモリ(記憶領域)の少なさ」が大きな原因。
ファミコンは発売時点では群を抜く高性能なハードだったが、コスト削減のため、高価な汎用PCと比べればメモリ容量は少ない。
ゲーム画面を描画する際には、その描画に用いる画像と文字のドットパターンをメモリに読み込んでおく必要があるが、ファミコンはこのメモリが少ないため、一度に読み出せるデータ量の制約も大きな制限となった。
マルチウィンドウを採用したDQではマップ上の地形パターンとウィンドウの文字や枠線・カーソルなどといったもののドットパターン情報を全てメモリ上に共存させる必要があり、さらにDQ1では戦闘背景用の画像データも必要となる。
もしひらがな・カタカナ・数字・英字を全てメモリ上に読み込むと、地形や戦闘背景を描画するためのデータが足りなくなってしまう。
そのためカタカナは五十音のなかでも特に使用頻度の高い20字を精選し、ゲームに登場するカタカナの人名・地名・呪文名・モンスター名はすべてこの中から命名するという苦肉の策を取らざるを得なかったのだ。
 
DQ2以降はパーティ戦闘導入に伴い戦闘画面が移動画面から完全に切り替わる方式になり、またマップに使用するグラフィックをフィールド、城と町、洞窟、塔といった分類でまるごと切り替える方式を採ったことによって、全ての地形と背景を一度に読み込む必要が無くなったためメモリに余裕ができ、使用可能なカタカナ(および英字・記号)が少し増加した。
だが、ほとんど全てのカタカナが使えるようになったり、キャラクターの名前をカタカナで命名できるようになったのは結局、FCより多くのメモリを扱えるスーパーファミコンに移行してからとなった。
 
というわけでFC期のDQには「ユニコンラット」を【アルミラージ】に改名したり、りせっとぼたんフトーナアークバッフローといった、涙ぐましいカタカナ削減策の跡が随所に見られる。

DQ1

初代「ドラゴンクエスト」で使われた20文字のカタカナは以下の通り。

        
       
         
         
       

これに加え、上記の濁音(行の上を少し開けてそこに濁点を入れている)である。
上記のうち太字で示した「へ(べ)」と「り」はひらがなとカタカナで共用しているため、カタカナとしての文字フォントが存在しているわけではない。
一方で「ト」の文字は文字の上に濁点を入れることができないコマンドウィンドウの仕様上、濁点の無い「ト」と濁点が付いた状態の「ド」の文字が別個に存在している。
これらの理由のため、実質的にカタカナフォントとして登録されているのは19文字である。
また、「つよさ」コマンドの項目中の「こうげき力」「しゅび力」の「力」という漢字は、カタカナの「カ」を共用している。
ちなみに英字に関しても表示に最低限必要なH・M・P・E・Gのみに絞られている。
 
この20文字のカタカナの中から「ホイミ」「ラダトーム」などといった名前を考え出した堀井雄二の発想力は見事という他ない。
だがこの制約の影響で、物語の舞台となった「ガルド」という地名は劇中に一切出てこなかったり、明らかに中世ヨーロッパ風の世界観なのに主人公の名前はひらがなに限定されていたりする。NPCにも【よしりーん】【ちゅん】といったひらがなの人物名が目立つ。
「ドラゴンくえすと」などは象徴的で、自身のタイトル(ドラゴンクエスト)すら表現できなかったのである。
また「ンスター」すら無理で、作中では「まもの」と呼ばれている。
その名残なのか、以降のシリーズでもモンスターのことを「まもの」と呼ぶ場面が少なくなく、ある意味DQらしさを生んでいる。
たまに句点と間違って半濁点「゜」が文章の締めに使われている事がある(ラダトームの町の呪いを解いてくれる老人など)。
ちなみに1986年当時、堀井は「中二コース」誌6月号掲載の取材で、1文字ずつ削るだけでだいぶ容量に余裕ができるということで、その作業に追われている最中だった。
1文字ずつと言っても、全てのメッセージを1文字短くするというのはさすがに不自然であるので、恐らくは使う文字を1種類減らすことだったのであろう。
だったら句点と半濁点を共通にすれば早かったのではないかと思えなくも無いのだが…。
 
