ハイセンスなボルト

Last-modified: 2024-02-29 (木) 22:40:03
人形DNA鑑定:HG|SMG|AR|RF|MG|SG〕

 
FN家の宿命…争えぬ血…
 
ふっ、あなた達のセンスを直してあげるわ。
 

 

簡単な説明

 

ティルトボルトな自動火器って言うと、普通はZB26ファミリーが出てくるんだけど、ちょいと毛色の違う感じの皆さん。
ZB vz. 26ではボルトキャリアとボルトは上下にただ重なっていただけだが、SVT系ではボルトキャリアがボルトを包み込むような形状をしているのが特徴。

もう少し詳しく

まずZB vz. 26のボルト周りを思い出してみよう。
zb26 30 bolt-Z.png

  • 下がボルトキャリア、上がボルト本体である。
    • ボルトキャリアが後退すると、横から見て"Z"の字を描くようにボルトと噛み合う。
  • 銃によってボルトキャリアとボルトの位置関係が逆になることはあるが、大雑把に言うとこの2つのパーツは上下に重なっている。
 

続いてSVT-40のボルト周り
SVT-Z1.png

  • ボルトがボルトキャリアにめり込んでいるというか、ボルトキャリアがボルトを包んでいるというか、そんな感じ。
  • ZB vz. 26ではとても目立っていた"Z"字のかみ合わせが、SVTではボルト側面で控えめに噛み合うだけになった。
    • マシンガンとライフルとでは求められる強度が異なるという事情もあろうか。
  • ZB vz. 26系のボルトと並べた写真なんてもちろん見たことはないので断言はできないが、SVTのようなボルト配置の方がおそらく省スペースなのだろう。

全てショートストロークガスピストンで動作し、ティルトボルト閉鎖である。

 

メンバーの皆さん

 

SVT系のティルトボルトの構造については前述の通り。
SVT自体は後継に恵まれず、FN49系もFALという傑作を送り出したが、その後はローテーティングボルトを備えるアサルトライフルに取って代わられてしまった。

 
SVT-38?
040 svt-38.png主な弾種7.62x54mm R
生産期間1939-1945
備考トカレフで皆さんおなじみフョードル・トカレフ技師渾身のソ連制式セミオートライフル。
SVTに独特な機関部の構造がどこに由来するかはいまいち判然としない。
一応、トカレフ技師がSVTより前に試作したライフルのボルトキャリアは、ローテーティングボルト閉鎖にも関わらずSVTのそれと一見似通った形状をしているので、先に外側のサイズやレイアウトありきでそこへティルトボルト機構を組み込んだのかもしれない。
 
トカレフ技師の試作自動小銃について

トカレフ技師の試作自動小銃について

 

フョードル・トカレフ技師はTTピストルことトカレフ拳銃ばっかり有名だが、SVTに至るまでに多数の自動火器を試作している。
まず1926年の自動小銃トライアルに提出された試作ライフルではショートリコイルを採用した。この辺りは西側でもブローニングM1919?(文字通り1919年採用だ)がショートリコイル作動だったりするので、特別見当違いと言うわけでもないだろう。
Tokarev model 1925.png

  • ショートリコイルで作動し、薬室の閉鎖はローテーティングボルトで行う。
 

その後ショートリコイルの限界を認識したのか、続く1930年からのトライアルではガスオペレーションを採用した試作ライフルを複数提出した。
Tokarev model 1933.png

  • 1933年の改良されたモデルでは、ガスシリンダーは銃身の下部から上部へ移され見慣れたレイアウトとなった。
  • この時点ではまだローテーティングボルトによって薬室を閉鎖している。
    • 写真ではトップカバーが外され、メインスプリングが露出している。
 

翌1934年にはこれまでのローテーティングボルト閉鎖をやめ、ティルトボルト閉鎖を採用する。ここでSVTに必要な要素が全て揃ったことになる。
Tokarev model 1932.png

  • なぜか1932年とあるが、よく分からん。
  • リアサイトの取り付け位置などに違いはあるが、おおよそのレイアウトはのちのSVTに引き継がれている。
    • 注目したいのは1933年モデルから閉鎖方式が変更されたにも関わらず、機関部のレイアウトに大きな変更が無いところである。
 

トップカバーを外したSVTもチェックしてみよう。
svt main spring.jpg

  • メインスプリングのレイアウトも1933年モデルと変わらないことが確認できる。
  • というわけで、多分ボルトキャリアの外寸が先にあって、そこに合わせてティルトボルト閉鎖のメカニズムを組み込んだ結果がSVTの独特な構造を生んだのかもしれない。
    • 実際のところはトカレフ技師のみぞ知る?
 
よよよさん
051 fn-49.png主な弾種7.92x57mm Mauser
生産期間1948-1961
備考原設計は1936年頃と、SVTとほぼ同世代の自動小銃だが、SVT以上に量産タイミングが悪かった。
SVTとFN49(の開発者)がお互いをどの程度意識していたか今となっては知る由もないが、機関部の構造はとてもよく似ている。
 
よよよさんボルト

よよよさんボルト本体。右方向が銃口側になる。
fn49 bolt.jpg

  • ボルト後端あたりから側面(写真では手前)に向けてラグが生えている。
    • ここがボルトキャリア内側の溝に引っかかって、ボルト後端を引っ張り上げて閉鎖を解除するという寸法である。
  • 作動方式とは関係ないがエキストラクターがでっかい。
 

ボルトキャリア。上と同じく右側が銃口。
FN-49-Rifle-Bolt-Carrier.jpg

  • これがボルトを丸ごと覆ってしまう。
    • つまり肝心の部分(ボルトと噛み合う部分とか)は外側からは見えない。
 

ボルトの加工はSVTより明らかに凝っているし、ボルトキャリアについても同じことが言える。
しかし基本的なアイデアはSVTと大して変わらないと言ってしまって問題ないだろう。

 
FAL
106 fal.png主な弾種7.62x51mm NATO
生産期間1953-
備考端的に言えばよよよさんのハイセンスな改善版。
洗練されたボルト本体のくびれは仄かなエロスを感じさせる。
 
120円にしては良くできた中身

ハイセンスなボルト。斜め後ろから眺める。
fal bolt.jpg

  • FN49と似ていることが分かるだろう。特に後部から左右に突き出たラグの処理やボルト下側のくびれの辺り。
  • ボルト上部もなだらかな曲線を描き、そこはかとなく女性的な印象を与える。
 

ご親切に内側も見せてくれたボルトキャリア。
fal-boltcarrier.jpg

  • 内部の複雑な凹凸が分かる。
    • え、多分これフライス盤で削っていくんでしょ? あんまり工数を想像したくないなぁ……
 

ついでなのでSVT-40のボルトキャリアもひっくり返してみよう
svt bolt carrier.jpg

  • うーんFALに比べたらずいぶんシンプル
 

一般にティルトボルト閉鎖はボルト後端がレシーバーに踏ん張るという構造上、レシーバーに相応の強度が求められるため重さやコスト面で不利である。
その上SVT系は歩留まりが悪そうだし工数も嵩みそうで、あまり流行らなかったのもしゃーないのかなと。いやFALは十分流行ったか?

 

ケルゲレン博士の異常な愛情

 

直接関係がある訳では無いが、同じティルトボルト閉鎖かつショートストロークガスピストン作動であり、収まりも良いので。

 
RFB
172 rfb.png主な弾種7.62x51mm NATO
生産期間2008-
備考珍銃メーカーとして確固たる地位を築いているKel-Tecが放つ、次世代のブルパップライフル。
ブルパップの泣き所である排莢問題を、FN F2000同様に銃前端からぽとぽと落とす方法で回避しようとした意欲作……なのだが、2000年代にはすっかり流行らなくなったティルトボルト閉鎖を使っていたり、7.62x51mm NATOをFALのマガジンで給弾したりと所々に時代錯誤感のあるセンスが光る。
 
RFBのボルト

RFBのボルト
Kel-TecやDesert Techはパーツ構成まで載せた詳細なユーザーズマニュアルを公開してくれていてとても助かる。
rfb bolt.png

  • ティルトボルト式に特徴的なロッキングショルダー(右下)が見て取れる。
  • 加えてボルトキャリアの動きをボルトに伝える溝カムも空けられている。
    • FALたちはボルトから突き出たカムがボルトキャリアの溝に噛み合う形なので、必ずしもこのページの他のティルトボルトと全く同一というわけではない。
 

ボルトが前進した状態の図
rfb in battery.png

  • ボルト後端のロッキングショルダーが赤色で示されたレシーバーに噛み合って、薬室を閉鎖している。
 

ついでに銃身周りのパーツ
rfb barrel parts.png

  • 銃身の後部に青く塗りつぶされた大型のレシーバー(150番)が固定されている。
  • ここでは材料に言及されていないが、常識的に考えるならば鉄製だろう。
    • ティルトボルトの場合レシーバーに強度が求められるので、これは避けて通れない宿命である。
 

 
 

 

コメント