また【りゅうおう】最終形態との戦闘画面では、文字の形が若干異なっている(「ホ」「ト」など)。
りゅうおうのグラフィックはラスボスだけあって力が入っており、DQ1で唯一巨大な一枚絵=BGで描かれている(他のモンスターは小さなスプライトのみ)。そして、文字もまたBGで表現されているが、この2つのBGは別個のデータである。
ここで、先のメモリの少なさの問題が再び発生する。
FCにおいてグラフィックデータを読み出す際は個別ではなく、ひとかたまりのセットごとにしか読み出すことができない。
つまり、りゅうおうのBGを読み出したことで、別個のBG=「通常メッセージに使っている文字」を同時に描画する余裕がない。
そこで、りゅうおうのBGと同じ場所にもう1セット「りゅうおう戦専用の文字」を用意しそれを読み出すことで解決している。
ちなみにその場所は他にも限られた時にだけ使うグラフィックが詰まっており、エンディング等で使うアルファベットやエニックスのロゴがある。
文字の形が異なっている理由は不明だが、単なる確認ミスの可能性がある。
というのも、りゅうおう戦の文字は上記ポートピアで使われてる文字に酷似しているからだ。
ポートピアをベースにドラクエの文字選別が行われたのに併せてフォントの作り直しも行ったのだろうが、「りゅうおう戦の文字」だけはそれを反映し忘れていたと考えられる。

DQ2

以降、 は新たに使えるようになった文字。

    
     
     
       
     

戦闘用背景の画像データが無くなった影響もあって、20文字から33文字に大幅増加。
データ上では「」がナ・ヌの間にあるので、最後の方で「ニではなくウの方を使う」と決め追加したらしい(詳しくは【ウフラム】参照)。
この関係か「ウ」の使用箇所が異様に少なく、【サーベルウルフ】【ウドラー】のみ。
また英字は新たにステータス関連のL・V・Xと戦闘で用いるA・B・C・D・Fが新たに使えるようになった。

DQ3・DQ4

   
     
      
     
   

「ウ」は本来の「ニ」に置き換えられたことで一旦削除された。またDQ2では【5つの紋章】を記号で表していたがそれが不要になった分、入れ替わるように5文字のカタカナが追加された。

「セ」がなかったため、「りせっとぼたん」がひらがなになっている。
なおDQ4の【ポーカー】の画面は先述のりゅうおう戦と同様に通常画面とは別の文字データをメモリに読み込んでいる。なので上記以外の文字も表示され、濁点も文字に含まれている(ロイルストレートフラッシ、フカードなど)。

DQ5、DQ1・2(SFC版)

  
  
  

メモリが増えたことによって「ゥ」以外すべて使えるようになったほか、「ヘ」と「リ」にもちゃんとしたカタカナの文字が与えられた。
「ァ」「ィ」「ェ」「ォ」の4つの文字は名前入力画面では使うことができないため、【チート】を使わないと「ティミー」「フィラ」が入力出来ない。

DQ6、DQ3(SFC版)

  
 
  

ア行の拗音に「ゥ」が追加され、現代仮名遣いでは使用しない「ヰ」「ヱ」を除けば50音順表すべてが揃った。
ただしDQ6の名前入力画面では、まだ「ァィゥェォ(ぁぃぅぇぉ)」を使うことは出来ない。
なお「ン」や「シ」にハネが入るなど、一部の文字はマイナーチェンジされている。

その後

GB系リメイク作品や、フォントそのものが変更されたPSのDQ7・DQ4では濁点・半濁点も文字の中に含まれるようになったほか、漢字も使われるようになった。
そしてPS2以降は印刷物や他電子機器などでも使われる一般のフォントが使用されるようになり、文字に関する制約からは完全に解放された。
なお「ヰ」「ヱ」はナンバリングではいまだに使えないが、DQMJ3Pでは使用できる。